大きく湾曲したエルゴノミックな座面で有名なサドルブランド、セッレSMPがリリースした新作の「F30」をインプレッション。従来製品とは異なりフラットで幅広な座面形状を採用することで、サドル上でのポジションの自由度を向上させコントロール性を高めている。



セッレSMP F30セッレSMP F30 photo:Makoto.AYANO
人間工学に基づくエルゴノミックなサドルを各種手がける、セッレSMP。大きく波打った凹凸状の座面によって、臀部の荷重を面で支えることで痛みを軽減し快適な使用感をもたらす独自の設計が特徴のブランドだ。湾曲の形状やパッドの厚み、ベースやレールの素材の違いなどによって、実に20を超える豊富なラインアップを取り揃える。

そんなセッレSMPより2018年の新作としてリリースされたのが「F30」である。大きな特徴は見ての通りセッレSMPながらフラット座面を採用した点にある。湾曲させた座面はマッチする人には最高のフィット感をもたらすが、一方で座るポジションが限定されてしまうという欠点もあった。

それに対し一般的なフラット座面とすることで、座る位置をライダーの好みやライドシーンに合わせて前後に変更できる自由度を獲得。平坦巡航やヒルクライムではサドル前方に座り、よりパワーの出る前乗りに。反対にリラックスしたシーンでは後ろ乗りに、など場面場面での調整が可能になった。また、ロードバイクだけではなく、ポジションを細かく変える必要のあるオフロードライドでもバイクコントロールを行いやすくなり、グラベルロードなどにもマッチするサドルに仕上がる。

前下りのフロントノーズが前乗りや深い前傾ポジション時の圧迫感を軽減前下りのフロントノーズが前乗りや深い前傾ポジション時の圧迫感を軽減 ノーズ先端までサドル中央には大きくホールを設け着座時のストレスを軽減しているノーズ先端までサドル中央には大きくホールを設け着座時のストレスを軽減している

カーボンファイバー混合ナイロン製のベースに、ステンレスレールを合わせるカーボンファイバー混合ナイロン製のベースに、ステンレスレールを合わせる テール部分が二股に、かつ下がり気味の形状とすることで尾骨との接触を防ぐテール部分が二股に、かつ下がり気味の形状とすることで尾骨との接触を防ぐ

座面こそ凹凸形状ではないものの、セッレSMPが培ってきたエルゴノミックなテクノロジーは引き続き採用されており、快適な使い心地に寄与している。大きく前下りとなったフロントノーズは、深い前傾ポジションや前乗り時の圧迫感を軽減してくれるとともに、ノーズ先端まで設けられたホールによって高い通気性も実現している。

サドル中央部のホールデザインもセッレSMPには欠かせないもの。痛みやしびれの原因となる局部へのストレスを軽減するよう設計されている。加えてテール部分は二股に別れたスプリットデザインで、かつやや下がり気味の形状とすることで尾骨との接触を防ぐよう作られている。さらにこのF30は、ベース幅が149mmと従来のセッレSMPサドルよりも10~20mmほどワイドになっており、安定感のあるペダリングに貢献してくれるだろう。

フラット座面を採用し前後移動がしやすいデザインにフラット座面を採用し前後移動がしやすいデザインに
ベースはカーボンファイバー混合ナイロン製で、パッドは薄手のためセッレSMPらしい硬めの質感に。円形タイプのステンレスレールを合わせる。カラーはブラック、ホワイト、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ライトグリーン、ライトブルー、イエローフローという9種類で展開。またショートノーズタイプの「F30C」という兄弟モデルも用意されている。税抜価格はブラックのみ28,000円、カラーモデルは30,000円、イエローフローは32,000円だ。



― インプレッション

「普通のサドルに見えてSMPらしいフィット感の良さに驚き」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

「普通のサドルに見えてSMPらしいフィット感の良さに驚き」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)「普通のサドルに見えてSMPらしいフィット感の良さに驚き」西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
良くも悪くもお尻がサドルにピッタリ嵌まるようなSMPらしさはなくなりましたが、一般的なサドルとして見た時に、高いフィット感と快適性を持った製品に仕上がっていますね。従来は湾曲した独特のシェイプでフィット感を生み出していましたが、今作は横方向のベースの立ち上がり方やラウンド形状が絶妙で上手く座りやすいように作ったなと感心しました。

座面が硬いのはSMPならではですが、このフラット形状でもしっかり面で支える感覚があり、クッション性が薄いにも関わらず痛みもなく快適に使えます。どこか一点が当たって痛いということもなく、SMPらしいエルゴノミックな設計が活きているなと感じますね。前下りになったノーズも上手く機能しているのではないでしょうか。

「ベースのラウンド形状が絶妙で高いフィット感を生み出している」「ベースのラウンド形状が絶妙で高いフィット感を生み出している」 「クッション性が薄いにも関わらず、面で支えることで快適性を発揮する」「クッション性が薄いにも関わらず、面で支えることで快適性を発揮する」

ベースがやや幅広なので後ろ乗りにしても面で支えてくれる感覚は強いですね。SMPサドルとしては至って普通の見た目にはなりましたが、快適性を追求した使い心地やデザインは全体的に新しさを感じる出来だと思います。従来モデルでは難しかった前後移動もしやすくなり、今までのSMPサドルが合わないと感じていた人もぜひ試してもらいたいですね。想像以上にフィット感の良い使い心地が好印象でした。

セッレSMP F30(共通スペック)
表 皮:レザー(ブラック)、マイクロファイバー(カラー)
ベース:カーボンファイバー混合ナイロン12
レール:AISI304特殊ステンレス鋼
カラー:ブラック、ホワイト、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ライトグリーン、ライトブルー、イエローフロー
税抜価格:28,000円(ブラック)、30,000円(カラー)、32,000円(イエローフロー)

セッレSMP F30
サイズ:長さ/295mm、幅/149mm
重 量:295g

セッレSMP F30C
サイズ:長さ/249mm、幅/150mm
重 量:280g



インプレッションライダーのプロフィール

西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。

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