ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)がグランツールの総合上位から姿を消してはや数年が経つ。本人はすでにグランツールの総合成績を諦めているのが現状。しかし彼を育てたかつての監督や現チーム監督は、クネゴが2004年当時のレベルに戻れると確信している。

2004年のジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、当時サエコ)2004年のジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、当時サエコ) photo:Cor Vosジュゼッペ・マルティネッリ監督が最初にクネゴに目を付けたのは、1998年のジュニアレースでのこと。それ以降、マルティネッリとクネゴの関係は2007年まで続いた。今でもマルティネッリの心にはクネゴの雄姿が刻み込まれている。

「いつからか、彼のバランスが崩れ始めたんだ。彼にはグランツールで総合成績を狙うオールラウンダーとしての道を歩んで欲しかった。でも彼は自分で進むべき道を選び、グランツールから離れて行った」。現在アスタナチームでアルベルト・コンタドール(スペイン)の指揮を執るマルティネッリ監督は、かつてのチームリーダーをそう回想する。

2004年のジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、当時サエコ)2004年のジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、当時サエコ) photo:Cor Vos「彼はもっともっと勝てるはず。グランツールで総合優勝を飾るポテンシャルをまだ持ち合わせている。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでクネゴはそれを感じたと思うよ。頂上ゴールで2回優勝して、グランツール総合優勝の可能性に気付いたと思う」。

「近年、クネゴは1年間で2つのグランツールに出場している。ジロかブエルタで真剣に総合成績を狙い、そしてツールでステージ優勝に的を絞れば、もっと良い結果が出るはずだ。グランツールでの総合3位や総合4位の成績も重要だが、近年はステージ優勝者がより讃えられる傾向がある。ステージ優勝はスポンサーにとっても大歓迎。人々の記憶にも残りやすいんだ」。

2008年のアムステル・ゴールドレースで優勝したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)2008年のアムステル・ゴールドレースで優勝したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:Cor Vos南アフリカ出身のブレント・コープランドがランプレチームの監督に着任したのは2009年の始め。それ以来、コープランドはクネゴの担当コーチを務めている。マルティネッリ監督と比べて2人の年齢差が小さいためか、コープランドとクネゴの関係はとても気楽で親密な印象だ。

コープランドもマルティネッリ監督の意見には賛成している。コープランドの希望は、2011年のジロでクネゴが再びマリアローザ戦線に戻ってくること。しかしそれは同時にアルデンヌ・クラシックでの成績不振に繋がる恐れも。

ジロ・デ・イタリア開幕前の記者会見に出席したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)ジロ・デ・イタリア開幕前の記者会見に出席したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:Kei Tsuji「彼がグランツールで総合成績を狙えるポテンシャルの持ち主であることに間違いはない。昨年ブエルタで飾ったステージ2勝の意味は大きい。だが実際にそれを実現するためには、完全にグランツールシフトでトレーニングを積む必要がある。特にタイムトライアル能力の改善は必須だ」。

「アルデンヌ・クラシックとグランツールで活躍する選手は似通っているけど、トレーニング方法は大きく違う。彼がアルデンヌを狙い続ければ続けるほど、ジロ・デ・イタリアの総合成績は遠ざかって行くだろうね」。

具体的に説明すると、ジロでマリアローザを狙うオールラウンダーは、1日に獲得標高差4000〜5000mほどの山岳トレーニングを積む必要がある。その一方で、アルデンヌを狙うクネゴのトレーニングにおける1日の獲得標高差は約2000m。標高差が小さい分、強度の大きなインターバルを取り入れ、スピードトレーニングに力を注いでいる。

「現実的には、アルデンヌとジロの2つをどうに狙うのは無理がある。イヴァン・バッソを始めとするジロ狙いのオールラウンダーたちは、標高差のある山岳トレーニングに傾倒しているから、アルデンヌで結果が出せない。彼らは最初からアルデンヌで結果を残そうとは思っていない。アルデンヌで勝負に絡むためには、やはりインターバルトレーニングが欠かせないんだ」。

今年のジロで、クネゴはランプレのエースナンバーをつける。しかし目標は総合成績ではなくステージ優勝。ここ数年の総合成績をチェックしておくと、2005年18位、2006年4位、2007年5位、2008年欠場、2009年18位。“ピッコロ・プリンチペ”は今、進路を完全に決める時期にある。

text: Gregor Brown
photo: Kei Tsuji, Cor Vos
translation: Kei Tsuji