2019/04/29(月) - 09:21
冷たい雨が濡らす256kmの難コースで行われた第105回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。最後の勝負所コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでライバルたちを振り切ったヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)がリエージュ街中のフィニッシュラインまで独走した。
天気予報の通り、冷たい雨に包まれたベルギー・ワロン地域最大の都市リエージュ。そこからバストーニュまで南下する往路は雨降りが続き、リエージュまで北上する復路に入ると雨脚は弱まり、やがて春の優しい太陽が照らすほど天候が回復。とは言え全長256km/獲得標高差4,500mのアップダウンコースはほぼ全てウェットな状態が保たれた。
リエージュを離れてすぐにリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)ら8名の逃げグループが形成され、ベルギーのドゥクーニンク・クイックステップとロット・スーダル率いるメイン集団を引き離す。最大10分30秒まで広がったタイム差が6分まで縮まった状態で折り返し地点バストーニュを通過した。
リエージュに向けて北上する復路が始まると、フィニッシュまで100km以上を残してドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを敢行する。この攻撃によってメイン集団は80名ほどに縮小。2006年、2008年、2015年、2017年の優勝者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はメイン集団から脱落するとともにバイクを降りた。また、2013年の優勝者ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)も体調不良のため早々にリタイアを決めている。
フィニッシュまで95kmを残した「No.3 コート・ド・モンルソア」に差し掛かると、ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が同じ逃げメンバーを振り切って独走を開始。そこから20km前後独走したベルナールだったが、「No.6 コート・ド・ラ・オートルヴェ」で飛び出したグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)らに追い抜かれていく。この主要選手を含む精鋭グループは「No.7 コル・ドゥ・ロジエ」でメイン集団に引き戻された。
続いてタネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト)とオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が動くと、ここにウィネル・アナコナ(コロンビア、モビスター)やダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)らが合流して新たに先頭グループを形成する。
40秒程度のリードで「PHIL」や「ジルベール」の路上ペイントが施された「No.9 コート・ド・ラ・ルドゥット」に差し掛かったこの先頭グループの中から再びカンゲルトが加速。メイン集団から飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)とダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)、パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭カンゲルトまでブリッジし、先頭4名でいよいよ「No.11 コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」に突入した。
コース変更によりフィニッシュの15km手前に移動し、最後の勝負所となったこのコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで先頭4名が引き戻されると、そこからマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)がカウンターアタック。平均勾配が11%に達する登りで、ウッズに続いてヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が加速する。
水曜日のフレーシュ・ワロンヌを制した優勝候補の筆頭ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がフルサングの加速についていけない一方で、先頭固定でペースを上げ続けるフルサングにダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)とウッズだけが食らいつく。やがてウッズが脱落し、急勾配の頂上を越えた緩斜面で加速したフルサングがフォルモロをふるい落とした。
下り区間で後輪を滑らせてあわや転倒というシーンも見られたが、ペースを繋いでリエージュまで独走したフルサング。後方ではフォルモロが単独追走を続け、さらにその後方にヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)らを含む追走グループという展開。登りで最も強い選手は平地でも速かった。フルサングがリエージュまで逃げ切った。
「アルデンヌ3連戦を最高の形で締めくくることができた!今までどうして勝てなかったのか分からないけど、今シーズンは全てが上手く進んでいて、チームも素晴らしい状態にある。今日もチームメイトに完璧な形でリードアウトされてラ・ロッシュ・オ・フォーコンに挑むことができたんだ」と、フィニッシュ後に妻と抱き合って喜んだフルサングは語る。
フルサングが10回目のリエージュで手にしたモニュメント初勝利。リエージュでは2015年に9位、2018年に10位という成績を残しているが表彰台の経験はなかった。「2009年と2010年にチームメイトだったアンディ(シュレク)の勝ち方がインスピレーションになったんだ。自分は彼と似た脚質の選手。逃げ切れると信じて挑んだ。仮に集団内に埋もれてしまうと勝機はないので、ラ・ロッシュ・オ・フォーコンの山頂がフィニッシュだという気持ちでアタックした。だから、ウッズが脱落して、続いてフォルモロと数メートルの差が生まれたところで、そのまま全開で行こうと決めた。そこまで差が生まれるような下りではなかったので、オールオアナッシングの気持ちで突っ込んだ。後輪を滑らせてヒヤリとするシーンもあったけど何とか持ちこたえることができた」。
今シーズンのフルサングの安定感は素晴らしく、ルタ・デル・ソル総合1位、ストラーデビアンケ2位、ティレーノ〜アドリアティコ総合3位、アムステルゴールドレース3位、フレーシュ・ワロンヌ2位、そしてリエージュ1位。アルデンヌクラシック3連戦を3位、2位、1位とステップアップする形で締めくくった。1984年生まれの34歳フルサングは「この先、まだあと数年は良いシーズンを送れると思う」とコメント。フルサングはツール・ド・フランスに出場する予定だ。
そのほかの選手たちのコメントは別記事で紹介します。
天気予報の通り、冷たい雨に包まれたベルギー・ワロン地域最大の都市リエージュ。そこからバストーニュまで南下する往路は雨降りが続き、リエージュまで北上する復路に入ると雨脚は弱まり、やがて春の優しい太陽が照らすほど天候が回復。とは言え全長256km/獲得標高差4,500mのアップダウンコースはほぼ全てウェットな状態が保たれた。
リエージュを離れてすぐにリリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)ら8名の逃げグループが形成され、ベルギーのドゥクーニンク・クイックステップとロット・スーダル率いるメイン集団を引き離す。最大10分30秒まで広がったタイム差が6分まで縮まった状態で折り返し地点バストーニュを通過した。
リエージュに向けて北上する復路が始まると、フィニッシュまで100km以上を残してドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを敢行する。この攻撃によってメイン集団は80名ほどに縮小。2006年、2008年、2015年、2017年の優勝者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はメイン集団から脱落するとともにバイクを降りた。また、2013年の優勝者ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)も体調不良のため早々にリタイアを決めている。
フィニッシュまで95kmを残した「No.3 コート・ド・モンルソア」に差し掛かると、ジュリアン・ベルナール(フランス、トレック・セガフレード)が同じ逃げメンバーを振り切って独走を開始。そこから20km前後独走したベルナールだったが、「No.6 コート・ド・ラ・オートルヴェ」で飛び出したグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)らに追い抜かれていく。この主要選手を含む精鋭グループは「No.7 コル・ドゥ・ロジエ」でメイン集団に引き戻された。
続いてタネル・カンゲルト(エストニア、EFエデュケーションファースト)とオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が動くと、ここにウィネル・アナコナ(コロンビア、モビスター)やダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)らが合流して新たに先頭グループを形成する。
40秒程度のリードで「PHIL」や「ジルベール」の路上ペイントが施された「No.9 コート・ド・ラ・ルドゥット」に差し掛かったこの先頭グループの中から再びカンゲルトが加速。メイン集団から飛び出したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)とダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)、パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭カンゲルトまでブリッジし、先頭4名でいよいよ「No.11 コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」に突入した。
コース変更によりフィニッシュの15km手前に移動し、最後の勝負所となったこのコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで先頭4名が引き戻されると、そこからマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)がカウンターアタック。平均勾配が11%に達する登りで、ウッズに続いてヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が加速する。
水曜日のフレーシュ・ワロンヌを制した優勝候補の筆頭ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がフルサングの加速についていけない一方で、先頭固定でペースを上げ続けるフルサングにダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)とウッズだけが食らいつく。やがてウッズが脱落し、急勾配の頂上を越えた緩斜面で加速したフルサングがフォルモロをふるい落とした。
下り区間で後輪を滑らせてあわや転倒というシーンも見られたが、ペースを繋いでリエージュまで独走したフルサング。後方ではフォルモロが単独追走を続け、さらにその後方にヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)やアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)らを含む追走グループという展開。登りで最も強い選手は平地でも速かった。フルサングがリエージュまで逃げ切った。
「アルデンヌ3連戦を最高の形で締めくくることができた!今までどうして勝てなかったのか分からないけど、今シーズンは全てが上手く進んでいて、チームも素晴らしい状態にある。今日もチームメイトに完璧な形でリードアウトされてラ・ロッシュ・オ・フォーコンに挑むことができたんだ」と、フィニッシュ後に妻と抱き合って喜んだフルサングは語る。
フルサングが10回目のリエージュで手にしたモニュメント初勝利。リエージュでは2015年に9位、2018年に10位という成績を残しているが表彰台の経験はなかった。「2009年と2010年にチームメイトだったアンディ(シュレク)の勝ち方がインスピレーションになったんだ。自分は彼と似た脚質の選手。逃げ切れると信じて挑んだ。仮に集団内に埋もれてしまうと勝機はないので、ラ・ロッシュ・オ・フォーコンの山頂がフィニッシュだという気持ちでアタックした。だから、ウッズが脱落して、続いてフォルモロと数メートルの差が生まれたところで、そのまま全開で行こうと決めた。そこまで差が生まれるような下りではなかったので、オールオアナッシングの気持ちで突っ込んだ。後輪を滑らせてヒヤリとするシーンもあったけど何とか持ちこたえることができた」。
今シーズンのフルサングの安定感は素晴らしく、ルタ・デル・ソル総合1位、ストラーデビアンケ2位、ティレーノ〜アドリアティコ総合3位、アムステルゴールドレース3位、フレーシュ・ワロンヌ2位、そしてリエージュ1位。アルデンヌクラシック3連戦を3位、2位、1位とステップアップする形で締めくくった。1984年生まれの34歳フルサングは「この先、まだあと数年は良いシーズンを送れると思う」とコメント。フルサングはツール・ド・フランスに出場する予定だ。
そのほかの選手たちのコメントは別記事で紹介します。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2019結果
1位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 6:37:37 |
2位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:27 |
3位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:57 |
4位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
5位 | マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) | |
6位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
8位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:01:00 |
9位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) | 0:01:05 |
10位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) | 0:01:26 |
11位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:01:29 |
12位 | ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) | |
13位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
14位 | ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
15位 | カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター) | |
16位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
17位 | ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | |
18位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
19位 | ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) | |
20位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト) |