2月9日、雪が舞い散る中で川越サイクルオフロードエンデューロの第4戦が開催された。ビギナーからレーサーまで遊べるオフロードイベントの様子と、大会のまとめ役・川口朋さんのインタビューをお届けしよう。緩くて居心地の良いこのイベントの魅力と今後の展開を語ってもらった。



雪の中レースをすることはなかなか無いだろう雪の中レースをすることはなかなか無いだろう
11月末より毎月開催されている川越サイクルオフロードエンデューロ。シクロワイアードでも過去3回取材を行なっており、オフロードヴィレッジに訪れた編集部員たちは口を揃えて面白いから一度行ってみたほうが良いと伝えて来た。編集長はご子息とともに出場し、賞金を獲得してしまうほど。

周りが楽しんでいる姿を見聞きすると、天岩戸に引きこもっていた天照大神が宴会の音に釣られてしまったように、人は自分も楽しんでみたいという思いが生まれるもの。筆者・藤原もモトクロスバイクコースを走ってみたい!という気持ちが芽生えたので、第4回のサイクルエンデューロへ足を運んでみることに。

2月9日、大雪の予報に反して穏やかな雪模様となった川越のオフロードヴィレッジ(以下、オフビ)にエンスーなサイクリストが集結。薄っすらと雪化粧をしたモトクロスコースにワクワクしてしまった私は、MTBをハイエースから引っ張り出しコースに飛び出した。

曇天、雪というシチュエーションながら参加者の顔には笑みが曇天、雪というシチュエーションながら参加者の顔には笑みが 試走中は雪が多く残るなか走行を重ねた試走中は雪が多く残るなか走行を重ねた

コース整備のためのブルドーザーが常駐しているコース整備のためのブルドーザーが常駐している 急遽コース変更のためブルドーザーの後ろに付き、新コースを確認した急遽コース変更のためブルドーザーの後ろに付き、新コースを確認した


レースで使う部分はオフビのスタッフがブルドーザーで除雪してくれていたものの、湿ったモトクロスコースでは、2014年のシクロクロス全日本選手権を思い出させるように泥が車体のアチラコチラに付着してしまう。タイヤのノブが泥で隠れ、ほぼスリックタイヤ状態。小高い山も登りにくくなってしまったため、急遽コース変更が行われることに。レース開始1時間前にも関わらず、そんなことを行えるのは広い敷地を持つオフビだからできること。

参加者たちがブルドーザーに引き連れられ新コースを走ったら、レースはいよいよ始まる。雪、そして非常に寒い天候という事もあり、開始前には参加者たちによって、時間短縮の是非を問う多数決が行われたが、結果はフルタイムでレースを行うことに。その場で多数決を取るというゆるい雰囲気が初参加の筆者でも居心地良いと感じる理由なのだろう。なるほど、他の編集部員達がオフビを勧める理由がわかった気がする。

レーススタートは毎度(私にとってはシクロワイアードのレポートで)お馴染みのモトクロスのスタートゲートで。ガシャンとタイヤ留めが降りると一斉に参加者たちがコースへと飛び出していく。時折、雪が舞い散るような天気だが、気温は耳が引きちぎられる思いをするほどの寒さではなく、幾分過ごしやすい。体が温まった選手たちの中にはアウターを脱ぐ方も。

川越サイクルエンデューロ川越サイクルエンデューロ モトクロスのスタートゲートを使用するモトクロスのスタートゲートを使用する

新コースのため最初の周回はモトクロスの先導付き新コースのため最初の周回はモトクロスの先導付き 大集団で小山を越えていく大集団で小山を越えていく


重馬場となった上下左右に動き回る本コースを回避する新コースレイアウトではパワーが要求されるようになった。難易度も低くなったため、シクロクロスでも楽しく遊べる。私見となるが、オフビに適しているのは29erのハードテールMTBだろう。ガシガシ踏んで、3Dにバイクを振り回すのは非常に良い練習となるはず。時間が経過するとレースラインは踏み固められ、さらに走りやすい路面に。コースコンディションが刻一刻と変わるのもオフロードの楽しさの1つだ。

120分、60分それぞれを遊び尽くした後はお待ちかねの表彰式。120分のソロとチームの上位3チームには賞金が手渡され、選手たちはニンマリとした表情に。仲間たちは「今夜は寿司だー!」とおこぼれに与ることを忘れない様子だ。終始、ゆるくて居心地の良い空気に包まれたイベントも16時頃には終了。アクセスの良い場所でレースを行っているため、帰宅が遅くなりすぎないのも有り難い。

さて、11月より開催されていた全4戦のオフロードエンデューロはひとまず一区切りとなるが、3月以降も月に1回はレースを開催、週末のコース開放は行われるようだ。詳細は後日、川越サイクルエンデューロのWEBサイトにアップされるとのこと。12月には自転車とモトクロスが一堂に会するビッグイベントも検討中だという。

非常に寒かったので焚き火で温まる一時も非常に寒かったので焚き火で温まる一時も 待機時間もそれぞれ。椅子を持ってくるのはナイスアイデア待機時間もそれぞれ。椅子を持ってくるのはナイスアイデア

交代はハイタッチで行う交代はハイタッチで行う プロレース並みに応援してくれるプロレース並みに応援してくれる


ゆるーい空気感の川越サイクルエンデューロ。ピクニックスタイルで観戦しつつ、時折走ってみるという自由な楽しみ方もできるはず。どんなサイクリストでもウェルカムなこのイベントは、参加者の数だけ遊び方を見つけられるだろう。少しでも気になった方は一度参加してみると良いかもしれない。私も次はレースを走りたいと思う。



川越サイクルエンデューロをまとめる川口朋さんインタビュー

ー今シーズン、初めて自転車レースを開催してみていかがでしたか

最初はどうなるかなと思ったんですけれど、徐々に参加者の方も増えていきました。今日は天気が悪かったので今回に関しては少なめの人数でしたが、これからも少しずつ大会が広がっていけばなと思っています。

キッズたちも重馬場のオフロードコースを走るキッズたちも重馬場のオフロードコースを走る 安全対策をバッチリ行ってレースを走る安全対策をバッチリ行ってレースを走る

一生懸命ダートを走る一生懸命ダートを走る コブを押して登るキッズたちコブを押して登るキッズたち


ーサイクルエンデューロを立ち上げる時に意識していたことはありますか

まず、オフロードヴィレッジが、都心から1時間であるということと、クローズドのコースかつ道幅が広いということで、ビギナーから上級の方まで比較的安全に楽しめるというロケーションであることに注目しました。このコースを使って、レースでありながらも遊びの要素を持たせる、極端に言ってしまえば敷居は低く、間口は広くというコンセプトでイベントを開催しています。

オフロード自転車のイベントとなるとバイクのカテゴリー分けなど色々ありますが、この大会ではE-BIKEもOKであるように、色々な人が楽しめるように試行錯誤しながら前に進めています。

時間が経過するとともに走りやすくなっていく時間が経過するとともに走りやすくなっていく ジャンプを決められるセクションもジャンプを決められるセクションも

踏み固められていく路面踏み固められていく路面 ウォッシュボードをいく参加者たちウォッシュボードをいく参加者たち


オフビであればクローズドなコースなのでビギナーの方でも気軽に走ることができます。シングルトラックになるラインがないので、速い人と遅い人が交錯、詰まるシチュエーションが発生しなくなります。真剣勝負のレースであれば、怒声が起こりえますが、僕はそういうことが起きないようにしたいと思っています。なので、ミーティングでも皆で楽しく遊ぼうと声をかけています。

大会に気兼ねなく参加できるように、エントリーフィーもかなり頑張った設定にしていますし、エントリー層から上級者まで皆でワイワイ楽しんでもらいたいですね。大会もこの感じのまま成長していければなと考えています。

ーこれまで参加した方からはどのようなコメントがありましたか

やはりアクセスのしやすさですよね。群馬、神奈川、千葉、茨城、埼玉、東京と関東一円、遠方からお越ししていただいています。開催時期が冬場だったということもあり、シクロクロスの練習として参加される方が多いですよね。メインのコースをフルで使うと休むところもなく良い練習になるようです。コース幅が非常に広く、テクニックがある人は速く走れるラインを見極めていますし、意外とコーナリングの練習にもなると仰ってくれていますね。

フィニッシュは社長の福本さんがフラッグを振ってくれるフィニッシュは社長の福本さんがフラッグを振ってくれる 仲間のフィニッシュを待ち構える仲間のフィニッシュを待ち構える

2時間を走りきってガッツポーズ2時間を走りきってガッツポーズ シャンパンファイトも行われる表彰式シャンパンファイトも行われる表彰式


ー今後はどのようなイベントが開催されていくのでしょうか

昨年末にオフビ社長の福本が井手川選手と打ち合わせを行い、12月にコラボ大会を行うことは決定しました。そこに向けてイベントを継続的に行い、オフビが自転車も走れるコースということが定着させていきたいですね。夏場は夕暮れから始まるナイターエンデューロレースや、スプリントレースなどもやりたいと思っています。

昨年の10月頃から毎週土日、モトクロスのお昼休み時間帯にコースを自転車乗りに向けて開放しています。受付するだけで、コースを30分から1時間程度走ることが可能です。手軽に走れる場所は非常に少ないと思いますし、ここなら車でデポもしやすいので、気軽に参加してもらればなと思います。

「初心者が気軽に参加できる大会、コースにしたい」と語る川口朋さん「初心者が気軽に参加できる大会、コースにしたい」と語る川口朋さん
レースに関してはモトクロスのフォーマットを利用していて、スターティンググリッドなどは珍しい試みだと思います。これまでの4戦全てでコースレイアウトを少しずつ変更しています。今回の場合はコンディションが特に悪かったので、午前中にレイアウトを変えたところがあったのですが、それでもマッドすぎるところがあったので、急遽違うコースを繋ぐことになりました。広い敷地がオフビの強みでもあるので、そういったことを活かして皆さんに楽しんでもらえるように試行錯誤しています。

このフィールドをバイクと自転車で上手く住み分けしながら、その中でもエントリー層の方など多くの方に来ていただけるフィールドにしていきたいと思っています。



text&photo: Gakuto Fujiwara
photo: Kosuke Kamata

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