アイルトン・セナが1994年に亡くなったサンマリノGPの舞台イモラサーキットに、赤いアルファロメオの車列を先頭にやってきたコルサローザ(ジロ)。雷雨に見舞われたジロ第12ステージの模様を現地からお届けします。


まず最初に、イモラサーキットというキーワードに反応してこのページを開いた車好きの方々のための車関連情報から。

ディレクターカーはアルファロメオのステルヴィオディレクターカーはアルファロメオのステルヴィオ photo:Kei Tsuji
今年からジロ・デ・イタリアの車両サプライヤーがホンダからアルファロメオに切り替わった。フィアットが撤退した2002年以降ずっと海外ブランドが供給していた(4年間マツダも大会に車両を供給している)が、16年ぶりにイタリアンブランドがジロをサポートすることに。アルファロメオは現在フェラーリやマセラティ、アバルト、ランチアとともにイタリア最大手フィアットの傘下にある。

ジロ大会車両サプライヤー
?〜2002年 フィアット
2003年〜2006年 マツダ
2007年〜2013年 シュコダ
2014年 BMW
2015年〜2017年 ホンダ
2018年 アルファロメオ

アルファロメオがジロのために用意したのはセダンのジュリアとSUVのステルヴィオの2車種。先導車からディレクターカー、VIPカー、メディカルカー、警察車両(1台のみ)まで、赤or青or白のアルファロメオがずらりと並ぶ。イスラエルでも現地でアルファロメオが用意される徹底ぶり。少なくとも100台以上のアルファロメオがジロのコースを走っている(誰に聞いても正確な数字は確認できなかった。ちなみに2年前ホンダは129台を供給していた)。

赤と青のアルファロメオ・ステルヴィオ赤と青のアルファロメオ・ステルヴィオ photo:Kei Tsujiレース通過を知らせる先導車はアルファロメオ・ジュリアレース通過を知らせる先導車はアルファロメオ・ジュリア photo:Kei Tsuji
ポリツィアの車もアルファロメオのジュリアポリツィアの車もアルファロメオのジュリア photo:Kei TsujiVIPカーは青いアルファロメオ・ジュリアVIPカーは青いアルファロメオ・ジュリア photo:Kei Tsuji

ついでと言ってはなんだが、あまりピックアップされることのないチームカーのブランドもここで紹介。22チームのうち半分の11チームがチェコのシュコダ(フォルクスワーゲン傘下)を選択しており、次いでフォードが4チーム。日本車はUAEチームエミレーツの三菱だけで、今年から韓国のKIA(起亜自動車)がバーレーン・メリダのスポンサーに加わった。イスラエルサイクリングアカデミーはイスラエルステージでジャガーのE‑PACEを投入したが、ヨーロッパレースではシュコダを使用する。

各チームの車両サプライヤー(スタートリスト順)
サンウェブ → ミニ/BMW
アージェードゥーゼール → フォード
アンドローニジョカトリ → フォード
アスタナ → フォルクスワーゲン
バーレーン・メリダ → KIA
バルディアーニCSF → シュコダ
BMCレーシング → シュコダ/メルセデス
ボーラ・ハンスグローエ → フォード
グルパマFDJ → シュコダ
イスラエルサイクリングアカデミー → シュコダ
ロット・フィックスオール → シュコダ
ミッチェルトン・スコット → シュコダ
モビスター → ボルボ
クイックステップフロアーズ → プジョー
ディメンションデータ → シュコダ
EFエデュケーションファースト → シュコダ
カチューシャ・アルペシン → シュコダ
ロットNLユンボ → シュコダ
チームスカイ → フォード
トレック・セガフレード → シュコダ
UAEチームエミレーツ → 三菱
ウィリエール・トリエスティーナ → ルノー

オージモのコムーネ広場に面したバルコニーオージモのコムーネ広場に面したバルコニー photo:Kei Tsuji
出走サイン時間ギリギリに登場したマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)出走サイン時間ギリギリに登場したマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
ひとり自分の世界に入るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ひとり自分の世界に入るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
平常運行のエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)平常運行のエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
この日選手たちが最も軽いギアを使ったのは、おそらく、2km離れたチームバスの駐車場からスタート地点までの高低差50mほどの登りだったはず。丘の上のオージモ旧市街には22チーム分のチームバスが収まるスペースがないため、どうしても駐車場とスタート地点が離れてしまう。これはジロ独特のレイアウトであり、駐車場が遠くてもいいから雰囲気たっぷりの旧市街でスタートさせることにこだわっている感じ。

一方、ツールの場合は旧市街ではなく広大なスペースを確保できる新市街にスタート地点を置く場合が多い。ざっくり言って、ジロとツールでは大会関係車両の数も3倍ほどの差があり、関係者がスタート前の時間を過ごすヴィラッジョ(ツールではヴィラージュ)の規模もまったく違う。あくまでもジロはジロらしく、ツールはツールらしい。

スタート地点で話題に上ったのは、スポンサー撤退によりチーム存続の危機にあるBMCレーシングの新スポンサー獲得の噂だった。現在ディメンションデータのスポンサーを務めるデロイト社がタイトルスポンサーとなり、サンウェブにバイクを供給しているジャイアントがサブスポンサーにつくというオランダメディア発端のニュース。もちろんチーム関係者はニュースに関してYESともNOとも言わなかったが、ツアー・オブ・カリフォルニアでティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)が総合首位に立ったこともあり、どうやらチーム存続に向けて状況は好転している感じ。

オージモのコムーネ広場に集まった選手たちオージモのコムーネ広場に集まった選手たち photo:Kei Tsuji
ピンクのテープとプロトンと観客ピンクのテープとプロトンと観客 photo:Kei Tsuji
集団先頭でファーノの町を通過するマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)集団先頭でファーノの町を通過するマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
ウィリエール・トリエスティーナx2、バルディアーニCSFx2、アンドローニジョカトリ・シデルメクx1の逃げウィリエール・トリエスティーナx2、バルディアーニCSFx2、アンドローニジョカトリ・シデルメクx1の逃げ photo:Kei Tsuji
これほどまで直線的なコースを引けるのはイタリアでもここだけ。マルケ州からエミリアロマーニャ州まで、第12ステージは真っ直ぐ北西に進んだ。サンマリノ共和国を横目に走り、リミニ、チェゼーナ、フォルリ、ファエンツァと、歴史的なエミリア街道に沿った町を抜けていく。第12ステージはイモラでストップしたが、そのままエミリア街道を進むとボローニャ、モデナ、レッジョエミリア、パルマ、フィデンツァ、ピアチェンツァと、ミラノまで延々と変化の乏しい直線路が続いている。

逃げ切りが決まる可能性は極めて低いが、マルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)はこのステージで逃げる必要があった。今大会すでに445kmを逃げているフラッポルティは第11ステージ終了の時点で逃げ賞(フーガ賞)の総合成績で堂々の1位。ジロ独特の賞である逃げ賞は、10名以下のグループで逃げた距離を積算して毎日のステージ成績と総合成績を争うもの。

フラッポルティはこの日だけで187kmを逃げ、大会を通した逃げの積算距離を632kmまで伸ばしている。これはジロ前半ステージの約1/3を逃げている計算で、逃げ賞2位のエンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)に267kmもの差をつけることに成功している。ちなみに逃げ賞のステージ1位は賞金150ユーロ(19,500円)。最終的な逃げ賞総合1位には4,500ユーロ(58万5,000円)の賞金が与えられる。吸収が確実になっても最後の最後まで逃げ続ける選手がいる裏にはそんな賞の存在も少なからず影響している。

イモラサーキットのパドックに駐車したチームバスイモラサーキットのパドックに駐車したチームバス photo:Kei Tsuji
独走するティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール)独走するティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・フィックスオール) photo:Kei Tsuji
集団から脱落した選手たちがイモラサーキットを走る集団から脱落した選手たちがイモラサーキットを走る photo:Kei Tsuji
ベネットの勝利を喜ぶクリストフ・フィングステン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)ベネットの勝利を喜ぶクリストフ・フィングステン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
フィアンセのタラ・フォガーティーさんに祝福されるサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)フィアンセのタラ・フォガーティーさんに祝福されるサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:LaPresse
アウトドローモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ。なかなか一息で言えない長い名前がイモラサーキットの正式名称だ。1981年から2006年までF1サンマリノGPが開催され、人々の記憶には1994年にアイルトン・セナとローランド・ラッツェンバーガーが事故死した場所として刻まれている。セナとラッツェンバーガーが亡くなった日、その悲劇的な事故にフォーカスされがちだが、チームUKYOの片山右京代表が自身最高位となる5位という成績を残している。

ジロがイモラサーキットにフィニッシュする時はいつも雨。イルヌール・ザカリンが独走勝利した前回も雨だった。コースと並行する高速道路を走行中、ワイパーをフル稼働せさせても追いつかない雨が降ったと思ったらその30秒後にはすっきり快晴になったりと、レッジョエミリア州には局所的に激しい雨が降った。フィニッシュの1時間前からイモラサーキットには雷鳴が轟き、観客は屋根付きスタンド席で肩を寄せ合う。

レースの到着とともに本降りになった雨は表彰式のタイミングでピークを迎え、セレモニーがすべてが完了してから晴れてくるのが、困ったことに、もはやお決まりのパターンになっている。

フィニッシュ地点に駆けつけた婚約者のタラ・フォガーティーさんとキスをして喜んだサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)。ちなみに前週の日曜日にイモラサーキットで開催されたスーパーバイク世界選手権で優勝したジョナサン・レイは北アイルランド(イギリス)出身。レイはスーパーバイク世界選手権59勝目で、これは90年代に活躍したカール・フォガーティーがもつ世界最多勝記録に並ぶもの。フォガーティー・・・。ベネットの婚約者と苗字が同じだという偶然。

マリアローザと同様に、マリアチクラミーノの行方はまだまだどうなるか分からない。ヴィヴィアーニはここまでステージ1位が2回とステージ2位が1回。それに対してベネットはステージ1位が2回とステージ3位が3回。イスラエルで2連勝を飾ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)はコツコツとスプリントポイントで貯金を続けているが、現在勢いがあるのはベネット。そして登れているのもベネット。

翌日の第12ステージでポイント賞の順位が入れ替わってしまうかもしれない。もちろん、ヴェネト州出身のヴィヴィアーニがヴェネト州を走る第12ステージで負けるわけにはいかない。

即座にフィニッシュ地点を去るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)即座にフィニッシュ地点を去るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)に声をかけるジャンニ・サヴィオ監督マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)に声をかけるジャンニ・サヴィオ監督 photo:Kei Tsuji
マリアローザが見えないマリアローザが見えない photo:Kei Tsuji
濡れた腕がマリアローザに通らない濡れた腕がマリアローザに通らない photo:Kei Tsuji

text&photo:Kei Tsuji in Imola, Italy
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