GPSサイクルコンピューターのリーディングカンパニー「ガーミン」。2019年夏にリリースされた中核モデルEdge830と530にフォーカスを当てる。タッチ操作感が向上したEdge830や、最新機能について紹介しよう。



ガーミン Edge830、Edge530ガーミン Edge830、Edge530
ガーミンのサイクルコンピューター「Edge」は、長らくGPS搭載機を牽引し、王者として君臨し続けてきたシリーズだ。比較的安価なモデルがリリースされるようになった近年でも、ガーミンより新型サイクルコンピューターがリリースされると、サイクリストの間では必ず話題に上がる存在である。

これまで800シリーズと500シリーズは別々の歩みを進めていたモデルだったが、今回のモデルチェンジで非常に近しい存在となった。具体的にはサイズ、基本機能を同一とする一方で、ナビゲーションシステム周りの機能に差を設け、830はタッチスクリーン操作、530はボタン操作と作り分けることで、グレード間に違いを生み出している。

ガーミンのタッチスクリーンは830登場以前は、指の動きに対しタイムラグが発生しており、フラストレーションを抱える場面は少ならからず存在していた。それは高性能スマホでタッチスクリーンに慣れ親しんでいる我々の非常に高い心理的ハードルに他ならない。しかし、830は私の心理的ハードルを安々と乗り越えてしまった。操作に関してはノンストレス。ページ送りのスムースさも文句はない。

530はボタン操作、830はタッチ操作というように作り分けている530はボタン操作、830はタッチ操作というように作り分けている デバイス下部のボタンはこれまでのEdgeシリーズを踏襲するデバイス下部のボタンはこれまでのEdgeシリーズを踏襲する

Edge830のセンサーセットに付属するアクセサリー類Edge830のセンサーセットに付属するアクセサリー類
普段使用しているiPhone操作と変わらない感覚で使用できるため、アイコンや画面表示の意味さえ理解できていれば非常にサクサクと操作を進めることが可能だ。もしガーミンを初めて選ぶという方はタッチスクリーンの830を選択したほうが良い。ボタンの場合では、各ボタンの役割を体に覚えさせる必要があり、慣れないうちはミス操作を行ってしまうこともあるだろう。だからこそ、ガーミン初心者には830をオススメしたい。

もちろん530のボタン操作は従来型と同じ役割配置であるため、使い慣れている方はサクサクと操作が行えるはず。ボタンだからこそのメリットも多くある。まず、ほぼ確実に操作を行えるということ。タッチスクリーンの場合、雨天で画面が濡れてしまったときには操作が難しくなることがある。しかし、ボタンでは押し間違えさえなければ、グローブや天候に左右されず操作を行うことが可能である。

Edge830のタッチスクリーンは操作感が非常になめらかEdge830のタッチスクリーンは操作感が非常になめらか
どちらの操作方法も一長一短だ。ボタン操作の押し間違えに関しては慣れてしまえばミスの回数は減ってくるだろうし、進化したタッチスクリーン操作のストレスフリーはライド前、走行中様々なシチュエーションでメリットを感じられる。ボディサイズ等も同じなので、どちらかを選ぶのは相当難しい問題だろう。

近年のサイクルコンピューターの多くは使用前にスマホと連携するとライド体験を豊かにしてくれる。Edge530/830も例に漏れず、Connectアプリと連携することで強みであるルーティング機能を活かしやすくなる。もちろんPCから直接送り込むこともできるが、手元のデバイスで作業が可能なことはアドバンテージだ。詳しくは後述する。

室内でEdgeの設定をしていて気がついた点が1つ。バックライトの自動調節機能が非常に細かく明るさを切り替えてくれていたのだ。室内なので電灯の明るさは一定であったものの、デバイスの角度や人の影に入った時に素早く明るさを調整してくれる。その後のライド中、普通に前を見ながら走行したまに画面を見る程度では、常に可読性の高い状態が維持されていて、明るさ変化について思うところは無し。

デバイスだけでルーティングを行えるようになったデバイスだけでルーティングを行えるようになった
さて、今回のモデルチェンジに際し大きく進化した点はルーティング機能などマップに関するポイント。Edge830ではデバイスだけでルート作成を行えるようになり、Edge530はマップが標準で搭載されるようになった。大雑把な感想となるが、様々なスポットを巡るホビーライダーはEdge830、決まったルートで練習をガンガン繰り返すレーサーにはEdge530が向いていると思う。

ライド途中にルート作成を行う場面は多くないはず。1人でフラフラっとサイクリングに出かけ、立ち寄りどころを探しながら楽しむようなライドを頻繁に行う方や、予定外にルートを変更せざるを得ない方であれば、スマホをバックポケットから取り出さずにルートを見つけられるのは非常にありがたい機能だ。スマホは緊急連絡など今や生活に欠かせない存在なので、できるかぎりバッテリーを温存しておきたい。

ガーミン Edge830ガーミン Edge830
Edge830のメリットはコンビニなどが画面に表示されること。今回のテストでは走り慣れた道、イベントで行ったため、コンビニなどの場所はある程度記憶していたので、それほど必要に駆られることがなかった。しかし、始めて訪れる土地ではコンビニの場所などを記憶しているわけもなく、毎度のように峠が目の前に迫ったタイミングで、この先にコンビニがあるかどうか不安になるので、この機能があれば非常に心強い味方となってくれるだろう。

ルーティング機能だが、現在ルートを作成できるのはEdge830、Connect mobile(スマホアプリ)、PC版Connectという3つのデバイス/ソフト。新型Edgeのリリースと合わせて、ルート作成を行えるデバイスが増加した形だ。

ガーミン・コネクトのブラウザアプリで編集部から江ノ島までのルートを作成ガーミン・コネクトのブラウザアプリで編集部から江ノ島までのルートを作成
スマホのコネクトアプリからルートを作成することができるスマホのコネクトアプリからルートを作成することができる スマホとPCで同じ様なルートが引けるスマホとPCで同じ様なルートが引ける 編集部から150km、西という条件でルートを作成編集部から150km、西という条件でルートを作成


いずれも出発地点と中継地点、ゴール地点を指定する作成方法と、出発地点と走行距離のみを指定し周回コースを作成する方法が用意されている。ルートはガーミンのシステムが自動的に導き出してくれるため、3種類のデバイスで似たようなルートが提案される。さらにEdgeがスマホ(インターネット)に接続されていなくても使用可能であるため、出先で目的地を変更したい場合など直ぐにルートを計算することが可能だ。

また、ルート設定にはガーミンが収集した走行データをもとにポピュラーな道を通るのか、最短距離を目指すのかを選ぶことができ、ロードやマウンテンバイク、グラベルなどサイクリングのジャンルも選択することができる。

CW編集部(東京都東大和市)から150kmの走行距離で西を目指す周回という設定で、実際にルート作成を行ってみた。導き出されたルートは、青梅を通過し奥多摩湖に出た後、都民の森と武蔵五日市を経由して帰着するというもの。筆者が編集部から150km以内のループでコースを作ろうとして思いつくルートとほぼ同じ。それほどポピュラーなルートを出してくれるということだ。幾つかコースを作ってみたが、思い通りの道筋を通らないケースもあることも付け加えておく。

Climb Proはグラフィックと数値でヒルクライムの情報を伝えてくれるClimb Proはグラフィックと数値でヒルクライムの情報を伝えてくれる
Edgeにダウンロードしたコースでナビゲーションシステムを利用してサイクリングを行うと「Climb Pro」という新機能のページが現れる(830、530共通機能)。これは一定条件を満たした上り坂をヒルクライムと判断し、Edgeのページに上り坂のプロフィールや、走行している場所の斜度などを表示してくれるもの。ルート上に存在するヒルクライムの数なども把握することができるため、ペース管理に役立てることができる。

実際に表示されるヒルクライムのプロフィールは、斜度別に色が塗り分けられているため、数字以上に視覚で得られる情報が直感的になる。同時にヒルクライム区間においての現在位置も示しており、これから進んでいく道の斜度の状況がわかりやすい。

色味やグラフィック、数値でヒルクライムの情報を教えてくれる色味やグラフィック、数値でヒルクライムの情報を教えてくれる
実際に走り慣れていない峠道で使用したが、非常に心強い味方となってくれペース配分も感覚的に行うことができた。もしパワーメーターを導入している方であれば、自分のペース管理をさらに行いやすくなるはず。試走の機会を設けられないレースなどでも戦略を考えるための材料とすることもできるだろう。

ストラバのセグメント情報を反映させる「ライブセグメント」機能に似ているため、ユーザーの使用状況などに応じて好みの方を選択すれば良い。自己記録やKOMを狙うのであればライブセグメントは有効だ。一方で、ストラバへはライド後にアップロードすることができるため、とりあえずヒルクライムの情報を得たい場合はガーミンのClimb Proが有効だろう。Climb Proは何よりも標準機能として既に搭載されることは大きなポイントだ。

ライド後には消費カロリー、摂取カロリー、摂取水分量を記録することが可能ライド後には消費カロリー、摂取カロリー、摂取水分量を記録することが可能
ライド後には摂取カロリーと摂取水分量を打ち込むページが現れる。この機能を使いこなすためには、ある程度の慣れが必要であると感じる。ホビーサイクリストの筆者は、どうしても水分補給、栄養補給を何気なく行っていたようで、ライド後に摂取量を思い出すのに難儀した。しかし、パフォーマンスを発揮するためには補給は欠かせない要素であるため、記録することを頭の片隅に置いておくことで、計画的な補給も行えるようになると感じる。

さて、今回はロングライドイベント取材の際にEdge830を使用したところ、延べ8時間半のライド後でバッテリーは満充電から75%までしか低下していなかった。ペアリングしたのはスマホのみ、画面の明るさ調整は70%固定という条件だったが、一般的なレース・ロングライドイベントでは必要十分なバッテリー性能を備えているといって良いだろう。恐らく12時間は余裕で使用でき、15時間位からバッテリー残量を気にしながら走ることとなりそうだ。ただ15時間を越える走行時間は非常に珍しいケースであると考えると、十二分のバッテリー性能と言えるだろう。

外部バッテリーから充電しながら使用することができる外部バッテリーから充電しながら使用することができる Edge830はコンパクトサイズに仕上げられているEdge830はコンパクトサイズに仕上げられている


新型Edgeはバイクアラームという盗難防止機能が搭載されており、アラームをセットした状態でEdgeが動きを検出するとアラーム音を発してくれる。Edge単体でセットが行える上、スマホと連携しておけば手動もしくはブルートゥースでの連携が切れた段階でアラームがセットされる。異変を検知した場合、スマホに通知が届くため、すぐに自転車のもとに駆けつけられるはず。

ライド休憩で何気なくコンビニに入店した時にバイク盗難はもちろんEdgeのみ盗まれる心配も少なくなるだろう。Edgeの電源を入れておく必要はあるものの、サイクリング中やレース会場での盗難に対しての抑止力となってくれるだろう。




ガーミン Edge 530
サイズ:50×82×20mm
ディスプレイ:2.6インチカラー
重量:75.8g
稼働時間:最大20時間
防水:IPX7
接続機能:ANT+、Bluetooth、Wi-Fi
衛星測位:GPS、GLONASS、GALILEO、みちびき(補完信号)
センサー:気圧高度計、環境光センサー、Gセンサー、心拍センサー、パワーセンサー、スピード/ケイデンスセンサー
価格:37,800円(税抜、本体のみ)、47,800円(税抜、センサーセット)

トレーニングプランとワークアウト VO2 max/トレーニング効果/トレーニングステータス
MTBダイナミクス Stravaライブセグメント(Advanced)
ClimbPro コース
ナビゲーション機能 通知機能※1、
天候アラート※1 LiveTrack※1
GroupTrack※1 ライダー間メッセージ※1
事故検出機能※1 ConnectIQ
Varia対応 Di2対応、ANT+インドアトレーナー対応
※1 Bluetooth対応スマートフォンとの接続が必要

ガーミン Edge830
サイズ:50×82×20mm
ディスプレイ:2.6インチカラー/タッチスクリーン
重量:79.1g
稼働時間:最大20時間
防水:IPX7
接続機能:ANT+(R)、Bluetooth、Wi-Fi
衛星測位:GPS、GLONASS、GALILEO、みちびき(補完信号)
センサー:気圧高度計、環境光センサー、Gセンサー、心拍センサー、パワーセンサー、スピード/ケイデンスセンサー
価格:57,800円(税抜、センサーセット)
トレーニングプランとワークアウト Vo2/トレーニング効果/トレーニングステータス
MTBダイナミクス Stravaライブセグメント(Advanced)、
ClimbPro コース
ナビゲーション機能
デバイス上のPOI検索 デバイス上目的地検索
通知機能※1 天候アラート※1
LiveTrack※1 GroupTrack※1
ライダー間メッセージ※1 事故検出機能※1
ConnectIQ Varia対応
Di2対応 ANT+インドアトレーナー対応
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