エアロロードの代名詞、サーヴェロの「S5」がフルモデルチェンジ。ディスクブレーキ、エアロヒンジ、専用コックピットシステムを搭載し、史上最高のエアロダイナミクスバイクとして最前線を行く1台をインプレッション。


サーヴェロ S5 Discサーヴェロ S5 Disc (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
エアロロードというカテゴリーを作り出した名車、サーヴェロ・ソロイスト。NACA断面のダウンチューブが持つインパクトを今でも覚えている人は多いだろう。その血脈を受け継ぐ”S”シリーズのフラッグシップモデルが今回のインプレッションバイクとなるS5だ。

S5のデビューは2011年まで遡る。コンパクトなリアトライアングル、ホリゾンタルに近いトップチューブ、ダウンチューブにインテグレートされたフォーククラウン。エアロロード全盛となった2019モデルではもはや当たり前の要素となったそれらを、サーヴェロは10年も前に持ち込んだ。

このように常にエアロダイナミクスバイクの最前線を走り続けてきたサーヴェロが、2019モデルとして、同社が持つエアロテクノロジーの粋を集めて開発したのが最新のS5だ。従来のワイヤーケーブルよりもよりルーティングに自由の利くオイルラインを採用できるディスクブレーキの普及に伴い、各社が統合されたフル内装システムを採用したエアロロードを発表した今年。まさにエアロ戦国時代と呼べる直中にあって、一際存在感を放つ新作として発表された。

後輪を覆うかのようなシートチューブ設計後輪を覆うかのようなシートチューブ設計 ステム周りを上方から ボルトなどの飛び出しもないステム周りを上方から ボルトなどの飛び出しもない エアロヒンジフォークを採用する フォークオフセットをサイズごとに用意する細やかな設計だエアロヒンジフォークを採用する フォークオフセットをサイズごとに用意する細やかな設計だ


多くの部分でアップデートが施されているが、それら全てのスタート地点となるのがディスクブレーキ専用設計というところ。S5シリーズとして初となるディスクブレーキ搭載車として開発された新モデルは、専用設計によってリムブレーキよりもトータルで空力を向上させることに成功した。

リムブレーキでは必須であったフォーククラウンの厚みをぎりぎりまで薄く作ることによって、ダウンチューブにカットオフが設けられるほど、フロントホイールとのクリアランスを詰めることに成功。エアロダイナミクスに大きく影響するフロントホイールが発生する乱流を抑えている。

余計な凹凸が排されたフロント周り 空力を追求するデザインだ余計な凹凸が排されたフロント周り 空力を追求するデザインだ 新型S5のアイコンとも言えるハンドル周り 空気が抜ける二股構造だ新型S5のアイコンとも言えるハンドル周り 空気が抜ける二股構造だ

タイヤクリアランスは28mmまで許容するというタイヤクリアランスは28mmまで許容するという BBはサーヴェロ独自のBBright BB剛性は25%向上したというBBはサーヴェロ独自のBBright BB剛性は25%向上したという


ディスクブレーキの採用によるエアロダイナミクスの追求はリアトライアングルにも共通のもの。より高い設計自由度をもたらされたことによって、リアホイールとの密着度がさらに向上。これまで独自のブレーキマウントアダプターを介することで実現してきたタイヤクリアランスをさらに突き詰めることに成功した。

それらのフレーム設計に加え、大きな変更を与えられたのはフロントフォーク、そしてコックピット周りだ。ロードバイクにおいて採用されることが稀なエアロヒンジフォークにY字状に延びたステムがマウントされ、ハンドルを支える。新型S5が唯一無二のエンジニアリングによって生み出されたスペシャルマシンであることを声高に主張する、この造形は決して見た目のインパクトだけではない、機能に裏打ちされたもの。

同社のトライアスロンバイク、P5Xから受け継ぐエアロヒンジフォークは、トップチューブの断面形状を改善するという目的だけでなく、通常のフォークコラムを廃することでケーブル内装のための空間を確保し、作業が行いやすくなるというメカニックのメリットにもつながっている。

もちろんシートクランプはインテグレートデザイン ブレーキキャリパーがなくなり集合部のエアロダイナミクスは向上したもちろんシートクランプはインテグレートデザイン ブレーキキャリパーがなくなり集合部のエアロダイナミクスは向上した 90度回すだけで脱着可能なスルーアクスル、R.A.Tシステムを採用する90度回すだけで脱着可能なスルーアクスル、R.A.Tシステムを採用する


サイズごとに金型を起こす必要のあるエアロヒンジフォークを採用することで、ジオメトリーにも徹底的な配慮がなされることに。ハンドリングに直接影響を与えるトレイル値を全サイズ共通にするため、各サイズでフォークオフセットを調整。48サイズでは58mm、56サイズでは43mmとするカーボンフォークとしてはおそらく世界初となる試みが施されている。

他車に類を見ないY型の専用ステムも同様。エアロ形状のアームが前方投影面積を減らし、従来ステム後端に発生していた乱流を発生させず、スムーズに後方に流すエアロダイナミクスを主眼とした設計である一方、ケーブルを内装する際にワイヤ―の屈曲を最小限とし、フル内装システムを採用しつつも機械式コンポーネントにも対応するユーザビリティを実現する設計でもある。

極限までダウンチューブとホイールのクリアランスが詰められている極限までダウンチューブとホイールのクリアランスが詰められている ボトルの位置を調整できるシステムは前作から受け継ぐ部分ボトルの位置を調整できるシステムは前作から受け継ぐ部分 シートステーは曲線的なデザインへと 乗り心地も向上しているはずだシートステーは曲線的なデザインへと 乗り心地も向上しているはずだ


ステムの高さは専用のスペーサーパーツによって5mm単位、さらにハンドルスペーサーによって+2.5mmで調整することができる。ハンドル角度は0、2.5、5度の3つの角度で調整可能だ。ノーマルステムが使用可能なアダプターパーツも用意され、フィッティング面でも抜かりはない。

これらの新設計によって、前作に対し42gのドラッグを低減、出力にして5.5wのパワーセーブを果たした新型S5。その上BB剛性は25%、ヘッドチューブのねじれ剛性は13%も向上し、ワールドクラスのスプリンターに応えるフレーム剛性を与えられた。一方で、フレーム全体の重量は約100gもの軽量化も実現し、ヒルクライムでもその速さは損なわれることは無い。

ソロイストに込められた「誰よりも速くゴールへ飛び込むには、いかなるシーンでも速くあるべき」という想いを受け継ぎ磨き上げたS5。全ての要素を再解釈し、鍛え上げられた”最速”のイデアの具現たるレースマシンをインプレッション。


― インプレッション

「一線級のエアロダイナミクスにリニアな加速感」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

バイクの第一印象はパリッとした踏み味で、踏んだ瞬間に加速していく反応性の良さを感じました。乾いた踏み味の素材感でフレーム剛性は高いですし、重量も軽いので、気持ちよく進んでくれます。だからといって脚への反発が大き過ぎることもなく、乗っていて楽しいバイクです。

「一線級のエアロダイナミクスにリニアな加速感」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)「一線級のエアロダイナミクスにリニアな加速感」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
ダイナミックな造形が特徴的なエアロフレームで、乗ってみても明らかな空力性能の良さを体感できます。平坦でも下りでもスピードの乗り具合が格段に良いですね。長めの巡航を試していないのでハッキリ言えませんが、このエアロダイナミクスの効き具合から察するにハイスピードの維持も容易でしょうね。それ以上にフレームの高い剛性がもたらす加速感に関心させられました。

いかにもエアロな見た目ですが、総じて扱いやすい印象を受けますね。乗り心地に関しても決して悪くないので、ロングライドに持ち出してもいいと思います。また登りに関しても車重自体が軽いので、軽快にこなしてくれます。エアロな見た目に反してオールラウンドさも持ち合わせている点も好印象です。

そして注目すべき独自のハンドルに関しては、見た目以上に普通な印象を受けました。ドロップからブラケットまで持ちやすかったですし、硬すぎて振動が伝わりやすいといったこともありません。もしもポジションが合わない場合でもスペーサーなどで柔軟に調整出来るようですし、乗る人を選ぶようなことはないと思います。奇抜な見た目ではありますが、違和感はほぼないですね。

ステム部分は3ボルトで上から締めるステム部分は3ボルトで上から締める エアロ効果を高めるため極限までクリアランスを詰めているエアロ効果を高めるため極限までクリアランスを詰めている


ここまでエアロフレームで専用ハンドルとなると、癖のあるハンドリングなのかなと思ってしまいますが、コーナーリングに関しても良い印象を受けました。全体的にヘッド周りがしっかりしているのですが、癖がある感じではなく、狙ったラインをそのままトレースできる扱いやすさがあります。接地感がしっかりあるのでコーナーリングが怖くないですし、攻めたいときはライダーの操作に応じて倒し込める懐の広さがあります。

金額を聞くと手軽な値段ではないですが、逆に高いとも思えません。このダイナミックな見た目に惚れた人にとっては最高の1台になるのではないでしょうか。見た目で惚れて乗ってみるとパリッとした踏み味で、愛着が湧いてくると思います。格好良くて速いバイクが欲しい方にはベストな選択になるでしょう。

「近未来的な見た目に反してオールマイティな味付け」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)

「近未来的な見た目に反してオールマイティな味付け」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)「近未来的な見た目に反してオールマイティな味付け」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト) まず、見た目が近未来的で非常に良いですね。その上で実際に乗ってみると、ハンドリングは素直ですし、ダンシングも軽く、もちろん高速巡航もしっかりこなしてくれるので、登りも平坦も下りも全部良いと思いました。見た目に反して至って普通に乗ることが出来る自転車だと思いましたね。

やはりサーヴェロのフラッグシップモデルということで、フレーム剛性が非常に高く、レスポンスの良い走りが特徴的です。ですが一辺倒に硬いということではなく、全体のバランスが取れているので、バイクが振りやすいと感じました。そのためスプリントで腰を上げるときや登りでダンシングする時も扱いやすい印象が先に来ます。

シートピラーの固定方式は臼式だったのですが、スムーズに調整できるのはポイントが高いですね。このタイプは癖があったりして抜き差ししにくいものなどもありますが、そういった不具合がありませんでした。こういった部分はサーヴェロの品質の高さが見えますね。

ただ、ハンドルとシートピラーに関してはポジションを決める上でネックになる可能性があるかも知れません。スペーサーで調整したり、ハンドルやステムの長さを変更出来る交換パーツも登場するとのことですが、そういったアフターパーツを注文することが出来るかどうかはショップにチェックしたほうが良いと思います。

またリムブレーキバイクに比べてフォーク先端の硬さというのは感じるところです。そこがリムブレーキバイクのしなやかな乗り味を作り出していた部分ではありますが、ディスクロードに関しては末端まで硬いので、より走りがレーシーな方向に流れている感触はあります。どちらが良いのかと言われれば好みといったところでしょうか。

少し前のエアロロードは剛性が高すぎて乗りづらい部分がありましたが、この見た目でオールラウンドに走れるというのはテクノロジーの進化を感じます。特にディスクロードについては重量のメリットを生み出すことが難しいため、山岳に特化したオールラウンドロードというのが少なくなり、オールラウンドに使えるエアロロードに集約されてくるのではないかと思いますね。

サーヴェロ S5 Disc サーヴェロ S5 Disc (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ S5 完成車ラインアップ
コンポーネントホイール価格
シマノ DURA-ACE Di2ENVE SES Disc 5.61,580,000円(税抜)
スラム RED eTap完成車DT Swiss ARC 1450 DiCut 48 Disc1,420,000円(税抜)
シマノ ULTEGRA Di2DT Swiss PRC 1450 Spline 35 Disc1,150,000円(税抜)
シマノ ULTEGRADT Swiss P1800 Spline 32 Disc790,000円(税抜)
ヘッドセット:FSA IS2 1 x 1-3/8
ハンドル:Cervélo, AB08
ステム:Cervélo Carbon Stem
サイズ:48、51、54、56
カラー:Black/Graphite/White(ULTEGRA完成車以外に用意)
    Riviera/Slate/Black(ULTEGRA完成車のみ)
    Black/Olive/Fluoro(フレームセットのみ)
    Black/Red/White(フレームセットのみ)
フレームセット:590,000円(税抜)


インプレッションライダーのプロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。

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西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。

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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO