重量級スプリンターコンビが逃げたスロベニア第3ステージ。精鋭グループによる登坂スプリントに持ち込まれ、ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)を下したリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が勝利。総合首位に躍進した。



スロヴェンスケ・コニツェの街をスタートしていくスロヴェンスケ・コニツェの街をスタートしていく (c)Vid Ponikvar/Sportida
スロヴェンスケ・コニツェからツェリェを目指す175.7kmで争われたツアー・オブ・スロベニア第3ステージは、今大会最初の山岳コース。ゴール手前15kmで2級山岳を越え、ダウンヒルを経て2kmでパンチ力ある登坂の先にフィニッシュラインが引かれている。

この日エスケープしたのは逃げ屋ではなく、マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)とロジャー・クルーゲ(ドイツ、ミッチェルトン・スコット)という重量級スプリンターコンビだった。アルゴス・シマノ時代のチームメイトで、山岳を全く得意としない二人は4分弱のリードを得て、中間ポイントでスプリントごっこを繰り広げながら距離を消化していく。

沿道に詰めかけたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)大応援団沿道に詰めかけたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)大応援団 (c)Vid Ponikvar/Sportida
ロットNLユンボがメイン集団をコントロールするロットNLユンボがメイン集団をコントロールする (c)Vid Ponikvar/Sportida
キッテルは「昔のチームメイトとエスケープを楽しめたよ。多分史上最も重量級の逃げだったと思う。スロベニアの綺麗な景色も楽しめたし、トレーニングにもなった。長い登坂があったので集団は僕らを脅威とみなしていなかったみたいだ...」と自身のInstagramで振り返っている。ちなみにクルーゲは192cm/82kg、キッテルは188cm/82kg。

終盤の2級山岳に入ってすぐに単独となっていたクルーゲは捕まり、ここから総合勢による勝負が幕開ける。ロットNLユンボのペースアップで人数が絞り込まれ、KOM100m手前で沿道に大応援団が駆けつけていたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)がアタック。ネオプロのジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ)が食らいつき、二人が抜け出す形でダウンヒルに入った。

テクニカルなダウンヒルではメイン集団から下りスペシャリストのマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)が抜け出し、一瞬で二人を置き去りにして独走態勢に持ち込んだ。

自国最大のレースでステージ優勝を狙ったモホリッチだったが、フィニッシュまで続く2kmの登坂区間に入ると、セレクションの掛かったメイン集団にキャッチされてしまう。

インピーをスプリントで下したリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)インピーをスプリントで下したリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) (c)Vid Ponikvar/Sportida
プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)はステージ3位でフィニッシュプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)はステージ3位でフィニッシュ (c)Vid Ponikvar/Sportida中世の騎士がレースを見守る中世の騎士がレースを見守る (c)Vid Ponikvar/Sportida


イルダール・アルスラノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)のアタックは不発に終わり、再びログリッチェがロングスパートを敢行する。十分なリードを稼いだかに見えたログリッチェだったが、じわじわと距離を詰めたダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)が残り100mでパス。更にインピーの背後からスプリントしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が残り25mで南アフリカ王者を抜き去り、総合首位も射止めるステージ優勝を決めた。

「2級山岳で25名程度に絞り込まれた時、調子が良かったので"OK、スプリントだ。スプリントだけを狙おう"と自分に言い聞かせた。ログリッチェも最後にアタックしてくるだろうと理解していたけれど、ツールの予行演習だと思ってタイミングを待つことにしたんだ。今日は脚が良く動いたし、自分とチームに勝利をプレゼントできて良かった。」とは、昨年総合2位に甘んじたツール・ド・フランスの総合優勝を最大の目標に据えるウラン。31歳の総合エースはアルデンヌクラシック後から2ヶ月弱に渡ってレースから離れ、自国コロンビアで高地トレーニングを重ねてきていた。

「自分にとって今はツールが全て。このスロベニアはツールのために走っているんだ。厳しいコースレイアウトで自分の力を確認できて良かったし、本番での自身に繋がるよ」と安堵の気持ちを語っている。

ツール・ド・フランス総合優勝を目標に据えるリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)ツール・ド・フランス総合優勝を目標に据えるリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) (c)Vid Ponikvar/Sportida
ステージ結果
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 4h00'56"
2位 ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)
3位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) +04"
4位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
5位 イルダール・アルスラノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) +06"
6位 ロベルト・キセルロウスキー(クロアチア、カチューシャ・アルペシン) +11"
7位 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) +12"
8位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ) +14"
9位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
10位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +17"
102位 西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) +12'09"
個人総合成績
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 11h08'34"
2位 ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) +04"
3位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) +10"
4位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +14"
5位 イルダール・アルスラノフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ) +16"
6位 ロベルト・キセルロウスキー(クロアチア、カチューシャ・アルペシン) +21"
7位 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・エウロパオヴィーニ) +22"
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +24"
9位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ)
10位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) +25"
ポイント賞
1位 マッテーオ・ペルッキ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 41pts
2位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 39ps
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 25pts
山岳賞
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 6pts
2位 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) 4pts
3位 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、リュブリャナ・グスト) 4pts
ヤングライダー賞
1位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、サンウェブ) 11h08'58"
2位 タデイ・ポドカール(スロベニア、リュブリャナ・グスト) +03"
3位 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) +14"
チーム総合成績
1位 スプロム・ルスヴェロ 33h28'55"
2位 ボーラ・ハンスグローエ +09"
3位 サンウェブ +33"
text:So.Isobe
photo:Vid Ponikvar/Sportida