日曜日のレースがUCI.1に昇格し、名実ともに国内最高峰のシクロクロスレースとなったRaphaスーパークロス野辺山。2日間を沸かせたトップ選手たちのバイクを紹介しましょう。



前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム):フェルト F1X

前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)のフェルト F1X前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)のフェルト F1X photo:So.Isobe
野辺山2日目にクラークとのマッチスプリントを制し、日本人選手として初めてUCI.1カテゴリー優勝を遂げた前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)のバイクはフェルトのF1X。同チームの江越海玖也や唐見実世子もF1Xと使うが、この野辺山から織田聖に最高峰モデルのFRD Xが供給されていた。

前田のコンポーネントはフロントシングルのスラム FORCE 1だが、ローターの楕円チェーンリング(Q-CX1)とクランク(3D+)、そしてKMCのチェーン(X11SL)を組み合わせていることが特徴だ。チェーン落ち対策としてK-EDGEのウォッチャーを取り付けている。なお前田以外のメンバーはシマノの機械式コンポーネント(STIレバーはデュラエース、リアディレイラーはクラッチ付きのアルテグラRX)だ。

旧型のA.T.A.C.ペダルを愛用中。理由は「タイム製品の中でも踏み込みやバネ感が一番良いから」だと言う旧型のA.T.A.C.ペダルを愛用中。理由は「タイム製品の中でも踏み込みやバネ感が一番良いから」だと言う photo:So.Isobeハンドル周りとサドルはフィジークで揃えているハンドル周りとサドルはフィジークで揃えている photo:So.Isobe

チーム内で前田のみスラムのFORCE 1を使用するチーム内で前田のみスラムのFORCE 1を使用する photo:So.Isobeクランクセットはローター。フロントシングル用楕円チェーンリングを使用するクランクセットはローター。フロントシングル用楕円チェーンリングを使用する photo:So.Isobe


Yurisがサポートしており、ホイールは同社が扱うインダストリーナイン(ハブ)とフォルモサ(リム)を手組みしたものを使用中。タイヤはチャレンジの各モデルを使い分け、前田はセンター部分がヤスリ目のCHICANE(シケイン)を愛用中だ。

セットアップで目立つのは非常に古いタイムのA.T.A.C.ペダルを使っている点だろう。その理由は本人に聞いたところ「元々タイムを好きで使っていて、その中でもバネや踏んだ時の感じが1番良く、更に壊れないから」との返事が帰ってきた。その他、ハンドル周りやサドルはフィジークで、シートポストは16mmセットバックのトムソン Elite。バーテープはマジックワンのSilic1だ。



アンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド):スクゥイッド SQUIDCROSS

アンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)のスクゥイッド SQUIDCROSSアンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)のスクゥイッド SQUIDCROSS photo:So.Isobe
チームは今シーズンからIRCのチューブレスタイヤを運用中。各種モデルを使い分けているチームは今シーズンからIRCのチューブレスタイヤを運用中。各種モデルを使い分けている photo:So.IsobeコンポーネントはスラムのFORCE 1。フロント歯数は42TだコンポーネントはスラムのFORCE 1。フロント歯数は42Tだ photo:So.Isobe


野辺山1日目に圧勝したアンソニー・クラーク(アメリカ、スクゥイッド・スクァッド)のバイクがこちら。エリート女子レースで初日3位、2日目2位に入ったエミリー・カチョレック(アメリカ)が展開するバイクブランド「スクゥイッド」のディスクブレーキ用アルミフレーム「SQUIDCROSS」を継続使用中だ。

アメリカのハンドメイドブランド「ヴェンタナバイク」がビルディングを担当するフレームは、全て自転車用DIYペイントスプレー「Spray.Bike(スプレーバイク)」でペイント済み。ストリート感溢れるグラフィカルなデザインは彼ら自身が行い、2017年のシクロクロス東京初参戦以降、日本のシクロクロスファンの間でもお馴染みとなっているものだ。今回の来日では合計5台が持ち込まれ、3選手の間で本番用、スペア用と使い分けられていた。なおバイクの販売は神奈川県川崎市のAbove Bike Storeが窓口を務めている。

チームはスラムのサポートを受けており、コンポーネントやホイール、ハンドル周り、シートポストは全てスラムもしくはジップ。フロントシングルのFORCE 1を使い、クラークのバイクは前42T、後ろ11-32Tというギア構成だった。ステムとシートポストはフレームに合わせたマッチペイントが施されている。フロントフォークはエンヴィだ。

ストリート感溢れるグラフィカルなペイントは缶スプレー塗料「スプレーバイク」で施したものストリート感溢れるグラフィカルなペイントは缶スプレー塗料「スプレーバイク」で施したもの photo:So.Isobe
ステムとシートポストもフレームに合わせてマッチペイント済みステムとシートポストもフレームに合わせてマッチペイント済み photo:So.Isobeヘッドセットやスルーアクスルなどはホワイトインダストリーズヘッドセットやスルーアクスルなどはホワイトインダストリーズ photo:So.Isobe

「サラリーマン」「サラリーマン」 photo:So.IsobeサドルはSDGのスクゥイッドコラボレーションモデルサドルはSDGのスクゥイッドコラボレーションモデル photo:So.Isobe


昨年との大きな変化は、IRCのサポートを受けたことでタイヤのチューブレス化に踏み切ったことだろう。もともとはトップ選手の使用率が高いチューブラーだったが、「海外遠征が多いので、タイヤ交換が可能なチューブレスは持ち運ぶホイール量を減らしてくれる」とはメカニックの談。ホイールは303で、アップやスペア用にアルミリムの30Courseも持ち込まれていた。

また、サドルはSDGコンポーネンツのスクゥイッドコラボモデル、ヘッドセットやシートクランプもホワイトインダストリーズ、ペダルはクランクブラザースのcandyと、タイヤを除く全部品がカリフォルニアブランドで固められていることもポイントだ(IRCの米国オフィスはカリフォルニア)。なお昨シーズンに来日した模様を綴ったカチョレックによる手記がスラム本国のHP上に掲載中だ。



エミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ):スティーブンス SUPERPRESTIGE Disc

エミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ)のスティーブンス SUPERPRESTIGE Discエミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ)のスティーブンス SUPERPRESTIGE Disc photo:So.Isobe
粘り強い走りで初日2位、2日目3位と連続表彰台に上がった41歳の大ベテラン、エミール・ヘケレ(チェコ、スティーブンスバイクス・エミリオスポーツ)のバイクはスティーブンスのSUPERPRESTIGE。ヘケレはチェコでバイクショップを経営しており、その関係でスティーブンスやFMB、KMCなどからサポートを受けているという。

2017モデルのカモフラージュカラーバイクにセットされるのは旧世代の6800系アルテグラ。本人曰く「Di2はコストが掛かりすぎる。フルタイムワーカーの自分には機械式アルテグラがちょうど良い」とのこと。STIレバーも旧型のST-R675だ。

ホイールブランドはチェコの「キャスター」。ヘケレの名前入りホイールブランドはチェコの「キャスター」。ヘケレの名前入り photo:So.Isobeヘケレは2台のバイクを野辺山に持ち込んでいたヘケレは2台のバイクを野辺山に持ち込んでいた photo:So.Isobe

コンポーネントは旧型の機械式アルテグラ。チェーンはKMCのX11SLだコンポーネントは旧型の機械式アルテグラ。チェーンはKMCのX11SLだ photo:So.IsobeヘケレはチェコのFMB代理店からサポートを受けている。野辺山ではSSC Sprint2 Greenを使用したヘケレはチェコのFMB代理店からサポートを受けている。野辺山ではSSC Sprint2 Greenを使用した photo:So.Isobe


自身のネームステッカーを貼ったチューブラーカーボンホイールは、チェコのホイールブランド「キャスター」の製品。タイヤは前後ともFMBのSERVICE COURSEのレター入りSSC Sprint2 Green(33mm)だった。

ゼロセットバックのシートポストに、極限まで前に出したサドルというセットアップが特徴で、サイクルコンピュータが下向きなのも「全力でもがいている時に見やすいため」のセッティングとのこと。昨年の野辺山シクロクロス、そして2月の世界選手権も全く同じバイクで走っていた。



ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP ENVE CX Team):キャノンデール SUPER X

ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP ENVE CX Team)のキャノンデール SUPER Xギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP ENVE CX Team)のキャノンデール SUPER X photo:So.Isobe
ホイールはエンヴィのCXリムとDT240ハブの手組み。チャレンジのTEAM EDITIONタイヤを組み合わせるホイールはエンヴィのCXリムとDT240ハブの手組み。チャレンジのTEAM EDITIONタイヤを組み合わせる photo:So.IsobeメインバイクはSRMのカーボンクランクを装備。シマノの供給専用チェーンリングを取り付けているメインバイクはSRMのカーボンクランクを装備。シマノの供給専用チェーンリングを取り付けている photo:So.Isobe


フィオナ・モーリス(オーストラリア)と共にスターライト幕張、Raphaスーパークロス野辺山、そして関西シクロクロスマキノと日本でのUCIレース3連戦に挑んでいるギャリー・ミルバーン(オーストラリア、MAAP ENVE CX Team)。ファイナンシャルコーチとしての顔を持つ彼が乗るのはキャノンデールのSUPER X。昨年使用していたスピードヴァーゲンから乗り換えている。

持ち込まれた3台中2台はブルーとグレーのカスタムチームカラーで、メインバイクとして使っていたSUPER Xはレッド。キャノンデールが本国アメリカで発売しているものと同じカラーリングだが、ヘッドチューブには市販モデルにはあるはずの「C」ロゴが無いという違いがあった。

コンポーネントはDi2/油圧ブレーキのデュラエースとアルテグラをミックスし、リアディレイラーはクラッチ付きのアルテグラRX。クランクはメインバイクがSRMのパワーメーター付きカーボンクランク、スペアバイクがキャノンデールオリジナルのSiクランクで、いずれもシマノのプロ選手供給用46-39Tチェーンリングが取り付けられていた。

こちらはチームカラーのスペアバイク。クランクを除いてセットアップはほぼ変わらないこちらはチームカラーのスペアバイク。クランクを除いてセットアップはほぼ変わらない photo:So.Isobe
SUPER Xのトップキャップは特殊径。ハンドル位置を下げるためにタンゲのTeriousを合わせていたSUPER Xのトップキャップは特殊径。ハンドル位置を下げるためにタンゲのTeriousを合わせていた photo:So.IsobeキャノンデールのSiクランクとシマノの供給用チェーンリングを組み合わせるキャノンデールのSiクランクとシマノの供給用チェーンリングを組み合わせる photo:So.Isobe

シートポスト径は25.4mm。エンヴィに交換しているシートポスト径は25.4mm。エンヴィに交換している photo:So.Isobeリアディレイラーはクラッチ付きのアルテグラRXリアディレイラーはクラッチ付きのアルテグラRX photo:So.Isobe


ここで注目したいのがチェーンリングの加工だ。SUPER Xはシェル幅83mmのBB30(BB30-83)という特殊規格を採用しているため、シマノクランク用アダプターが市場に存在しない。そのためSRMとキャノンデールのクランクアームに取り付けられるようチェーンリングを削り、46-39Tを取り付けられるよう工夫されていた。

また、ホイールやハンドル、ステム、シートポストは全てエンヴィ。セラミックスピードのロゴが貼り付けられたCXチューブラーリムとDTスイスの240ハブで手組みされたホイールには、チャレンジのチームエディション(ソフト)がセットされていた。また、ハンドル位置を下げるために、ヘッドキャップはタンゲのTeriousに交換。これは外径部分が非常に大きいSUPER Xに合わせた工夫だ。

なお、キャノンデール本国サイトのコラムページ「キャノンデール・クロニクルズ」では、モーリスが綴った手記「CHASING WINTER」が公開中。季節の反転するオーストラリアからアメリカのワールドカップ開幕戦に挑み、日本、ヨーロッパに向かう様子が綴られている。



小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム):メリダ CYCLOCOROSS

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)のメリダ CYCLOCOROSS小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)のメリダ CYCLOCOROSS photo:So.Isobe
昨年、悲願の全日本選手権制覇を成し遂げた小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は、オレンジレッド眩しいメリダのCYCLOCOROSSを愛用中。会場には4台が持ち込まれ、必要に応じて使い分けられている模様。

宇都宮ブリッツェンはシマノサポートチームの一つであり、コンポーネントはR9170系デュラエースDi2。選手供給専用の46-39Tチェーンリングを使うことが特徴で、ディスクブレーキローターはデュラエースではなく放熱性・泥はけ性に優れたSM-RT99で、アルテグラRXは使われていない。

小坂はデュガスのタイヤを愛用中。フロント15mmスルーアクスルであるためホイールはXTR小坂はデュガスのタイヤを愛用中。フロント15mmスルーアクスルであるためホイールはXTR photo:So.Isobeシマノの選手供給専用チェーンリング。歯数は46-39Tシマノの選手供給専用チェーンリング。歯数は46-39T photo:So.Isobe

配線やブレーキホースは熱収縮チューブで美しくまとめられていた配線やブレーキホースは熱収縮チューブで美しくまとめられていた photo:So.Isobeハンドル周りはイーストン。メインバイクには超軽量ハンドル「E100」が取り付けられていたハンドル周りはイーストン。メインバイクには超軽量ハンドル「E100」が取り付けられていた photo:So.Isobe


ホイールもデュラエース(WH-R9100-C40-TU)だが、フロントのスルーアクスル径が15mmであるため、前輪はマウンテンバイク用のXTR。マウント方式がフラットマウントではないことからブレーキキャリパーはBR-RS785。タイヤは小坂が長年使い続けるデュガスのチューブラータイヤ各種だ。

ステムとハンドルはイーストン。メインバイクには同社史上最軽量(178g)を誇るハンドル「E100 ロードバー」が取り付けられていた。ステムは剛性を追い求めたEC90SLだ。その他シートポストはFSAのK-FORCE、サドルはプロロゴ。



竹之内悠(東洋フレーム):東洋フレーム HYBRID CX-D

竹之内悠(東洋フレーム)の東洋フレーム HYBRID CX-D竹之内悠(東洋フレーム)の東洋フレーム HYBRID CX-D photo:So.Isobe
2011年から2015年まで全日本選手権5連覇を成し遂げた竹之内悠(東洋フレーム)が駆るのは、グラファイトデザインのカーボンパイプとカイセイのスチールパイプを組み合わせた「HYBRID CX-D」。過酷な欧州レースで竹之内がテストし、そのフィードバックを活かした上で市販されているレーシングバイクだ。

今回の野辺山には2台が持ち込まれ、メインバイクがキャンディーレッド、スペアバイクが昨年から使用していたキャンディーオレンジ。いずれもマーブル模様をメインに配置したフロントフォークが印象的で、スチール部分のメッキ加工も非常に美しい。なおシートポストもグラファイトデザインのカーボンパイプを使用した東洋フレームオリジナル品だ。

ファストフォワードのF3Dホイールに、チャレンジのチューブラータイヤをセットファストフォワードのF3Dホイールに、チャレンジのチューブラータイヤをセット photo:So.Isobeフォークは美しいマーブル模様。何度も重ね塗りをしているというフォークは美しいマーブル模様。何度も重ね塗りをしているという photo:So.Isobe

メインバイクではフロントシングルを試験運用中。歯数は42Tだメインバイクではフロントシングルを試験運用中。歯数は42Tだ photo:So.Isobeフラットマウントかつ12mmスルーアクスルのエンドの仕上がりも美しいフラットマウントかつ12mmスルーアクスルのエンドの仕上がりも美しい photo:So.Isobe


コンポーネントはデュラエースながら、メインバイクは実戦テストとしてウルフトゥースのチェーリング(42T)を組み合わせてフロントシングルとして運用中。チェーン落ち対策としてフォーリアーズのガードが取り付けられていた。ブレーキローターは小坂と同じくSM-RT99。

足回りはファストフォワードのF3Dホイールに、チャレンジのチューブラータイヤを組み合わせる。ペダルは長年愛用するタイムで、スパカズのバーテープはフレームカラーと合わせて選んでいる。



佐川祐太(SNEL CYCLOCROSS TEAM):リドレー X-NIGHT

佐川祐太(SNEL CYCLOCROSS TEAM)のリドレー X-NIGHT佐川祐太(SNEL CYCLOCROSS TEAM)のリドレー X-NIGHT photo:So.Isobe
SNEL CYCLOCROSS TEAMは使用機材をメリダから1月1日付けでリドレーにスイッチする。ベルギーのトップチーム、マーラックス・ビンゴールカラーのX-NIGHTがメインバイクとなり、現在既に先行投入中。野辺山では数名の選手がX-NIGHTを使用していた。

サドルはアスチュートの各製品を好みでチョイスしているサドルはアスチュートの各製品を好みでチョイスしている photo:So.Isobeハンドル周りはITMで統一ハンドル周りはITMで統一 photo:So.Isobe

ハブはチューン。グリーンはSNELのチームカラーだハブはチューン。グリーンはSNELのチームカラーだ photo:So.IsobeタイヤはヴィットリアのTERRENOシリーズ。しなやかさが魅力だというタイヤはヴィットリアのTERRENOシリーズ。しなやかさが魅力だという photo:So.Isobe


チームはヴィットリアのサポートを受けており、タイヤはTERRENOシリーズ各種をコンディションによって使い分け。ただしディスクブレーキ用のチューブラーホイールがカタログ上に存在しないため、チューブラーの場合はチューンのハブを使った手組みホイール。チューブレスの場合はヴィットリアのELUSION DISCと使い分けている。

また、駆動系はウィッシュボーンのボトムブラケットでチューニング済み。その他サドルはアスチュート、ハンドル周りはITM。チェーンはKMCのX11SLだ。

text&photo:So.Isobe