マリアローザ争いと並行してジロ・デ・イタリアを盛り上げるのが3賞ジャージ。レースに彩りを与えるマリアチクラミーノ(ポイント賞)、マリアアッズーラ(山岳賞)、マリアビアンカ(ヤングライダー賞)の3賞のシステムと有力選手を紹介します。



マリアチクラミーノ ポイント賞

マリアチクラミーノをほぼ確定させたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が喜びながらフィニッシュマリアチクラミーノをほぼ確定させたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が喜びながらフィニッシュ photo:Kei Tsuji
ステージレースに花を添えるのがビッグスプリンターたちによる華々しい集団スプリント。最強スプリンターの証であるポイント賞ジャージは、2018年のスポンサー変更に伴って真っ赤なマリアロッサからシクラメン色のマリアチクラミーノに戻された。現在はセガフレード社がジャージスポンサーについている。

伝統的にジロではステージの種類に関わらず一律のポイントが与えられてきたため、総合狙いの選手たちがポイント賞のトップに輝くパターンが多く発生してきた。2009年から2012年までのポイント賞受賞者はいずれも総合上位に絡むようなオールラウンダー&クライマーたち。しかし2014年にポイントシステムに変更が加えられ、平坦ステージでより多くのポイントを稼ぐことができる配分になり、ずばりスプリンター向きの賞になったと言っていい。

例えば平坦ステージで優勝すれば50ポイント獲得だが、超級山岳ステージやタイムトライアルで勝利しても15ポイントしか獲得できない。なお、ポイントが与えられるのは毎ステージ(個人TTを除く)登場する2つのスプリントポイントのうち1つ目のみ。2つ目のスプリントポイントではボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)だけが与えられる。ポイント配分は以下の通り。



フィニッシュ ポイント配分
・A&Bカテゴリー(平坦:第4,6,7,11,13,19ステージ):
50pts, 35pts, 25pts, 18pts, 14pts, 12pts, 10pts, 8pts, 7pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt

・Cカテゴリー(中級山岳:第2,5,8,10,12ステージ):
25pts, 18pts, 12pts, 8pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt

・D&Eカテゴリー(超級山岳/TT:第1,3,9,14,15,16,17,18,20,21ステージ):
15pts, 12pts, 9pts, 7pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt

・スプリントポイント
12pts, 8pts, 6pts, 5pts, 4pts, 3pts, 2pts, 1pt



難易度の低い平坦ステージでは、今シーズン世界最多10勝を飾っているアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)とシーズン6勝のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)の2人を中心にスプリントが繰り広げられることになりそうだ。

8月のミラノ〜トリノを制し、フランスチャンピオンジャージを着て出場するデマールは2019年ジロでステージ優勝を経験済み。ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)とラモン・シンケルダム(オランダ)がデマールのためにリードアウトを組む。一方、9月のジロ・デッラ・トスカーナを制したガビリアはジロでステージ通算5勝。ガビリアの発射台を務めるのはフアン・モラノ(コロンビア)とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)だ。

アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
ステージ通算5勝のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)はツールで思うような結果を残せず(第10ステージの4位が最高位)、母国イタリアのグランツールで巻き返しを図る。ルディ・バルビエ(フランス)とダヴィデ・チモライ(イタリア)、リック・ツァベル(ドイツ)を揃えるイスラエル・スタートアップネイションもスプリント戦線に絡んでくるだろう。

マリアチクラミーノ争いの点では、ジロ初出場のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が主役になると予想される。ツールで自身8度目のマイヨヴェール獲得を逃したサガン。2019年の段階で初出場を宣言していたジロにはサガン向きのステージが多く設定されている印象だ。サガンと同様にマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)やディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)らも丘陵ステージでポイントを重ねることでマリアチクラミーノ争いに加わるだろう。

ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Luca Bettini
マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) photo:CorVosエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) photo:LaPresse

歴代ポイント賞受賞者
2019年 パスカル・アッカーマン(ドイツ)
2018年 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)
2017年 フェルナンド・ガビリア(コロンビア)
2016年 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
2015年 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
2014年 ナセル・ブアニ(フランス)
2013年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2012年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)



マリアアッズーラ 山岳賞

マリアアッズーラのジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)がクイーンステージ制覇マリアアッズーラのジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)がクイーンステージ制覇 photo:Kei Tsuji
グランツールの中で最も山岳の難易度が高いと言われるジロ・デ・イタリア。それだけにジロの山岳賞ジャージには大きな価値がある。かつては緑色のマリアヴェルデが採用されていたが、2012年から青色に変更された。「クライミング」「俊敏さ」「スタミナ」を象徴するジャージの名称はマリアアッズーラ(青色ジャージ)。引き続きバンカ・メディオラヌムがスポンサーにつく。

登場するカテゴリー山岳は、チーマコッピ(大会最高地点のステルヴィオ峠)、1級山岳、2級山岳、3級山岳、4級山岳の5種類。当然のことながら難易度の高いカテゴリー山岳に高ポイントが与えられており、仮に連日逃げて4級山岳を13回先頭通過しても、1回の1級山岳通過でひっくり返る計算だ。なお、ツール・ド・フランスとは異なり、山頂フィニッシュのポイント2倍システムは無い。



山岳賞 ポイント配分
チーマコッピ:50pts, 30pts, 20pts, 14pts, 10pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
1級山岳:40pts, 18pts, 12pts, 9pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
2級山岳:18pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
3級山岳:9pts, 4pts, 2pts, 1pt
4級山岳:3pts, 2pts, 1pt



2019年はジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が山岳ステージで1勝を飾るとともにマリアアッズーラを獲得。最終的にファウスト・マスナダ(イタリア、当時アンドローニジョカトリ・シデルメク)に152ポイントもの差をつけたチッコーネが山岳賞を手にした。しかし2020年はマリアローザ狙いのヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のアシストを務めるため、山岳賞のために動くことは許されない。

ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
ツールで2度マイヨアポワを獲得しているラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)や、アシスト役に縛られないと思われるニコラ・エデ(フランス、コフィディス)やダニエル・ナバーロ(スペイン、イスラエル・スタートアップネイション)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、NTTプロサイクリング)、エロス・カペッキ(イタリア、バーレーン・マクラーレン)といったクライマーたちは、総合成績を狙いながら山岳賞に目標をスイッチすることも考えられる。22歳のジェフェルソン・セペダオルティス(エクアドル、アンドローニジョカトリ・シデルメク)やブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)ら、新鋭の活躍にも注目したい。

ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

歴代山岳賞受賞者
2019年 ジュリオ・チッコーネ(イタリア)
2018年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2017年 ミケル・ランダ(スペイン)
2016年 ミケル・ニエベ(スペイン)
2015年 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
2014年 ジュリアン・アレドンド(コロンビア)
2013年 ステファノ・ピラッツィ(イタリア)
2012年 マッテーオ・ラボッティーニ(イタリア)
2011年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)



マリアビアンカ ヤングライダー賞

マリアビアンカを獲得したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)マリアビアンカを獲得したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
若手選手を対象としたヤングライダー賞トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。対象となるのは誕生日が1995年1月1日以降の選手で、具体的には今大会176名の出場選手のうち51名が対象となる。ジャージスポンサーを務めるのはディスカウント系スーパーマーケットのユーロスピン社。ちなみに出場選手全体の平均年齢は28.7歳だが、年齢別に見ると25歳が最も多い。

過去2年連続でマリアビアンカを獲得したミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)は26歳になったため対象から外れた。チームメイトのアレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン、アスタナ)は、24歳ながら、2020年モンヴァントゥーチャレンジとジロ・デッレミリアという登りが鍵を握るワンデーレースで優勝。イル・ロンバルディアを3位で終えている。あくまでもヤコブ・フルサン(デンマーク)のアシスト役を担うが、初出場のグランツールで大化けする可能性も。

アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) photo:CorVos
メンバーの平均年齢が全体の3番目に若いドゥクーニンク・クイックステップは、22歳のホアン・アルメイダ(ポルトガル)と24歳ジェームス・ノックス(イギリス)で総合成績を狙う。今回はアシスト役だが、25歳サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)や25歳テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、2019年にツール・ド・ラヴニールを制した23歳トビアス・フォス(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ)は将来のマリアローザ/マイヨジョーヌ候補だ。無名ながら2018年ロード世界選手権U23で銅メダルを獲得した23歳ヤーコ・ハンニネン(フィンランド、アージェードゥーゼール)の走りにも注目したい。

ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)が牽引するホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)が牽引する photo:CorVosタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) photo:Kei Tsuji

歴代ヤングライダー賞受賞者
2019年 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
2018年 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
2017年 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
2016年 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
2015年 ファビオ・アル(イタリア)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)
2012年 リゴベルト・ウラン(コロンビア)
2011年 ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
2010年 リッチー・ポート(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ未設定



その他の特別賞

ステージ成績、総合成績、ポイント賞、山岳賞、ヤングライダー賞の他にも、ジロには中間スプリント賞(ステージ&総合)、10名以下のグループで5km以上逃げた距離で争われる逃げ賞(ステージ&総合)、ステージ成績と中間スプリントと山岳ポイントの合計で争われる敢闘賞(ステージ&総合)、チーム総合成績で争われるスーパーチーム賞、警告や罰金など処分の少ないチームを対象にしたフェアプレー賞が設定されている。

text:Kei Tsuji

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