2019/02/28(木) - 19:26
ヴィットリアが第2世代のグラフェン使用タイヤを発表した。タイ、バンコクでのローンチイベント現地取材から、刷新されたタイヤラインナップと「グラフェン2.0」の概要をお届けする。
レーシングタイヤのリーディングブランド、イタリアのヴィットリアがグラフェンを含有するコンパウンドによってレーシングタイヤのラインアップを大幅刷新したのが2015年。それから3年余を経て、今回は「グラフェン2.0」と銘打った進化版の第2世代のコンパウンドを発表。ロードタイヤ、MTBタイヤのハイエンドラインナップを再びアップデートした。
ヴィットリアタイヤの生産国であるタイ・バンコク郊外のコンパウンド工場、そして本社工場で、世界中から40人以上のジャーナリストを招き開催された発表会において、そのテクノロジー概要とグラフェン2.0を採用した新タイヤラインナップがお披露目された。
第2世代にアップデートされたグラフェン2.0を説明する前に、そもそも2015年よりヴィットリアが採用している炭素の同素体「グラフェン」のおもな特性を改めて紹介しよう。バイシクルタイヤ製造会社として初めてかつ唯一ヴィットリアのみが配合・採用するグラフェンとは、世界中の科学者・企業から注目を集めるナノ素材。
ハニカム(蜂の巣)=六角形格子構造のシート状の原子構造をとり、これまでに発見されたあらゆる物質の中でも最も薄いという。その厚みはわずかに原子1個分にあたる10億分の1メートルで、グラフェン1gの面積は2,630平方メートルほどになる。現在知られている物質の中で最も軽く、かつ高い強度を兼ね備えており、ダイヤモンドより硬く、鋼鉄の200倍の強度をもつという。
ハイエンド系タイヤのほとんどにG2.0を採用 チューブレスレディタイヤも一気に拡充
今回同時に発表されたヴィットリアのタイヤラインナップにおいて、グラフェン2.0はCORSA、PISTA、TRIATHLONのロードコンペティションタイヤに加え、オールラウンドタイヤのRUBINO、トレーニングタイヤのZAFFIRO PROなど、ハイエンド系ロードタイヤに採用される。MTB&オフロードタイヤでもXCモデルのMAZCAL、BARZO、PEYOTEなど、シクロクロスとグラベル用のTERRENOなど大半の製品に採用される。
また、今までロードタイヤではCORSA SPEEDのみだったチューブレスレディ(TLR)が、CORSA、CORSA CONTOROL、RUBINO PROにも設定され、チューブラー、クリンチャーに加えて3つ目の選択肢としてTLRラインナップが出揃った。
創業者で社長のルディ・カンパーニュ氏はグラフェン2.0へのアップデートについて、次のように語る。
「第1世代のグラフェンはタイヤのすべての性能を均等に押し上げたが、グラフェン2.0はそれぞれのタイヤごとに求めるパフォーマンスをピンポイントで向上させることに成功した。言い換えれば、こうしたグラフェンの活用ができるようになったことで、スピード、ウェット時のグリップ、耐久性、耐パンク性など、特に狙ったパフォーマンスごとに性能を向上させることが可能になった」。
ヴィットリアが第2世代の「グラフェン2.0」と銘打つコンパウンドの進化により、タイヤモデルごとに求める性能をコントロールすることができ、よりキャラクターの明快な製品づくりが可能になった。CORSAやRUBINO、そしてチューブレスレディモデルのロードタイヤにおいて、G2.0により走行抵抗の低減と、空気保持性、グリップ、耐カット性などが向上している。そして25CのCORSAにおいて、第1世代に比べてG2.0のCORSAでは距離50kmを走った場合のタイム比で1分20秒速いという驚くべきテスト結果が出ているという。
MTBタイヤにおいては、転がり抵抗やグリップは路面や地形の影響を大きく受けるため求めにくい性能となるが、G2.0採用タイヤではとくにウェット時のグリップや耐カット性、空気保持性を向上させているという。
4つのコンパウンドから構成される「4Cテクノロジー」
グラフェン2.0とともに、ヴィットリアのハイエンドタイヤのトレッドに採用される「4Cテクノロジー」も技術的な核となる。4Cとは「4つのコンパウンド」を意味する。ヴィットリアは世界で唯一、4種類のコンパウンドをひとつのタイヤトレッドにミックスして用いる唯一のメーカーだ。
トレッドのセンター、サイド、ショルダー部あるいは表層部、ベース部、MTBタイヤならノブの芯や表層部において、適材適所で異なるコンパウンドをレイヤリング(重ね合わせ)し、性能を追求する。グラフェン2.0へのアップグレードは、それぞれの部材に応じたピンポイントの性能・特性を追求したコンパウンドの配置を可能にし、タイヤ特性のコントロールと性能向上を達成しているという。
ヴィットリアは第2世代のG2.0を「機能性をもたせたグラフェン」と呼ぶ。初代では4C、つまり4つの異なるコンパウンドにおいてグラフェンの配合率は均等だったが、第2世代のグラフェン2.0ではコンパウンドごとに特化した性能をもたせるために1〜10%の間で配合率を変え、より意図した性能をもたせることができたという。例えばタイムトライアル用途のタイヤは、コンパウンド構成により超低転がり抵抗のタイヤにするなど。
欧州におけるグラフェン研究開発の中心に
バイシクルタイヤ産業界において最大のグラフェンユーザーであるヴィットリアは、同社のEMEA/LATAM部門がEC(欧州委員会)が発足させた「グラフェン・フラッグシッププロジェクト」のメンバーに昨年12月よりなったことも発表された。同プロジェクトはECにおけるグラフェンの研究と製品化促進を狙い、23カ国・150の研究機関や大学、企業からなる団体が共同研究や開発を行う。ヴィットリアはバイシクルタイヤ産業のリーディングブランドとしてこのプロジェクトに参画することになるという。
ヴィットリアの製品開発ディレクターであるステファン・アントン氏は「欧州におけるグラフェン研究開発のもっとも重要な組織のメンバーとして、各関係パートナーや科学者たちと連携しながら開発を進めることができる」とコメント。
グラフェン2.0採用ホイールも開発中
今回のローンチには間に合わなかったが、従来よりあるレーシングホイールのラインアップにもグラフェン2.0を採用すべく開発中で、早ければ来月以降にも製品を発表できる予定だという。
カーボンリムのホイールにもグラフェン2.0を採用することにより得られるメリットは、ブレーキングによる熱上昇の抑制、最大で20%のリム強度の向上、横方向の強度(横剛性)で50%の向上が望めることなど。そして新設計となるカーボンリムでは、従来と同ハイトの製品で最大150gの軽量化が図れるという。
なお、チューブレスレディ(TLR)タイヤのラインアップ拡充は、ホイールとのベストマッチも当然追求しているため、ヴィットリアのタイヤとホイールをセットで使用するメリットもより大きくなる。
プレゼンテーションと同時に、バンコク郊外のコンパウンド専用工場と、スワンナプーム空港に近い本社工場の生産工程を案内してもらい、ヴィットリアがどのようなタイヤづくりを行っているかが公開された。両工場はともにヴィットリア社が完全オーナーとなるライオンタイヤ社の工場となるが、そこではヴィットリアブランドのタイヤ以外にもOEMによりあらゆる有名ブランドのタイヤが生産される「世界最大のバイシクルタイヤ工場」だ。その様子は機会を改めて紹介する。
また、2019タイヤラインナップのラインアップ、各製品詳細とデータ、価格、発売開始時期等はヴィットリア・ジャパンより後日発表される予定だ。
photo&text:Makoto.AYANO
レーシングタイヤのリーディングブランド、イタリアのヴィットリアがグラフェンを含有するコンパウンドによってレーシングタイヤのラインアップを大幅刷新したのが2015年。それから3年余を経て、今回は「グラフェン2.0」と銘打った進化版の第2世代のコンパウンドを発表。ロードタイヤ、MTBタイヤのハイエンドラインナップを再びアップデートした。
ヴィットリアタイヤの生産国であるタイ・バンコク郊外のコンパウンド工場、そして本社工場で、世界中から40人以上のジャーナリストを招き開催された発表会において、そのテクノロジー概要とグラフェン2.0を採用した新タイヤラインナップがお披露目された。
第2世代にアップデートされたグラフェン2.0を説明する前に、そもそも2015年よりヴィットリアが採用している炭素の同素体「グラフェン」のおもな特性を改めて紹介しよう。バイシクルタイヤ製造会社として初めてかつ唯一ヴィットリアのみが配合・採用するグラフェンとは、世界中の科学者・企業から注目を集めるナノ素材。
ハニカム(蜂の巣)=六角形格子構造のシート状の原子構造をとり、これまでに発見されたあらゆる物質の中でも最も薄いという。その厚みはわずかに原子1個分にあたる10億分の1メートルで、グラフェン1gの面積は2,630平方メートルほどになる。現在知られている物質の中で最も軽く、かつ高い強度を兼ね備えており、ダイヤモンドより硬く、鋼鉄の200倍の強度をもつという。
ハイエンド系タイヤのほとんどにG2.0を採用 チューブレスレディタイヤも一気に拡充
今回同時に発表されたヴィットリアのタイヤラインナップにおいて、グラフェン2.0はCORSA、PISTA、TRIATHLONのロードコンペティションタイヤに加え、オールラウンドタイヤのRUBINO、トレーニングタイヤのZAFFIRO PROなど、ハイエンド系ロードタイヤに採用される。MTB&オフロードタイヤでもXCモデルのMAZCAL、BARZO、PEYOTEなど、シクロクロスとグラベル用のTERRENOなど大半の製品に採用される。
また、今までロードタイヤではCORSA SPEEDのみだったチューブレスレディ(TLR)が、CORSA、CORSA CONTOROL、RUBINO PROにも設定され、チューブラー、クリンチャーに加えて3つ目の選択肢としてTLRラインナップが出揃った。
創業者で社長のルディ・カンパーニュ氏はグラフェン2.0へのアップデートについて、次のように語る。
「第1世代のグラフェンはタイヤのすべての性能を均等に押し上げたが、グラフェン2.0はそれぞれのタイヤごとに求めるパフォーマンスをピンポイントで向上させることに成功した。言い換えれば、こうしたグラフェンの活用ができるようになったことで、スピード、ウェット時のグリップ、耐久性、耐パンク性など、特に狙ったパフォーマンスごとに性能を向上させることが可能になった」。
ヴィットリアが第2世代の「グラフェン2.0」と銘打つコンパウンドの進化により、タイヤモデルごとに求める性能をコントロールすることができ、よりキャラクターの明快な製品づくりが可能になった。CORSAやRUBINO、そしてチューブレスレディモデルのロードタイヤにおいて、G2.0により走行抵抗の低減と、空気保持性、グリップ、耐カット性などが向上している。そして25CのCORSAにおいて、第1世代に比べてG2.0のCORSAでは距離50kmを走った場合のタイム比で1分20秒速いという驚くべきテスト結果が出ているという。
MTBタイヤにおいては、転がり抵抗やグリップは路面や地形の影響を大きく受けるため求めにくい性能となるが、G2.0採用タイヤではとくにウェット時のグリップや耐カット性、空気保持性を向上させているという。
4つのコンパウンドから構成される「4Cテクノロジー」
グラフェン2.0とともに、ヴィットリアのハイエンドタイヤのトレッドに採用される「4Cテクノロジー」も技術的な核となる。4Cとは「4つのコンパウンド」を意味する。ヴィットリアは世界で唯一、4種類のコンパウンドをひとつのタイヤトレッドにミックスして用いる唯一のメーカーだ。
トレッドのセンター、サイド、ショルダー部あるいは表層部、ベース部、MTBタイヤならノブの芯や表層部において、適材適所で異なるコンパウンドをレイヤリング(重ね合わせ)し、性能を追求する。グラフェン2.0へのアップグレードは、それぞれの部材に応じたピンポイントの性能・特性を追求したコンパウンドの配置を可能にし、タイヤ特性のコントロールと性能向上を達成しているという。
ヴィットリアは第2世代のG2.0を「機能性をもたせたグラフェン」と呼ぶ。初代では4C、つまり4つの異なるコンパウンドにおいてグラフェンの配合率は均等だったが、第2世代のグラフェン2.0ではコンパウンドごとに特化した性能をもたせるために1〜10%の間で配合率を変え、より意図した性能をもたせることができたという。例えばタイムトライアル用途のタイヤは、コンパウンド構成により超低転がり抵抗のタイヤにするなど。
欧州におけるグラフェン研究開発の中心に
バイシクルタイヤ産業界において最大のグラフェンユーザーであるヴィットリアは、同社のEMEA/LATAM部門がEC(欧州委員会)が発足させた「グラフェン・フラッグシッププロジェクト」のメンバーに昨年12月よりなったことも発表された。同プロジェクトはECにおけるグラフェンの研究と製品化促進を狙い、23カ国・150の研究機関や大学、企業からなる団体が共同研究や開発を行う。ヴィットリアはバイシクルタイヤ産業のリーディングブランドとしてこのプロジェクトに参画することになるという。
ヴィットリアの製品開発ディレクターであるステファン・アントン氏は「欧州におけるグラフェン研究開発のもっとも重要な組織のメンバーとして、各関係パートナーや科学者たちと連携しながら開発を進めることができる」とコメント。
グラフェン2.0採用ホイールも開発中
今回のローンチには間に合わなかったが、従来よりあるレーシングホイールのラインアップにもグラフェン2.0を採用すべく開発中で、早ければ来月以降にも製品を発表できる予定だという。
カーボンリムのホイールにもグラフェン2.0を採用することにより得られるメリットは、ブレーキングによる熱上昇の抑制、最大で20%のリム強度の向上、横方向の強度(横剛性)で50%の向上が望めることなど。そして新設計となるカーボンリムでは、従来と同ハイトの製品で最大150gの軽量化が図れるという。
なお、チューブレスレディ(TLR)タイヤのラインアップ拡充は、ホイールとのベストマッチも当然追求しているため、ヴィットリアのタイヤとホイールをセットで使用するメリットもより大きくなる。
プレゼンテーションと同時に、バンコク郊外のコンパウンド専用工場と、スワンナプーム空港に近い本社工場の生産工程を案内してもらい、ヴィットリアがどのようなタイヤづくりを行っているかが公開された。両工場はともにヴィットリア社が完全オーナーとなるライオンタイヤ社の工場となるが、そこではヴィットリアブランドのタイヤ以外にもOEMによりあらゆる有名ブランドのタイヤが生産される「世界最大のバイシクルタイヤ工場」だ。その様子は機会を改めて紹介する。
また、2019タイヤラインナップのラインアップ、各製品詳細とデータ、価格、発売開始時期等はヴィットリア・ジャパンより後日発表される予定だ。
photo&text:Makoto.AYANO
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