乗車を拒む深い泥に覆われたUCIシクロクロスワールドカップ第3戦で、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)がマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)を3分近く引き離して勝利。女子レースではルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)がシリーズ開幕3連勝を掴んでいる。



1周目にリードを築くマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とコルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンスシクロクロスチーム)1周目にリードを築くマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とコルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンスシクロクロスチーム) (c)CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ第3戦の舞台は、ベルギー北部のアントウェルペンやヘント、ブリュッセルに囲まれた街デンデルモンデ。草地をメインにしたワールドカップ初登場のコースだが、暴風雨(最大風速80~90km/h)を伴う冬の嵐「ベラ」が襲ったことで、田んぼのようなディープマッドコンディションに。巨大なフライオーバーや細かい登り下りが外されたことで、ひたすら泥をかき分けて進むパワーレースが展開されることとなった。

ハイスピードレースとなった前日のスーパープレスティージュ第7戦と異なる、死力を尽くすようなレースを掌握したのはワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)だった。ファンアールトは1周目に転倒したコルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンスシクロクロスチーム)のバイクが絡んで順位を下げたものの、すぐさま復活。2周目に先頭争いへと復帰した。

トラブルから追い上げるワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)トラブルから追い上げるワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVosワールドカップリーダーのマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)は4位にワールドカップリーダーのマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)は4位に (c)CorVos

ファンデルプールを引き離すワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)ファンデルプールを引き離すワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
ファンアールトはライバルのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と共に3番手以降を突き放していくが、さほど時間を要さずファンデルプールすらも置き去りにしてしまう。軽快感すら感じさせるランニングを組み合わせて進むファンアールトが、他を、そして超重馬場のコースを圧倒した。

レース後のインタビューで「とても厳しく、プロになってから最もクレイジーなコースの一つだった。周回を重ねる度にランニングセクションは長くなっていたし、もしユースカテゴリーのレースがあったら全て担ぎになっていたと思う。でも個人的にはとても楽しめたよ」と、冗談交じりに話したファンアールト。「今日は事前情報でワウト向きだと知っていたし、追いつけないと分かってからはすぐ2位に目標を切り替えた」と振り返るファンデルプールとの差は、最終周回突入時点で2分14秒まで広がっていた。

ファンアールトとファンデルプールの後方は、ファンケッセルやクィンティン・ヘルマンス(ベルギー)のトルマンスコンビが固めていたものの、レース中盤に入ってトーン・アールツ(ベルギー、テレネットバロワーズ・ライオンズ)が追い抜き、単独3位に。この日はトーマス・ピドコック(イギリス、トリニティレーシング)やラース・ファンデルハール(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)といった面々が途中レースを降りている。

今季ワールドカップで初勝利を挙げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)今季ワールドカップで初勝利を挙げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
ファンアールトから3分近く遅れたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)ファンアールトから3分近く遅れたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos泥だらけのデーヴィッド・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)泥だらけのデーヴィッド・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)

2位ファンデルプール、1位ファンアールト、3位アールツ2位ファンデルプール、1位ファンアールト、3位アールツ (c)CorVos
集中した表情を崩さず走ったファンアールトは、最終的にファンデルプールを2分49秒、そしてアールツを3分6秒も引き離して勝利。ワールドカップ第2戦ナミュールで2位、そして今回優勝とポイントを大量獲得したため、4位に終わったマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)からランキングリーダーの座を引き継ぐこととなった。

ライバルの先行を許したファンデルプールはアールツの追い上げを交わして2位。「コースが常に自分向きではないことは分かっているけれど、今日のコースはワールドカップには少々そぐわないと思った。しかしワウトのパフォーマンスを損なうものではなく、彼の強さは本当に際立っていた」と、圧倒的な走りを披露したライバルを称えている。



大雨の中、ガソリンスタンドの屋根下でスタートを待つ大雨の中、ガソリンスタンドの屋根下でスタートを待つ (c)CorVos
序盤リードしたデニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)は8位に沈む序盤リードしたデニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)は8位に沈む 元世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)が参戦元世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)が参戦 (c)CorVos


シクロクロス復帰したマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)や、ロードのベルギー王者ロッテ・コペッキー(ロット・スーダル)の参戦で注目を集めた女子レースはパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)やデニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)の好スタートで幕開ける。スタートでペダルキャッチをミスしたセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)は17〜18番手からの追い上げを強いられるも、すぐさまポジションを挽回していった。

ベッツィマとワールドカップリーダーのルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)、そして泥レースと好相性の元世界王者サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)がリード。やがてブラントが抜け出し、追い上げてきたアルバラードとともに先頭グループを形成する。泥に弾かれたベッツィマは後退し、この日8位でレースを終えることとなった。

泥しぶきを上げて走るセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)泥しぶきを上げて走るセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)CorVos
アルバラードに追いつき、リードを奪うルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)アルバラードに追いつき、リードを奪うルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) (c)CorVos
ワールドカップ3連勝を飾ったルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ)ワールドカップ3連勝を飾ったルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) (c)CorVos
アルカンシエルを纏うアルバラードは暫く先頭を維持していたものの、やがてパワーに勝るブラントが追いつき、重たい芝生区間でリードを奪う。後方ではナミュールで2位に入ったクララ・ホンシンガー(アメリカ、キャノンデール・シクロクロスワールド.com)が着実にポジションを上げ、アルバラードを抜き去ってしまう。こうして表彰台のメンバーが選り分けられた。

「とにかくタフで、どれだけパワーを掛けてもバイクが進まなかった」と振り返るブラントが、アベレージ13km/h台の超低速レースで勝利。ワールドカップで開幕3連勝を収めたことで、シリーズランキングの優勝に今一歩近づいている。

UCIシクロクロスワールドカップ2020-2021第3戦 男子エリート結果
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) 1:06:10
2位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) 2:49
3位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネットバロワーズ・ライオンズ) 3:06
4位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 3:42
5位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 3:58
6位 コルネ・ファンケッセル(オランダ、トルマンスシクロクロスチーム) 4:14
7位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンスシクロクロスチーム) 4:22
8位 ピム・ロンハール(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 4:29
9位 タイス・アールツ(ベルギー、テレネットバロワーズ・ライオンズ) 4:49
10位 ジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、クレディショップ・フリスタッズ) 5:04
UCIシクロクロスワールドカップ2020-2021第3戦 女子エリート結果
1位 ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネットバロワーズ・ライオンズ) 45:27
2位 クララ・ホンシンガー(アメリカ、キャノンデール・シクロクロスワールド.com) 0:15
3位 セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) 0:24
4位 フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:40
5位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) 0:45
6位 サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン) 0:48
7位 カータ・ヴァス(ハンガリー、ドルチーニ・ファンアイクスポーツ) 0:54
8位 デニセ・ベッツィマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 1:22
9位 マノン・バッカー(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) 1:35
10位 ヤラ・カステリン(オランダ、クレディショップ・フリスタッズ) 2:13