イタリアで相次いでレースが中止or延期される中、3月8日、フランスで第78回パリ〜ニースが開幕する。混乱の中、スタートラインに並ぶのは17チーム。寒い北フランスから暖かい南仏プロヴァンスを目指す「太陽へのレース」をプレビューします。


多種多様なステージが揃う8日間の『ミニ・ツール』

温暖な南仏を目指す8日間温暖な南仏を目指す8日間 photo:CorVos
毎年3月上旬に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催する8日間のステージレース。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で延期を余儀なくされたイタリアのティレーノ〜アドリアティコとともに、春のヨーロッパを代表する中級ステージレースとしての地位を築いている。

パリ〜ニース2020 全8ステージ/総走行距離1,218.5 kmパリ〜ニース2020 全8ステージ/総走行距離1,218.5 km photo:A.S.O.「パリからニースまで」という名前が示すように、レースはフランス北部のパリ近郊から地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から「太陽に向かうレース(ラ・コルス・オ・ソレイユ)」とも呼ばれる。

新型コロナウイルスの影響はフランスにも影を落としており、19あるUCIワールドチームのうち5チーム(チームイネオス、ミッチェルトン・スコット、モビスター、アスタナ、CCCチーム、ユンボ・ヴィスマ、UAEチームエミレーツ)が欠場を決めた。3月7日の時点でフランス国内の新型コロナウイルス感染者は613名で、死者は9名にのぼっている。なお、新型コロナウイルス感染予防のためにパリ〜ニースではライダーが自前のペンで出走サインを行い、表彰式のセレモニーを簡略化し、インタビューの距離を広げ、観客との距離を確保する措置が取られる。

UCIワールドチームの約1/3が欠場するため、予めワイルドカード枠での出場が決まっていたアルケア・サムシックとトタル・ディレクトエネルジー、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスに加えて、主催者ASOはUCIプロチームのB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトとサーカス・ワンティゴベールを追加招待した。これにより出場チームは17チームとなり、各チームの出場枠を7名から8名に増やしている。

3月8日(日)第1ステージ プレジール〜プレジール 154km3月8日(日)第1ステージ プレジール〜プレジール 154km photo:A.S.O.3月13日(金)第6ステージ ソルグ〜アプト 161.5km3月13日(金)第6ステージ ソルグ〜アプト 161.5km photo:A.S.O.

8日間の日程の中に平坦ステージ、丘陵ステージ、山岳ステージ、個人タイムトライアルが詰め込まれているステージレースはまさに縮小版のツール・ド・フランス。内訳は、スプリンター向きの平坦ステージが3、パンチャー向きの丘陵ステージが2、クライマー向きの山岳ステージが2、個人タイムトライアルが1。初日の第1ステージは残り4.5km地点で石畳区間を含む3級山岳ヌフル=ル=シャトー(全長1.4km/平均7.8%)をクリアするパンチャー向きのコースが設定されている。

スプリンター向きの第2ステージと第3ステージを経て、総合成績に変化をもたらすのが第4ステージの個人タイムトライアル。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)の故郷サンタマン=モンロンを走るコースの全長は15.5kmと短いが、前半から短い登りが2箇所(全長1km/平均5.4%と全長1.7km/平均6.2%)登場。レース時間は20分前後と予想されている。

第6ステージはカテゴリー2級〜3級の山岳が6箇所設定されたアップダウンコースで、特に終盤にかけて断続的に登場する登りで集団が分裂するはず。そして総合成績に激震をもたらすのが標高1,500mの1級山岳ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ(全長16.3km/平均6.3%)にフィニッシュする第7ステージ。2年前にサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が勝利したこのプロヴァンスの峠で、第78回大会のタイトルをかけたバトルが繰り広げられる。

最終日はお馴染みニースを発着するショートステージ。山岳が連続して登場するレイアウトは例年通りだが、2020年はエズ峠→高速ダウンヒル→ニースの海岸通「英国人の散歩道」にフィニッシュする流れではなく、3級山岳アスプルモン峠(全長3.9km/平均3.7%)→高速ダウンヒル→平坦路→内陸部にフィニッシュする流れ。レース時間が3時間に満たない高強度決戦が見ものだ。

3月14日(土)第7ステージ ニース〜ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ 166.5km3月14日(土)第7ステージ ニース〜ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ 166.5km photo:A.S.O.3月15日(日)第8ステージ ニース〜ニース 113.5km3月15日(日)第8ステージ ニース〜ニース 113.5km photo:A.S.O.
パリ〜ニース2020ステージリスト
3月8日(日)第1ステージプレジール〜プレジール154km
3月9日(月)第2ステージシュヴルーズ〜シャレット=シュル=ロワン166.5km
3月10日(火)第3ステージシャレット=シュル=ロワン〜ラ・シャトル214km
3月11日(水)第4ステージサンタマン=モンロン〜サンタマン=モンロン15.5km(個人TT)
3月12日(木)第5ステージガナ〜ラ・コート=サン=タンドレ227km
3月13日(金)第6ステージソルグ〜アプト161.5km
3月14日(土)第7ステージニース〜ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ166.5km
3月15日(日)第8ステージニース〜ニース113.5km


ビッグチームの欠場相次ぐも、豪華布陣の17チームが出場予定

序盤のアタック合戦に加わるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)序盤のアタック合戦に加わるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:tourcolombiauci.com
過去8年間で6回総合優勝を飾っているチームイネオスは欠場。モビスターやミッチェルトン・スコット、ユンボ・ヴィスマといった総合上位常連チームもいない。しかしイタリアレースの相次ぐ中止or延期に伴って、出場チームは濃いメンバーをパリ〜ニースに送り込む。

2019年にストラーデビアンケとミラノ〜サンレモを制したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は2年ぶり4度目のパリ〜ニース出場。アラフィリップは今シーズンここまで目立った成績を残せていないが、地元を走る個人タイムトライアルが設定された2020年大会は彼向きであると言える。2017年大会で総合5位に入っている27歳はボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)とともにイエロージャージ獲得を狙う。

アラフィリップだけでなく、ロマン・バルデ(アージェードゥーゼール)とティボー・ピノ(グルパマFDJ)、ギヨーム・マルタン(コフィディス)というフレンチオールラウンダー勢揃い。ティレーノ延期に伴ってバルデは急遽パリ〜ニースへの出場を決めた。

ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsujiティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Kei Tsuji

2013年と2015年の総合優勝者リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)は、ティレーノ→パリ〜ニース組のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)と急遽タッグを組むことに。2月のツアー・コロンビアを制したセルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)はマイケル・ウッズ(カナダ)とティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)を味方に戦う。

UCIワールドチームからUCIプロチームに移籍したナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)は今シーズン絶好調。ツール・ド・ラ・プロヴァンスとツール・デ・アルプス(元オー・ヴァール)で連続総合優勝を飾っており、前年度の総合2位からのステップアップを目指す。

リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) photo:CorVosナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) (c)CorVos

合計3つの平坦ステージでスピード勝負を繰り広げるのは、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング)、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)といった世界屈指のピュアスプリンターたち。

さらにピュアスプリンターが苦しむ丘陵ステージでは、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・マクラーレン)に代表される軽量スプリンター&パンチャーが勝利を狙う。クラシックシーズンに向けて、ロット・スーダル新加入のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)とフィリップ・ジルベール(ベルギー)のコンディションにも注目したい。

ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVosカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji

text:Kei Tsuji