4月19日(水)、ベルギー東部のワロン地域でラ・フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)が開催される。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が5勝目を狙う激坂レースにはアムステルに続いて別府史之と新城幸也が出場予定だ。


「ユイの壁」を駆け上がるメイン集団「ユイの壁」を駆け上がるメイン集団 photo:TDWsport


3回登場する「ユイの壁」で決着する激坂レース

ラ・フレーシュ・ワロンヌ2017ラ・フレーシュ・ワロンヌ2017 image: A.S.O.アルデンヌクラシックの一つに数えられ、毎年アムステルゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日に開催されるラ・フレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスやリエージュと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンデーレースで、2017年で開催81回目を迎える。

快晴のワロン地域を走る快晴のワロン地域を走る photo:TDWsportレースの舞台となるのはベルギー南東部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北西部のフランデレン地域ではフラマン語(オランダ語)が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。「フレーシュ」はフランス語で「矢」を意味しており、レース名は「ワロンを貫く矢」の意味だ。

ワロン地域の丘陵地帯を進むワロン地域の丘陵地帯を進む photo:TDWsport距離の短い上りが連続して登場するコースレイアウトはアルデンヌクラシックならでは。他のアルデンヌ2戦とは異なり毎年スタート地点が転々とするのが特徴で、第81回大会はバンシュでスタートが切られる。2つのカテゴリー山岳(コート・ダメイとコート・ヴィレ=ル=ブイエ)を含むワロン特有のアップダウンコースを経て、残り60km地点でユイの街を起点にした周回コースに突入する。

「ユイの壁」に突入するプロトン「ユイの壁」に突入するプロトン photo:Kei Tsuji例年は大小2種類の周回コースが用意されたが、2017年は全長29kmの周回コースを2周するシンプルなレイアウトに変更された。この周回コースに登場するのはコート・デレッフ(2,100m/5%)、コート・ド・シュラーブ(1,300m/8.1%)、そしてミュール・ド・ユイ(1,300m/9.6%)という3つの上り。上りの間には横風区間もあり、周回突入後は一瞬の油断も許されないナーバスな展開となる。

2015年に導入された残り5.5km地点のコート・ド・シュラーブでセレクションがかかった状態で、最後のミュール・ド・ユイ(ユイの壁)に突入することになるだろう。長さ1,300m、高低差121m、平均勾配9.3%の登りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%(公称19%)に達する激坂ぶりにある。全長1,300mの登りのうち、前半は比較的幅のある緩斜面であり、残り1kmアーチを通過し、ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタートする。

登りが進むにつれて勾配が増し、勝負が決まるのはラスト400mから始まる急勾配区間。コンスタントに20%オーバーを刻む「壁」で飛び出した選手が激坂ハンターの称号を手にする。



登場する9カ所の登り(登坂距離/平均勾配)
1 131.5km地点 コート・ダメイ 1,400m/6.7%
2 138.0km地点 コート・ヴィレ=ル=ブイエ 1,200m/7.5%
3 146.5km地点 ミュール・ド・ユイ(1回目)1,300m/9.6%
4 159.0km地点 コート・デレッフ 2,100m/5%
5 169.5km地点 コート・ド・シュラーブ 1,300m/8.1%
6 175.5km地点 ミュール・ド・ユイ(2回目)1,300m/9.6%
7 188.0km地点 コート・デレッフ 2,100m/5%
8 199.0km地点 コート・ド・シュラーブ 1,300m/8.1%
9 204.5km地点 ミュール・ド・ユイ(2回目)1,300m/9.6%

ラ・フレーシュ・ワロンヌ2017ラ・フレーシュ・ワロンヌ2017 image: A.S.O.


クウィアトやマーティンがバルベルデの記録更新にストップをかける?

2016年に4度目の優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)2016年に4度目の優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:TDWsport過去3年連続でユイを制しているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が優勝候補の筆頭であることに間違いはない。バルベルデは2006年に初優勝を飾っており、通算4勝はエディ・メルクス(ベルギー)らを抜いてフレーシュ最多勝記録だ。

モニュメント初制覇を果たしたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)モニュメント初制覇を果たしたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo: TDWsportバルベルデは今シーズン絶好調で、ブエルタ・ア・アンダルシア、ボルタ・ア・カタルーニャ、ブエルタ・アル・パイスバスコというスペインのステージレースで3連続総合優勝。アムステルゴールドレースは19位に終わったが、本人はフレーシュとリエージュをシーズン前半の最大の目標に掲げている。バルベルデは最多勝であると同時に今回の出場選手の中で最多出場(12回目)。なお、モビスターはメンバー8名の合計出場回数が38回で、こちらも出場チームの中で最多であり、経験豊かなメンバーがバルベルデをアシストする。

先頭で「ユイの壁」を登るダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)先頭で「ユイの壁」を登るダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsportアムステルで積極的なレースを展開し、2位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)は 2014年のフレーシュで表彰台を経験している。アムステルに続いてセルジオルイス・エナオ(コロンビア)やディエゴ・ローザ(イタリア)とともにレースを動かしてくるだろう。

ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo: TDWsportフィリップ・ジルベールとジュリアン・アラフィリップという実績あるクラシックレーサー2人を怪我で欠くクイックステップフロアーズは、ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)をエースに据える。マーティンは過去に2度表彰台に上っており、ベルギーチームの好調な波に乗りたいところ。

過去に実績のあるミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)やサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)の他、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)やラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)といったグランツールレーサーも揃っている。ディエゴ・ウリッシ(イタリア)とルイ・コスタ(ポルトガル)を揃えるUAEチームエミレーツも強力。マイケル・マシューズ(オーストラリア)とワレン・バルギル(フランス)擁するサンウェブも大きな勢力だ。

自身5度目の出場となる別府史之は再びバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)のアシスト、新城幸也はホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)のアシストを担うと見られる。両者ともにアムステル、フレーシュ、そしてリエージュの3戦連続出場予定だ。

text:Kei Tsuji