あの大事故から僅か1年。ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)がグランツールのスプリントで勝利した。終盤に落車したレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)に大きな怪我はなく、救済措置によってマイヨロホを守っている。



8月17日(火)第4ステージ
エル・ブルゴ・デ・オスマ〜モリナ・デ・アラゴン 163.9km


エル・ブルゴ・デ・オスマの旧市街をスタートしていくエル・ブルゴ・デ・オスマの旧市街をスタートしていく photo:La Vuelta
ブルゴスとその近郊で開幕から3ステージをこなしたプロトンは、地中海に向かって南下を開始。エル・ブルゴ・デ・オスマからモリナ・デ・アラゴンまで南東に向かう163.9kmコースは、一つのカテゴリー山岳も無いスプリンター向けステージではあるものの、大半は標高1,000mの高地で、コース図の見た目と異なり獲得標高差は1,700mもある。

最終盤200mからフィニッシュラインまで勾配6%ほどの登りが続くパンチャーにもチャンスがあるゴールレイアウトが用意されたため、この日大逃げを目指す選手は現れなかった。

マドラソ、カナル、そしてボウの3人が逃げるマドラソ、カナル、そしてボウの3人が逃げる photo:La Vuelta
ひまわり畑の中を進むカルロス・カナル(スペイン、ブルゴスBH)たちひまわり畑の中を進むカルロス・カナル(スペイン、ブルゴスBH)たち photo:La Vuelta
リアルスタートの旗が振られると、すぐさま3名の選手が飛び出し、グランツールでヤン・キルシプー以来2人目のリーダージャージ着用者となったレイン・タラマエ(エストニア)率いるアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオがメイン集団のコントロールを開始する。横風に警戒しながらも、この日は逃げる3名に対して最大4分半のリードを許容した。

逃げグループを形成した3名
カルロス・カナル(スペイン、ブルゴスBH)
アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)
ジョアン・ボウ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)

一時的に横風分断が起こりつつも、基本的には落ち着いた展開のままレースは進む。101km地点に用意された中間スプリントポイントではブルゴスの2人を打ち破ったボウが先着し、1分半まで詰め寄ったメイン集団ではフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨプントスを着るヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)の最大ポイント獲得を阻止している。

標高1000mの丘陵地帯を駆け抜ける。この日強烈な風は吹かなかった標高1000mの丘陵地帯を駆け抜ける。この日強烈な風は吹かなかった photo:La Vuelta
アンテルマルシェに代わってアルペシン・フェニックスなどスプリンターチームが牽引アンテルマルシェに代わってアルペシン・フェニックスなどスプリンターチームが牽引 photo:La Vuelta
アンテルマルシェに加えてスプリンターチームや総合チームも集団先頭に立ち、連日同様に新城幸也(日本)もバーレーン・ヴィクトリアストレインの先頭に立ってミケル・ランダ(スペイン)たちのアシスト役を務めた。1分前後で推移したタイム差は、残り20kmを切ってスプリンターチームが加速を始めると、一気に降下することとなる。

アルノー・デマール(フランス)での勝利を目指すグルパマFDJがイニシアチブを握り、残り13kmで拳を付き合わて健闘を讃え合う先頭3人を飲み込んだ。グルパマ、ドゥクーニンク、ボーラ・ハンスグローエ、アルペシン・フェニックス。緩やかな展開で力を溜め込んだスプリンターチームが広い道幅いっぱいに列車を並べ、50〜60km/hのハイペースでフィニッシュまで距離を減らしていった。

ユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズなど、危険回避を目論む総合チームも先頭争いに加わる中、救済措置が適用される残り3kmアーチを通過した。すると緩やかなな右コーナーで、カメラはマイヨロホを着るタラマエが地面に転がる姿を捉えた。

集団前方の動きの余波を受け、隣の選手に当てられる形で落車したタラマエ。しかし幸い大きな怪我には繋がらず、すぐにバイクに再乗車してフィニッシュ地点を目指した。同タイムフィニッシュ扱いになったタラマエは「クラッシュはしたくなかったけれど、痛みもあまりない。明日以降もマイヨロホを守り続けたい」とレース後に語っている。

6%勾配の最終盤で早駆けするサーシャ・モドロ(イタリア、アルペシン・フェニックス)6%勾配の最終盤で早駆けするサーシャ・モドロ(イタリア、アルペシン・フェニックス) photo:La Vuelta
アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)を下したファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)	アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)を下したファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
残り2km地点からのコーナー連続区間でアルペシン・フェニックスが支配したものの、早めにアシストを使い切ったことでフィリプセンは一度デマールの背後へ。こうしてアシスト2人を残したデマール有利に駒を進め、残り200mから始まる緩斜面登坂で発進。元フランスチャンピオンがコースのド真ん中を突き進んだ。

しかし、勾配6%ほどの登りが続く最終ストレートで、最も鋭い加速を見せたのはヤコブセンだった。平均55km/hで突き進むデマールをパワフルなスプリントで抜き去り、半車身ほど抜け出した状態でフィニッシュ。生命すら危ぶまれた昨年8月のツール・ド・ポローニュでの落車から僅か1年で、2019年ブエルタの最終ステージ以来となる、自身2年ぶりのグランツールステージ優勝を掴み取った。

「最終盤はかなり混沌としていたけれど、スティービー(スティバル)とベルト(ファンレルベルフ)が僕について、ポジションを引き上げてくれたんだ。スプリントを始めた時、まだ踏めるという感触があった」と喜ぶヤコブセンは、9位に沈んだフィリプセンに変わってマイヨプントスも獲得。フィニッシュ後はチームの分け隔てなくたくさんの選手から祝福を受けた。

落車するも、大きな怪我なくマイヨロホを守ったレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)落車するも、大きな怪我なくマイヨロホを守ったレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
この日、タラマエを除く総合勢たちは遅れることなくフィニッシュ。救済措置でタラマエがマイヨロホを守り、また、新城も集団内の155位でレースを終えている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第4ステージ結果
1位 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) 3:43:07
2位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
3位 マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)
4位 アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM)
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
6位 ピート・アレハールト(ベルギー、コフィディス)
7位 ジョルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)
9位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
10位 リッカルド・ミナーリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
156位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)
マイヨロホ 個人総合成績
1位 レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) 13:08:51
2位 ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード) 0:25
3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 0:30
4位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロン) 0:35
5位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) 0:45
6位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) 0:51
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:57
8位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
9位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
10位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) 1:09
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) 100pts
2位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 68pts
3位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、アスタナ・プレミアテック) 50pts
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) 10pts
2位 ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード) 7pts
3位 ジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 6pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 13:09:48
2位 ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:13
3位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) 0:16
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 39:28:41
2位 モビスター 0:22
3位 バーレーン・ヴィクトリアス 0:50
text:So Isobe