ロサンゼルス市街で行なわれた第7ステージの個人タイムトライアルはトニ・マルティンがトップタイムで優勝。注目された総合争いはマイケル・ロジャースが2位に入ったことでリーダージャージの防衛に成功。HTCコロンビアのワン・ツーとなった。

トップタイムのトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア)トップタイムのトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア) (c)CorVosロサンゼルス市街に設定された33.6kmのコースを2周する個人タイムトライアルは、総合争いを決める最後の勝負どころだ。
LAコンベンションセンター、南カリフォルニア大学、ウオルトディズニーコンサートホール、オリンピック記念スタジアムなど、市内のランドマークの前を通過するコースには2箇所上り坂があり、TTバイクで駆け上がるテクニックも要求される。選手たちは1分毎のスタートで、ラスト30人は2分間隔でスタートしていく。

ステージを争うことに加え、個人総合争いを決定づけるステージでもある。
総合首位の マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)に対し、2位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)は4秒差、3位ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)は9秒差、4位リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)は14秒差につける。
ボーナスタイムのないこのステージで、総合順位がどれだけシャッフルされるかが見所だ。過去のデータからはザブリスキーに逆転の可能性があるとの予想もあった。いずれもTTスペシャリストだけにどうなってもおかしくはない。

有力どころが登場する後半まで、暫定トップに長く君臨したのはベアト・グラブシュ(ドイツ、チームHTCコロンビア)。42分47秒のタイムは最終的には6位のタイムとなる。

注目を集めたファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)はグラブシュに39秒遅れる暫定7位(結果的には16位)と振るわなかった。春のクラシックで連勝した後の休息期間どおりのタイムとなった。

グラブシュのタイムを一気に塗り替えたのはトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア)。マークした41分41秒のタイムは最後まで塗り替えられることはなかった。

後半、トップ5の選手もコースに出て行く。
総合で13位につけるイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)は、周回コースの2周目に入った時点で総合2位でつけるザブリスキーとコース上でタイミングよく遭遇。追い抜かれた後は距離をとりつつ後方につけ、うまくペースメークに役立てる走りを見せる。
フォイクトはこの好走によって結果的には5位となるタイムをマークし、総合を大きく上げることに成功した。

注目のトップ4の走り。ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)は20kmを越える個人タイムトライアルを先の5月のツール・ド・ロマンディで初めて体験したばかり。そして30kmを越える距離はこれが初体験だ。

サガンのタイムはトップのマルティンから1分47秒遅れのステージ17位のものだった。これにより総合順位を落とすことは確実。

総合4位につけるリーヴァイ・ライプハイマーはマルティンに遅れること33秒で暫定2位のタイム。しかしこれをデーヴィッド・ザブリスキーが6秒上回る。

注目されるマイケル・ロジャースはマルティンから22秒遅れのステージ2位のタイムを叩き出し、チームHTCコロンビアのステージワン・ツー勝利と自身のリーダージャージの防衛に成功した。

マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)は2位でリーダージャージを守るマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)は2位でリーダージャージを守る (c)CorVos3位のデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)3位のデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) (c)CorVosリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)は4位に終わったリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)は4位に終わった (c)CorVos


5位のタイムを出したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)5位のタイムを出したイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク) (c)CorVos総合を13位まで下げたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)総合を13位まで下げたペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) (c)CorVosトップタイムのトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア)トップタイムのトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア) (c)CorVos


総合上位陣も順位が入れ替わった。サガンが13位まで下げたことでライプハイマーが3位に躍進。またフォイクトは13位から一気に4位までジャンプアップ。クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)は9位から6位へ。ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)がひとつ順位を落とし総合10位に。

ステージ勝利を上げた25歳のトニ・マルティンの個人TTでの勝利は、昨年のクリテリウム・アンテルナシオナルとバイエルン1周レースに続くもの。
昨第6ステージでは山岳でロジャースのアシストに徹し、献身的に働いた。激しく消耗した翌日の勝利だけに、そのポテンシャルを改めて知らしめる結果となった。


ロジャースとマルティンに囲まれ喜ぶボブ・ステイプルトンゼネラルマネジャーロジャースとマルティンに囲まれ喜ぶボブ・ステイプルトンゼネラルマネジャー (c)CorVos選手たちのコメント

トニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア)
コースは小さな登りが2つあるだけで概ねフラットでコーナーが多い。難しすぎないので、朝試走したときに僕にぴったりなコースだと思った。
今年はここまであまり良いシーズンではなかった。膝を痛めていて、春先はひどい状態だったからやる気を失っていた。今は良くなりつつある。今僕はツール・ド・フランスに向けてモチベーションが高まっている。今年の軌道に乗ったと思えることが嬉しい。
昨日ハードに働いたから、今日いいタイムトライアルが走れる脚があるかどうかは自信がなかった。


デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)
もちろん失望している。すごくよく走れたと思っていたのに、がっかりだ。でもレースは終わっていなよ。もし今日僕がリーダージャージを着ていたとしてもね。


マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)
デイブとリーヴァイを打ち負かしたことは嬉しいね。僕らは皆経験のあるTTスペシャリストだからね。今まででもかなりいいタイムトライアルにできたと思う。
タフな6日間の後のTTだから、すごくタフだった。特に昨日のような厳しい山岳ステージの後はね。


リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)
今までで最高のタイムトライアルではなかった。あと数%だけでも脚に力があったなら。デイブとミック(ロジャース)は昨日まで僕よりも脚を痛めていなかったことが今日証明されたね。でも後悔はない。できる限りの力を出し尽くしたし、ミスもしていないんだ。





第7ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア) 41'41"
2位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)+22"
3位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)+27"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+33"
5位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)+59"
6位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームHTCコロンビア) +01'06"
7位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)+01'12"
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)+01'19"
9位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)
10位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)+01'21"

個人総合成績
1位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTCコロンビア)29h46'06"
2位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)+09"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+25"
4位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)+01'12"
5位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア・マキシス)+01'26"
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)+01'32"
7位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)+01'34"
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)+01'46"
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)+02'10"
10位 トーマス・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)+02'21"


ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

山岳賞
トーマス・ラブー(オランダ、チームタイプワン)

新人賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

チーム総合成績
ガーミン・トランジションズ


text:MakotoAYANO
photo:(c)CorVos

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