選手たちに朗報!週間天気予報を見ると、天候は回復傾向!やっと雨を抜け出せる!スタート地点は晴れている!・・・しかし終盤にかけて再び雨が降り始めた。しかも大雨。コースには大きな水たまりが出没し、選手たちはずぶ濡れでゴールにやってきた。

天候は再び下り坂 コースは冠水状態

あれ?あなたたち警察ですよね??あれ?あなたたち警察ですよね?? photo:Kei Tsuji晴れた!スタート地点のフロジノーネは快晴!暖かな太陽に包まれたスタート地点の光景にテンションアップ!地元の観客が「午後から雨だよ」と呟いているが、そんなこと気にしない!

スタート近くの短い上りを利用してアップしている選手もいる。脚を温めておいて、スタート直後から逃げるつもりなのだろう。ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)の姿もそこにあった。

相変わらずサインに忙しい新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)相変わらずサインに忙しい新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsuji相変わらず今日もチームバスの駐車場がスタート地点から遠い。3kmほどあるので、歩いて行けばスタートを見逃す。交通規制が敷かれているのでクルマ移動はタブーだ。仕方なくチームバスでの撮影&インタビューを諦め、出走サインにやってくる選手たちを待つ。

「調子は“まあまあ”です。今日は逃げないですよ。集団スプリントに備えます」。スタート前、ユキヤはチームオーダーに沿ってウィリアム・ボネ(フランス)をアシストすることを宣言した。前日、前々日と厳しいコンディションのレースが続いたので、今後のステージに向けても良いリカバリーステージになるに違いない。

バイクを倒した選手に罵声が飛ぶ(もちろん冗談で)バイクを倒した選手に罵声が飛ぶ(もちろん冗談で) photo:Kei Tsujiこの日はナポリ近郊を北から南まで直線的に186km走る。高速道路がコースと並行して走っているので「撮影しては高速で先回り」の繰り返し。南に進めば進むほど雲行きが怪しくなり、ついに100km地点の補給ポイントあたりで雨が降り始めた。しかも土砂降りの。

イタリアの中でも、ナポリ近郊は特に路面が滑りやすかったように記憶している。アスファルトの含有物の違いにより、雨が降れば一気にグリップ力が落ちる。数年前にこのあたりで行なわれたステージでは、小雨にも関わらず落車が多発していたっけ。

大雨は大きな水たまりを作り出している。冠水したコースを“かき分けて”進む選手たちの姿がゴール地点にスクリーンに映り出される。自分も含め、早めにゴール地点に到着したフォトグラファーたちは「今日は水泳大会だ!」と大はしゃぎ。選手たちには堪ったもんじゃないだろうが・・・。


嬉しいゴスの勝利 イタリア人選手はこの日も消沈

マリアローザのアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は常に集団前方に位置マリアローザのアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)は常に集団前方に位置 photo:Kei Tsujiゴール地点はアマルフィ海岸に近いカーヴァ・デ・ティッレーニ。ジロに登場するのは1997年以来で、当時はマリオ・マンツァーニが集団スプリントを制して優勝。しかし観客の記憶に留まっているのはマンツァーニの勝利ではなく、マルコ・パンターニがリタイアしたことだ。

パンターニはゴール近くの下りで野良猫を避けようとして落車。総合優勝候補でありながら、その場でリタイアした。確かにカーヴァ・デ・ティッレーニの街中には野良猫が多い。我が物顔で街を闊歩している。

水たまり区間を集団最後方でクリアしていく新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)水たまり区間を集団最後方でクリアしていく新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Cor Vosさて、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)やアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)の参戦で大いに盛り上がった集団スプリント。ファインダーでもくっきりとマリアローザとマリアロッサが写り込む。トリコローレのフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)もいる。

しかし鋭い加速でライバルたちを引き離し、先頭でゴールに飛び込んだのはチームHTC・コロンビアジャージ。オーストラリアの23歳、マシュー・ゴスだった。ゴスとはいつもスタート前に談笑する仲。ユキヤの次に勝って欲しい選手が勝ったことで、思わずガッツポーズが出てしまった。

エヴァンスとヴィノクロフを先頭にスプリント体制に入るエヴァンスとヴィノクロフを先頭にスプリント体制に入る photo:Kei Tsuji「グライペルか」と思った観客やフォトグラファーも多いはず。事実、ゴール後インタビューを聞いても「グライペルがあそこで仕掛けたので・・・」と勘違いしている選手も多く見受けられた。

第6ステージのマシュー・ロイド(オメガファーマ・ロット)に続いて、またまたTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)のステージ優勝者が勝った。ゴスは2005年のTOJに出場し、大阪ステージで優勝している。現在TOJに出場しているオーストラリア人選手も、数年後にはヨーロッパで活躍する大物になるかも。

表彰台で歓声に応えるマシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)表彰台で歓声に応えるマシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア) photo:Kei Tsujiオーストラリアの南に浮かぶタスマニア島出身のゴス。タジー(タスマニア出身者)のステージ優勝は史上2人目だ。レース後、ゴスとガッチリ握手。「キャリア最高の勝利だ!本当に嬉しい!」と目を輝かせていた。

それにしても、今年のジロは海外勢の活躍が目立つ。イタリア人によるステージ優勝は、チームタイムトライアルでのリクイガスだけ。総合成績も海外選手が上位に名を連ねている。前日のガゼッタ紙は「ジロ・ストラニエーロ(外国人のジロ)」と揶揄している。

1分49秒遅れの集団でゴールした新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)1分49秒遅れの集団でゴールした新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsujiイタリア期待の有力スプリンター、アレッサンドロ・ペタッキ(ランプレ)やサーシャ・モードロ(コルナゴ・CSFイノックス)はもういない。2007年のTOJで総合優勝し、山岳での活躍が期待されたフランチェスコ・マシャレッリ(アックア・エ・サポーネ)は、兄のアンドレアとともに家に帰った。イタリア人の観客たちは、バッソ、ニーバリ、クネゴ、ガルゼッリ、スカルポーニ・・・これらの選手に望みを託している。

ユキヤはトップから1分49秒遅れのステージ97位でゴール。3日連続でずぶ濡れのゴールだ。ゴール後、スクリーンに映し出されたゴスのスプリントシーンを食いつくように見る。

南イタリアでのレース初体験のユキヤ。「雨が降り始めてからは路面がかなり滑りやすくなりました。水も貯まってるし、終盤はコーナーが連続するし。でも落車やトラブルが無かったので良かった」と安堵の表情を浮かべる。

コンディションの悪いステージが続いたことで体調が心配されたが、チームバスに戻る寸前「また明日頑張りますよ!」と振り返った時の笑顔がやる気に満ちていたので安心。第10ステージの走りに期待したい。

text&photo:Kei Tsuji

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