ヨーロッパで9年目のシーズンを終えた新城幸也。11月30日にボルボスタジオ青山で開催されたフォト&トークショーを前に、チーム「バーレーン・メリダ」で過ごした1年や今後のこと、若手選手について語ってもらった。



東京都内の「ボルボスタジオ青山」でインタビューに応える新城幸也東京都内の「ボルボスタジオ青山」でインタビューに応える新城幸也 photo:Satoru Kato
今年1年のシーズンを総括して、いかがでしたか?

「結果は出せなかったが自分の走りには満足出来た」と言う世界選手権「結果は出せなかったが自分の走りには満足出来た」と言う世界選手権 photo:Kei Tsuji / TDWsport新たに立ち上がったチームなので不安の中でのスタートでしたが、終わってみればニーバリがジロとブエルタで表彰台に立って、ワールドツアーのランキングも真ん中ぐらいで終わって、チームとしては最高の形でスタートを切れたと思います。

僕自身は目標のツール・ド・フランスを走ることが出来て、落車やケガが無かったのは良かったです。一番の成果は世界選手権ですね。まだ余裕があったし、落車の影響がなければ最後のスプリント勝負に加われる自信はありました。望んだ成績は出せませんでしたが、自分の走りについては満足出来たレースでした。手応えがありました。

世界選手権以外に良かったレースはありますか? または悔しかったレースは?

好きに走らせてもらった パイスバスコの第1ステージのスプリントとか、リエージュ、フレッシュは良かったですね。特にリエージュ(〜バストーニュ〜リエージュ)はイサギレが5位に入ってくれたので。

逆に自分が働いたのにチームの結果が出なかった時は悔しいですね。ツール・ド・ロマンディでは1日中集団コントロールしたけれど結果に結びつかなかった。今年は先頭切って風を受けて集団コントロールすることが多いんですが、自分が勝てなかった時よりも悔しいですね。

今年のツール・ド・フランスを改めて振り返っていかがでしたか?

「家の近くを通る時に限ってツールに出られないので、来年は是非出たい」「家の近くを通る時に限ってツールに出られないので、来年は是非出たい」 photo:Satoru Kato結果はしょうがないというか、あれ以上のことは無理でした。ツールの前にケガ人が続出してしまったことや、エースのイサギレが初日でいなくなったことでスプリントか逃げに乗るかしか出来なくて、スポンサーに「何やってんだ!」と言われたり...。僕らも最善の方法を考えて、監督のフィリップ・モデュイとも話し合ってやりましたが、あれ以上のことは出来なかったと思います。他チームのように第2エースがいるなら別ですが、あのツールでは僕らはイサギレ1本勝負だったので、エースを失った後は組み立てが難しくなってしまいました。

来年のツール・ド・フランスのコースを見ての印象は?

石畳がありますし、ラルプデュエズもあります。何より地元スタートなので今年以上にモチベーションがあります。特に第2ステージは僕の家の近くを通るし、コースは全部知ってる道なので楽しみです。ただ、今まで家の近くを通る時に限ってツールに出られなかった(2011年と2015年)苦い思い出があるので、来年はそれを払拭したいです。

家の近くは平坦が無くて、緩い登りと下りでクネクネしてる道が続きます。たまに風が出ると大変なんですが、第2ステージは風が出ても大丈夫です。その代わり200kmで(獲得標高差が)2000mくらい登れるようなところです。

100kmちょっとの短距離山岳ステージが来年もありますが、厳しそうです。今年(第13ステージ)は、3つ登って下ってゴールだったけれど、来年(第11ステージ)は3つめの頂上ゴールなので、3つとも全開で登らないといけない。今年は2つめの山を越えた時点で前との差を見て走っていたんですけれど、山の前後に平坦が無いのでそれが出来なくなる...。登れるようにならないといけないですね。

今年のツール・ド・フランス13ステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ)今年のツール・ド・フランス13ステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ) 今年のツールは登りで逃げが決まっていて、平坦で逃げが決まっていないんです。ある程度登れないと、来年は逃げに乗るのは難しいでしょうね。

でも来年は成績を残すならツールしかないと思っています。世界選手権は獲得標高差が4000m以上になるので自分にとっては厳しすぎる。世界選のことを言うと、今年からレギュレーションが変わって出場枠が減ってしまいましたが、ワールドツアーで1勝するかステージ優勝すればポイントを大量に稼げるので、枠が増えます。そのためにもツールで頑張りたいんです。

フルームがジロに出ることを表明しましたが、ジロやブエルタは出たいですか?

フルームがジロに出るんですか?。でも今年のジロはイスラエルからスタートですよね。パスポートにイスラエルの入国スタンプを押してあると他の中東の国に入れなくなるらしいので、僕らはアブダビとかバーレーンとかに行かなければならないから、あまり行きたくないですね。

(注釈:外務省HPによると、パスポートにイスラエルの入国スタンプがあるとイスラエルと国交の無いアラブ・イスラム諸国への入国は拒否されるが、2013年からは空港からの入国ではスタンプは押されなくなったとの事。詳しくはこちら

大腿骨骨折の影響は、もう完全にありませんか?

自転車に乗っている上では無いです。でも骨密度が低くなっていて、刺激を与えていないとすぐ弱くなって折れやすくなるそうなので、シーズン中も極力歩くようにしています。出来ればボルトを抜きたいんですが、時間も無いし、パフォーマンスに影響は無いのでそのままにしています。カルシウムですか? 多めって訳ではないですけれど、牛乳は多めに飲むようにしてます。

今年はジャパンカップに出られませんでしたね。何か思うところはありますか?

ツアー・オブ・広西・第5ステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ)ツアー・オブ・広西・第5ステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:TDWsportチームとしてはツアー・オブ・ジャパンに出場して、ジャパンカップは中国のレース(ツアー・オブ・広西)と重なっていたので仕方ないですね。僕も中国のレースに行きましたけれど、じつはオーガナイズがしっかりしていて、個人的には良いレースだったと思います。チームのビジネス的なメリットも含めると、中国のレースが選ばれる可能性は今後高くなるでしょうね。開催時期をずらすとか対策を考えないと、ジャパンカップに出場するワールドツアーチームは減ってしまうかもしれません。

個人的にジャパンカップに出場するならナショナルチームもありますが、それは若手選手のためにポジションを空けておきたいですね。

2018年の目標と、レース予定は?

コアラとの記念写真に喜ぶ新城幸也(バーレーン・メリダ)コアラとの記念写真に喜ぶ新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji今のところツアー・ダウンアンダーは決まっています。でも12月6日からのクロアチアでのチーム合宿で正式に決まります。希望としては、ダウンアンダーの後タイで合宿し直して、3月のパリ〜ニースとかティレーノ〜アドリアティコあたりからヨーロッパで走り始めて、アルデンヌクラシック、ツール・ド・ロマンディと走って休んで、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネを走ってからツール、という順で行きたいです。ダウンアンダーが無ければツアー・オブ・オマーンを走っても良いのですが、コンディションを合わせるのが難しくなるので、出来れば行きたくないですね。あと出るならブエルタ。ジロ+ツールよりも、ツール+ブエルタですね。ジロは寒いから、暑いブエルタのほうが好きです(笑)。

1年経って感じる、チームの良い点、まだ慣れない点はありますか?

チーム内のやり取りが英語なのは慣れないですね。イタリア語よりは良いんですけれど(笑)。出来たばかりのチームなので来年は色々やり方を変えるところもあるみたいです。監督などの指導陣との間に「インフォメーション係」が新たに出来るらしいので、その人を通して色々やり取りすることになるみたいですが、詳しくは12月の合宿に行ってみないとわかりません。

新たに入る6人のチームメイトについてはどうでしょうか?

ポッツォヴィーボはニーバリと一緒に練習している仲なので、すぐにチームに馴染むと思います。クライマーが入るのは良いことですし、戦力は上がりますね。ネオプロの選手も頑張ってくれているので、あとはチームが続くかどうか(笑)。立ち上げから関わらせてもらっているので、長く居たいと思っています。僕は2年契約なので来年まで。ニーバリは3年契約だから、再来年まではチームがあるってことですかね?(笑)。

東京オリンピックに向けて準備していることなどはありますか?

コース案を見る限りは相当な標高を登るので、クライマーの勝負になりますよね。特に準備をしていることはありませんが、強化指定してくれるとか、出ると決めてくれればそれに合わせて動きますし、東京オリンピックまで走るというモチベーションはあります。

「東京オリンピックまで走るモチベーションはあります」「東京オリンピックまで走るモチベーションはあります」 photo:Satoru Kato
年齢を重ねて変化したことや工夫していることはありますか?

昔はすべてのレースを全力で走っていました....と言うか、全力で走れました。でも今は手を抜いても走れるようになりました(笑)。経験を積んで強弱の付け方が分かってきたのもありますが、要は衰えているからそうなるんでしょうね。でも、それはそれで今も昔もシーズンを通して走れるだけの体力はあるので、そこは歳を取ったおかげで良くなったところでもあると思ってます。

年齢的にはベテランですが、チームや集団内での立ち位置は変わりましたか?

あまり変わらないですね。チーム内ではニーバリと同い年で、上は39歳のペリツォッティまでいるので、歳を取ったという感覚があまり無いですし、集団内でも若い選手は1チーム2人くらいしか入ってこないから、自分がベテランという感覚もあまり無いです。あまり人が変わらないのは自転車界の良いところでもあり、悪いところでもありますが(笑)。

美和さんがフォトグラファーとして活動していますが、どう思われていますか?

新城幸也(バーレーン・メリダ) ボルボスタジオ青山にて新城幸也(バーレーン・メリダ) ボルボスタジオ青山にて photo:Makoto.AYANO彼女なりの目標を見つけたので良いことだと思います。でも頑張りすぎて大変にならないかな、と。僕よりも多くレースに行ってますし、移動も多いしトラブルもあるし、そこは気をつけて欲しいですね。

後に続く若手日本人選手にメッセージを

僕が教えられることや出来ることは何でもやりますけれど、まず同じレースを走らないと教えられない。タイ合宿なら誰でも参加可能なので、一緒に練習出来ます。僕は1月にタイで4000km走ります。それより距離を走らずに僕より強くなるのは難しいですよね?。僕や別府さんはスペシャルな練習をしているわけではなくて、やることをやってこのレベルにいられるんです。

普段の練習で30km/hで走っている人がレースで40km/hで走ったら、それだけで力を使ってしまう。練習でも40km/hで走っていればレースで力を使わずに走れる。合宿はそういうレベルを上げる場です。自分がどこに合わせて練習しているのか...。全日本チャンピオンになりたいのか、ツールを走りたいのか。それに合わせた練習をしないといけない。週末のレースに勝つための練習じゃないんです。

ジュニアの時はそこまでやる必要はありませんが、アンダーより上になると世界との差がずっと開いていくので、アンダーに上がってからが勝負です。今はNIPPO(ヴィーニファンティーニ)という高いレベルのレースを走れるチームがあるので、あの環境を活かして欲しいですね。NIPPOと同じようなレースを走れるチームにはなかなか入れませんよ。

interview:Makoto.AYANO, Satoru.KATO

※同日に開催されたトークショーの模様は別記事でお伝えします。
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