パリ〜ニースにようやく平穏な1日が訪れた。第3ステージはトップスプリンターが揃う大集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が自身初のUCIワールドツアーレース勝利を飾った。



フランス中部の平野を駆けるフランス中部の平野を駆ける photo: TDWsport / KT


パリ〜ニース2017第3ステージパリ〜ニース2017第3ステージ image: A.S.O.「太陽に向かうレース」という名前の通り、南下を続けるにつれて天候は回復。第3ステージはワインの産地として知られるシャブリからシャロン=シュル=ソーヌまで走る190km。後半にかけて3級山岳グランモン峠(2.4km/4.9%)と2級山岳シャルセ峠(2.1km/6.7%)を越えるが、残り少ないステージ優勝のチャンスをスプリンターたちが逃すはずはなかった。

カチューシャ・アルペシンはディスクブレーキ搭載バイクを使用するカチューシャ・アルペシンはディスクブレーキ搭載バイクを使用する photo: TDWsport / KTこの日はピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)、ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)、ロマン・コンボー(フランス、デルコ・プロヴァンスマルセイユ)のファーストアタックがそのまま決まる。風雨によって荒れた展開となった序盤の2ステージとは異なり、逃げを先行させたメイン集団には平穏な空気が流れ、タイム差は8分まで広がった。

チームスカイのセルファイス・クナーフェン監督と談笑するリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)チームスカイのセルファイス・クナーフェン監督と談笑するリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo: TDWsport / KT集団コントロールを担ったのはディスクブレーキ搭載バイクをテストするカチューシャ・アルペシンで、ここにクイックステップフロアーズやロット・ソウダル、そしてリーダージャージ擁するエフデジも加わる。

2級山岳シャルセ峠で逃げグループはバラけ、ラトゥールを先頭に頂上をクリアする。1分後方にまで迫っていたメイン集団からは山岳賞ジャージを着るロマン・アルディ(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)がアタックし、貴重な山岳ポイントを上乗せしている。この山岳でディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)やアンドレア・グアルディーニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が脱落したものの、その他のビッグスプリンターたちは集団に残った。

先頭ではラトゥールとコンボーのフレンチデュオが40秒程度のリードで逃げ続け、曲がりくねったコースで最後まで抵抗を見せる。残り6km地点で依然としてタイム差は30秒。しかし徐々に熱を帯びたスプリンターチームのポジショニングによって集団のペースは上がり、残り2km地点でタイム差は13秒にまで縮まった。



ロット・ソウダルやクイックステップフロアーズ、エフデジがメイン集団を牽引するロット・ソウダルやクイックステップフロアーズ、エフデジがメイン集団を牽引する photo: TDWsport / KT


曇り時々晴れのフランス中部を南下する曇り時々晴れのフランス中部を南下する photo: TDWsport / KT隊列を組むカチューシャ・アルペシンとクイックステップフロアーズを先頭に猛進したメイン集団は、フラムルージュ通過と同時に逃げを吸収。100名を超える大集団によるスプリントが始まった。

マイヨジョーヌを着て走るアルノー・デマール(フランス、エフデジ)マイヨジョーヌを着て走るアルノー・デマール(フランス、エフデジ) photo: TDWsport / KT最終リードアウト役のファビオ・サバティーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)がペダルを止めると、フィニッシュラインの位置を確認したマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が腰を上げる。その後ろからジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が同時にスプリントをスタート。

逃げ続けるピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)とロマン・コンボー(フランス、デルコ・プロヴァンスマルセイユ)逃げ続けるピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)とロマン・コンボー(フランス、デルコ・プロヴァンスマルセイユ) photo: TDWsport / KT別ラインからはアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)がベネットを引き連れる形でスプリント。キッテル、デゲンコルブ、クリストフ、ベネットが先頭で競り合う形となり、ライバルたちよりも速いケイデンスでもがき続けたベネットが抜け出す。頭一つ抜け出したベネットが右手を大きく挙げた。

トップスプリンターたちを下したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)トップスプリンターたちを下したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo: TDWsport / KTボーラ・ハンスグローエの前身であるネットアップ・エンデューラ時代からドイツチームに所属する26歳のアイリッシュスプリンターがUCIワールドツアーレース初勝利。ベネットはこれまでクリテリウム・アンテルナシオナルやツアー・オブ・カタールでステージ優勝を飾っている。

「脚の調子も良く、絶好のチャンスだと判断して今日は自信を持って勝負した。チームのフルサポートを得てスプリント。自分のポジションを守ることだけを考えていたので、他のスプリンターの動きなんて気にしていなかった。昨日までと比べるとイージーなステージだったけど、逆に競技レベルは高かったように思う。ステージ優勝に手が届いて本当に良かった」と、2017年スプリント2勝目を飾ったベネット。シーズン初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーでペテル・サガン(スロバキア)とタッグを組んだベネットは第1ステージで3位。カデルエヴァンスグレートオーシャンロードレースの前哨戦であるクリテリウム(非UCIレース)で勝利を収めている。

「トップスプリンターが集まる中での2位は悪くないけど、やはり勝ちたかった」と悔やむのはステージ2位のクリストフ。「道が細まった残り500mの時点でグライペルとベネットに行く手を塞がれてしまい、ブレーキングして減速する必要があった。スピードが落ちてしまったのでそこから再び加速したけど、ベネットに上手くスリップストリームに入られてしまったんだ。向かい風の中をスプリントして、後ろからベネットが加速。その動きには反応できなかった」。

ステージ3位のデゲンコルブは「フィニッシュ手前の細くて曲がりくねった道は自分向きで、うまく集団前方のポジションをキープできていた。誰もが勝利を狙って突っ込んでくる混沌としたスプリント。最後はエディ(トゥーンス)がポジションを下げてしまったのでリードアウトを受けれなかったものの、自力でポジションを守って3位。結果には満足している」と、トレック・セガフレードに馴染んでいる様子。交通事故の影響で低迷した2016年シーズンを脱し、トップコンディションを取り戻した様子だ。

「今日はイエロージャージを着て走ることを楽しめた」と語るアルノー・デマール(フランス、エフデジ)はステージ6位。総合首位を守ったデマールは「木曜日(第5ステージ)にまたステージ優勝を狙いたい。明日のタイムトライアルは最終走者。キャリアの中で一番最後に走るなんてそうそうないから楽しみたい」とコメントしている。



第3ステージを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)第3ステージを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo: TDWsport / KT


パリ〜ニース2017第3ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)      4h31’14”
2位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)
4位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)
6位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ)
7位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
8位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
9位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)
10位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)

個人総合成績
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ)             12h14’42”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)  +06”
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)  +13”
4位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)    +17”
5位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)            +19”
6位 ロマン・アルディ(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)   +21”
7位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)          +23”
8位 ルディ・モラール(フランス、エフデジ)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)
10位 クリスティアン・コレン(スロベニア、キャノンデール・ドラパック)  +31”

ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ)              29pts
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)       24pts
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 23pts

山岳賞
1位 ロマン・アルディ(フランス、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)  14pts
2位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)      8pts
3位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)       7pts

ヤングライダー賞
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)12h14’48”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)    +1’12”
3位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)

チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ                    36h45’06”
2位 エフデジ                               +37”
3位 カチューシャ・アルペシン                       +47”

text:Kei Tsuji
photo:TDWsport