10月20日にスペイン北部バスク地方で開幕する第75回ブエルタ・ア・エスパーニャ。18ステージに短縮されたシーズン最後のグランツールはとにかく山がちなコースレイアウトが特徴で、前半からバスクやピレネー山脈の山岳が連続。フランスの超級山岳トゥールマレー峠も登場する前半ステージを紹介します。



10月20日(火)第1ステージ → コースマップ
イルン〜アラテ・エイバル 173km


10月20日(火)第1ステージ イルン〜アラテ・エイバル 173km10月20日(火)第1ステージ イルン〜アラテ・エイバル 173km photo:Unipublic第75回ブエルタが、10月20日、予定よりも2ヶ月遅れてフランス国境に面したイルンの街で開幕する。これまでジロとツールの開幕地として登場し、ブエルタを迎えることで史上初の「全グランツール開幕地」として名前を残す予定だったオランダのユトレヒトではなく、59年ぶりにバスク地方で開幕を迎えるブエルタ。ここから終着地マドリードまで、いつもより3日短い18日間の戦いが始まる。

前半に大都市サンセバスティアンを通過してしばらくするとコースは内陸に。ユトレヒトでは初日にチームタイムトライアルが開催される予定だったが、このバスクステージでは早速クライマーたちにマイヨロホ獲得のチャンスが巡ってくる。残り80kmを切ってから3つの3級山岳を立て続けにクリアし、最後は1級山岳アラテ峠(全長5.3km、平均7.7%)にアタック。新型コロナウイルス対策として無観客となる最大勾配13%の荒手の登りで飛び出した選手が、頂上通過後2.5km先に引かれたフィニッシュラインでステージ優勝&マイヨロホを手にする。秋の深まりとともに後半ステージの難関山岳がキャンセルされる場合を想定して、総合優勝狙いの選手が最初からボーナスタイム10秒、6秒、4秒を狙って動いてくるかもしれない。



10月21日(水)第2ステージ → コースマップ
パンプローナ〜レクンベリ 151.6km


10月21日(水)第2ステージ パンプローナ〜レクンベリ 151.6km10月21日(水)第2ステージ パンプローナ〜レクンベリ 151.6km photo:Unipublicバスク州のお隣ナバラ州を走る第2ステージも引き続きクライマー向きで、スプリンターの出番はまだ回ってこない。モビスターが拠点を置くパンプローナをスタート後、まずは2つの3級山岳とボーナスタイム3秒、2秒、1秒が設定されたスプリントポイントを通過し、残り26km地点から1級山岳サンミゲル・デ・アララル峠(全長9.4km・平均7.9%・最大15%)を駆け上がる。

登りを進むにつれて勾配が増し、コンクリート舗装が増え、教会がある頂上手前で勾配が10%を刻む難所でステージ優勝とマイヨロホ奪取に向けた動きが生まれるはず。1級山岳サンミゲル・デ・アララル峠の頂上通過後はレクンベリのフィニッシュ地点まで16.9kmのダウンヒル。この下りは主催者曰く「かなりスピードが出る」。登りで飛び出した単独もしくは複数の選手が逃げ切ってしまうだろう。仮に小集団のスプリントに持ち込まれる場合でも、実質的な総合上位候補たちによるスプリントになるはずだ。



10月22日(木)第3ステージ → コースマップ
ロドサ〜ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ 166.1km


10月22日(木)第3ステージ ロドサ〜ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ 166.1km10月22日(木)第3ステージ ロドサ〜ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ 166.1km photo:Unipublic21ステージから18ステージに短縮されたことは、レース内容が濃縮されることを意味する。ツールは第4ステージに、ジロは第3ステージに大会最初の山頂フィニッシュが登場したが、ブエルタも負けじと第3ステージに1級山岳ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ(全長8.6km・平均5.8%)を持ってきた。開幕から3日連続で終盤に1級山岳を越えることになる。

スタートから79km地点の3級山岳に向けてひたすら標高を上げていき、スプリントポイントを経てブエルタ初登場となる標高1,735mの1級山岳にアタック。登り全体の難易度はそこまで高くなく、中腹まではひたすら6%前後の勾配を刻み、残り1km地点から勾配10%前後の斜面を駆け上がってフィニッシュ。晴れていても気温10度以下、雨が降れば気温5度を下回る「黒い潟湖」でマイヨロホを受け取るのは最終的な総合上位候補か、それとも逃げ切った選手か。開催時期が遅いだけに、第75回ブエルタは天候との戦いになる。



10月23日(金)第4ステージ → コースマップ
ガライ ヌマンシア〜エヘア・デ・ロス・カバリェロス 191.7km


10月23日(金)第4ステージ ガライ ヌマンシア〜エヘア・デ・ロス・カバリェロス 191.7km10月23日(金)第4ステージ ガライ ヌマンシア〜エヘア・デ・ロス・カバリェロス 191.7km photo:Unipublicようやくスプリンターの出番!カスティーリャ・イ・レオン州の山岳地帯を抜けて、アラゴン州にかけての平野部を駆け抜ける191.7kmに大きな起伏は無し。特に後半にかけて真っ平らな地域を走るため、かなりの確率で大集団によるスプリントで決すると見られる。なお、21ステージから18ステージに短縮されたブエルタにおいて、当初の予定より平坦ステージが3つ削られた印象。つまりこの第4ステージはスプリンターたちにとって貴重なチャンスとなる。

「真っ平らな地域」で気をつけたいのが「シエルソ」と呼ばれるピレネー山脈から吹き下ろす北風だ。風力発電の風車が立ち並ぶ一帯だけに強風注意報発令。厄介なことに終盤にかけて進行方向が変わるレイアウトのため、横風や追い風を利用した集団分裂を狙うチームも出てくるはず。単純なスプリントステージにはならないかもしれない。



10月24日(土)第5ステージ → コースマップ
ウエスカ〜サビニャニゴ 184.4km


10月24日(土)第5ステージ ウエスカ〜サビニャニゴ 184.4km10月24日(土)第5ステージ ウエスカ〜サビニャニゴ 184.4km photo:Unipublicアラゴン州の山岳地帯を走る第5ステージは、スプリンターが集団に残るには厳しく、総合争いが加熱するほどの難易度でもない。つまり逃げ切り向きのステージであり、パンチャー系の逃げ屋が序盤から飛び出すだろう。

風の強い平野部を抜けると、ステージ後半にかけて2級山岳を2つと3級山岳を1つ越える。残り75kmを切ってから2級山岳ビオ峠(全長13.5km・平均4.7%)と3級山岳ファンロ峠(全長6.4km・平均4.6%)を立て続けにクリアすると、最後に待つのが2級山岳ペドラルバ峠(全長8.7km・平均5.2%)。前半にかけて8%ほどの勾配が続き、後半に全長2,598mのペドラルバトンネルを抜ける特殊な2級山岳を抜けると、あとはサビニャニゴまで国道260号線を18km下るだけ。残り2kmから高低差60mほどを駆け上がってフィニッシュを迎える。



10月25日(日)第6ステージ → コースマップ
ビエスカス〜トゥールマレー 136.6km


10月25日(日)第6ステージ ビエスカス〜トゥールマレー 136.6km10月25日(日)第6ステージ ビエスカス〜トゥールマレー 136.6km photo:Unipublicコース発表時から色んな意味で話題を振りまいている超級山岳トゥールマレー峠の山頂フィニッシュが登場する。スペインのビエスカスをスタートする難関山岳ステージの全長は136.6kmという短さ。しかしその中にはピレネー山脈の峠が3つ組み込まれており、大会1週目を締めくくるにふさわしい難易度だ。

まずは標高1,794mの1級山岳ポルタレト峠(全長15km・平均勾配4.5%)を越えてフランスに入国する。長い下りの先に待つのが標高1,709mの超級山岳オービスク峠(全長16.4km・平均7.1%)。そこから一旦標高400mまで下りきると、この日のメインディッシュ、超級山岳トゥールマレー峠(全長19km・平均7.4%)がようやく姿を現す。これまでツールに83回登場しながら山頂フィニッシュとしては3回しか登場していないトゥールマレー峠がブエルタに組み込まれるのはこれが初めて。

盛夏の7月ではなく晩秋の10月下旬に、「アルベルト・フェルナンデス賞」に指定された標高2,115mのトゥールマレー峠はどんな姿を見せるのだろうか。9月の時点で積雪によって一面銀世界になった峠道を、主催者は懸命に除雪作業することになりそう。登り切ってフィニッシュを迎えるため、路面がドライであれば気温は問題にならないと思われる。それよりもステージ前半に登場する標高1,700mクラスの峠道の下りをいかに暖かくこなすかがパフォーマンスに大きく響きそうだ。



10月26日(月)休息日



10月27日(火)第7ステージ → コースマップ
ビトリア=ガステイス〜ビリャヌエバ・デ・バルデゴビア 159.7km


10月27日(火)第7ステージ ビトリア=ガステイス〜ビリャヌエバ・デ・バルデゴビア 159.7km10月27日(火)第7ステージ ビトリア=ガステイス〜ビリャヌエバ・デ・バルデゴビア 159.7km photo:Unipublic一回目の休息日を経て、ブエルタはフランスからバスク州に戻る。同州の州都ビトリア=ガステイスをスタートする第7ステージには山がちな周回コースが登場。標高は1,000m以下で、獲得標高差もそこまで大きくないが、スプリンターが勝負に残る可能性は低い。

合計2回登場する1級山岳オルドゥニャ峠(全長7.8km・平均7.7%・最大14%)が最大の難所であり、ここでステージ優勝もしくは総合ジャンプアップを狙う選手が飛び出すだろう。2回目の1級山岳オルドゥニャ峠を越えるとフィニッシュまで18kmの下り&平坦路。石灰岩が露出した雄大な景色が広がる1級山岳オルドゥニャ峠にはバスクの熱狂的なファンが詰めかけると予想されたが、新型コロナウイルス感染防止対策として登り区間は立ち入り禁止に。静かなバスクの峠道で熱いアタック合戦が繰り広げられることになるだろう。



10月28日(水)第8ステージ → コースマップ
ログローニョ〜アルト・デ・モンカルビリョ 164km


10月28日(水)第8ステージ ログローニョ〜アルト・デ・モンカルビリョ 164km10月28日(水)第8ステージ ログローニョ〜アルト・デ・モンカルビリョ 164km photo:Unipublicログローニョからかなりカーブの深いS字を描き、1級山岳モンカルビリョ(全長8.3km・平均9.2%)を目指す獲得標高差3,000mの第8ステージ。まだブエルタは前半戦だが、これが今大会早くも3つ目の山頂フィニッシュとなる。後半にかけて登場する標高1,390mの2級山岳ラサ峠(全長9.8km・平均5.3%)はあくまでも前菜で、ログローニョ近郊まで戻ってから始まる1級山岳モンカルビリョへと続く山道は、とにかく細く、とにかく急峻だ。

ブエルタ初登場となる標高1,490mの峠道は、前半こそ6〜9%という常識的な数字が並ぶが、後半は常に10%オーバー。残り4kmを切ったところで、延々と15%の勾配が続くセクションも登場する。登坂時間25分程度のこの急坂で総合成績に再びシャッフルがかかる。マイヨロホ候補は早くも数名に絞られているかもしれない。



10月29日(木)第9ステージ → コースマップ
カストリーリョ・デル・バル〜アギラル・デ・カンポー 157.7km


10月29日(木)第9ステージ カストリーリョ・デル・バル〜アギラル・デ・カンポー 157.7km10月29日(木)第9ステージ カストリーリョ・デル・バル〜アギラル・デ・カンポー 157.7km photo:Unipublic最後にスプリンターが活躍したのがいつだったのかを忘れるほど、今大会は山がちなステージばかり。第9ステージは6日ぶりにスプリンター向き。ブルゴス近郊のシド・カンペアドール軍事基地をスタートし、カスティーリャ・イ・レオン州の平野(と言っても常に標高800m前後の高地)を駆け抜ける157.7kmにはカテゴリー山岳が一つも設定されていない。

残り35km地点で一旦フィニッシュラインを通過し、残り5kmから連続コーナーをこなしてアギラル・デ・カンポーにフィニッシュする。ブルゴス名物の強風が吹けばステージ前半から荒れた展開になる可能性もある。



text:Kei Tsuji

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