アルプス3連戦開始を翌日に控えたツール・ド・フランス第17ステージで33名の大逃げ決まる。最終山岳で独走に持ち込んだマッテオ・トレンティン(ミッチェルトン・スコット)が自身3度目のステージ優勝を飾り、チームに今大会4勝目をもたらした。



7月24日(水)第17ステージ
ポン・デュ・ガール〜ギャップ
距離:200km
獲得標高差:2,000m
天候:晴れ時々雨
気温:32〜39度


7月24日(水)第17ステージ ポン・デュ・ガール〜ギャップ 200km7月24日(水)第17ステージ ポン・デュ・ガール〜ギャップ 200km photo:A.S.O.7月24日(水)第17ステージ ポン・デュ・ガール〜ギャップ 200km7月24日(水)第17ステージ ポン・デュ・ガール〜ギャップ 200km photo:A.S.O.
水道橋ポン・デュ・ガールを通ってスタートに向かう水道橋ポン・デュ・ガールを通ってスタートに向かう photo:Kei Tsuji
水道橋ポン・デュ・ガールを背に、マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)水道橋ポン・デュ・ガールを背に、マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


『逃げ屋』のラストチャンスに挑んだ33名

アルプス山脈のギャップに向かって急ぎ足でプロヴァンス地方を駆ける第17ステージ。ローマ時代にニームの町に水を届けるために作られた水道橋ポン・デュ・ガールの真横をスタートして、強風に注意のローヌ渓谷を横断し、禿山モンヴァントゥーを右手に見ながら、アルプス山脈の入り口に位置するギャップを目指す。残り8.5km地点に設定された3級山岳サンティネル峠(距離5.2km/平均5.4%)がピュアスプリンターの集団クリアを阻止するため、逃げ切り向きのレイアウトとして注目を集めた。

ポン・デュ・ガールのスタート地点に登場したのはルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)とセース・ボル(オランダ、サンウェブ)を除く160名。スタート直後から『逃げ屋』たちが活発に集団先頭でアタックを繰り返し、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)といったトップ選手を含む34名が先行を開始。タイム差を広げるために高速巡航する逃げ集団からマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)がパンクで脱落したため、33名の逃げが決まった。

逃げ集団を形成した33名
クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)28分25秒遅れ
アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)37分54秒遅れ
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
セルジオルイス・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
スヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス)
アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)
グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
イェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)
ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)
オマール・フライレ(スペイン、アスタナ)
サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)
トーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)
カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)
アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)
ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)

33名の大きな逃げ集団が先行する33名の大きな逃げ集団が先行する photo:Kei Tsuji
33名の大きな逃げ集団が先行する33名の大きな逃げ集団が先行する photo:Kei Tsuji
逃げ集団を牽引するグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)逃げ集団を牽引するグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) photo:CorVos


プロヴァンスを包む最高気温39度の猛暑と、局所的な大雨

逃げに選手を送り損ねたトタル・ディレクトエネルジーがしばらくメイン集団を牽引したものの、逃げ集団は徐々にリードを広げながら平坦路を駆け抜ける。逃げ集団の中で総合成績が最も良いのはクサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)で、マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)から28分25秒遅れ。やがてトタル・ディレクトエネルジーが踏み止め、ドゥクーニンク・クイックステップの集団牽引が始まると、タイム差はぐんぐんと拡大し始めた。

最初の1時間を51.7km/hという猛烈なスピードで駆け抜けた逃げ集団は、10kmごと1分というペースでタイム差を広げていく。ステージ折り返しの100km地点でタイム差は10分20秒。実質的に先頭33名の逃げ切りが決まった。

トゥーンス、フライレ、トレンティン、ファンアーフェルマート、コスタ、モレマ、デヘント、ボアッソンハーゲンという8名のステージ優勝経験者を含む逃げ集団は、ステージ後半に入ってもタイム差を広げていった。フランス全土を覆う熱波によってこの日の最高気温は39度まで上昇。真夏の暑さを考慮して、タイムカットはステージ優勝者のタイムではなくメイン集団のタイムを基準に計算されることに。そして、湿度を含む暑さは積乱雲を生み出し、局所的に滝のような雨を降らせた。

プロヴァンス地方の田舎町を通過するプロヴァンス地方の田舎町を通過する photo:Kei Tsuji
プロヴァンス地方の渓谷を進むメイン集団プロヴァンス地方の渓谷を進むメイン集団 photo:CorVos
3級山岳サンティネル峠で飛び出したマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)3級山岳サンティネル峠で飛び出したマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji


欧州王者トレンティンが3級山岳サンティネル峠で独走に持ち込む

フィニッシュまで40kmを切り、タイム差が15分まで広がったところで逃げ集団から抜け出す動きが始まる。モレマやポリッツらがアタックの口火を切り、残り26km地点でオス、アスグリーン、グジャール、イサギレ、スクーリー、トレンティン、ファンアーフェルマート、ラエンゲン、スクインシュ、ペリション、キングの11名に。そこから、最後の3級山岳サンティネル峠の登坂開始を待たずに、トレンティンが飛び出した。

白地に青色の3本ラインと3つの星が入るヨーロッパチャンピオンジャージを着るトレンティンが独走。3級山岳サンティネル峠をペースを崩すことなく登り続けたトレンティンをペリションが単独追走し、ファンアーフェルマートを含む後方の追走グループからはアスグリーンがカウンターアタックする。

観客であふれた3級山岳サンティネル峠を先頭で登りきったトレンティンは30秒弱のアドバンテージをもって下り区間へ。ペリションを追い抜いたアスグリーンが2番手に浮上したものの、ステージ敢闘賞獲得を決めたトレンティンが谷あいの街ギャップまで独走を貫いた。

トレンティンが独走勝利。37秒遅れのステージ2位には連日マイヨジョーヌのために集団を牽引しているアスグリーンが入り、モレマやトゥーンス、イサギレらと下りをこなしたファンアーフェルマートが41秒差のステージ3位に。平穏に3級山岳サンティネル峠をやり過ごしたメイン集団は、マイヨジョーヌのアラフィリップを先頭に20分10秒遅れでフィニッシュした。

3級山岳サンティネル峠の下りをこなすマイヨジョーヌ3級山岳サンティネル峠の下りをこなすマイヨジョーヌ photo:Kei Tsuji
3級山岳サンティネル峠の下りをこなすメイン集団3級山岳サンティネル峠の下りをこなすメイン集団 photo:Kei Tsuji
独走でフィニッシュするマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)独走でフィニッシュするマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Luca Bettini
20分以上遅れてフィニッシュしたメイン集団20分以上遅れてフィニッシュしたメイン集団 photo:Luca Bettini


ミッチェルトン・スコットが逃げでステージ4勝目をマーク

「独走で勝つことは予想していなかった。登りで誰かのアタックに反応するよりも、先頭で自分のペースを保って登る方が得策だと思ったので、最後の3級山岳の前に2〜3回アタックして独走を開始。これまでの2勝は集団スプリントでの勝利だったので、独走勝利は特別な気持ちだ」と、リードを失うことなく3級山岳サンティネル峠をクリアし、安定したダウンヒルで独走勝利を飾ったトレンティンは語る。

「今日こそステージ優勝のチャンスがあると思っていた。そして、明日から3日間極めて厳しいステージが続くので、今日がラストチャンスだったんだ。今日は脚よりも気持ちで勝利をつかんだ」とヨーロッパチャンピオンはコメントする。ミッチェルトン・スコットは第9ステージ(インピー)、第12ステージ(Sイェーツ)、第15ステージ(Sイェーツ)に続くステージ4勝目を掴んだ。

平均スピード45.9km/hというハイペースで獲得標高差2,000mの200kmコースを走りきったトレンティン。対して20分以上遅れたメイン集団の平均スピードは42.6km/hだった。ステージ20位に終わりながらも、メイン集団から17分17秒差で逃げ切ったムーリッセが総合順位を19位から13位まで上げることに成功している。そして、マイヨジョーヌのアラフィリップは総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)と総合タイム差1分35秒で翌日から始まるアルプス山岳3連戦に挑むことに。

またこの日、ステージ中盤のポジション争いの際に互いを攻撃し合ったとして、ルーク・ロウ(イギリス、チームイネオス)とトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)に失格処分が与えられている。

チームに4勝目をもたらしたマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)チームに4勝目をもたらしたマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Luca Bettini
マイヨジョーヌを着てアルプス初日を迎えることになったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)マイヨジョーヌを着てアルプス初日を迎えることになったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
ブルグハートとフィニッシュに向かうペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ブルグハートとフィニッシュに向かうペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji

ツール・ド・フランス2019第17ステージ結果
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) 4:21:36
2位 カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:00:37
3位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 0:00:41
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
5位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)
6位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)
7位 ダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:44
8位 ピエールリュック・ペリション(フランス、コフィディス) 0:00:50
9位 トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)
10位 ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) 0:00:55
34位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:20:10
DNS ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
DNS セース・ボル(オランダ、サンウェブ)
DSQ トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)
DSQ ルーク・ロウ(イギリス、チームイネオス)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 69:39:16
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) 0:01:35
3位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 0:01:47
4位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:01:50
5位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) 0:02:02
6位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:02:14
7位 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) 0:04:54
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:05:00
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) 0:05:33
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) 0:06:30
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 309pts
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 224pts
3位 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 203pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 64pts
2位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 50pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 38pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) 69:41:18
2位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) 0:13:31
3位 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:42:00
チーム総合成績
1位 トレック・セガフレード 208:59:41
2位 モビスター 0:08:13
3位 UAEチームエミレーツ 0:46:23
text:Kei Tsuji in Gap, France