アデレード市街地の4.5kmの周回コースを20周する90kmのクリテリウムで争われるダウンアンダー最終ステージは、気温33度前後の気候のもと始まった。沿道には12万4千人もの観客が沿道に詰めかけた。

1周4.5kmの市街地サーキットには124000人の観客が詰めかけた1周4.5kmの市街地サーキットには124000人の観客が詰めかけた photo:Kei Tsuji

アタックの連続でペースが落ちないアタックの連続でペースが落ちない photo:Kei Tsujiここまで総合トップのアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)と、総合2位ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)のタイム差は11秒。平坦基調のサーキットレースではまず覆らない差といえた。

この日のコース途中、8周目と12周目にはスプリント賞が設けられた。それぞれ上位通過者にボーナスタイムがつくため、最後まで少しでも総合順位を上げようとする選手たちがアタックし、レースを活性化させることが予想された。

ちなみにスプリントポイント通過時のボーナスタイムは、上位3人に3,2,1秒、ポイントは6,4,2ポイントが加算される。ゴールライン通過時は、上位3人にボーナスタイム10秒、6秒、4秒が、ポイントは8,6,4ポイントが与えられる。

午後1時半にスタートしてから断続的にアタックが繰り返される展開。しかし1度目の中間ポイントが設定された8周目に入る前に集団はひとつにまとまった。そこからは集団でのポイント&ボーナスタイム争いに。サクソバンクがバーデン・クックのために集団を牽引し、ガーミン・トランジションズが追従する。

総合リーダージャージを着て周回をこなすアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)総合リーダージャージを着て周回をこなすアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Kei Tsuji8周目のスプリントポイントは、グレゴリー・ヘンダーソン(イギリス、チームスカイ)が1位通過で3秒を、ロベルト・ハンター(南アフリカ、ガーミン・トランジションズ)が2秒を、バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)が3位で1秒を稼ぎだした。

そしてクリテリウムながらコース途中のモンテフィオーレ峠において2度の山岳ポイントが設けられた。

10周目、1度目の山岳ポイント通過は逃げグループで争われ、ミカエル・シュレル(フランス、フランセーズデジュー)が先頭通過。

12周目の2回目のスプリントポイントはロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)が飛び出し、3秒を獲得。2位はハンター、3位はジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)が獲得。
マキュアンはボーナスタイムを獲得したことで、ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)を逆転し、暫定で総合3位に浮上した。

逃げるサバティーニ(リクイガス)、サルツバーガー(フランセーズデジュー)、ロウ(ガーミン)の後ろにメイン集団が迫る逃げるサバティーニ(リクイガス)、サルツバーガー(フランセーズデジュー)、ロウ(ガーミン)の後ろにメイン集団が迫る photo:Kei Tsuji15周目、2度目の山岳ポイントは、集団を引き離した別の逃げグループで争われ、ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス)とウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、フランセーズデジュ)とトレント・ロウ(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)の3人が集団を33秒引き離し、通過。
3人にマルセル・シーベルグ(ドイツ、チームHTCコロンビア)が合流。コンスタントなペースで逃げを続ける。

16周目にはこの逃げとメイン集団とのタイム差は43秒に広がり、一時はサルツバーガーが暫定リーダーになる。しかし、集団がそれを許すはずはなく、ゴールまで1周を残した19周目に吸収されてしまう。やはり勝負は集団スプリントに持ち込まれる様相を呈した。

ゴールに向けてアスタナ、ケースデパーニュ、そしてコロンビアHTCらが代るがわる集団を牽く。レディオシャックが逃げて抵抗を試みるが、集団でスプリントになだれ込む。

クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)が勝利を確信クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)が勝利を確信 photo:Kei Tsuji先頭御集団は激しく火花を散らすが、クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)がゴールを制した。

2位には同チームのグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)が入り、チームスカイのワンツー・フィニッシュとなった。3位はグレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)。

チームスカイはダウンアンダー前哨戦のキャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックに続いて2度目のワンツーフィニッシュだ。サットンとヘンダーソンの順位は入れ替わった。

サットンは言う。「信じられないぐらいうまくいったスプリントだったね。僕らは昨夜チームミーティングで今日の作戦について話し合っていた。作戦はチームワークで集団をコントロールすることだったけど、ラスト2kmは集団をうまくコントロールして、完璧なリードアウトができた。僕はヘンディ(グレッグ・ヘンダーソン)を牽く最後の選手だったんだ。

最終スプリントバトルを制したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)最終スプリントバトルを制したクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiもしヘンディが僕に続いて来ているなら、できるだけ長く先頭に居ようと考えていたんだ。そして僕らは1位と2位をとった。まったく信じられないよ」。

シドニーっ子のサットンは、ウィニングランのためコースをもう1周した。コース途中には1980年のトラック世界選手権チャンピオンの父、ゲイリー・サットンが待っていて、クリスは立ち止まるとゲイリーや家族たちと抱き合った。

総合優勝のグライペルは、全6ステージ・総距離794.5kmのレースを18時間47分05秒で走り切ったことになる。

グライペルは6ステージ中3ステージで勝利するという怪物ぶりを発揮し、2008年に次ぐ2度目の勝利で、ツアー・。ダウンアンダー12年の歴史で2人目の2勝選手になった。ちなみに2勝を挙げているもうひとりの選手とは、1999 & 2001年に総合優勝したスチュアート・オグレディ(オーストラリア、現サクソバンク)だ。

グライペルは言う「今日他のチームはもし勝ちたければ自分たちで働かなければならなかった。リーダーであるチームHTCコロンビアは集団内でおとなしくして、自分たちのレースをすれば良かったんだ。2度目の勝利は嬉しいね。チームは1週間を通してうまく走り、リーダーの座を守りぬいたよ」。

シャンパンファイトを繰り広げた各賞ジャージの受賞者たちシャンパンファイトを繰り広げた各賞ジャージの受賞者たち photo:Kei Tsuji総合2位は11秒遅れで2005年の覇者ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)。総合3位は15秒遅れでグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)だった。

オーストラリアはクイーンズランド出身のロビー・マキュアン(カチューシャ)はステージ優勝こそ挙げることは叶わなかったが、総合ではグライペルから遅れること17秒で、もっとも上位のオージーライダーとなった。

26歳以下の新人賞はユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が、チーム総合成績はアージェードゥーゼルがそれぞれ獲得した。スプリント賞は当然のようにグライペルが獲得。山岳賞はトーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)が獲得した。

オーストラリア南部に76万2千人もの観客が詰めかけたツアー・ダウンアンダー2010。サイクリング界のスーパースターたちの夢の共演にファンたちは酔いしれた。

ステージダイジェストムービー



ツアー・ダウンアンダー2010第6ステージ結果
1位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)1h53'20"
2位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
3位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
4位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
5位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)
6位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)
7位 マシュー・ゴス(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)
8位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
9位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
10位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)

個人総合優勝
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)18h47'05"
2位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)+11"
3位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)+15"
4位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)+17"
5位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+21"
7位 エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)+25"
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+26"
9位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・スリップストリーム)
10位 マルクス・フォーテン(ドイツ、チームミルラム)+27"

スプリント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)

山岳賞
トーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)

新人賞
ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)

チーム総合成績
アージェードゥーゼル

text:Makoto.AYANO
photo:Kei.Tsuji