3月5日に行なわれたツール・ド・ランカウイは、これまで何度も上位に入賞していたアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)が勝利。マレーシア人として初めてステージ優勝に輝いた。日本勢は綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)の18位が最高位。

序盤に綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)を含む逃げグループが形成される序盤に綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)を含む逃げグループが形成される photo:www.ltdl.com.myツール・ド・ランカウイ5日目は、ムアルからポート・ディクソンまでの111.5km。概ねマラッカ海峡に面した海岸線を北上する。ゴール地点は「ポート(Port)」の名前が示すように海沿いの港町だ。

この日もスタート直後からアタックの応酬で、ハイスピードで進行するメイン集団からアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)や綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム)を含む14名が飛び出し、逃げグループを形成して45秒のリード。

メイン集団をコントロールするISD・ネーリメイン集団をコントロールするISD・ネーリ photo:www.ltdl.com.my前日にポイント賞トップの座をマイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)に奪われたマナンは、1つ目のスプリントポイントを先頭で通過してポイント賞トップに返り咲き。しかし33km地点で逃げグループはメイン集団に飲み込まれた。

集団のペースは一向に落ちず、最初の1時間の平均スピードは49km/hをマーク。55km地点でアレクサンドル・シュシェモイン(カザフスタン、カザフスタンチーム)とブラデリー・ホール(オーストラリア、マルコポーロ・サイクリングチーム)の2人がようやく逃げを決めた。シュシェモインは昨年ツアー・オブ・ジャパンの富士山ステージで5位に入った選手だ。

リーダージャージを着るトビアス・エルラー(ドイツ、タブリス・ペトロケミカル)も集団牽引に加わるリーダージャージを着るトビアス・エルラー(ドイツ、タブリス・ペトロケミカル)も集団牽引に加わる photo:www.ltdl.com.myしかし111kmというステージの短さの影響で、メイン集団は逃げる2名に大きな猶予を与えない。タイム差は最大1分40秒止まり。シュシェモインとホールはゴールまで18kmを残して吸収された。

ここからはスプリント勝利を狙うチームによるハイスピード合戦だ。チームジェイコ・スキンズ、ISD・ネーリ、そして愛三工業レーシングチームが集団先頭で競り合い、大集団のまま最終ストレートへ。

アジアンライダー賞ジャージを着るアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)アジアンライダー賞ジャージを着るアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア) photo:www.ltdl.com.my先頭でゴールに飛び込んだのは、ポイント賞ジャージを着たマシューズでも前日の優勝者西谷泰治でもなく、ブルーのアジアンライダー賞ジャージを着たマナン。ビダル・セリス(スペイン、フットオン・セルヴェット)の追い上げを僅差でかわしたマナンが、歓喜の表情で両手を挙げてゴールした。

ツール・ド・ランカウイは1996年に第1回大会が開催され、今年で開催15回目を迎える。大会15年目にして、ようやく地元マレーシア人がステージ優勝を果たした。マレーシアの自転車競技における歴史的な勝利。福島晋一がキャプテンを務めるクムサン・ジンセン・アジアにとっても、記念すべき初勝利だ。

セリスの追撃を振り切ったアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)が優勝セリスの追撃を振り切ったアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)が優勝 photo:Yufta Omata2007年以降毎年欠かさずランカウイに出場しているマナンは、2008年大会第3ステージでの2位を含め、これまで通算10回に渡ってトップ10フィニッシュ。今年は第1ステージで4位に入ると、以降5位、4位、6位と連日安定した走りで上位入賞を繰り返していた。

中間スプリントポイントでも積極的にポイントを稼ぐ積極的な走りが光り、更にステージ優勝でポイントを稼いだマナンは、ポイント賞ジャージをマシューズから奪い返すことに成功。弱冠23歳の若きスプリンターがマレーシアを湧かせた。

23歳のアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア) が念願のステージ優勝23歳のアヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア) が念願のステージ優勝 photo:Yufta Omataスプリント連勝を狙った愛三工業レーシングチームだったが、集団の流れの中で進路が塞がれ、飛び出すタイミングを掴めずに後退。キャプテン綾部勇成の18位が最高位で、日本チャンピオンの西谷泰治は21位に終わった。

この日もリーダージャージはトビアス・エルラー(ドイツ、タブリス・ペトロケミカル)がキープ。しかしエルラーは翌第6ステージでジャージを手放す可能性が高い。いよいよゲンティン・ハイランドの頂上ゴールが登場するのだ。

毎年総合争いに決着をつけるのが、標高1679mに位置する高原リゾート地ゲンティン・ハイランドに至る20km近い上り。これまで登場したカテゴリー山岳が高低差100mに満たない4級山岳だったのに対し、このゲンティンだけ別格の超級山岳。これまで集団内で息を潜めていたクライマーたちがいよいよ動き出す。

アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)
今日は1つ目のスプリントポイントでポイントを稼いでいたし、楽な気持ちでスプリントに挑んだ。昨日までと違って、2つ目以降のスプリントポイントは狙わず、レース後半は最終スプリントに備えて力を温存し続けたんだ。サポートしてくれたマレーシアのみんなに感謝したい。マレーシアチームのメンバーにも感謝している。彼らはチームを越えてスプリントで助けてくれた。

レース展開はレース公式サイト、および現地情報より。

ツール・ド・ランカウイ2010第5ステージ結果
1位 アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)      2h23'11"
2位 ビダル・セリス(スペイン、フットオン・セルヴェット)
3位 レネ・ハーゼルバッハー(オーストリア、フォアアールベルク・コラテック)
4位 ルスラン・トルバエフ(カザフスタン、カザフスタンチーム)
5位 アレックス・キャンデラリオ(アメリカ、ケリーベネフィット)
6位 ヨハン・ラビー(南アフリカ、南アフリカチーム)
7位 リストフ・ヴァンヘールデン(南アフリカ、南アフリカチーム)
8位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)
9位 アフマド・ハイダル(マレーシア、マレーシアナショナルチーム)
10位 ドミトロ・グラボフスキー(ウクライナ、ISD・ネーリ)
18位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム)
21位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム)
34位 品川真寛(日本、愛三工業レーシングチーム)
48位 盛一大(日本、愛三工業レーシングチーム)
99位 五十嵐丈士(日本、クムサン・ジンセン・アジア)
102位 別府匠(日本、愛三工業レーシングチーム)
111位 鈴木謙一(日本、愛三工業レーシングチーム)             +1'06"

個人総合成績
1位 トビアス・エルラー(ドイツ、タブリス・ペトロケミカル)       17h59'23"
2位 デーヴィッド・ペル(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)        +06"
3位 ジェイ・トムソン(南アフリカ、南アフリカチーム)             +08"
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チームジェイコ・スキンズ)    +2'40"
5位 アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)       +2'50"
6位 ビダル・セリス(スペイン、フットオン・セルヴェット)          +3'00"
7位 西谷泰治(日本、愛三工業レーシングチーム)               +3'06"
8位 ルスラン・トルバエフ(カザフスタン、カザフスタンチーム)        +3'10"
9位 アレックス・キャンデラリオ(アメリカ、ケリーベネフィット)
10位 ブラデリー・ホール(オーストラリア、マルコポーロ・サイクリングチーム)+3'11"
29位 盛一大(日本、愛三工業レーシングチーム)               +3'16"
45位 綾部勇成(日本、愛三工業レーシングチーム)
63位 品川真寛(日本、愛三工業レーシングチーム)              +3'24"
86位 五十嵐丈士(日本、クムサン・ジンセン・アジア)
87位 別府匠(日本、愛三工業レーシングチーム)
101位 鈴木謙一(日本、愛三工業レーシングチーム)            +5'15"

アジアンライダー賞
アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)

ポイント賞
アヌアル・マナン(マレーシア、クムサン・ジンセン・アジア)

山岳賞
ピーター・マクドナルド(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)

チーム総合成績
南アフリカチーム

アジアチーム総合成績
マレーシアチーム

text:Kei Tsuji
photo:Yufta Omata, www.ltdl.com.my

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