レヴィコ〜ブレシア間の140kmで争われたジロ第18ステージは集団スプリントになり、完璧なタイミングで飛び出したアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)が制し、このジロ初勝利を挙げた。総合順位には変動無し。

スタート直後のアタックも無く、集団一つのまま上りを進むスタート直後のアタックも無く、集団一つのまま上りを進む photo:Kei Tsuji山岳ステージの連続する最終週にあって、唯一の平坦ステージとなる第18ステージ。当初は156kmが予定されていたが短縮され、140kmのショートステージとなった。ここまでの山岳を越えてきたスプリンターたちはみなこの日のために厳しい登りに耐えてきたのだ。

生憎の雨模様に見舞われた序盤、21km地点でこの日の逃げが決まる。逃げたのはオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とアラン・マランゴーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)の2人。

21km地点で飛び出したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とアラン・マランゴーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)21km地点で飛び出したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とアラン・マランゴーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) photo:Kei Tsujiこの2人はともに、2005年にU23の個人タイムトライアルのナショナルチャンピオンに輝いている選手。その持ち前の独走力を生かして集団との差を開いていく。しかし、今日だけは絶対にスプリンターに勝たせたいチームHTCコロンビアとチームスカイは集団のペースを厳密にコントロール。

50kmを過ぎてその差は3分台まで広がったものの、それ以上広がることはなく、100km地点でその差はおよそ2分。レース中盤は逃げる2人と集団はほとんど変わらない同じ速度で展開していく。

終始メイン集団をコントロールしたチームスカイとチームHTC・コロンビア終始メイン集団をコントロールしたチームスカイとチームHTC・コロンビア photo:Riccardo Scanferla残り30kmを過ぎて徐々に差が縮まり始める。この頃には雨も上がり、日射しの差す絶好のコンディションに。依然としてチームスカイとチームHTCコロンビアが積極的に集団のペースをつくり、残り20km地点でその差を1分26秒にする。

苦しい戦いとなるが踏み続ける2人は粘りの走りを見せ、集団に対抗。残り15km地点で1分16秒差と好走を見せるも、残り10kmでその差は41秒に縮小。チームスカイとチームHTCコロンビアの選手も全開で集団を牽引する。

メイン集団を牽くマルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTC・コロンビア)メイン集団を牽くマルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTC・コロンビア) photo:Riccardo Scanferla総合11位のマルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア)までもが集団のペースを挙げた結果、残り4kmでカイセンと、残り2kmで最後まで粘ったマランゴーニが吸収され、勝負はスプリンターたちのものに。

残り1kmでグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)のためにアシストが3人でトレインを形成。このスカイトレインが主導権を握ったまま残り500mを通過。このトレイン最後の一人になるクリストファー・サットン(オーストラリア)に引かれたヘンダーソンは後ろのアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)の様子をうかがう。

力強いガッツポーズを見せたアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)力強いガッツポーズを見せたアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Riccardo Scanferlaヘンダーソンがグライペルを見た瞬間、グライペルは迷い無く一気にスプリントを開始。300mをまだ残していたがグライペルはどんどん伸びていく。ワンテンポ遅れて反応したのはジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・トランジションズ)だったが、グライペルの勢いに追いつくことができない。

余裕をもって集団スプリントを制したグライペル。大会最有力スプリンターの下馬評だったが、第18ステージになってようやくこのジロ初勝利を挙げることとなった。2位にはディーン、3位には追い上げたティツィアーノ・ダラントニア(イタリア、リクイガス・ドイモ)が食い込んだ。

マリアローザを守ったダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)マリアローザを守ったダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Riccardo Scanferla新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)はエースのウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)の後ろ、13位でゴールしている。

総合上位陣はみなこの集団でゴールしたため、総合順位に大きな変動はない。残す3ステージが超級山岳ステージ2つと個人タイムトライアルということもあり、総合上位の選手にとっては、実質上の最後の休息ステージになったと言えるだろう。

翌第19ステージはジロの代名詞モルティローロ峠を通過し、アプリカの山頂にゴールするタフなステージ。2006大会に登場した際には、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が独走優勝を飾り、この年の総合優勝に弾みをつけた。総合争いにおいてひとつのキーとなるステージとなることは間違いない。



ジロ・デ・イタリア2010第18ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)        3h14'59"
2位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・トランジションズ)
3位 ティツィアーノ・ダラントニア(イタリア、リクイガス・ドイモ)
4位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
5位 ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)
6位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
7位 ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
8位 ミハエル・エリィエン(オランダ、オメガファーマ・ロット)
9位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス)
10位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
13位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)

個人総合成績
1位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)          76h26'37"
2位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)            +2'27"
3位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)        +2'44"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)      +3'09"
5位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム      +4'41"
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       +4'53"
7位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)     +5'12"
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +5'24"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)  +9'21"
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ)  +9'32"
107位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)            +2h29'03"

山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)

ポイント賞 マリアロッソパッショーネ
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)

チーム総合成績
リクイガス・ドイモ

総合フーガ(逃げ)賞
ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)

ステージ敢闘賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTCコロンビア)

text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla