2009年3月14日に開催されたパリ〜ニース第7ステージは、リーダージャージのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が遅れるという大波乱の展開を見せた。山岳で形成された先頭グループから飛び出したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)が優勝。同時にリーダージャージを獲得した。

いくつもの上りを越えていくいくつもの上りを越えていく photo:Cor Vosコンタドールが圧倒的な走りでリーダージャージを奪回してから一夜明け、パリ〜ニースはこの日も厳しい山岳ステージ。序盤から断続的にカテゴリー1級から3級まで計10個の山岳ポイントが登場し、最後は3級山岳ファイアンスを駆け上がってゴールとなる。

レースは序盤からアタックが繰り返され、65km地点で10名が飛び出すとようやく集団は沈静化。逃げグループの中には総合16位のロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)やフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)が入った。

湖を望む高速ダウンヒル湖を望む高速ダウンヒル photo:Cor Vos山岳賞3位のステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)が逃げに乗ったことで、トニ・マルティン(ドイツ)の山岳賞ジャージを守りたいチームコロンビアが集団を牽引したが、オジェが山岳賞に興味を示さないことが明らかになるとペースダウン。集団はアスタナがコントロール役を担った。

タイム差は2分30秒を上限に縮まり、この日最大の1級山岳ボリガイエ峠が始まると、先頭グループからマーティン・ベリトス(スロバキア、ミルラム)がアタック。他の逃げメンバーが集団に飲み込まれる中、ベリトスは単独で平均勾配5.1%・長さ10.4kmの上りに挑んだ。

序盤から逃げたフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)やカルステン・クローン(オランダ、サクソバンク)序盤から逃げたフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)やカルステン・クローン(オランダ、サクソバンク) photo:Cor Vosメイン集団はケースデパーニュのペースアップによって人数を減らし、アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)のアタックをきっかけに崩壊。イエロージャージのコンタドールやフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)がこの動きに乗じた。

ベリトスは辛うじて1級山岳を先頭で通過したが、まもなく後続コンタドールグループに吸収。代わって先頭ではコンタドール、コロム、LLサンチェスのスパニッシュトリオが形成され、シュレク、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)が追い上げる展開に。

1級山岳ボリガイエ峠で先頭グループを形成するアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)1級山岳ボリガイエ峠で先頭グループを形成するアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosフォイクトの献身的な引きによってシュレクらは先頭グループに追いつき、先頭ではコンタドール、コロム、LLサンチェス、シュレク、フォイクト、シャヴァネルのトップ選手が一堂に会す。ここからは、各選手アタックに次ぐアタックでコンタドールを振るい落としに掛かった。

アタックを成功させたのは、ダウンヒルスペシャリストのLLサンチェスだ。ラスト16kmから独走を開始したLLサンチェスは、後続を引き離してゴールへ。その勢いは最後まで止まらず、独走のままゴールに飛び込んだ。

下りで形成されたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)を含む6名の先頭グループ下りで形成されたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)を含む6名の先頭グループ photo:Cor Vosその後方では畳み掛けるようにライバルがアタックを繰り返し、ついにコンタドール脱落。単独での追走を余儀なくされたイエロージャージのコンタドールは後続集団に吸収され、最後の上りで置き去りに。コンタドールは完全に輝きを失った。

シュレク、シャヴァネル、コロムは50秒遅れでゴール。追走グループはダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)を先頭に1分31秒遅れでゴール。コンタドールは2分53秒遅れた。

独走のままゴールに飛び込むルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)独走のままゴールに飛び込むルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos劇的な逃げ切り勝利を飾ったLLサンチェスは念願のリーダージャージを獲得。最終日を前に総合トップに立ったLLサンチェスは「ツール・メディテラネアンで走ったことがあったから今日のコースは良く知っていた。最初から攻撃を計画していて、すべてがその計画通りに進んだんだ。今日のコースは僕のキャラクターとスタイルにバッチリ適していた」とコメント。

親友であるコンタドールが崩壊したことについては「アルベルト(コンタドール)に何が起こったのかは分からない。どんな偉大なチャンピオンでも調子の悪い日があるし、誰でもその隙を突くチャンスがあるんだ。彼は親友だけどこれは真剣レース。重要なことはスペイン人選手がリーダージャージを着ていること」と語っている。

失意のアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)失意のアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos失意の表情でゴールしたコンタドールは「タフなレースだった。ラスト65kmからはアタックが連続する混沌とした状態になって、ラスト40kmからは完全に孤立してしまったんだ。まだアタックに反応する余裕があったけど、ラスト15kmで完全に息絶えてしまった。もう何も力が残っていなかった。ライバルたちは一丸となって僕を攻撃してきたけど、それがロードレースだ」と語る。

親友のステージ優勝については「レース終盤にルイスレオン(サンチェス)と話したとき、彼はステージ優勝を狙いたいと言っていたんだ。だけど今彼はリーダージャージを着ている。それは不快な事実だけど、親友として彼を祝福したい」とコメント。

コンタドールは総合4位にダウン。すでにコンタドールは先に目を向けている。「今の目標はこの疲れから回復すること。非常に厳しいパリ〜ニースだった。個人タイムトライアルと山岳ではいい結果を残すことができたし、決してバランスは悪くない。これはツール・ド・フランスに向けての一歩に過ぎない」と前向きなコメントを残している。

選手コメントはレース公式サイト、およびアスタナ公式サイトより。

パリ〜ニース2009第7ステージ結果
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)4h43'34"
2位 アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)+50"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)
5位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)+56"
6位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)+1'31"
7位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、サイレンス・ロット)
9位 クリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)
10位 アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)
33位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+2'53"

個人総合成績
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)28h05'45"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)+1'09"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'21"
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+1'50"
5位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)+1'59"
6位 アントニオ・コロム(スペイン、カチューシャ)+2'16"
7位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)+2'29"
8位 ジョナタン・イヴェール(フランス、スキル・シマノ)+2'57"
9位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、Bboxブイグテレコム)+3'37"
10位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)+4'00"

ポイント賞
シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)

山岳賞
トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)

新人賞
ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)