ツール・ド・シンカラ2010開幕前夜。愛三工業レーシングの選手たちへのインタビューをお届けしよう。今季、アジアツアーでの活躍を重要視している同チームは昨年も参戦し、ステージ1勝、ステージ2位1回という好成績を残している。

出場メンバーは鈴木謙一(エース)、別府匠(サブエース)、綾部勇成、品川真寛、福田真平の5名。今年は西谷泰治&盛一大の全日本チャンピオンコンビを欠くが、昨年以上のレース結果を残すべく高いモチベーションをもって現地入りしている。

レースに挑む愛三工業レーシング5人の選手たちレースに挑む愛三工業レーシング5人の選手たち photo:Sonoko.Tanaka

田中光輝監督に訊くレースの目標

―今回、西谷選手と盛選手が外れていますが、メンバーのセレクトにはどのような意向がありますか?

「タイムトライアルの全日本選手権(6月13日)に向けて、彼ら2人を今回のメンバーには入れませんでした。とくに西谷選手は、先週まで開催されていたツアー・オブ・ジャパンではエースを務めていましたし。逆に別府選手が、なんでツアー・オブ・ジャパンのメンバーから外れたのかと、よく聞かれますが、シーズン始めのランカウイからずっとレースが続いていましたし、今回のツール・ド・シンカラは上りがとてもハード。そこで活躍してほしかったからですね」。

―現段階で考えられている各選手の役割を教えてください。

「エースは鈴木選手。サブエースとして別府選手。残りの3選手が彼らをサポートする役割です。チームはWエースの体制で総合3位以内に入ることを狙います」。

―昨年の4ステージから6ステージにレースの規模が大きくなりましたが、どのように攻略しようと考えていますか?

「ステージ数が増えたことは、1ステージごとの距離が短いこともあり、さほど問題はないと思っています。ただ上りゴールになる2Bステージでは、最後の勾配が大きく、注意しないといけないステージになると思います。
とはいえ、まずは初日のチームタイムトライアルですね。やはり、西谷と盛がいない分、いかに勝つか、ということよりも、どれだけトップからのタイム差を少なくできるかが課題になってきます。イランが強いのは周知の事実。彼らは上りも走れるし、タイムトライアルにも強い。だから、タイムトライアルでどれだけタイム差を少なくし、上りでどれだけ前でゴールできるかが勝負です」。


各選手のコメント

鈴木謙一
「これまでステージレースを3つ続けて走っていますが、そのわりに疲れを感じていません。今のコンディションは100%ではないかもしれないけど、いい感触を得ています。
ツール・ド・シンカラは山が基調になるため、自分の力を発揮しやすいレースで、昨年もステージ上位に入れたので、愛称がいいとも感じています。レースはイランチームが中心になって動くと思いますが、その重要なタイミングを逃さないことと、そして余裕があれば攻撃に出たいと思っています。
イランと実力差があるかもしれませんが、これまでにイランが負けるシーンも見てきた。だから、自分もイランに勝つことは不可能ではないと思っています」。

別府匠
「鈴木選手が第1エース。彼をサポートしながら、残れるところでは必ず残るように走りたいと思います。各ステージの距離は短いですが、山はハード。イラン人とどれだけ勝負できるかがだと思います。
ツアー・オブ・ジャパンに出場しなかった分、しっかりと休養をとり、上りを中心としたトレーニングをたくさんしました。レースとレースの間が空いてしまっていることと、暑さでコンディションはまだわかりませんが、いいレースをしたいと思います」。

綾部勇成
「山は多いけど、平坦の区間もあります。ほかの選手が山で頑張るのはわかっているので、自分は平地で逃げたり、もがいたりして、ステージ優勝を狙いたいと思います。
チームは、いつも攻撃的に走ることを意識してレースに挑んでいます。それが自分たちのレベルの向上にも繋がっていきます。そして、同じアジア人と戦うからには、いい成績が出せるように走りたいですね。まずは明日のタイムトライアルから昨年の2位を返上すべく全開で行こうと思います。16kmなので、1分くらい差が付くことも考えられます。スタートが大事になってきますね」。

品川真寛
「ツアー・オブ・ジャパンに出場せず、レースが1ヶ月間空いてしまったので、不安な面もありますが、去年も走っているレースですし、アジアのレースには慣れているので、大丈夫だと思います。
この1ヶ月の間に、休養をとって、コンディションを一度ゼロに戻してからトレーニングを始めました。強度がどこまで上がっているかなどわからないこともあるけど、疲れは抜けています。どこまでレースに適応できるか楽しみです。
自分の仕事は2人のエースをサポートすること。なかでも明日のチームタイムトライアルでは他チームに遅れをとらず勝てるように頑張りたいと思います!」

福田真平
「ツアー・オブ・ジャパンでは、前の選手が落車し、うまく受け身が取れず胸を強く打ちました。そのケガはもう大丈夫ですが、蕁麻疹のような症状が出てきてしまい、体調は万全とは言えませんが、走ってみた感じは悪くはない。平地や上りでもエースの選手をサポートしたいと思います。
インドネシアは3回目。食べ物があまり得意ではありませんが、しっかりと食べて頑張りたいです」。

さすがインドネシア?! 闇のなかのディナータイム

そして、そんなインタビューを終え、夕食時のチームプレゼンテーションでチームの写真を撮らせてもらうべく、会場へ急いで駆けつけたところ、思いも寄らぬ出来事が勃発した。

大会前夜の夕食会で小さな灯りで食事をする田中監督大会前夜の夕食会で小さな灯りで食事をする田中監督 photo:Sonoko.Tanaka選手たちのテーブル。もちろんチームプレゼンテーションは消滅選手たちのテーブル。もちろんチームプレゼンテーションは消滅 photo:Sonoko.Tanaka



政府の施設で開催されることになっていたレース前日のディナーだが、行ってみると会場のホールが真っ暗...。
プレス仲間では「これがインドネシアのトラディショナルスタイルなんだよ!」なんて冗談が行き交っていたが、どうやらこれは演出ではなさそう。暗闇の中、日本語の響きに導かれて愛三チームの元へ行くと、急に停電してしまったとのこと。
しばらく待っても復旧しない。華やかなダンスや演出が用意されていたハズだが、そこにあるのは携帯電話のモニターの光で食事を楽しむ関係者たちの姿……。私は驚きを隠せないが、愛三チームは慣れたもの。「これがアジアツアーの醍醐味だよ」、と言わんばかりに食事を進めている。

はてさて、明日からは何が起こるのだろう? レースの行方だけでなく、色んなコトになんだかワクワク(?)してしまう開幕前夜の出来事だった。


Photo&text 田中苑子 SonokoTANAKA

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