第55回ティレーノ〜アドリアティコが開幕。リード・ディ・カマイオーレの集団スプリントで、先行するフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)をゴール直前で追い抜いたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利した。



クリストファー・フルームとゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)クリストファー・フルームとゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos楽しげなNTTプロサイクリングのカルロス・バルベロ(スペイン)とヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)楽しげなNTTプロサイクリングのカルロス・バルベロ(スペイン)とヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー) photo:CorVos

カテゴリー山岳モンテピトーロの登りを行くプロトンカテゴリー山岳モンテピトーロの登りを行くプロトン photo:CorVos
ティレーノ〜アドリアティコ2020第1ステージティレーノ〜アドリアティコ2020第1ステージ (c)RCS Sport『ティレニア海とアドリア海を結ぶレース』という名前の通り、ティレニア海に面したビーチリゾート地であるリード・ディ・カマイオーレで開幕した第55回ティレーノ〜アドリアティコ。昨年までの4年間は同地でのチームタイムトライアルが行われてきたが、今年は133kmという短距離ロードレースへ形を変えている。

レース中盤過ぎまで過ごすモンテピトーロの周回コース(1周26kmx3周)にはカテゴリー山岳が1箇所含まれているものの、逃げが決まってしまえばスプリンターを振り落とす難易度ではない。後半50kmは文字通り真っ平らな海岸線の道を突き進む、華やかな開幕スプリントステージだ。

0km地点のアタック合戦から抜け出したのはネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス・ソルシオンクレディ)やポール・マルテンス(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)、シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、昨年までNIPPOに所属していたマルコ・カノラ(イタリア、ガスプロム・ルスヴェロ)を含む7名。メイン集団ではフェルナンド・ガビリア(コロンビア)の勝利を狙うUAEチームエミレーツが先頭を引っ張った。

快調なペースを刻んだ先頭7名の中では、山岳賞ランキング首位浮上を狙ったKOM争いが勃発する。16.7kmの1回目ではハースが獲り、43.5kmの2回目はハースを僅かに上回ったカノラが先着。この2回目の山岳ポイントをきっかけにカノラたちはペースを緩め、ペローとマルテンスだけが逃げグループを維持した。

最後まで逃げたポール・マルテンス(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)とシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)最後まで逃げたポール・マルテンス(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)とシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク) photo:CorVos
メイン集団ではUAEチームエミレーツに加え、ドゥクーニンク・クイックステップやボーラ・ハンスグローエ、サンウェブといったスプリンターチームも牽引に合流する。タイム差は残り45kmで1分、残り27kmで30秒と推移し、106km地点の中間スプリントポイントでは集団をしれっと抜け出したマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)が全体の3位通過で1秒を稼いでいる。

一度フィニッシュ地点を通過した時点(残り19km)で逃げ続けてペローとマルテンスは吸収され、ここからスプリンターチームと総合系チームが入り混じっての位置取り争いが動きだす。バルディアーニCSF、NTTプロサイクリング、イスラエル・スタートアップネイションといった先頭を固めた。

マルテンスとペローの後ろにメイン集団が迫るマルテンスとペローの後ろにメイン集団が迫る photo:CorVos
メイン集団を牽引するサンウェブやボーラ・ハンスグローエ、アスタナメイン集団を牽引するサンウェブやボーラ・ハンスグローエ、アスタナ photo:CorVos
ツールではなくジロ・デ・イタリア出場を目指すゲラント・トーマス(イギリス)を引き連れたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が60km/hオーバーで引き倒して残り距離は2km。EFプロサイクリングに牽引役が変わったその時、集団中程で大きな集団落車が発生した。

慌ただしい集団の動きの波を受け、スプリントを狙ったベルギー王者ティム・メルリエ(アルペシン・フェニックス)とアルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ)がもたれかかり、後続を巻き込みながら落車してしまう。この事故でスプリントを狙ったダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)も被害を受けた。

混乱するメイン集団の隙を突いてアタックしたアドリアン・プティ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)は残り500mで引き戻され、ガビリアの発射台役を務めるフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)の背後からマグナス・コルトニールセン(デンマーク、EFプロサイクリング)が仕掛けてスプリント勝負がスタート。その背後につけたガビリアが爆発的な加速でリードを奪った。

フェンスすれすれの際どいラインで追い上げるパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)フェンスすれすれの際どいラインで追い上げるパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
最高75.2km/hで踏み込んだパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利最高75.2km/hで踏み込んだパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利 photo:CorVos
ガビリアが少し早いタイミングから絶好の勝ちパターンに持ち込んだと思われたが、コース右側のフェンス沿いでスプリントするガビリアの更に右側ラインを猛然とパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が追い上げる。バイクを振ることができないほどの狭いラインをシッティング的に踏み込んだアッカーマンが、ゴール直前でガビリアを追い抜いた。

「アッカーマンがすごいスピードでやってきて、僕には為す術が無かった。彼はすごかった」とガビリアに言わしめる急加速。アッカーマンがティレーノ〜アドリアティコ初日に勝利した。

リーダージャージを手に入れたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)リーダージャージを手に入れたパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
前日まで体調を崩し、6日で1度しかバイクに乗れない状態だったというアッカーマン。フィニッシュ後のインタビューでは「回復したばかりだったのでどんな走りができるかも分からなかった。信じられないよ。かなり後ろからスプリントを開始したのでキツかったけれど、十分にスピードを乗せられたのでフィニッシュラインに先着できた。今回チームとしては総合成績が優先事項で、スプリントは2番目。でもこれで登りステージに集中できるようになる。(ラファル)マイカと(パトリック)コンラッドに良い成績を狙ってもらいたい」と語っている。

ヴェロンによればアッカーマンのラスト26秒の平均スピードは73.1km/h(最高75.2km/h)で、平均パワーは1020ワット(最高1330ワット)。翌日も集団スプリント予想の平坦ステージであり、総合首位のマリアアッズーラを手にしたアッカーマンとガビリアの再戦に期待が掛かる。

ティレーノ〜アドリアティコ2020第1ステージ結果
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 2:57:55
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、EFプロサイクリング)
4位 シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム)
5位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)
6位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼル)
7位 ジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
8位 ロマン・シーグル(フランス、グルパマFDJ)
9位 ピート・アレハールト(ベルギー、コフィディス・ソルシオンクレディ)
10位 パスカル・エーンクホーン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
個人総合成績
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 2:57:45
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 0:04
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、EFプロサイクリング) 0:06
4位 ポール・マルテンス(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ) 0:07
5位 シモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク) 0:08
6位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) 0:09
7位 シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム) 0:10
8位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)
9位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アージェードゥーゼル)
10位 ジョナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
その他の特別賞
ポイント賞 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
山岳賞 ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス・ソルシオンクレディ)
ヤングライダー賞 シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム)
チーム総合成績 ボーラ・ハンスグローエ
Text:So.Isobe
Photo:CorVos

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