プロツアーのプロトンの中でもっとも若い選手のひとり、1990年生まれのペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)に注目したい。スロバキアからきた19歳の新人は、アームストロングやエヴァンスらと対等に走っている。

連日驚きの走りを見せるペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)連日驚きの走りを見せるペーター・サガン(スロバキア、リクイガス) photo:Kei Tsuji第2ステージで落車したため包帯だらけのサガン。第3ステージの上りスプリントでは世界チャンプのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)やブエルタ・ア・エスパーニャ覇者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)とスプリント争いを繰り広げ、4位になった。そして第5ステージでは5位に。連日の上位に食い込む走りが話題になっている。

しかしこの19歳は、第3ステージのスプリントを競った相手が誰なのかも良くわかってはいなかった。「自分がしたことをよく理解できていないけど、勝つ事だけを考えていたよ」とサガンは言う。

サガンは今季リクイガスでプロ入りしたばかり。そしてツアー・ダウンアンダーは初めてのトップレベルでのロードレースだ。

ジュニア時代、2008年マウンテンバイク世界選手権クロスカントリー ジュニアの部で優勝し、シクロクロス世界選手権ではジュニアの部で2位になっている。ジュニアの世界タイトルを持ってはいるが、オンよりもオフロードが馴染みの選手だ。しかし比べるまでもなくロードレースは「違う仕事」だ。

ダウンアンダーの前哨戦、キャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックではアームストロングと一緒に逃げを打った。その逃げは20分しか続かなかったが、ツール7勝の英雄と19歳の若武者の逃げは、彼の最初の印象となって観衆の目に焼き付いた。

サガンは言う「アームストロングと逃げたことは本当にイカしてたね。僕はまだ若いから、でっかいことをした気分だね」。

第5ステージでサガンはエヴァンスに続き5位でゴール第5ステージでサガンはエヴァンスに続き5位でゴール photo:Kei Tsujiしかしサガンはダウンアンダー第2ステージでリクイガスのエーススプリンター、ジャコボ・グアルニエーリ(イタリア)を牽いている最中、他の選手と絡みあって落車してしまう。医者はサガンの擦りむいた左半身を広く消毒し、腕の傷を18針縫った。

リクイガスのダリオ・マリウッツォ監督は言う。「彼はレーサーらしい決断を見せた。転んだ後すぐにバイクに飛び乗り、1分しか遅れずにゴールしているんだ。あんなにひどい傷を負ったというのに。私が思うに、彼は生まれついてのレーサーであることを証明したね」

マリウッツォ監督は言う。「サガンが今後どう伸びるかは分からないが、グランツールやワンデイクラシックを狙える選手になるだろう。サガンは短い上りがとくに得意だ。いくつかのクラシックを狙いたいと切望している。彼がバイクに乗っているとき、まるでダミアーノ・クネゴを見ているようだよ。身長は低く、小さなライダーだが、手足が長い」。

リクイガスは今後、サガンをまず3月のワンデイクラシック「モンテパスキ・エロイカ」に投入する。そしてパリ~ルーベに挑戦させる予定だ。

シクロクロスとマウンテンバイクを身の上に持つサガンは、1月26日にようやく20歳になる。北の地獄ではどんな走りを見せるのだろうか。


text: Gregor Brown in Adelaide, Australia

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