雨中の消耗戦で、屈強さを見せつけたギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が逃げ切り勝利。女子レースには萩原麻由子、與那嶺恵理、牧瀬翼の3名が出場した。



カレニョンの市街地で行われたスタートセレモニーカレニョンの市街地で行われたスタートセレモニー photo:CorVos序盤にメイン集団を率いるロット・ソウダルのメンバー序盤にメイン集団を率いるロット・ソウダルのメンバー photo:CorVos難易度三ツ星の石畳を走るギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)難易度三ツ星の石畳を走るギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) photo:CorVos逃げ切りへの布石を敷いたマールテン・ワイナンツ(ベルギー、ロットNLユンボ)らの逃げグループ逃げ切りへの布石を敷いたマールテン・ワイナンツ(ベルギー、ロットNLユンボ)らの逃げグループ photo:CorVosメイン集団の先頭に立って前を追うクイックステップフロアーズメイン集団の先頭に立って前を追うクイックステップフロアーズ photo:CorVosパヴェで積極的に走るギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)パヴェで積極的に走るギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) photo:CorVosベルギーのワロン地方で開催される、石畳クラシックシーズン序盤の定番レース、ル・サミン(UCI1.1)。地理的にもルーベなどから近くコースも類似するため、調整を兼ねて多くの選手が参加することが通例だ。

カレニョンを出発し、ドゥールの街に用意された1周25kmのサーキットを4周回するレースの総走行距離は200kmオーバー。周回コースには4つの石畳区間が用意されており、うち2つの「ヴィオリー」と「ベル・ヴュ」は荒れた路面が控える難易度3つ星クラスだ。

昨年と比べるとメンツの濃さは薄らいだものの、クイックステップフロアーズとロット・ソウダル、ロットNLユンボを始め、地元ベルギーを中心とした8つのプロコンチネンタル勢が揃った。元々の厳しさに加えて悪天候となったため、個々の力が問われるサバイバルレースが展開されることになる。

風雨の中、予想通り周回コースに入ってからメイン集団が熱を帯び、集団の人数を絞りたい思惑によって分裂。序盤から逃げていたメンバーを吸収してからはロイック・シェトゥ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)やトッシュ・ヴァンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)らが活発にアタックを仕掛けていく。

すると残り60km地点からマールテン・ワイナンツ(ベルギー、ロットNLユンボ)やギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)を含む5名が抜け出し、クイックステップフロアーズが追走するメイン集団から20秒差で逃げ始めた。

メイン集団は組織立った追走を組むことができず、マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)らが少人数で抜け出し、徐々に先頭の人数が膨れあがったものの、過酷な条件下で逃げグループ、メイン集団共に自然とメンバーが淘汰されていく。最終周回の鐘が鳴った際の構図は、先頭7名(うちロット・ソウダル2名)が20秒差で逃げる展開だ。

後続ではコフィディス・ソルシオンクレディやクイックステップフロアーズが追走を担ったが、逃げグループも全開で逃げたため20秒差が縮まらない。これぞベルギークラシックと言わんばかりの天候下での攻防戦から、先頭ではアレックス・キルシュ(ルクセンブルク、WBヴェランクラシック・アクア・プロジェクト)がアタック。ここに序盤からアタックを続けたヴァンデルサンドと、強力に逃げを率いてきたヴァンケイルスブルクが飛び乗った。

20kmを残したこの動きで逃げる3名vsメイン集団という展開となったが、傍目にも強さを感じさせる3名は、15〜20秒のタイム差をがっちりとキープ。軽い石畳の登りでヴァンデルサンドが千切れたものの、ヴァンケイルスブルクとキルシュはマンパワー不足を感じさせないスピードで距離を減らしていく。

逃げる2名は互いにアタックと追走を繰り返しながら、わずか11秒のリードを守りきってゴールに到達。タイミングを待ったヴァンケイルスブルクが先着し、3位集団の頭は6日間レースのスペシャリストであるイーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が抑えた。

自身の力を強烈にアピールしたヴァンケイルスブルクは、昨年クイックステップから移籍してきた26歳。「信じられないほどキツい展開で、何度もアタックしたのに彼(キルシュ)が食らいついたのでゴール勝負を待つことにした。昨年までは常にリーダーのために走る必要があって、いつも逃げ要員だった。でもワンティではリーダーになることができ、モチベーション高く、かつリラックスしてレースに臨めているんだ」と自身について語っている。



ギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)がスプリントで先着し勝利ギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)がスプリントで先着し勝利 photo:CorVos
過酷なサバイバルレースを走り終えたマールテン・ワイナンツ(ベルギー、ロットNLユンボ)過酷なサバイバルレースを走り終えたマールテン・ワイナンツ(ベルギー、ロットNLユンボ) photo:CorVos表彰台、優勝したギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が中央に立つ表彰台、優勝したギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が中央に立つ photo:CorVos




女子レース シェイラ・グティエレス(スペイン、サイレンス・プロサイクリング)がスプリントで勝利女子レース シェイラ・グティエレス(スペイン、サイレンス・プロサイクリング)がスプリントで勝利 photo:CorVos冷たい雨のなかル・サミンの石畳を進む萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)冷たい雨のなかル・サミンの石畳を進む萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ) (c) Bart Hazen / Wiggle HIGH5ファンサービスをする與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ)ファンサービスをする與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ) (c)FDJ Nouvelle-Aquitaine Futuroscopeまたこの日、男子レースの前には女子レースが開催され、日曜日から石畳クラシック連戦となった與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ)、萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)、牧瀬翼(マースランドスター・ヴェリスCCN)の3名が参戦した。

レースはシェイラ・グティエレス(スペイン、サイレンス・プロサイクリング)がアミイ・ピーテルス(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)が下して勝利。日本人各選手は雨と石畳に苦戦して思うように走ることができなかったという。石畳クラシック2連戦を終えた各選手の次戦は、與那嶺と萩原は週末にイタリアで開催されるストラーデ・ビアンケに、牧瀬はケルメスに出場する予定だ。以下は3選手のコメント。

萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ):3分9秒遅れ65位

雨と石畳に苦しめられ、展開に微塵も加われず、何の仕事もできず千切れては集団に戻ってを終日繰り返す酷い一日。チームとしても、逃げに誰も送り込めず、その後も機能せず、完全敗者になったレースでした。自分としてコンディション云々よりも、この種のレースへの闘争心より恐怖心が勝っている状況。冷静になりながらも、時に頭の線を切っていかなければならないこの種のレースへの闘争心を忘れてしまっている自分がいることに気付きます。反省する間もなくこれからイタリアへ移動、週末の「ストラーデビアンケ」へ参戦します。

與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ):4分15秒遅れ75位

二つ目のクラシックレースを終えました。身体のコンディションはしっかり上がり始めています。しかし、コースが石畳…。そのたびに集団から遅れ、一人インターバルを繰り返しています(笑)チームからの評価は「思ったより走れるじゃない!」とポジティブな評価です。

牧瀬翼(マースランドスター・ヴェリスCCN):DNF

「ロードレース」ではなく「クラシックレース」と呼ばれる意味がわかったクラシック2戦目でした。舗装路で抜いた選手に石畳区間で抜かれてを繰り返し、あまりの走れなさに面白くなってしまいました。



ル・サミン2017結果
1位 ギヨーム・ヴァンケイルスブルク(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)      4h53’55”
2位 アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、WBヴェランクラシック・アクア・プロジェクト)  
3位 イーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)               +11”
4位 フロリアン・セネシャル(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)
5位 フレデリック・バッカールト(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
6位 ジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・ネダランセロテリ)
7位 フレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・ソウダル)
8位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ロットNLユンボ)                  +13”
9位 ベルト・ファンレルベルク(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)       +35”
10位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)          +52”

女子レース結果
1位 シェイラ・グティエレス(スペイン、サイレンス・プロサイクリング)     2h40’21”
2位 アミー・ピーテルス(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)
3位 ティファニー・クロムウェル(オーストラリア、キャニオン・スラム)       +02”
4位 ロミー・キャスパー(ドイツ、アレ・チポッリーニ)               +07”
5位 ジェシー・ドリュイツ(ベルギー、スポートフラーンデレン・エティックス)    +12”
65位 萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)                    +3’09”
75位 與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ)        +4’15”
DNF 牧瀬翼(マースランドスター・ヴェリスCCN)

text:So.Isobe
photo:Cor.Vos

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