リンブルグの丘陵地を駆け抜けるブールス・レディースツアー第5ステージで、世界王者シャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス)が独走勝利。與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)は最終局面でアシストを務め、集団から12秒遅れでフィニッシュした。



チームとして最後のロードレースに臨むウィグル・ハイファイブチームとして最後のロードレースに臨むウィグル・ハイファイブ photo:Velofocus/Wiggle High5スタート前の與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)スタート前の與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:Velofocus/Wiggle High5

スタート直後の逃げに乗った與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)スタート直後の逃げに乗った與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:CorVos
與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が出場中のブールス・レディースツアー(UCIワールドツアー)もいよいよ佳境。個人TTを翌日に控え、ロードレース最終日となった第5ステージの舞台はドイツと国境を隔てた街シッタルトに用意された周回コースをめぐる158kmだ。フィニッシュは最近建設された「トム・デュムランバイクパーク」に置かれている。

ハルセンベルグ(700m/平均6.7%)とエーゼベルグ(400m/4.8%)、そして無数のアップダウンを含むコースは、與那嶺に「アムステル・ゴールドレースよりもきついアップダウンが160km続き、集団内にいるだけで削られていくコース」と言わしめるもの。厳しいアルデンヌコースでこの日は逃げ切りが決まった。

20kmほどの場所に拠点を置く好調の與那嶺は逃げ切りを狙い、一時は逃げグループを形成したものの吸収。「スタートから積極的に動きながら飛び出しに成功。6名での逃げになったのですが、乗ったサンウェブが上手く機能せず、残念ながら程なく吸収。その直後に、世界チャンピオンの(シャンタル)ブラークを含むカウンターがあって、あっという間にサンウェブ、ボーエルに蓋をされておしまい。チーム力の差がはっきりと出た展開でした」と振り返っている。

アルデンヌクラシックでおなじみの丘陵地帯を行くプロトンアルデンヌクラシックでおなじみの丘陵地帯を行くプロトン photo:Velofocus/Wiggle High5
アップダウンコースを逃げるシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス)らアップダウンコースを逃げるシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス)ら photo:CorVos集団内でレースをこなす総合リーダーのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)集団内でレースをこなす総合リーダーのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos


そうしてブラークや欧州王者のマルタ・バスティアネッリ(イタリア、アレ・チポッリーニ)、アミー・ピーテルス(オランダ、ブールス・ドルマンス)、そしてチェック役のアマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)らを含む強力な逃げグループが生まれ、先を急いだ。

エスケープが稼いだタイム差は3分弱。しかし消耗激しいアップダウンコースで集団も勢いを失ったため、終盤に入ってもタイム差がなかなか詰まらない。すると前日までに2連勝を飾っているデンマーク王者のアマリー・ディデリクセン(ブールス・ドルマンス)が2名を引き連れて集団から抜け出し、ブリッジに成功する。

最後の登坂区間に差し掛かると、世界王者ブラークが強烈なアタックで独走に持ち込む。後続では全ての追走をディデリクセンがチェックしたことも手伝って、ブラークは一気に30秒リードを稼ぎ出した。

独走でフィニッシュするシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス)独走でフィニッシュするシャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス) photo:CorVos
メイン集団内でフィニッシュしたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)メイン集団内でフィニッシュしたアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos最終盤にアシストを務めた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)最終盤にアシストを務めた與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) photo:CorVos


ハイスピードを維持したブラークはそのまま残る距離を逃げ切ってステージ優勝。ブラークにとって世界選手権前最後となるロードレースで、アルカンシエルを着用してガッツポーズを繰り出した。

「すごく長い1日だったけれど勝ててとても嬉しい。自分自身とてもキツかったのに勝てたのは素晴らしいチームワークのおかげ。後ろはアマリーが抑えてくれると分かっていたので安心できた。世界選手権前最後のレースをアルカンシエルで勝てるなんて最高の気分」と喜ぶブラーク。ブールス・ドルマンスにとってはステージ3連勝という結果になった。

追走グループはメイン集団に飲み込まれ、元世界王者ジョルジア・ブロンジーニ(イタリア、サイランスプロサイクリング)を先頭に46秒差でフィニッシュしたため総合成績に変動は無し。最終局面でアシストを務めた與那嶺はそこから12秒遅れてフィニッシュし、ウィグル・ハイファイブのメンバーとして最後のロードレースを終えた。以下は與那嶺のコメント。

「最終周回もぎりぎり耐え、終盤は自分で攻撃する余力もギリギリでリサ(ブレナウアー)を前に上げつつ、ラスト3kmの細い上りまで集団を引き続けました。彼女は最後も粘り8位でゴール。私はメイン集団の最後尾で、もうヘロヘロになりました。昨年より、確実に強くなってる感触を得つつ、もう一歩、今年は幸運を引き寄せたかったな。

このチームでのロードレースも今日で終わり。今年も多くを学ぶことが出来ました。ありがとうございます。そして明日は最終日のタイムトライアル。実は総合でのワールドツアーポイントを獲得できる順位にいるので、明日はフルガスで楽しく攻めてきます!「無事これ名馬」で、明日も終われますように」。

ステージ結果
1位 シャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス) 4h10'24"
2位 ジョルジア・ブロンジーニ(イタリア、サイランスプロサイクリング) +46"
3位 ルシンダ・ブラント(オランダ、サンウェブ)
4位 ロッテ・コペツキー(ベルギー、ロット・スーダル)
5位 マルタ・バスティアネッリ(イタリア、アレ・チポッリーニ)
6位 マリアジュリア・コンファロニエーリ(イタリア、ヴァルカーPBM)
7位 ジャンヌ・コレヴァール(オランダ、ワオディールス)
8位 リサ・ブレナウアー(ドイツ、ウィグル・ハイファイブ)
9位 アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ)
10位 バーバラ・グアリシ(イタリア、ヴィルトゥサイクリング)
48位 與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ) +58"
個人総合成績
1位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) 14h10'54"
2位 ルシンダ・ブラント(オランダ、サンウェブ) +18"
3位 エウジェニア・ブヤーク(スロバキア、BTCシティリュブリャナ) +29"
4位 エレン・ファンダイク(オランダ、サンウェブ) +30"
5位 リア・キルヒマン(カナダ、サンウェブ) +31"
6位 アンナ・ファンデルブレヘン(オランダ、ブールス・ドルマンス) +33"
7位 アミー・ピーテルス(オランダ、ブールス・ドルマンス) +34"
7位 エレナ・チェキーニ(イタリア、キャニオン・スラム) +35"
8位 アマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) +37"
10位 フロールチェ・マッカイ(オランダ、サンウェブ) +40"
ポイント賞v
1位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) 57pts
2位 アマリー・ディデリクセン(デンマーク、ブールス・ドルマンス) 50pts
3位 ルシンダ・ブラント(オランダ、サンウェブ) 49pts
山岳賞
1位 エウジェニア・デュヴァル(フランス、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フュチュロスコープ) 26pts
2位 シャンタル・ブラーク(オランダ、ブールス・ドルマンス) 18pts
3位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) 13pts
ヤングライダー賞
1位 ジャンヌ・コレヴァール(オランダ、ワオディールス・プロサイクリング) 14h11'38"
2位 マルタ・カヴァッリ(イタリア、ヴァルカーPBM) +06"
3位 ソフィア・ベルティッツォーロ(イタリア、アスタナ) +13"
チーム総合成績
1位 ブールス・ドルマンス 42h33'40"
2位 サンウェブ +33"
3位 ウィグル・ハイファイブ +58"
text:So.Isobe
photo:CorVos