超級山岳サッソステット峠に上り詰めるクイーンステージで、ライバルを引きちぎったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が独走勝利。ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)に対して16秒差で総合首位浮上に成功した。



総合首位マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)ら、各賞ジャージ着用選手を先頭にスタートを待つ総合首位マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)ら、各賞ジャージ着用選手を先頭にスタートを待つ photo:CorVos
ティレーノ〜アドリアティコ2020第5ステージティレーノ〜アドリアティコ2020第5ステージ (c)RCS Sportティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)第5ステージの舞台は、中世ヨーロッパにその名を轟かせた魔女”シビッラ”がその魔力を閉じ込めたことに由来するシビッリーニ山脈。超級山岳サッソステット峠にフィニッシュする今大会最難関のクイーンステージで、1ヶ月後のジロ・デ・イタリア制覇を目指すオールラウンダーたちが登坂勝負を繰り広げた。

202kmのコースは序盤の超級サンタマルゲリータを越えた後は短いアップダウンの連続だ。最後に控えるサッソテット峠のスペックは、登坂距離14.2kmで平均勾配5.8%。2018年に登場した際はミケル・ランダ(スペイン、当時モビスター)がラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)らを下している。

逃げグループを率いるマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)逃げグループを率いるマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
10時36分にリアルスタートが切られると同時にアタックしたジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)や、ここまでの5日中4日目の逃げとなるマルコ・カノラ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ)、前日も逃げたマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼル)&エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター)といった今大会のエスケープ常連組、さらにオランダチャンピオンのマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)といった強力な10名がエスケープ。10名は一時5分差を得たものの、EFプロサイクリングがメイン集団をコントロールしたことで、タイム差は3分半前後を推移した。

逃げグループの中ではカノラが超級サンマルゲリータとGPMサンジネーシオで1位通過を果たすも、マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)に次いでランキング2位につけるカレテロが2箇所で2位通過したため、カレテロはこの日終了時点でのランキング首位浮上を成功させている。

落車したサイモン・クラーク(オーストラリア、EFプロサイクリング)やローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)落車したサイモン・クラーク(オーストラリア、EFプロサイクリング)やローハン・デニス(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos顔から血を流しながらアシストをこなすサイモン・クラーク(オーストラリア、EFプロサイクリング)顔から血を流しながらアシストをこなすサイモン・クラーク(オーストラリア、EFプロサイクリング) photo:CorVos

集団の先頭に立つEFプロサイクリング集団の先頭に立つEFプロサイクリング photo:RCS Sport
メイン集団内では落車したサイモン・クラーク(オーストラリア、EFプロサイクリング)が顔から血を流しながらアシストをこなしたほか、鋭角コーナーでタイヤを滑らせたクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が単独落車するシーンも。幸いクラークとフルームは大きなダメージなく共に29分遅れの集団でフィニッシュしている。

クラークを含めEFプロサイクリングが総出でウッズのためにペースメイクを行い、超級サッソステット峠が近づくとアスタナやイネオス・グレナディアーズもペースアップに加担する。緩斜面が続くサッソステット序盤区間で最後まで逃げ続けたメンバーを飲み込んだ時、集団人数は30名以下にまで絞り込まれていた。

超級山岳サッソステットで集団をコントロールするEFプロサイクリング超級山岳サッソステットで集団をコントロールするEFプロサイクリング photo:RCS Sport
動くべきタイミングを見計らうゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)動くべきタイミングを見計らうゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) photo:RCS Sport
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)の加速に合わせてアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)の加速に合わせてアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:RCS Sport
アシストを減らしたEFプロサイクリングに代わってアスタナがコントロールする集団からは、残り6.7km地点で前日大きく遅れたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)がアタック。しかしニバリの動きは淡々とテンポを刻むアスタナ勢によって封じ込められ、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)に合わせてサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が抜け出した。

34秒差総合7位からの総合逆転を狙ったSイェーツ動きでメイン集団は崩壊し、本来長距離登坂を得意としない首位ウッズはついに陥落。総合2位ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、総合6位ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、総合8位アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)がSイェーツを追いかけたものの、その差はじわじわと広がっていく。残り1kmでタイム差は30秒まで広がった。

超級山岳サッソステットで勝利したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)超級山岳サッソステットで勝利したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
マリアアッズーラに袖を通したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マリアアッズーラに袖を通したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
小刻みなダンシングでフィニッシュまでの緩斜面を駆け上がったSイェーツが、昨年のツール・ド・フランス第15ステージ以来、実に1年2ヶ月ぶりの勝利。トーマスとマイカが35秒、ウラソフが39秒、ウッズが1分46秒遅れたため、イェーツはマイカに対して16秒差で総合首位の証マリアアッズーラを手元に引き寄せた。

「チームの仕事量や自分自身のコンディションも含めてとても良い一日だった。リーダージャージを獲得してタイム差を稼ぐためには一番適したステージであり、タイムトライアルを踏まえると僕には大きなリードが必要だったんだ。EFとアスタナが牽引したことでテンポが早く、マイカのアタックによって始まったショーの中チャンスを見いだすことができた。一目散にアタックしてからは全開で踏み抜いた」とステージを振り返るSイェーツ。「このレースで勝つためには僅か数秒がキーになる。明日からも警戒しながらベストを尽くしていきたい」と、総合優勝に向けて意欲を見せている。

ティレーノ〜アドリアティコ2020第5ステージ結果
個人総合成績
その他の特別賞
ポイント賞 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
山岳賞 エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター)
ヤングライダー賞 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)
チーム総合成績 アスタナ
text:So.Isobe
photo:CorVos