スーパープレスティージュ最終戦でベルギー王者ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が独走。女子レースは堂々たるレース運びで新世界王者セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が勝利し、それぞれシリーズランキングでも総合優勝を射止めた。



ベルギー王者ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が独走勝利ベルギー王者ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が独走勝利 (c)CorVos
ドロップオフと登り返しを細かく繰り返すミッデルケルケのコースドロップオフと登り返しを細かく繰り返すミッデルケルケのコース (c)Telenet Superprestige昨年9月末にアメリカ、アイオワ州で開催されたワールドカップ開幕戦から早5ヶ月、ベルギーのウエストフランデレン州の街ミッデルケルケにて、シクロクロス3大シリーズの最終戦となるスーパープレスティージュ第8戦が開催された。

世界選手権1週間後に予定されていた第7戦は欧州を襲った暴風雨「キアラ」で中止となり、迎えた最終戦ミッデルケルケ。コースは固く締まった土+芝をベースに小さなドロップオフとその登り返し、キャンバー、そして深めの砂区間が次々と現れるテクニカルなもので、所々に滑りやすい泥区間も残す。

世界王者マチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と前週のDVVトロフェー最終戦で勝利したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)はロードシーズンに向けて不在だったものの、シーズン最後のビッグレースを見ようと多くのベルギーファンが詰めかけた。

75名以上が顔を揃えた男子エリートレースの序盤にリードしたのはラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ)だった。クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・シクロクロスチーム)やベルギー王者ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)が続き、3周目に入ると世界選手権2位のトーマス・ピッドコック(イギリス、トリニティレーシング)が追いついた。

均衡を破ったのはピッドコックで、勢い余って落車寸前になるピンチを凌ぎながらもアタックを継続。そこに被せるようにスウィークが先頭に立ち、ラインが1本しかない砂区間で2番手イゼルビッドがミスしたことをきっかけにスウィークが独走体制に入った。

エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)は表彰台圏内にエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)は表彰台圏内に (c)CorVos
序盤から積極的に走ったラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ)は4位序盤から積極的に走ったラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ)は4位 (c)CorVos
スウィークが逃げたことでチームメイトのイゼルビッドとファントーレンハウトはスピードを落とし、テレネット・バロワーズのファンデルハールとアールツが追走する。ヘルマンスとピッドコックが遅れたことでレースはパウェルズサウゼン・ビンゴールvsテレネット・バロワーズという構図に切り替わった。

ファンデルハールが先陣を切って追走したものの、「序盤はフィーリングが良くなかったけれど、強く風が吹く中で芸術的な逃げを決めることができた。追走グループ内で牽制してくれれば良いなと思っていた。チームメイトのイゼルビッドとファントーレンハウトの存在は大きかった」と振り返るスウィークとの距離は縮まらない。独走に持ち込んでから約5周回を逃げ切ったスウィークが勝利し、僅差の争いが続いていたシリーズランキングでも首位を守り抜き総合優勝を達成した。

僅差の男子シリーズランキングを制したローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)僅差の男子シリーズランキングを制したローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) (c)CorVos
「エリも勝利を狙っていたと思うけれど、彼はもう既に十分勝っているので今日は僕の番だった。上手く勝利を分け合うことができたと思う。(ベルギー王者に輝いた)今シーズンに不満なんて無い。とても美しい戦いだった」と語るスウィーク。TVインタビューの最後には勝利とシーズン終了を祝うビールを一気に飲み干した。



新世界王者のセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)や、世界選手権を筆頭に幾度となく好勝負を繰り広げてきたアンマリー・ワースト(オランダ、777)が集った女子レース。最前列スタートの前U23世界女王インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ)がチェーン落ちで遅れる中、思い切り良い走りで新ジュニア世界王者のシリン・ファンアンローイ(オランダ)が先行した。

圧倒的な強さを見せつけたセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)圧倒的な強さを見せつけたセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
しかし、テレネット・フィデア入りを決めている17歳のリードは1周と持たず、すぐさま頭一つ抜けた実力を誇るアルバラードとワーストが先頭に立った。

今日不在のルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)と共に世界選手権で激しい三つ巴の戦いを繰り広げた2人の背後からは、世界選手権前に禁止物質摂取による出場停止処分(過失と判断され6ヶ月処分となり波紋を呼んだ)を終えたデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール)が追走。アルバラードは数度のミス、そしてシューズが壊れるトラブルに見舞われながらも、その度にワーストに追いつく好調ぶりを見せつけた。

全5周回中の4周目後半には牽制する2人にベッツィマが追いついたが、勝負の主導権を得ることは叶わない。最終ストレート前の降車区間を先頭で抜け、一足早く乗車、そしてスプリント体制に持ち込んだ世界王者が先行。追い上げ届かないことを察知したワーストは力を緩め、ベッツェマの先行も許した。

女子シリーズランキング表彰。セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が10ポイント差で優勝した女子シリーズランキング表彰。セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が10ポイント差で優勝した (c)CorVos
同じくワーストを相手にしたスプリント勝負で、直近の2週間、世界選手権とDVV最終戦で連続勝利してきたアルバラードがダメ押しの勝利。余裕すら感じさせるレース運びで今シーズンの勝ち星を15に伸ばすと共に、スーパープレスティージュのシリーズランキングでも総合優勝を勝ち取った。

「また勝つことができた。勝つためには一番先にスプリントに持ち込む必要があったけれど、上手くいった。全員を置き去りにできて、素晴らしいシリーズのランキングでも優勝しただなんてとてもクール。まぐれではなく自分で掴み取った勝利」と、また一つ戦績を書き加えたアルバラードは語っている。

男子エリート結果
1位 ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 1:02:30
2位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 0:15
3位 エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:22
4位 ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ) 0:32
5位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:39
6位 トーマス・ピッドコック(イギリス、トリニティレーシング) 1:01
7位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・シクロクロスチーム) 1:08
8位 トム・メーウセン(ベルギー、グループヘンス・マースコンテナーズ) 1:45
9位 ニールス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 1:57
10位 ヨリス・ニューウィンハイス(オランダ、サンウェブ) 2:02
女子レース結果
1位 セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) 41:34
2位 デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 0:01
3位 アンマリー・ワースト(オランダ、777)
4位 シリン・ファンアンローイ(オランダ) 0:35
5位 エヴァ・リヒナー(イタリア、クレアフィン・フリスタッズ) 0:46
6位 ヤラ・カステリン(オランダ、777) 1:10
7位 エレン・ファンロイ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) 1:17
8位 インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ) 1:21
9位 アンナ・ケイ(イギリス、エクスペルザ・プロCX) 1:29
10位 サンヌ・カント(ベルギー、IKO・コレンドン) 1:43
男子シリーズランキング最終結果
1位 ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 84pts
2位 エリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) 81pts
3位 ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ) 76pts
女子シリーズランキング最終結果
1位 セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) 96pts
2位 ヤラ・カステリン(オランダ、777) 86pts
3位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) 78pts
text:So.Isobe
photo:CorVos