5月19日から26日に開催される日本最大のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の記者発表会が、東京の恵比寿にある「スバル・スター・スクエア」で開催された。発表された出場チームや各ステージのコースに加え、浅田監督を交えたトークショーの模様をレポート。



ツアー・オブ・ジャパン記者発表会の会場となった恵比寿の「SUBARU STAR SQUARE」ツアー・オブ・ジャパン記者発表会の会場となった恵比寿の「SUBARU STAR SQUARE」 photo:Satoru Kato多くのテレビカメラが並ぶ多くのテレビカメラが並ぶ photo:Satoru Kato

22回目の開催となるツアー・オブ・ジャパン。今年は「日本を元気にする美しくも過酷なレース・日本の地域を元気にする国際スポーツイベント」というテーマを定め、UCI2.1クラスのステージレースとして8日間8ステージ、765.6kmで行われる。開催日程と距離は以下の通り。
開催日 ステージ・距離
5月19日 第1ステージ 堺(大阪府)大仙公園周回コース2.6km(個人タイムトライアル)
5月20日 第2ステージ 京都(京都府)普賢寺ふれあいの駅-けいはんなプラザ周回コース16.8km×6周 105.0km
5月21日 第3ステージ いなべ(三重県)阿下喜駅前-いなべ市梅林公園周回コース 14.8km×8周 127.0km
5月22日 第4ステージ 美濃(岐阜県)旧今井家住宅前-美濃和紙の里会館前周回コース 31.3km×6周 139.4km
5月23日 第5ステージ 南信州(長野県)飯田駅-下久堅周回コース-松尾総合運動公園前 12.2km×10周+1.6km 123.6km
5月24日 第6ステージ 富士山(静岡県)須走商店街-富士スピードウェイ西ゲート-富士スピードウェイ外周道路周回コース-須走商店街-ふじあざみライン 36.0km
5月25日 第7ステージ 伊豆(静岡県)日本サイクルスポーツセンター周回コース 8km×15周 120.0km
5月26日 第8ステージ 東京(東京都)大井ふ頭周回コース 7.0km×16周 112.0km
コース説明をするツアー・オブ・ジャパン大会ディレクターの栗村修氏コース説明をするツアー・オブ・ジャパン大会ディレクターの栗村修氏 photo:Satoru Kato
今年は日比谷シティ前からのパレードスタートは見られない可能性も今年は日比谷シティ前からのパレードスタートは見られない可能性も photo:Satoru Kato今年も勝負の分け目となるか?富士山ステージ今年も勝負の分け目となるか?富士山ステージ (C) TOJ2018

大阪府堺市での個人タイムトライアルでスタートし、東京都の大井埠頭にフィニッシュする大筋は例年通りだが、伊豆ステージと東京ステージに変更がある。

伊豆ステージの会場となる日本サイクルスポーツセンターは、来年の東京オリンピックの会場となるための工事が始まっている。そのため、例年使用されていた12kmの周回コースが使用できず、5kmサーキットに競輪学校の3kmサーキットを組み合わせた8kmコースを使用する予定。

また、東京ステージは日比谷シティ前をパレードスタートして大井埠頭の周回コースでフィニッシュするが、要人来日の日程と重なる可能性があり、大井埠頭の周回コースのみとなる見込みだ。

伊豆、東京いずれもUCI規定の1周10km以上の周回コースという条件を満たさないため、UCIの承認作業中となっている。



海外7チーム+国内9チーム 計16チームが出場

今年はワールドツアーチームは出場せず、UCIプロコンチネンタルチームのNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネを筆頭に、雨澤毅明が所属するリュブリャナ・グスト・サンティック、小林海が所属するジョッティ・ヴィクトリア・パルマーなど海外7チームが出場。国内チームは、昨年のアジアツアーランキング1位のキナンサイクリングチームをはじめ、日本ナショナルチームを含む9チームが出場する。

唯一のプロコンチネンタルチームとなるNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ(写真は昨年大会)唯一のプロコンチネンタルチームとなるNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ(写真は昨年大会) photo:Satoru KatoUCIプロコンチネンタルチーム
NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ(イタリア)

UCIコンチネンタルチーム
トレンガヌINC・TSGサイクリングチーム
チームブリッヂレーン(オーストラリア)
HKSIプロサイクリングチーム(香港)
リュブリャナ・グスト・サンティック(スロベニア)
ジョッティ・ヴィクトリア・パルマー(ルーマニア)
チーム・ザワーランドNRW・p/b SKSジャーマニー(ドイツ)

ツール・ド・とちぎでチーム総合優勝したマトリックスパワータグ ツアー・オブ・ジャパンでは?ツール・ド・とちぎでチーム総合優勝したマトリックスパワータグ ツアー・オブ・ジャパンでは? photo:Satoru Kato国内チーム
キナンサイクリングチーム
チーム右京
インタープロ・サイクリングアカデミー
マトリックス・パワータグ
チームブリヂストンサイクリング
宇都宮ブリッツェン
シマノレーシング
愛三工業レーシング
日本ナショナルチーム



NTN株式会社 大橋啓二・常務取締役NTN株式会社 大橋啓二・常務取締役 photo:Satoru KatoNTN株式会社が大会冠スポンサーに

今年もベアリング製造メーカーのNTN株式会社が冠スポンサーを務める。NTN株式会社・社長 大久保博司氏は「自転車はエコの象徴。NTNのベアリングが誇るトライボロジー技術がもたらす地球環境保全と合い通じるテーマをもっている。そしてTOJは地域社会貢献の意義が大きいイベント。5月は自転車月間でもあり、乗り物の安全な利用は、乗り物に多くのベアリングを供給しているNTNの願いでもある」とコメントした。

昨年約3000人が参加したという「NTN回る学校」が、今年も各ステージで開校する。今年は「アタマとカラダが踊り出す」をテーマに、「回るシンフォニー」や「回る楽器職人」など、回ることで音を発する楽器のワークショップを開催する。

今年のNTN回る学校は音楽がテーマ今年のNTN回る学校は音楽がテーマ photo:Satoru Katoベアリングによってミニ四駆の走りが違うことを興味深く見るTOJキッズベアリングによってミニ四駆の走りが違うことを興味深く見るTOJキッズ photo:Satoru Kato



東京への道(五輪代表選考情報サイト)を開設

また、五輪自転車ロードレース男子日本代表を応援する企画の一つとして、「東京への道」というサイトが「ツアー・オブ・ジャパン」ホームページ内に設置された。内容的には、2019年10月27日に確定する「日本代表の出場枠(人数)」及び、2020年5月31日に決まる「日本代表選手」の選考に関するランキングを、ウィークリーでアップデートしていこうというもの。なお、「東京」とは「ツアー・オブ・ジャパンが東京へ向かうレースなので」と断っている(五輪のライセンス問題の関係により)サイトへのリンクは以下となる。

東京への道



浅田節炸裂のトークショー「富士山ステージは2回登るのもアリ」

日本代表の浅田監督と、大会ディレクター栗村修氏、司会のMCアリー氏によるトークショー日本代表の浅田監督と、大会ディレクター栗村修氏、司会のMCアリー氏によるトークショー photo:Satoru Kato
発表が一通り終わった後は、大会ディレクターの栗村修氏と司会のアリー氏、そしてツール・ド台湾で日本ナショナルチームを率いた浅田監督を迎えてのトークショーが行われた。話題は来年に迫った東京オリンピックの代表選考についての話がメインとなった。

栗村氏が「ツアー・オブ・ジャパンは今年と来年の2回、オリンピックの選考対象となる重要な大会」と強調したのに対し、浅田監督が「でも今年の出場チームは強力ではないですよね?」と、ワールドツアーチームが出場しない点をズバリ指摘。

これに栗村氏は「様々な事情があるが」と苦笑いしつつ、「日本人にUCIポイントを取ってもらって(オリンピックの)3枠目を確保してもらいたい」と話すと、浅田監督は「3枠目を獲るには国別ランキング21位以内が必要で、強豪国ばかりの中に食い込むのは不可能。3枠は無理」と、夢を打ち砕くような現実を突きつける。

さらに「オリンピックでは三国峠を通る厳しいコースなのだから、(代表選考を考えるなら)富士山ステージは2回登っても良いのではないか」と、冗談とも本気とも取れる持論を展開して会場を盛り上げた。



ツアー・オブ・ジャパン公式グッズツアー・オブ・ジャパン公式グッズ photo:Satoru Kato日本自転車競技連盟が発表した東京オリンピックの男子ロードレース代表選考基準では、ツアー・オブ・ジャパンで獲得したUCIポイントは2倍して加算されることになっている。これはヨーロッパの2クラスのレースと同等の扱いで、それだけレベルが高いレースと位置付けられている。

しかし、トークショーで浅田監督が言うように、今年はワールドツアーチームが出場しないことからレベルの低下を気にする声も聞かれた。5月はジロ・デ・イタリアをはじめ世界的にレースが重なる期間でもあり、栗村氏の言葉にもチーム招へいの苦労がうかがわれる。

とは言え、のちに大物となる選手が出場していたこともあるツアー・オブ・ジャパンだけに、今年の大会にも同様なことを期待したいところ。出場選手の発表を待ちたい。


text:Satoru Kato, Makoto AYANO
photo:Satoru Kato

NTN presents 2019ツアー・オブ・ジャパン公式プロモーション映像