ツアー・オブ・ジャパンの第3ステージ東京が大井埠頭の周回コースで行われ、レース中盤に形成された小集団が逃げ切り、川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝した。個人総合は増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が守り切り、ツアー・オブ・ジャパン初優勝を決めた。



品川のビル群を背に進む集団品川のビル群を背に進む集団 photo:Satoru Kato
ようこそ東京へようこそ東京へ photo:Satoru Katoツアー・オブ・ジャパンのレース前に行われた大学生のレースツアー・オブ・ジャパンのレース前に行われた大学生のレース photo:Satoru Kato

3日間のツアー・オブ・ジャパン最終日は、東京都の大井埠頭が舞台。1km以上ある長い直線道路の往復と長方形を組み合わせたような1周7kmのフラットコースを16周で争う。

前日の相模原ステージで山岳賞をほぼ確定させた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。残るは個人総合優勝の確定だが、理論上は3回設定された中間スプリント賞とフィニッシュの全てで首位と取れば、2位トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)に逆転優勝の可能性が残る。しかし、東京でステージ優勝を目標に耐えてきたスプリンター達が黙って見ているはずがなく、逆転は容易なことではない。

最終日にしてやっと青空が広がり、アスファルトとコンクリートで囲まれた大井埠頭は陽射しが陽炎(かげろう)を作り出す。大井埠頭近くの羽田の最高気温は25℃に届かなかったようだが、体感的にはそれ以上に暑さを感じる1日となった。

ゲストを迎えてのパレード走行でスタートゲストを迎えてのパレード走行でスタート photo:Satoru Katoリーダージャージの増田成幸(宇都宮ブリッツェン)は笑顔でパレードリーダージャージの増田成幸(宇都宮ブリッツェン)は笑顔でパレード photo:Satoru Kato

リアルスタート直後に飛び出した入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)リアルスタート直後に飛び出した入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Satoru Kato
集団前方で自らチェックする増田成幸(宇都宮ブリッツェン)集団前方で自らチェックする増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato
アタックと吸収を繰り返し、蛇行しながら進む集団アタックと吸収を繰り返し、蛇行しながら進む集団 photo:Kensaku SAKAI
ゲストを迎えてのパレード走行ののちリアルスタートが切られると、アタック合戦が始まっていく。入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が何度も飛び出し、さらに他チームのアタックも繰り返されるが、1周もたずに集団が吸収していく。神経質な展開はレース後半の9周目、距離にして30km以上続いた。

レース中盤から先行した5名レース中盤から先行した5名 photo:Satoru Kato
逃げが決まると宇都宮ブリッツェンがメイン集団をコントロール開始逃げが決まると宇都宮ブリッツェンがメイン集団をコントロール開始 photo:Satoru Kato
ようやく容認された逃げは5名。川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)、小林海(マトリックスパワータグ)、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)、横塚浩平(チーム右京 相模原)、渡邊翔太郎(那須ブラーゼン)らが、後続に40秒前後の差をつけて周回を重ねていく。落ち着きを取り戻したメイン集団は、リーダージャージを着る増田成幸の宇都宮ブリッツェンがコントロールを開始。レース終盤に入るとスプリント勝負に持ち込みたいスパークルおおいたが加勢して集団を牽引していく。

レース終盤 宇都宮ブリッツェンの集団コントロールにスパークルおおいたも加勢レース終盤 宇都宮ブリッツェンの集団コントロールにスパークルおおいたも加勢 photo:Satoru Kato若手のチームメイトに声を掛けながら走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン)若手のチームメイトに声を掛けながら走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato

残り2周 先頭集団が分裂し、川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小林海(マトリックスパワータグ)が先行残り2周 先頭集団が分裂し、川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小林海(マトリックスパワータグ)が先行 photo:Satoru Kato
川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小林海(マトリックスパワータグ)が最終周回に入っていく川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)と小林海(マトリックスパワータグ)が最終周回に入っていく photo:Satoru Kato
残り3周となる14周目、先頭集団から川野と小林が飛び出す。残りの3名を吸収したメイン集団からは追走集団が出る場面もあったが、先行する2名を最後まで捕まえることは出来ない。川野と小林は残り2周を逃げ切り、最後はマッチスプリントへ。残り200mを過ぎ、小林の背後から前に出た川野が突き進む。両腕を大きく広げてフィニッシュラインを越えると、雄叫びを上げて喜びを露わにした。

川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝 ©️TOJ
川野は今年弱虫ペダルサイクリングチームに加入した19歳。慶應義塾大学在学中で、3月の明治神宮外苑クリテリウムで優勝している。このステージ優勝で川野はポイント賞ジャージも獲得。弱虫ペダルサイクリングチームに大金星をもたらした。

ポイント賞 川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム)ポイント賞 川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Satoru Kato川野碧己コメント

「逃げ切りは無理と思っていたけれど、2人になってからは後続とのタイム差が減らなくなっていたので、このまま行けると思った。前日に9位に入ってポイントを取れていたので、今日このまま行ければポイント賞を取れるかもと考えながら走った。こういうジャージを着たことが無かったので、とても格別に感じている。

クリテリウムのような平坦コースは得意なので、しっかり狙ってきた。今年から大学の先輩でもある大前翔選手にコーチングしてもらっていて、それ以来ずっと調子の良さが続いている。次はもっと上のレベルでも通用するようになりたい」

個人総合優勝 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)個人総合優勝 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Katoリーダージャージを着た増田はメイン集団内でフィニッシュし、総合優勝を確定させた。日本人選手のツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝は、2004年の福島晋一以来。山岳賞とあわせて2枚のジャージを獲得した。

増田成幸コメント

「厳しいステージだったが、運にも味方されて最終日を終えることが出来て本当に嬉しい。福島選手が優勝した時はいちファンとして見にきていたが、自分が同じグリーンジャージを着て表彰ステージに立っていることは不思議な感じもあり、感慨深く感じている。今年最大の目標である東京五輪に向けて、新城幸也選手と共に日本代表チームとして気を引き締めて準備していきたい」

2021ツアー・オブ・ジャパンの各賞ジャージ2021ツアー・オブ・ジャパンの各賞ジャージ photo:Satoru Kato



3日間のツアー・オブ・ジャパンが終了した。コロナ禍で異例ずくめの開催となったが、選手をふくめ3日間でも開催出来たことをプラスに捉える声が聞かれた。国内初の「レースバブル」の運用をはじめとするノウハウが今後の国内大会に活かされ、レース開催が続けられていくことを願ってやまない。
ツアー・オブ・ジャパン 第3ステージ東京 結果(112km)
1位 川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム) 2時間16分44秒
2位 小林 海(マトリックスパワータグ) +0秒
3位 沢田桂太郎(スパークルおおいた) +26秒
4位 黒枝咲哉(スパークルおおいた)
5位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)
6位 大前 翔(愛三工業レーシングチーム)
個人総合順位(第3ステージ東京 終了時)
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 7時間33分21秒
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) +11秒
3位 山本大喜(キナンサイクリングチーム) +44秒
4位 フランシスコ・マンセボ・ペレス(マトリックスパワータグ) +1分19秒
5位 小石祐馬(チーム右京 相模原) +1分30秒
6位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) +2分2秒
ポイント賞(第3ステージ東京終了時)
1位 川野碧己(弱虫ペダルサイクリングチーム) 35p
2位 小林 海(マトリックスパワータグ) 29p
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) 25p
山岳賞(第3ステージ東京終了時)
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 15p
2位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) 12p
3位 山本大喜(キナンサイクリングチーム) 10p
チーム総合順位
1位 マトリックスパワータグ 22時間46分3秒
2位 キナンサイクリングチーム +31秒
3位 チームブリヂストンサイクリング +13分14秒
text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, Kensaku SAKAI, Tour of JAPAN

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