ようやく開催された今年のJプロツアー。レースは3日間共に見応えのあるものとなった一方で、「新型コロナウィルス感染拡大防止対策」という命題をかかえての開催となった。どのように大会が開催されたのか?当日の会場の様子を、「検温」「ソーシャルディスタンス」「無観客」のキーワードからレポートする。

検温

会場ゲートでの検温は非接触体温計で行われた会場ゲートでの検温は非接触体温計で行われた photo:Satoru Kato
選手をふくめ、当日会場に出入りする人は事前に大会前14日間の体温記録と健康状態の申告が必須とされ、会場では入場者全員の検温が実施された。車で入場する場合は、車に乗ったまま非接触型体温計を使って検温を受ける。会場外の駐車場から徒歩で入場する人には、羽田空港に設置されているものと同型のビデオカメラ式の体温測定器を用いての検温が行われた。

Jプロツアーを主催するJBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)関係者によれば、ビデオカメラ式体温測定器はかなり高価な機材ではあるが、検温のための人員を増やす費用を考えればそれほど変わらないとして導入に踏み切ったとのこと。これにより検温待ちの行列ができずに済むことも感染防止に役立つと言えよう。

会場入口に設置されたビデオカメラ式の体温測定器会場入口に設置されたビデオカメラ式の体温測定器 photo:Satoru Kato

ソーシャルディスタンス

表彰式の待機中もソーシャルディスタンスを保つ表彰式の待機中もソーシャルディスタンスを保つ photo:Satoru Kato
受付などには透明ビニールシートが張られ、受付係はフェイスシールドを着用して対応した受付などには透明ビニールシートが張られ、受付係はフェイスシールドを着用して対応した photo:Satoru Kato会場内ではマスクをつけて行動が基本。検車エリアに来た選手はマスクを着用し、検車受付担当者はフェイスシールドもつけて対応会場内ではマスクをつけて行動が基本。検車エリアに来た選手はマスクを着用し、検車受付担当者はフェイスシールドもつけて対応 ©️Midori SHIMIZU

ライブ中継ブースは透明ビニールシートで仕切りが施される。解説の浅田監督と実況のアリーさんライブ中継ブースは透明ビニールシートで仕切りが施される。解説の浅田監督と実況のアリーさん photo:Satoru Kato受付などの順番待ちや表彰対象者の待機場所など、あらゆるところにソーシャルディスタンスに配慮した対策が施された。ライセンスコントロールや検車などはゼッケンごとに細かく時間を指定して分散を図ったものの、スタート時間が迫ると検車待ちの行列が出来る。会場によってはスペースを広く取れないところもあるので、今後の課題になりそうだ。

また、レース前のマネージャーミーティングは当初オンライン会議ツールのZOOMで行うとしていたが、当日になって回線がつながらなくなるトラブルが頻発。急遽、通常のミーティングを開くことになったが、出席しなくてもペナルティは課さず、ミーティングの内容はコミュニケで発表し、JBCF公式サイトから閲覧できるようにされた。マネージャーミーティングは質疑応答の場でもあるので、別の方法を考える必要があるだろう。

無観客

ホームストレートを通過するメイン集団。いつもなら声援が飛ぶところだが、フェンス外側には誰もいないホームストレートを通過するメイン集団。いつもなら声援が飛ぶところだが、フェンス外側には誰もいない photo:Satoru Kato
無観客での開催が発表された際、「たいして観客はいないんだから同じこと」という意見が散見された。レースレポートでも書いたが、群馬サイクルスポーツセンターは交通の便が良い場所ではないこともあり、元々それほど多くの観客が集まるわけではない。しかし、ホームストレートのスタート・フィニッシュ地点周辺や、残り2km付近の心臓破りの登り坂など、いつもなら観戦者が集まる場所に誰もいない光景に違和感を感じたと同時に、今まで少ないながらもそれなりに観客はいたことを実感させられた。

カメラマン以外誰もいない心臓破りのコーナーカメラマン以外誰もいない心臓破りのコーナー photo:Satoru Kato左の写真と同じ場所で...2017年大会左の写真と同じ場所で...2017年大会 photo:Satoru Kato

サッカーのJリーグやプロ野球などは限定的ながら観客の動員を開始したが、Jプロツアーはまだ無観客開催を続ける方針だ。



会場内には消毒液と手洗い用の水タンクが設置された会場内には消毒液と手洗い用の水タンクが設置された ©️Midori SHIMIZU何がベストか? 模索は続く

Jプロツアーの規模でのレース開催は今年初だったこともあり、レース期間中は他の大会関係者の視察が相次いだという。とは言え、新型コロナウィルス感染拡大防止対策は、誰も正解を知らない問題を解くようなもの。現状では、効果があるとされる方法を取り入れながらベストな方法を模索していくしかない。

今回の大会がモデルケースとなり、開催されるレースが増えてくれることを願うばかりだが、国内の感染者数が増加の一途を辿っていることが気がかりだ。今回のレース出場自体を取りやめたチームや選手があったのも事実。JBCFは8月22日と23日に、今回と同じ群馬サイクルスポーツセンターでの「群馬ロードレース8月大会/交流戦」の開催を決定したが、刻々と変化する状況が今以上に悪化しなければ良いのだが...。

text:Satoru Kato
photo:Midori SHIMIZU, Satoru Kato