新型コロナウイルスの感染拡大でレースが延期されていたJCLプロロードレースツアーが、およそ3ヶ月ぶりに再開する。最新のレースカレンダーや各賞ジャージの獲得条件などをおさらいし、7月10日・11日に開催される広島県での2連戦「広島ロードレース」と「広島クリテリウム」をプレビューする。



3月に栃木県で開幕したJCLプロロードレースツアー3月に栃木県で開幕したJCLプロロードレースツアー photo:Makoto.AYANO
今年からスタートした、株式会社ジャパンサイクルリーグ(JCL)が主催するJCLプロロードレースツアー。3月に栃木県での開幕2連戦で華々しく幕を開けたが、その後に予定されていたツール・ド・熊野は新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑みて10月に延期に。およそ3ヶ月スケジュールに空白ができることを余儀なくされたが、7月10日・11日に広島県で開催される2連戦からいよいよレースが再開する。この後の予定は以下の通り。
JCLプロロードレースツアー2021 今後の日程
7月10日 広島トヨタ広島ロードレース
7月11日 広島トヨタ広島クリテリウム
8月8日 コーユーレンティアオートポリスロードレース
9月11日 山口ながとクリテリウム
9月12日 秋吉台カルストロードレース
※以降の予定に関してはホームページで告知予定



4つの個人賞ジャージとチームランキングで争われるJCLプロロードレースツアー

個人賞ジャージは柄やカラーに和の要素を取り入れ、日本のリーグらしく、日本らしさを感じられる仕上がり個人賞ジャージは柄やカラーに和の要素を取り入れ、日本のリーグらしく、日本らしさを感じられる仕上がり photo:Nobumichi Komori
JCLプロロードレースツアーは年間を通して、4つの個人賞ジャージとチームランキングを争う。4つの個人賞ジャージのうち、個人ランキングトップの選手が着用するのがイエロージャージのマイヨブリヤンで、レースレイティングによって定められたゴール着順に付与されるJCLポイントの合計によって順位が決まる。続いて、平坦レースのゴール着順と中間スプリント地点で付与されるスプリントポイントで争われるのが、グリーンジャージのマイヨラファール。また、開幕2連戦では設定がなかったが、コース途中に設定された山岳ポイントを競うのが、レッドジャージのマイヨフイユルージュ。そして、23歳以下対象の選手のみ抽出した着順に独自のポイントを付与したランキングトップの選手が着用するのがマイヨエスポワール。以上が、4つの個人賞ジャージになる。

さらに、優勝回数の最も多いチームを最上位とし、未勝利チームの順位は各チーム内におけるシーズン中最上位の選手の順位で、チームランキングが決定する(各賞の付与ポイント詳細は、下記リンクのJCLホームページを参照のこと)。開幕戦となった栃木県での2連戦を終えた段階での各賞のランキングトップは、マイヨブリヤンが増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、マイヨラファールは小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)、マイヨエスポワールは本多晴飛(VC福岡)。チームランキングは、ホームレースで連勝を飾った宇都宮ブリッツェンがトップとなっている。



広島ロードレース、脚のある者だけが残れるサバイバルレースになるか!?

広島ロードレースは空港を取り囲むように設定された、広島県中央森林公園のサーキットコースで開催される広島ロードレースは空港を取り囲むように設定された、広島県中央森林公園のサーキットコースで開催される photo:Nobumichi Komori
7月10日に開催される第3戦広島ロードレースの舞台となるのは、広島県三原市にある広島県中央森林公園サイクリングコース。1994年のアジア大会個人ロードレースを皮切りに、その後も全日本選手権をはじめとするメジャーレースが数多く行われてきた歴史あるコースであることはご存知の方も多いだろう。広島ロードレースは1周12.3kmのコースを10周する123kmで争われ、このレースから山岳ポイント(4周、7周)が登場。また、中間スプリントも3・5・7周に設定される。

100kmに満たない距離ではある程度まとまった集団でのスプリント勝負になることもあるが、平坦らしい平坦がない難易度の高いサーキットだけに、今回のように100kmを超える距離のレースではサバイバルな展開になることが多いこのコース。終盤にかけて三段坂を中心に脚のある選手たちが攻撃を仕掛け、集団を絞り込んでいく展開になるか。

昨年のJプロツアーで優勝を飾った阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が再びの歓喜となるか昨年のJプロツアーで優勝を飾った阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が再びの歓喜となるか photo:Nobumichi Komori
真岡芳賀ロードレースで上位に入った小石祐馬や石原悠希(ともにチーム右京相模原)、鈴木龍(レバンテフジ静岡)も虎視眈々と勝利を狙う真岡芳賀ロードレースで上位に入った小石祐馬や石原悠希(ともにチーム右京相模原)、鈴木龍(レバンテフジ静岡)も虎視眈々と勝利を狙う photo:Nobumichi Komori
開幕2連戦終了時点で個人ランキング1位から3位を独占し、チームランキングでもトップに立つ宇都宮ブリッツェンは、第1戦の真岡芳賀ロードレースでワンツーフィニッシュを決めた増田と西村大輝が今回はともにメンバー外。昨年、JBCF(全日本実業団自転車競技連盟)が主催するJプロツアー第9戦「西日本ロードクラシックDay-2」で逃げ切り勝利を見せたベテランの阿部嵩之のほか、パンチ力のある小嶋渓円が勝利に絡む走りを見せたいところだ。

チームランキング2位のスパークルおおいたレーシングチームは、このコースと相性が良い孫崎大樹をチームメートがアシストする構えか。同3位のキナンサイクリングチームはツアー・オブ・ジャパンで個人総合2位と3位に入ったトマ・ルバと山本大喜、元全日本チャンピオンの畑中勇介と山本元喜など、誰でも勝利を狙える層の厚さを生かせるか。

山本兄弟をはじめ実力者ぞろいのキナンサイクリングチームは、その層の厚さを生かしたい山本兄弟をはじめ実力者ぞろいのキナンサイクリングチームは、その層の厚さを生かしたい photo:Nobumichi Komori
マイヨエスポワールを着る本多晴飛(VC福岡)ら若手選手の活躍があるかマイヨエスポワールを着る本多晴飛(VC福岡)ら若手選手の活躍があるか photo:Nobumichi Komori
その選手層の厚さでキナンサイクリングチームに見劣りしないのが、ランキング5位のチーム右京相模原。真岡芳賀ロードレースでも上位に食い込んだ小石祐馬や石原悠希を中心にJCL初勝利を狙う。他にも、那須ブラーゼンの谷順成、さいたまディレーブの高木三千成、レバンテフジ静岡の鈴木龍、ヴィクトワール広島の阿曽圭佑、VC福岡の本多など、勝利や上位をうかがえる選手が各チームにおり、それぞれが勝利に向けて積極的に動くことになる。



広島クリテリウム、スパークルおおいたが宇都宮清原の雪辱&初勝利なるか

広島市の西区商工センターに設定された公道特設周回コースで開催される広島クリテリウム広島市の西区商工センターに設定された公道特設周回コースで開催される広島クリテリウム photo:Nobumichi Komori
7月11日の第4戦広島クリテリウムは、広島市の西区商工センターに設定された1周1.7kmの特設周回コースが舞台。ここを30周する51kmのレースでは、中間スプリントが8・16・24周の3回設定される。レイアウトはオールフラットで、3箇所ある180度コーナーがコースにアクセントを加える。第2戦宇都宮清原クリテリウムと同じT字型だが、最終コーナーからフィニッシュまでの距離が宇都宮清原よりも長いため、隊列をしっかり組んでエーススプリンターを発射できるかが勝負の分かれ目になるだろう。

このレースに最も照準を合わせているチームは、スパークルおおいたレーシングチームで間違いない。第2戦では残り2周でエースの沢田桂太郎が無念の落車。あの落車がなければきっと沢田が勝っていたという関係者の声も多く、今回はその雪辱に燃えているはず。2019年に開催されたJプロツアー第11戦の際は、優勝が黒枝士揮、2位が沢田、3位が黒枝咲哉と現スパークルおおいた勢が表彰台を独占しているだけに、優勝候補の筆頭と言える。

宇都宮清原クリテリウムではエースの沢田桂太郎が落車に泣いたスパークルおおいたレーシングチームは必勝体制でレースに臨む宇都宮清原クリテリウムではエースの沢田桂太郎が落車に泣いたスパークルおおいたレーシングチームは必勝体制でレースに臨む photo:Nobumichi Komori
他に積極的にゴールスプリント勝負を狙ってきそうなのは、小野寺をエースに据える宇都宮ブリッツェン。前日の広島ロードレースからメンバーを入れ替え、トラック競技でも活躍する貝原涼太をメンバーに加え、阿部、小坂光とともに小野寺をリードアウトする。残るチームは展開に応じて、逃げとゴールスプリントのどちらにも対応できる走りをしていくことになりそうだ。

ロードレース、クリテリウムともに上限5,000人の有観客開催を予定しているが、同時にTouTubeでのライブ中継も行われる予定だ。






ホストチームインタビュー

中山卓士 ヴィクトワール広島監督
「開催に尽力してくれた方に報いるためにも、ホームレースで魅せる走りを」


ホームレース開催に向けて奔走した中山卓士・ヴィクトワール広島監督ホームレース開催に向けて奔走した中山卓士・ヴィクトワール広島監督 photo:Nobumichi Komori
-3月の開幕戦からおよそ3カ月が経ち、ようやくJCLが再開します。しかも、ヴィクトワール広島がホストチームとなる広島県での2連戦。開催に向けて、相当なご苦労があったのではないですか。
「正直、開催に至るまでは苦労が多かったです。まず、一番の障壁となったのが新型コロナウイルスの感染状況です。広島県に緊急事態宣言が発令されている中での準備でしたので、当然ながら開催を疑問視する声も地元ではありました。ただ、その中でもレースのタイトルスポンサーになってくださった広島トヨタ様をはじめ、協力するよ、支援するよと言ってくださって後押ししてくださる方もたくさんいて。

6月20日に緊急事態宣言が解除されたこともあって、なんとか開催にこぎ着けることができました。もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大につながってはいけませんので、有観客ではありますが、ガイドラインに沿う形で観戦客は5,000人を上限に来場者には検温を行い、問題がなかったことの証明としてリストバンドをつけて観戦いただくようにしています」

ヴィクトワール広島がホストチームとなる広島県での2連戦ヴィクトワール広島がホストチームとなる広島県での2連戦 (c)ヴィクトワール広島
-地元の後押しがあったとのことですが、レース当日も多くの方が支えてくださるのですよね。
「今回、2日間のレースを開催するにあたって、約80人がボランティアで運営に関わってくださっています。そのうちの70人は、地元学校の生徒さんたちです。それ以外にも、たくさんの企業様に協賛いただいていますし、地方自治体の皆さんのご尽力もありました。そのことに対しては感謝してもし切れません」

大会ポスターを作成して掲出している大会ポスターを作成して掲出している (c)ヴィクトワール広島
-レース開催に向けて、地元ではどのようなプロモーションをしているのですか。
「大会ポスターを作成して掲出しているほか、地元テレビ局で6月26日から7月10日の期間にCMを流していただいています。また、このCMは市内各所に設置されている大型ビジョンでも放映していただいています」

-2日間のレース、会場では他にどのようなことが行われる予定ですか。
「初日のロードレースに関しては、出展ブースのほか、モニターで観戦できる席を設ける予定です。2日目のクリテリウムは、広島競輪場にご協力いただいてキッズストライダー、ステージでは地元のシンガーソングライターやダンサーに登場してもらって会場を盛り上げてもらいます」

-そのような状況の中、ヴィクトワール広島はホストチームとしてレースを迎えます。走りで報いたい気持ちは大きいのでは。
「現時点で“優勝します!”と軽々しく言えるチーム力ではないですが、逃げであったり勝負に絡む走りであったりという部分で、魅せる走りはしたいと思っています。レースがない期間は阿曽圭佑がトレーニングメニューを作成してくれ、選手たちは質の高いトレーニングを重ねてきました。現時点での数値も良いですし、何かしらやってくれるのではないかと思っています」

text:Nobumichi Komori

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