「やっぱりジロ・デ・イタリアは初夏の太陽が似合う!」なんて油断していた。オメガファーマ・ロットの隊列に向かって突き出した300mmのレンズに、ポツポツと雨粒が落ち始める。数分後、容赦ない量の水が、バケツをひっくり返したような勢いで空から落ち始めた。雷も鳴り始めた!!

雨?晴れ?雨?移り気な天候がジロを困らす

オランダではお目にかかれなかったエスタテの甘い紅茶がようやく登場!オランダではお目にかかれなかったエスタテの甘い紅茶がようやく登場! photo:Kei Tsuji快晴のアムステルダムを飛び立った飛行機は、大雨のミラノに到着した。

「イタリアに入っても雨なのか??」そんな暗い気持ちに包まれたジロ・デ・イタリア1回目の休息日。しかし第4ステージ・チームタイムトライアル当日、スタート地点サヴィリアーノに到着すると、暖かな太陽が降り注いでいた。やっぱりジロはこうじゃないと!

観客の問いかけに笑顔で応える新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)観客の問いかけに笑顔で応える新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsujiオランダでは比較的キャラバン隊が大人しかったが、イタリアに入ると一気にパワーアップ。エスタテ(マリアローザのスポンサー)のキャラバン隊が加わったことで、ジロに活気が戻った!黄色いエスタテのグッズが太陽に照らされて眩しい。

試走に出かけた新城幸也(Bboxブイグテレコム)がチームカーに乗って戻って来たので、コースの印象を聞く。

スタートを切るBboxブイグテレコム 新城幸也は右から3番目スタートを切るBboxブイグテレコム 新城幸也は右から3番目 photo:Kei Tsuji「平坦で直線のコース。プロフィールでは上り基調ですけど、走ってみると平坦でした。ラスト2kmからクーネオの街に入る区間に上りがあるぐらい。試走した時点で風は吹いていませんでしたが、イタリアの天気は午後になると分からないですよ」。

ユキヤはズバリと天気の変化を言い当てた。第1走のコフィディスがスタート台に上る頃には雨雲が周囲を覆い、サヴィリアーノの狭い路地を風が吹き抜け始める。4番手のBMCレーシングチームがスタートする頃には、大粒の雨がバラバラと降り始めた!

ピエモンテの平野部を駆け抜けるピエモンテの平野部を駆け抜ける photo:Kei Tsuji沿道に集まっていた観客は、一斉に軒下に隠れる。しかし、しばらくすると太陽が再び顔を出して雨はストップ。雨雲の移動に伴ってコロコロと天候が変わる。太陽に照らされ輝く濡れた路面の上を、ユキヤたち9名が駆け出した。

スタートしたBboxブイグテレコムを追ってクルマを走らせる。コース上の走行が禁止されているので、並行して走る泥だらけの農道を飛ばして行く。「そんなに急がなくても」という顔で、牛の群れがこっちを見ている。

ステージ8位、ガーミン・トランジションズ 突然降り始めた大雨が選手たちを襲うステージ8位、ガーミン・トランジションズ 突然降り始めた大雨が選手たちを襲う photo:Kei Tsujiおよそ10km地点でコースに出て、前夜から練りに練った作戦通り、そこで8チームを撮影。アージェードゥーゼル、アンドローニ、ランプレ、カチューシャ、チームスカイ・・・ここまでは順調だった。しかし明らかに周囲の光量が落ち、慌ててISO感度を800まで上げる。オメガファーマ・ロットが到着する頃には小雨が降り始めた。

サーヴェロ・テストチームが到着すると本降りに。そして土砂降りの雨の中、チームカーと中継バイクのライトに照らされて、ガーミン・トランジションズがやってきた。遠くでは雷鳴が轟き、稲妻が真横に走る。さっきまで横にいた観客がいつの間にかクルマに避難。気付けば降りしきる雨の中、一人で佇んでいた。

雷雲に向かって突き進むガーミンを見送り、ずぶぬれでクルマに乗り込んで今度はゴール地点に向かう。タオルは持ってきていたが、機材と髪の毛を拭いたらもうボトボト。拭ききれないところは、スタート地点で配られていたピンクのガゼッタ紙で拭いた。

驚くことに、クーネオは晴れ渡っていた。ゴール地点で22チームを待ち続けたカメラマン曰く、クーネオは雨に降られなかったそうだ。


毎日持ち主を変えるマリアローザ ニーバリにようやく落ち着く?

遅れたスタンゲリに檄を飛ばすアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)遅れたスタンゲリに檄を飛ばすアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Kei Tsujiチームタイムトライアルでは5番目の選手のタイムが反映される。マリアローザを着て走ったアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が、脱落しそうになったスタンゲリに檄を飛ばす姿がスクリーンに映し出された。

アスタナはすでにキレエフ、ガスパロット、イグリンスキー、ディアチェンコが脱落。どれだけヴィノクロフが早くゴールしても、5番手のスタンゲリがゴールしない限り、チームのゴールが認められないのだ。

マリアローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がシャンパンファイトマリアローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がシャンパンファイト photo:Kei Tsujiゴール前でフラストレーションを爆発させ、マリアローザを一日で失ったヴィノクロフ。しかし、結果的にマリアローザ争いにおけるライバル、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)を43秒引き離すことに成功している。BMCレーシングチームはグランツールにおける経験値の低さを露呈する結果に。

ジロ開幕以来、毎日持ち主を変えたマリアローザは、ようやく地元イタリア人選手の手に渡った。リクイガスはステージ優勝を飾ったばかりか、ニーバリのマリアローザ、そしてイヴァン・バッソの総合2位、ヴァレリオ・アニョーリのマリアビアンカ(新人賞ジャージ)を同時にゲット。表彰台に駆けつけたアマディオ監督の顔はずっとにやけたままだった。

「今でも鳥肌が立っている」。レース後の記者会見で喜びを噛み締めるニーバリ。「出来るだけ長くこのジャージを着ていたい。イヴァン(バッソ)と僕はリクイガスのダブルエース。マリアローザを獲得したからと言って、僕が単独エースになるわけじゃないよ」。

フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)の欠場により、急遽出場が決まったリクイガスの若大将は、イタリアの期待を背負って残りの17ステージを闘う。

text&photo:Kei Tsuji