2級山岳クロワヌーヴを越え、マンドの飛行場にフィニッシュするツール・ド・フランス第14ステージで逃げ切ったオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)がステージ初優勝。勾配10.2%の登りで総合争いも動いたが、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が危なげなく首位を守っている。


天然の橋「ポンダルク」を通過するプロトン天然の橋「ポンダルク」を通過するプロトン photo:Luca Bettini
ツール・ド・フランス2018第14ステージツール・ド・フランス2018第14ステージ photo:A.S.O.ツール・ド・フランス2018第14ステージツール・ド・フランス2018第14ステージ photo:A.S.O.

ツール・ド・フランスがアルプスからピレネー、もしくはピレネーからアルプスの移動中にほぼ必ず立ち寄るのがフランスの中央山塊(マッシフサントラル)。第14ステージは4級、2級、3級と、中央山塊の細かい峠道を進んでいく。獲得標高差が3,100mに達するステージの勝負どころは何と言っても残り1.5km地点でピークを迎える2級山岳クロワヌーヴ(全長3km/平均10.2%)だ。

向日葵が咲き、プロヴァンスらしい煉瓦色の街並みのサンポール=トロワ=シャトーをスタートするとすぐ、ローヌ川に沿って平野を吹き抜ける強い北風がメイン集団を破壊した。メイン集団はエシュロンを形成しながら4つに分裂し、一時的にロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が後方に取り残された。

一方のアタック最前線ではマイヨアポワを着るジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)を含む7名が先行を開始し、ここに25名が追いついて先頭は32名に。前日のステージ優勝者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)というビッグネーム揃いの逃げ集団がメイン集団を突き放し始めた。

ステージ優勝経験者10名(アラフィリップ、サガン、ゲシュケ、カルメジャーヌ、デヘント、ロラン、ジルベール、ヴァンアーヴェルマート、シャヴァネル、ボドナル)を含む32名の逃げ集団の中で総合成績が最も良いのはダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)で、マイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)から39分18秒遅れの総合25位(イタリア人最高位)。つまり総合争いに大きく影響しない逃げ集団だとして、チームスカイはペースをコントロールしながらも追走しない。序盤の横風区間で遅れていた選手も合流し、メイン集団は比較的スローペースでアルデッシュ渓谷を抜けた。

レース序盤の横風区間でエシュロンが形成されるレース序盤の横風区間でエシュロンが形成される photo:Luca Bettini
アルデッシュ渓谷を走る逃げグループアルデッシュ渓谷を走る逃げグループ photo:Kei Tsuji
チームスカイを先頭にアルデッシュ渓谷を走るチームスカイを先頭にアルデッシュ渓谷を走る photo:Kei Tsujiマイヨジョーヌ3日目を迎えたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌ3日目を迎えたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Luca Bettini
チームスカイを先頭にアルデッシュ渓谷を走るチームスカイを先頭にアルデッシュ渓谷を走る photo:Kei Tsuji
アルデッシュ渓谷のワインディングロードを走るプロトンアルデッシュ渓谷のワインディングロードを走るプロトン photo:Kei Tsuji
90km地点のスプリントポイントはもちろんマイヨヴェールを着るサガンを先頭に通過していく。サガンはこれが自身16回目のスプリントポイント通過(1回目は2012年第14ステージ)で、ポイント賞首位の座をさらに固めることに成功した。

中央山塊の峠道に入ってもなおメイン集団は逃げを追う素振りを見せず、タイム差は10分を超えた。事実上逃げ切りが容認された逃げ集団の中から、フィニッシュまで59kmを残した2級山岳クロワ・ド・ベルセル(全長9.1km/平均5.3%)でゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)がアタック。先行したスペインチャンピオンに、下り区間でトムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)とジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が追い付いた。

先頭3名(イサギレ、スラフテル、ストゥイヴェン)は追走集団に40秒、メイン集団に13分40秒ものタイム差をつけて続く3級山岳を通過。すると、フィニッシュまで35kmを残してストゥイヴェンがイサギレとスラフテルを置き去りにして独走を開始した。

まだ手にしていないステージ優勝に向かって独走したストゥイヴェン。下りをスムーズにこなしたストゥイヴェンは、イサギレとスラフテルを飲み込んだ追走集団から1分40秒のリードを得る(残り10km地点)。フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)の献身的な追走集団の牽引によってタイム差が1分30秒に縮まった状態で、最後の2級山岳クロワヌーヴの登坂が始まった。

逃げグループを牽引するジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)逃げグループを牽引するジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:Luca Bettini
先行するジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、トムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)先行するジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、トムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ) photo:Luca Bettini
独走に持ち込んだジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)独走に持ち込んだジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:Luca Bettini
勾配が断続的に10%を超える2級山岳クロワヌーヴを歯を食いしばりながら登坂したストゥイヴェンだったが、追走集団からカウンターアタックを仕掛けたオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)やアラフィリップが勢いよく迫る。徐々にスピードを失ったストゥイヴェンをフライレが残り2km地点でパス。2級山岳クロワヌーヴを独走で通過したフライレが、マンドの飛行場のフィニッシュラインに先頭で飛び込んだ。

下りでストゥイヴェンを追い抜いたアラフィリップがステージ2位。アラフィリップはステージ優勝を逃したものの、山岳賞のライバルであるワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)との差を20ポイントまで広げることに成功している。逃げ切りを果たした28名が、一時的に20分近く遅れたメイン集団の到着を待った。

2級山岳クロワヌーヴを先頭で登るジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)2級山岳クロワヌーヴを先頭で登るジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)を抜き去るオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)を抜き去るオマール・フライレ(スペイン、アスタナ) photo:Kei Tsuji
3番手で2級山岳クロワヌーヴを登るジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)3番手で2級山岳クロワヌーヴを登るジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji
2級山岳クロワヌーヴでストゥイヴェンを追い抜いたオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が勝利2級山岳クロワヌーヴでストゥイヴェンを追い抜いたオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)が勝利 photo:Luca Bettini
ストゥイヴェンを抜いて2番手でフィニッシュするジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)ストゥイヴェンを抜いて2番手でフィニッシュするジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:Luca Bettini
チームスカイとアージェードゥーゼールを先頭に2級山岳クロワヌーヴに差し掛かったメイン集団の中で、総合9位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)がタイミングの悪いパンクにより脱落。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がペースを作るメイン集団から総合4位プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)がアタックした。

総合ジャンプアップを目指すログリッチェを、エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)率いるメイン集団が追いかけた。ベルナルのハイペースに対応できたのはトーマス、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)だけで、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)は出遅れた。

ベルナルの牽引が終わると総合3位デュムランが加速し、ここにマイヨジョーヌのトーマスとフルームがぴったりとマーク。デュムランはチームスカイのコンビを引き離せないまま2級山岳クロワヌーヴを通過し、3名まとまってフィニッシュラインを越えた。総合トップスリー(デュムラン、フルーム、トーマス)は、ログリッチェから8秒失ったものの、キンタナから10秒、バルデから14秒を奪うことに成功している。

2級山岳クロワヌーヴでメイン集団から飛び出したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)2級山岳クロワヌーヴでメイン集団から飛び出したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji
2級山岳クロワヌーヴでメイン集団のペースを作るエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)2級山岳クロワヌーヴでメイン集団のペースを作るエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ログリッチェから8秒遅れでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)らログリッチェから8秒遅れでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら photo:Luca Bettini
2017年にジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾っているフライレがステージ初優勝。アスタナに今大会ステージ初優勝、通算13勝目をもたらした28歳のバスクライダーは「ストゥイヴェンに追いつくと信じてアタック。向かい風が吹く中を長い時間独走している彼は間違いなく疲れ切っていると思っていた。スペイン人選手に相性の良いマンドのステージで優勝するなんて本当に信じられない。ツールのメンバーに選ばれただけでもビッグニュースだったのに、ステージ優勝するなんて。これからはヤコブ・フルサングのサポートに徹するよ」と語る。事実、2005年にマルコス・セラノ、2010年にホアキン・ロドリゲスが優勝している地で、フライレが金星を飾った。

マイヨジョーヌをキープしたトーマスは「今日は何が起こるか予想しにくかった。最も印象的だったのはトム・デュムランの走り。ラルプデュエズでもそうだったけど、彼は苦しんでいるのか苦しんでいないのか分かりにくい。でも今日もアシスト体制はばっちりだったし、今の状況に満足している。個人的には未知の領域にいるけど、ピレネーでチームとして戦いたい」とコメント。翌日は再び逃げ切り向きの中級山岳コースが設定されている。

ステージ初優勝を飾ったオマール・フライレ(スペイン、アスタナ)ステージ初優勝を飾ったオマール・フライレ(スペイン、アスタナ) photo:Luca Bettini危なげなくマイヨジョーヌを守ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)危なげなくマイヨジョーヌを守ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Luca Bettini

ツール・ド・フランス2018第14ステージ結果
1位オマール・フライレ(スペイン、アスタナ)4:41:57
2位ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)0:00:06
3位ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
4位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)0:00:12
5位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)0:00:17
6位サイモン・ゲシュケ(ドイツ、サンウェブ)0:00:19
7位ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
8位リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)0:00:23
9位ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)0:00:30
10位トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)0:00:37
29位プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)0:18:01
30位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)0:18:09
31位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
32位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
33位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)0:18:19
34位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)0:18:23
35位エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)
36位ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
37位イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)0:18:33
38位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)0:18:38
40位ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)
41位ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)
50位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)0:19:52
DNFパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)58:10:44
2位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)0:01:39
3位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)0:01:50
4位プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)0:02:38
5位ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)0:03:21
6位ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)0:03:42
7位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)0:03:57
8位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)0:04:23
9位ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)0:06:14
10位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)0:06:54
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)437pts
2位アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)170pts
3位アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)133pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)90pts
2位ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)70pts
3位セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)63pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)58:28:12
2位ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール)0:02:27
3位エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)0:06:16
チーム総合成績
1位モビスター175:13:05
2位バーレーン・メリダ0:10:16
3位チームスカイ0:19:40
text&photo:Kei Tsuji in Mende, France