第106回ツール・ド・フランスを締めくくるパリ・シャンゼリゼの集団スプリントでカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が3勝目を達成。トーマスと祝福しながら並んでフィニッシュしたエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)が総合優勝に輝いた。


7月28日(日)第21ステージ
ランブイエ〜パリ・シャン=ゼリゼ
距離:128km
獲得標高差:
天候:晴れ時々曇り
気温:21〜24度


7月28日(日)第21ステージ ランブイエ〜パリ・シャン=ゼリゼ 128km7月28日(日)第21ステージ ランブイエ〜パリ・シャン=ゼリゼ 128km photo:A.S.O.7月28日(日)第21ステージ ランブイエ〜パリ・シャン=ゼリゼ 128km7月28日(日)第21ステージ ランブイエ〜パリ・シャン=ゼリゼ 128km photo:A.S.O.
シャンパンで乾杯しながらパリを目指すチームイネオスシャンパンで乾杯しながらパリを目指すチームイネオス photo:CorVos


チームイネオスがシャンゼリゼ通りに到着

前日のフィニッシュ地点バル・トランスから大会主催者が用意したバスで下山し、チャーター機でシャンベリー空港からパリのオルリー空港に降り立ったのは155名の選手たち。先着していたチームバスに乗って、選手たちはパリ南西部に位置するランブイエに向かった。なお、ランブイエやヴェルサイユを含むイヴリーヌ県は2023年まで最終ステージのスタート地点となることが決まっている。

第19ステージと第20ステージの短縮によって総走行距離が3,480kmから3,365.8kmに短くなった第106回ツール。ランブイエをスタートした選手たちはしばらくのパレード走行を楽しんだのち、4月15日に火災に見舞われたノートルダム大聖堂の近くを通ってヌフ橋を渡ってルーヴル美術館を通過。チームイネオスがマイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア)をエスコートしながら、シャンゼリゼ周回コースに入った。

3日前の7月25日に観測史上最高となる42.6度という猛烈な暑さに見舞われたパリだが、この日は最高気温24度の涼しげな風が吹いた。凱旋門の周回路やコンコルド広場、ルモニエトンネルを含むいつもの7km周回コースに入ると、いよいよステージ優勝に向けた動きが始まる。逃げの切っ掛けを作ったのはトーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト)とオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)で、ここにヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・メリダ)とニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が追いついた。

合計8周する周回コースを平均スピード50km/h前後で逃げ続けた先頭4名を、スプリンターチーム率いるメイン集団が20秒遅れで追いかける。ドゥクーニンク・クイックステップやロット・スーダル、ユンボ・ヴィズマ、UAEチームエミレーツを先頭に石畳が敷かれたシャンゼリゼ通りを駆け抜ける。やがて先頭からポリッツとフライレが脱落し、最後まで粘ったスクーリーとトラトニクも残り2周突入後すぐに吸収された。

シャンゼリゼ周回コース平均スピード
1周目:52.2km/h
2周目:49.6km/h
3周目:49.6km/h
4周目:50.2km/h
5周目:50.1km/h
6周目:49.1km/h
7周目:53.2km/h
8周目:53.0km/h

コンコルド広場からシャンゼリゼ通りに入るコンコルド広場からシャンゼリゼ通りに入る photo:Kei Tsuji
シャンゼリゼの周回をこなすマイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)シャンゼリゼの周回をこなすマイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
1周目に先行を開始したトーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト)ら1周目に先行を開始したトーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト)ら photo:Kei Tsuji
集団前方で周回をこなすエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)集団前方で周回をこなすエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
20秒前後のリードで逃げる先頭4名20秒前後のリードで逃げる先頭4名 photo:Kei Tsuji
凱旋門の周回路を駆け抜ける凱旋門の周回路を駆け抜ける photo:Luca Bettini
シャンゼリゼ通りに到着したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)シャンゼリゼ通りに到着したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji


先行するライバルたちを差し切った『ポケットロケット』ユアン

ポイント賞4位のマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)がメカトラで戦線を離れる中、ボーラ・ハンスグローエやドゥクーニンク・クイックステップ、アルケア・サムシック、ロット・スーダル、UAEチームエミレーツが先頭で競り合いながら最終周回へ。グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)のアタックも吸収され、ミッチェルトン・スコットも先頭争いに加わってフラムルージュ(残り1kmアーチ)に差し掛かる。

少し緩んだ隙を突いてロット・スーダルが先頭へ。そこからドゥクーニンク・クイックステップが先頭を奪ってコンコルド広場を抜け、残り350mの最終コーナーをクリア。マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)のために最終リードアウトを開始したミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)の後ろからエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)がロングスプリントを仕掛けた。

残り280mから加速したボアッソンハーゲンが一気に先頭に立ったが、その後ろからリケーゼやニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)が加速。さらにその後ろからユアンとディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が別ラインで加速していく。

『非公式のスプリンターの世界選手権』とも呼ばれるシャンゼリゼの最終スプリント。55.2km/hで最終コーナーを曲がり、そこから65.8km/hまで加速したユアンがフィニッシュ手前でライバルたちを差し切る。同じく後半に伸びたフルーネウェーヘンも届かず、ハンドルを投げ込んだユアンが先着した。

凱旋門を通過するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)凱旋門を通過するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Luca Bettini
スプリンターチームが強力にメイン集団を牽引スプリンターチームが強力にメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji
先行したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)を追い抜くマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら先行したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)を追い抜くマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら photo:Luca Bettini
フェンスぎりぎりを突き進んだカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)フェンスぎりぎりを突き進んだカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
先行するライバルたちを差し切ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)先行するライバルたちを差し切ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
手を繋いでフィニッシュするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)とゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)手を繋いでフィニッシュするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)とゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:Kei Tsuji


ハットトリックを達成したEWANとツールを制したEGAN

「とても混沌としたスプリントだった。番手を下げていたので、少しずつポジションを上げながら右側に隙間を見つけてスプリント。幸い全員を差し切るスピードが自分にはあったんだ」と、今大会ステージ3勝目を飾ったユアン。他のライバルスプリンターたち(ヴィヴィアーニ、サガン、フルーネウェーヘン、ファンアールト、テウニッセン)がステージ1勝にとどまる中、ユアンだけが複数勝利を飾った。

「信じられない。シャンゼリゼを走るのは現実的とは思えない感覚。ツール前半は低迷して勝てないんじゃないかとも思った。でも後半にかけて信じられないような成功をつかむことができた。8年前にシャンゼリゼを初めて訪れた時、いつの日かここで勝ちたいと誓ったんだ。その夢が初出場のツールで叶うなんて」。オーストラリア人選手によるシャンゼリゼ制覇は2002年のロビー・マキュアン(オーストラリア)以来。ツール初出場選手によるシャンゼリゼ制覇は2004年のトム・ボーネン(ベルギー)以来となる。

そして第106回ツールの総合優勝は正式にベルナルの手に。「言葉が出てこない。ツールで勝ったのに、まだ信じることができない。状況を理解するのに少なくとも数日はかかると思う。これは家族の勝利であり、彼らと抱き合いたい。この幸せな気持ちをどうやって表現したらいいのかわからない」と、戦後ツール最年少となる22歳で総合優勝に輝いたベルナルは語る。今大会パリにたどり着いた選手の中で最も若い選手でもあるベルナルはマイヨブランも手にしている。

コロンビア人選手初のツール総合優勝を果たしたベルナル。パリ〜ニースで総合優勝後、エースとして出場予定だったジロ・デ・イタリアの直前に鎖骨を骨折。レーススケジュールを組み直し、6月のツール・ド・スイスで総合優勝を飾って2度目のツールに挑んでいた。「コロンビアが待ち続けたツールの勝利。偉大なサイクリストを多く輩出しながらも、コロンビアは勝てていなかったんだ」。

チームスカイ時代から数えて、チームイネオスは8年間で7度目の総合優勝を達成。ディフェンディングチャンピオンのゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が総合2位に入って総合ワンツー勝利。総合3位にはグランツール自身初総合表彰台のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)が入った。

ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が7度目のマイヨヴェール獲得。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)がマイヨアポワを獲得し、連日フランスを沸かせたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が総合敢闘賞に輝いている。

シャンゼリゼを制したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)シャンゼリゼを制したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
総合敢闘賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)総合敢闘賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)、総合1位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)、総合3位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)、総合1位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)、総合3位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Luca Bettini
コロンビア応援団に挨拶するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)コロンビア応援団に挨拶するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
チーム総合成績1位に輝いたモビスターチーム総合成績1位に輝いたモビスター photo:Luca Bettini
マイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、マイヨジョーヌ&マイヨブランのエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)、マイヨアポワのロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)マイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、マイヨジョーヌ&マイヨブランのエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)、マイヨアポワのロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Luca Bettini
ツール・ド・フランス2019第21ステージ結果
1位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)3:04:08
2位ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
3位ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)
4位マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ)
5位エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
6位アンドレ・グライペル(ドイツ、アルケア・サムシック)
7位マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
8位ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
10位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)82:57:00
2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)0:01:11
3位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)0:01:31
4位エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)0:01:56
5位ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)0:04:05
6位ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)0:04:23
7位リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)0:05:15
8位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)0:05:30
9位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)0:06:12
10位ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)0:07:32
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)316pts
2位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)248pts
3位エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)224pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)86pts
2位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)78pts
3位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)75pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)82:57:00
2位ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)0:23:58
3位エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)0:58:20
チーム総合成績
1位モビスター248:58:15
2位トレック・セガフレード0:47:54
3位チームイネオス0:57:52
敢闘賞
第1ステージステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
第3ステージティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
第4ステージミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
第5ステージトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
第6ステージティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
第7ステージヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)
第8ステージトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
第9ステージティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)
第10ステージナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)
第11ステージトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
第12ステージマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
第14ステージエリー・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック)
第15ステージミケル・ランダ(スペイン、モビスター)
第16ステージアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)
第17ステージマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
第18ステージグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
第20ステージヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
総合敢闘賞ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
text:Kei Tsuji in Paris, France