2019/12/07(土) - 15:40
12月7日、愛媛県内子町でシクロクロス全日本選手権の男女マスターズとシングルスピードの部が開催。男子マスターズ40歳代で筧五郎(56サイクル)が勝利し5連覇を達成。50歳台は兄の筧太一(BUCYOCOFFEE/CLT)も優勝し、2017年ぶりの兄弟優勝を達成した。女子マスターズ、シングルスピードとあわせお伝えする。
12月7日と8日に愛媛県内子町五十崎・小田川河川敷で開催されるシクロクロス全日本選手権。四国、愛媛でのCX日本一決定戦開催は史上初めて。7日(土曜日)に年齢別のマスターズカテゴリーとシングルスピードの部が開催された。
しまなみ海道や四国一周サイクリングで自転車人気の高まる四国。行政はサイクルツーリズム誘致や自転車による地域活性化に余念がない。そんな自転車熱の高い県がシクロクロス全日本選手権大会を誘致。愛媛県の南予地方に位置する内子町は、ハゼの流通で財をなした商家が建ち並ぶ町並みで知られる観光地。白壁と木蝋の町並みが美しい古都で開催されるCX日本選手権だ。
小田川の河川敷に広がるコースは概ねフラットで高低差の少ないハイスピードコース。「ド平坦」「イージー」「シケイン無し」と噂されていたコースだったが、蓋を開けてみれば急登・急降下、キャンバー、舗装と砂と土と芝のミックス路面でスピードとテクニックを要求されるバランスの良いコース。県道を規制して使用する舗装路区間も長く、踏んでいけるパワー&スピード系ライダーに有利という印象。コーナリングテクニックや荒れた路面のバイクの進ませ方でも差が出るコース。天気は曇りで、日中で10度ほど。
第1レースは変速機能のないシングルスピードバイクに限定したシングルスピードの部。昨年に続いてエキシビジョンで開催だ。腰山 雅大(All-City Cycles / 662CCC)、牧野崇(COGS)、吉元 健太郎(チーム鳴木屋/Pep Cycles)の3人の争いとなり、最後は牧野が2人を離して優勝。牧野はMTBのシングルスピード選手権から数えてシングルスピードレース歴10年の経験を持つという。
その後は年々ホットな盛り上がりを見せるマスターズクラスが年代別に行われた。今年の大会では男子マスターズが『35-39歳』『40〜49歳』『50〜59歳』『60歳以上』の4グループに変更され区分された。昨年は5歳刻みだったが、今年は10歳刻みを基本にアレンジされたのだ。
衰えを知らないベテラン揃いの50〜59歳クラス。ホールショットをとったのは筧太一(BUCYOCOFFEE/CLT)。そのまま先頭をキープし、後続を離しにかかる。2017年に優勝した力の差を見せつける筧は1周目から誰の追従をも許さず、2位に28秒の大差を持って2年ぶりの優勝をモノにした。
コーヒーやきしめん、プロテイン、スパゲッティなどシクロクロス会場ではおなじみのケータリングサービスを行うBUCYO COFEEブースのオーナーである筧太一。じつは昨日、名古屋から会場までの道中にBUCYO COFEEのマイクロバスのクラッチがすり減ってしまい、高速道路で立ち往生。仲間の助けを借り、大阪で交換パーツを手に入れ、兵庫で修理を行った。内子町に到着するまでに17時間を要したが、修理を終え、奇跡的にスタートに間に合わせた。
「本来僕はこのスタートラインに立ってはいなかった。それを可能にしたのは仲間たちの協力と修理工場の神対応。そのおかげで、何も失うものはないプレッシャー無しの気持ちで走れた。この優勝は本当に仲間たちのおかげ。感謝しています」と謙虚に語った。この日は朝からケータリングを開始。いつものように会場の選手たちの空腹を満たした。
同時出走の男子マスターズ 60+は松井正通(TOYOFRAME)がトップフィニッシュで優勝。女子マスターズは中川 左裕里(Ehime Happy Girls Racing Team)が後続を大きく離して優勝。6人出走のうち3人が愛媛県勢という女子マスターズで2位にも愛媛の武田 美夕紀(走れ馬鹿犬)が入り、地元内子町は大きく盛り上がった。
続くマスターズはとくに層の厚い40−49クラス。優勝候補筆頭は昨年『40-44』で4連覇を果たした、前レースの覇者・太一の弟である筧五郎(56サイクル)だったが、C1からマスターズにステージを替えた選手が増えた今年、池本真也(和光機器)らが筧のライバルとなると目された。
しかし筧五郎はスタートでクリートキャッチをミスし、スタートダッシュ後の最初の蛇行カーブ区間で詰まった集団の後方に取り残され、先頭から40秒ほど遅れを喫する。トップを行くのは35-39クラスただ一人のエントリーとなった落合友樹(TeamRuedaNAGOYA)。これに萬谷和也(FUJIMOTO FARM)が合流し、ランデブーする。
先行する落合と萬谷のふたり。5秒差で追うのは池本真也(和光機器)、石川正道(ChampionSystemJapanTestTeam)、田崎友康(F(t)麒麟山Racing)、國分圭二(Mt.HASE321)の4人のグループ。9秒ほどの差の第3グループに筧五郎。
遅れていた筧だが、急速にポジションを上げ、3周回終了時には第2グループの4人にジョインし、そのままパスして前へとジャンプしていく。前の二人は萬谷が落合を切り離し、独走へ。
そして筧は萬谷に追いつくと、ここから2周はテールトゥーノーズのマッチレースが始まった。「情報がなく、これは一体誰だ?と思った」と筧が言う萬谷は山口出身でC1選手ながらJCFやAJOCC公式戦を走らないためマスターズへの出場が可能な、MTB-XCOをメインフィールドとする選手。急坂を乗車して登り、コーナーでは筧のインを奪い先行するなど、テクニックに秀でた走りで筧を翻弄する。この日乗ったCXバイクはなんと友人からの借り物だという。
しかし筧は落ち着いて対処。ラストの階段まで後方につけ、ホームストレートの舗装路の直線へと出るとスリップストリームを利用し萬谷をパス。ロードレーサーらしいスプリントで一蹴、勝利をもぎとった。
今年44歳の筧はこれでマスターズ5連覇を達成。兄・太一との兄弟ダブル優勝も2017年以来の2年ぶりに成し遂げた。練習をともにする兄弟は熱いハグ。勝利の喜びを噛み締めた。
「スタートしてすぐに上から人が降ってきた。遅れたときにはもう辞める理由ができたと思ったんですが、このホームストレートは県道56号線で、近くには五郎駅があるんです。ここで勝たなかったらどこで勝つんだ、と思い直しました。最後の階段で勝ってやる、とスイッチを入れました。でも萬谷さんは被せてくるし、上手かった。でも焦っているのは分かりました。兄ちゃんとはスプリントの練習もしていて、最後の間合いのとりかたなども活かせた。彼が後ろを振り向いたとき、ここで!”と思いました。
いつも独走で勝っていたので、こんな接戦のレースをしたのは5年ぶりです。素晴らしいライバルに感謝。そしてこの300mの舗装の直線があるレースのロケーションは素晴らしいです。ヨーロッパに通じる素晴らしいコースでレースができたことに感謝します」と筧五郎。
翌日の8日(日曜日)には男子 U17、U15、女子 U17、U15 、男子ジュニア、女子ジュニア、男子U23、女子エリート、男子エリートのレースが行われる。予報では晴れで最高気温は13度。スピードとパワーを要求する平坦コースが全日本チャンピオンを決める。
リザルト
12月7日と8日に愛媛県内子町五十崎・小田川河川敷で開催されるシクロクロス全日本選手権。四国、愛媛でのCX日本一決定戦開催は史上初めて。7日(土曜日)に年齢別のマスターズカテゴリーとシングルスピードの部が開催された。
しまなみ海道や四国一周サイクリングで自転車人気の高まる四国。行政はサイクルツーリズム誘致や自転車による地域活性化に余念がない。そんな自転車熱の高い県がシクロクロス全日本選手権大会を誘致。愛媛県の南予地方に位置する内子町は、ハゼの流通で財をなした商家が建ち並ぶ町並みで知られる観光地。白壁と木蝋の町並みが美しい古都で開催されるCX日本選手権だ。
小田川の河川敷に広がるコースは概ねフラットで高低差の少ないハイスピードコース。「ド平坦」「イージー」「シケイン無し」と噂されていたコースだったが、蓋を開けてみれば急登・急降下、キャンバー、舗装と砂と土と芝のミックス路面でスピードとテクニックを要求されるバランスの良いコース。県道を規制して使用する舗装路区間も長く、踏んでいけるパワー&スピード系ライダーに有利という印象。コーナリングテクニックや荒れた路面のバイクの進ませ方でも差が出るコース。天気は曇りで、日中で10度ほど。
第1レースは変速機能のないシングルスピードバイクに限定したシングルスピードの部。昨年に続いてエキシビジョンで開催だ。腰山 雅大(All-City Cycles / 662CCC)、牧野崇(COGS)、吉元 健太郎(チーム鳴木屋/Pep Cycles)の3人の争いとなり、最後は牧野が2人を離して優勝。牧野はMTBのシングルスピード選手権から数えてシングルスピードレース歴10年の経験を持つという。
その後は年々ホットな盛り上がりを見せるマスターズクラスが年代別に行われた。今年の大会では男子マスターズが『35-39歳』『40〜49歳』『50〜59歳』『60歳以上』の4グループに変更され区分された。昨年は5歳刻みだったが、今年は10歳刻みを基本にアレンジされたのだ。
衰えを知らないベテラン揃いの50〜59歳クラス。ホールショットをとったのは筧太一(BUCYOCOFFEE/CLT)。そのまま先頭をキープし、後続を離しにかかる。2017年に優勝した力の差を見せつける筧は1周目から誰の追従をも許さず、2位に28秒の大差を持って2年ぶりの優勝をモノにした。
コーヒーやきしめん、プロテイン、スパゲッティなどシクロクロス会場ではおなじみのケータリングサービスを行うBUCYO COFEEブースのオーナーである筧太一。じつは昨日、名古屋から会場までの道中にBUCYO COFEEのマイクロバスのクラッチがすり減ってしまい、高速道路で立ち往生。仲間の助けを借り、大阪で交換パーツを手に入れ、兵庫で修理を行った。内子町に到着するまでに17時間を要したが、修理を終え、奇跡的にスタートに間に合わせた。
「本来僕はこのスタートラインに立ってはいなかった。それを可能にしたのは仲間たちの協力と修理工場の神対応。そのおかげで、何も失うものはないプレッシャー無しの気持ちで走れた。この優勝は本当に仲間たちのおかげ。感謝しています」と謙虚に語った。この日は朝からケータリングを開始。いつものように会場の選手たちの空腹を満たした。
同時出走の男子マスターズ 60+は松井正通(TOYOFRAME)がトップフィニッシュで優勝。女子マスターズは中川 左裕里(Ehime Happy Girls Racing Team)が後続を大きく離して優勝。6人出走のうち3人が愛媛県勢という女子マスターズで2位にも愛媛の武田 美夕紀(走れ馬鹿犬)が入り、地元内子町は大きく盛り上がった。
続くマスターズはとくに層の厚い40−49クラス。優勝候補筆頭は昨年『40-44』で4連覇を果たした、前レースの覇者・太一の弟である筧五郎(56サイクル)だったが、C1からマスターズにステージを替えた選手が増えた今年、池本真也(和光機器)らが筧のライバルとなると目された。
しかし筧五郎はスタートでクリートキャッチをミスし、スタートダッシュ後の最初の蛇行カーブ区間で詰まった集団の後方に取り残され、先頭から40秒ほど遅れを喫する。トップを行くのは35-39クラスただ一人のエントリーとなった落合友樹(TeamRuedaNAGOYA)。これに萬谷和也(FUJIMOTO FARM)が合流し、ランデブーする。
先行する落合と萬谷のふたり。5秒差で追うのは池本真也(和光機器)、石川正道(ChampionSystemJapanTestTeam)、田崎友康(F(t)麒麟山Racing)、國分圭二(Mt.HASE321)の4人のグループ。9秒ほどの差の第3グループに筧五郎。
遅れていた筧だが、急速にポジションを上げ、3周回終了時には第2グループの4人にジョインし、そのままパスして前へとジャンプしていく。前の二人は萬谷が落合を切り離し、独走へ。
そして筧は萬谷に追いつくと、ここから2周はテールトゥーノーズのマッチレースが始まった。「情報がなく、これは一体誰だ?と思った」と筧が言う萬谷は山口出身でC1選手ながらJCFやAJOCC公式戦を走らないためマスターズへの出場が可能な、MTB-XCOをメインフィールドとする選手。急坂を乗車して登り、コーナーでは筧のインを奪い先行するなど、テクニックに秀でた走りで筧を翻弄する。この日乗ったCXバイクはなんと友人からの借り物だという。
しかし筧は落ち着いて対処。ラストの階段まで後方につけ、ホームストレートの舗装路の直線へと出るとスリップストリームを利用し萬谷をパス。ロードレーサーらしいスプリントで一蹴、勝利をもぎとった。
今年44歳の筧はこれでマスターズ5連覇を達成。兄・太一との兄弟ダブル優勝も2017年以来の2年ぶりに成し遂げた。練習をともにする兄弟は熱いハグ。勝利の喜びを噛み締めた。
「スタートしてすぐに上から人が降ってきた。遅れたときにはもう辞める理由ができたと思ったんですが、このホームストレートは県道56号線で、近くには五郎駅があるんです。ここで勝たなかったらどこで勝つんだ、と思い直しました。最後の階段で勝ってやる、とスイッチを入れました。でも萬谷さんは被せてくるし、上手かった。でも焦っているのは分かりました。兄ちゃんとはスプリントの練習もしていて、最後の間合いのとりかたなども活かせた。彼が後ろを振り向いたとき、ここで!”と思いました。
いつも独走で勝っていたので、こんな接戦のレースをしたのは5年ぶりです。素晴らしいライバルに感謝。そしてこの300mの舗装の直線があるレースのロケーションは素晴らしいです。ヨーロッパに通じる素晴らしいコースでレースができたことに感謝します」と筧五郎。
翌日の8日(日曜日)には男子 U17、U15、女子 U17、U15 、男子ジュニア、女子ジュニア、男子U23、女子エリート、男子エリートのレースが行われる。予報では晴れで最高気温は13度。スピードとパワーを要求する平坦コースが全日本チャンピオンを決める。
リザルト
男子マスターズ 35-39
男子マスターズ 40-49
男子マスターズ 50-59
男子マスターズ 60+
女子マスターズ
シングルスピード
text&photo:Makoto AYANO
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