アレクサンドル・クリストフと抜群の連携でフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)が勝利。UAEツアー第2ステージで、地元UAEチームエミレーツの最速タッグが勝利を収めた。


強風によって砂埃が舞うアブダビ近郊強風によって砂埃が舞うアブダビ近郊 photo:RCS Sport
UAEツアー2019第2ステージUAEツアー2019第2ステージ photo:RCS SportUAEツアー2019第2ステージUAEツアー2019第2ステージ photo:RCS Sport

チームタイムトライアルから一夜明け、UAEツアー2日目はアブダビ近郊を走る184kmの平坦ステージ。F1アブダビグランプリの舞台であるヤスマリーナをスタートし、主に幹線道路を繋いで海沿いの埋立地にフィニッシュする。ピュアスプリンター向きのステージが気温25度/晴れというコンディションの中スタートした。

UCIプロコンチネンタルチームのノボノルディスクとガスプロム・ルスヴェロが2名ずつ逃げに選手を送り込み、リーダーチームのユンボ・ヴィズマがメイン集団を牽引して追いかける平坦ステージらしい展開。しかしステージ中盤に差し掛かると、海風が集団を粉砕する。メイン集団はエシュロンを形成しながら大きく分けて3つに分裂した。

約30名で構成された第1集団にはプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)の他、スプリンターのガビリアやマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)らが入り、その他のビッグネームは第2集団に。さらにその後方の第3集団に取り残されたリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)は一時的に3分ものタイムロスを被った。

メイン集団を牽引するユンボ・ヴィズマメイン集団を牽引するユンボ・ヴィズマ photo:RCS Sport
ノボノルディスクとガスプロム・ルスヴェロが2名ずつ逃げに選手を送り込むノボノルディスクとガスプロム・ルスヴェロが2名ずつ逃げに選手を送り込む photo:RCS Sportレッドジャージを着て平坦ステージを走るプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)レッドジャージを着て平坦ステージを走るプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:RCS Sport
強風によりエシュロンを形成して分裂したメイン集団強風によりエシュロンを形成して分裂したメイン集団 photo:RCS Sport
リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)を含む第3集団リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)を含む第3集団 photo:RCS Sport
ハイペースを刻む第1集団は逃げグループを飲み込んだものの、風が弱まりとともにペースも弱まる。遅れていた第2集団と第3集団が追いついたためレースは振り出しに。再びノボノルディスクとガスプロム・ルスヴェロ勢が逃げを打ったものの、平坦コースで大集団を振り切ることはできなかった。

危険回避のためにモビスターやEFエデュケーションファースト、バーレーン・メリダが集団先頭に上がってポジション取りし、残り3kmを切るといよいよスプリンターチームが先頭へ。サンウェブやボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップ、カチューシャ・アルペシンが競り合う中、リードアウト役に徹したアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が残り400mで先頭に立った。

直前のツアー・オブ・オマーンでスプリント勝利を飾っているノルウェー人が、7歳年下のコロンビア人を献身的にリードアウト。残り200mでクリストフのスリップストリームから抜けたガビリアが腰を上げて加速していく。これに挑戦状を叩きつけたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリントで並ぶも、ハンドル投げの結果、ガビリアがホイール半分の差で先着した。

スプリント中の20秒間の両者のデータを比較すると、平均スピードはガビリア64.1km/hでヴィヴィアーニ63.7km/h、最高スピードはガビリア66.2km/hでヴィヴィアーニ65.7km/h。平均出力はガビリア1,060Wでヴィヴィアーニ850W、最大出力はガビリア1,420Wでヴィヴィアーニ1,240Wだった。

フィニッシュに向かってスピードを上げるメイン集団フィニッシュに向かってスピードを上げるメイン集団 photo:RCS Sport
先頭でスプリントするフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)先頭でスプリントするフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:RCS Sport
ハンドルを投げ込むフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)ハンドルを投げ込むフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:RCS Sport
「自分にとっても、チームとチームのスポンサーにとっても重要な勝利だ。完璧な形でアレクサンドル・クリストフにリードアウトされて残り200mからスプリント。多くの有力スプリンターが競り合う難しい戦いだったけど、チームメイトたちのおかげでチームのお膝元で勝利を飾ることができた。このUAEツアーが閉幕するまでまた勝利を飾るコンディションが自分にはあると感じたよ」。UAEのUCIワールドツアーレースでUAEチームエミレーツに価値ある勝利をもたらしたガビリアは喜ぶ。

ブエルタ・ア・サンフアンでステージ2勝を飾っているガビリアはこれがシーズン3勝目。地元コロンビアで開催されたツアー・コロンビアを体調不良でリタイアし、チームにとって重要なこのUAEツアーに照準を合わせていた。

「今日は向かい風の中を200mにわたって先行したガビリアが最強だった。彼の番手を取りながらも追い抜けなかった」と、勝者を称えたのはステージ2位のヴィヴィアーニ。昨年までクイックステップのチームメイトとして走っていたガビリアについてヴィヴィアーニは「他のスプリンターと比べて彼は長めのスプリントが得意で、トップスピードを維持しながらもがき続けることができる。同じく長めのスプリントが得意なクリストフがリードアウト役を担っているので、完璧な組み合わせだ」と評している。

真っ赤なリーダージャージはログリッチェが危なげなくキープ。翌日の第3ステージには標高1,025mの岩山ジュベルハフィート(全長10.8km/平均6.6%)の山頂フィニッシュが設定されており、ログリッチェがバルベルデやニバリ、ポート、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)らを迎え撃つことになる。ログリッチェは「とても風が強くて、エシュロンが形成される1日だったけど、チームメイトたちのおかげでずっと先頭集団で走ることができた。明日の山岳では多くの選手がアタックを仕掛けてくるはず。まだトレーニングキャンプを終えたばかりの状態なので、明日どんな走りができるのかまだわからない」とコメントしている。

今シーズン3勝目を飾ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)今シーズン3勝目を飾ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) photo:RCS Sportリーダージャージを守ったプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)リーダージャージを守ったプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:RCS Sport

UAEツアー2019第2ステージ
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 4:36:32
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
4位 クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー、チームスカイ)
5位 エリック・バシュカ(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 サーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト)
8位 マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
9位 マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ)
10位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム)
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 4:53:21
2位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
3位 ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)
4位 クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
5位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:00:06
6位 マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、サンウェブ) 0:00:07
7位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
8位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
9位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:09
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)
ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 20pts
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 16pts
3位 ステパン・クリアノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) 13pts
ヤングライダー賞
1位 ローレンス・デプルス(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) 4:53:21
2位 クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー、チームスカイ) 0:00:14
3位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)
text:Kei Tsuji
photo:RCS Sport