4月25日から30日までの6日間、スイス西部のロマンディ地方で第71回ツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)が開催される。別府史之や新城幸也の他、ツール・ド・フランスを狙うオールラウンダーが多数集うステージレースの見どころをチェックしておこう。



風光明媚なスイス西部のロマンディ地方を駆け抜けるメイン集団風光明媚なスイス西部のロマンディ地方を駆け抜けるメイン集団 photo:Bettini



2つの個人TTと2つの山頂フィニッシュで決する総合争い

ツール・ド・ロマンディ2017ツール・ド・ロマンディ2017 image:www.tourderomandie.ch第二次世界大戦後すぐの1947年に初開催され、以降毎年欠かさず開催されているツール・ド・ロマンディ。2017年で開催71回目を迎える歴史あるステージレースであり、2005年からUCIプロツアー(現UCIワールドツアー)カレンダーに組み込まれている。

ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、リヒテンシュタインに囲まれたスイスには4つの言語圏が存在する。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つが公用語とされており、フランス語(厳密に言うとスイスフランス語)が第一公用語として話されている同国西部のロマンディ地方がレースの舞台だ。

2017年大会は、アルプスの玄関口として古くから栄え、現在はUCI(国際自転車競技連盟)の本拠地が置かれているエーグルの街をスタートする。初日はエーグルの街中を走る4.8kmのプロローグ(個人タイムトライアル)だ。大会2日目の第1ステージは早速カテゴリー山岳が5つ設定された本格山岳コースで、標高1,033mの1級山岳シャンペリー(全長14.4km/平均4.4%)にフィニッシュが置かれている。

レマン湖を経てビュルまで北上する第2ステージと、ヌーシャテル湖南部の丘陵地帯を走る第3ステージは2〜3級のカテゴリー山岳が詰め込まれたアップダウンコースで、いずれも獲得標高差は2,000mを超える。決して平坦ステージとは呼べない難易度だが、スプリンターたちにとってはこの2日間が活躍のチャンスとなる。

最終日前日の第4ステージは大会最難関のクイーンステージ。レース後半にかけて1級山岳ヤウンパス(全長5.9km/平均8.3%)、2級山岳ザーネンモーザー(全長7.6km/平均4.4%)、1級山岳コル・デュ・ピヨン(全長7.0km/平均5.2%)を立て続けにクリアし、開幕地エーグルに近い1級山岳レザン(全長4.0km/平均7.2%)でフィニッシュを迎える。標高1,500mクラスの峠が連続するこのクイーンステージでマイヨジョーヌ候補たちがバトルを繰り広げる。

6日間のレースを締めくくるのはレマン湖の畔に位置するローザンヌの17.9km個人タイムトライアル。前半にかけて高低差360mを駆け上がるアップダウンコースであり、距離以上に大きなタイム差がつく可能性も。ツール開幕までまだ2ヶ月あるが、各選手の仕上がり具合にも注目したい。

ツール・ド・ロマンディ2017第1ステージツール・ド・ロマンディ2017第1ステージ image:www.tourderomandie.chツール・ド・ロマンディ2017第4ステージツール・ド・ロマンディ2017第4ステージ image:www.tourderomandie.ch



ツール・ド・ロマンディ2017ステージリスト
4月25日(火)プロローグ エーグル〜エーグル 4.8km(個人TT)
4月26日(水)第1ステージ エーグル〜シャンペリー 172.1km(山頂フィニッシュ)
4月27日(木)第2ステージ シャンペリー〜ビュル 160.7km
4月28日(金)第3ステージ パイェルヌ〜パイェルヌ 187km
4月29日(土)第4ステージ ドンディディエ〜レザン 163.5km(山頂フィニッシュ)
4月30日(日)第5ステージ ローザンヌ〜ローザンヌ 17.9km(個人TT)



マイヨジョーヌ候補のフルームとポートらが激突する

総合優勝候補に挙げられるのは、ジロ・デ・イタリアのマリアローザを狙う選手ではなく、ツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを狙う選手たちだ。中でも2013年、2015年、2016年ツール覇者のクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が総合優勝候補の筆頭だと言える。

フルームはこのロマンディで2013年と2014年に総合優勝を飾っている。過去2年間は総合3位と総合38位に甘んじているが、このロマンディと1ヶ月後のクリテリウム・デュ・ドーフィネで調子を上げ、7月の大一番に挑むのが例年のスケジュール。ロマンディではダビ・ロペス(スペイン)やイアン・ボズウェル(アメリカ)、ピーター・ケニャック(イギリス)らが山岳アシストを務める。

クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo: TDWsport

出場する19チーム・152名のうち、過去に総合優勝の経験があるのはフルームを含めて4名いる。2015年覇者のイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、2010年覇者のシモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)、そして2009年覇者のロマン・クロイツィゲル(チェコ、オリカ・スコット)だ。ディフェンディングチャンピオンのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)はジロに備えて欠場する。

中でもカチューシャ・アルペシンでタッグを組むザカリンとスピラクのコンビは強力。スピラクは2010年の(繰り上げ)総合優勝の他にも、2013年から3年連続で総合2位という成績を残している。オリカ・スコットのクロイツィゲルはステージ通算6勝を飾っているミヒャエル・アルバジーニ(スイス)やサイモン・イェーツ(イギリス)らとイエロージャージ獲得を目指す。ツールでフルームのライバルとなるリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)はティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)やニコラス・ロッシュ(アイルランド)のサポートを得ての出場だ。

サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) photo: TDWsportイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji

タイムトライアルが2つ設定されたステージレースはボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)向き。ロベルト・ヘーシンク(オランダ)とユルゲン・ヴァンデンブロック(ベルギー)というベテラン2人を揃えるロットNLユンボは、ユンゲルスと同様にタイムトライアルを得意とする新星プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)をエースに据えると見られる。コロンビアンクライマーのリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)やヤルリンソン・パンタノ(トレック・セガフレード)、そして地元スイスのマティアス・フランク(アージェードゥーゼール)やセバスティアン・ライヒェンバッハ(エフデジ)も総合争いに絡んでくるだろう。

第2ステージと第3ステージでの活躍が期待されるスプリンターとしては、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)やベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)、マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、クイックステップフロアーズ)らが有力と見られる。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ後、急遽ロマンディ出場が決まった新城幸也(バーレーン・メリダ)は、平坦ステージでスプリンターのソニー・コルブレッリ(イタリア)を、そして山岳ステージでは2016年大会総合3位のホン・イサギレ(スペイン)をアシストする。同じくリエージュから連戦の別府史之(トレック・セガフレード)は6回目の出場。別府にとっては2007年にステージ2位の成績を残した相性の良いレースだ。

新城幸也(バーレーン・メリダ)新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji別府史之(トレック・セガフレード)別府史之(トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji


text:Kei Tsuji