スリッピーな路面に落車が頻発したボルタ・ア・ヴァレンシアナ第2ステージで、終盤の山岳で抜け出したトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が独走勝利。落車した畑中勇介はバイク交換に手間取りレースから降ろされている。



序盤にレースの主導権を握ったBMCレーシング序盤にレースの主導権を握ったBMCレーシング photo:Tim de Waeleイーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)らと走るサルバドール・グアルディオラ(スペイン、チーム右京)イーリョ・ケイセ(ベルギー、クイックステップフロアーズ)らと走るサルバドール・グアルディオラ(スペイン、チーム右京) photo:Tim de Waele登坂で抜け出したダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)にトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が続く登坂で抜け出したダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)にトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が続く photo:Tim de WaeleBMCレーシングの圧勝となったチームタイムトライアルから一夜明け、ボルタ・ア・ヴァレンシアナ(UCI2.1)はいよいよアタッカー/クライマー有利の山岳ステージに分け入った。

アリカンテをスタートし、バレアス海に面した沿岸都市デニアへとフィニッシュする第2ステージの距離は178.6km。序盤から3級山岳が詰め込まれた標高600〜1000m級の山地を駆け抜け、後半は標高を下げながらもゴール手前6km地点に3級山岳が用意されている。ここでのアタック合戦は誰の目にも明らかだった。

序盤はチーム総合成績首位のBMCレーシングがハイペースで牽引する展開となり、雨が降りつけたことで荒れた路面はより一層スリッピーに。これによって集団内では落車が頻発し、130km地点では路面に流れていたオイルが引き金となった集団落車が発生。

ここに巻き込まれた畑中勇介(チーム右京)はスペアバイク乗り換えに時間が掛かり、終盤の周回コース進入時にコミッセール判断によってレースから降ろされてしまう。畑中は擦過傷と打撲を負ったものの、幸い大きな怪我に繋がってはいないという。

レース終盤には各チームが山岳勝負に向けて活発な位置取り争いを見せ、ルームポット・ネダランセロテリやモビスター主導で3級山岳アルト・デ・モントゴ(登坂距離4.4km、平均斜度3.8%)へと突入。高級住宅街を高速で駆け上がり、後半になってダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)がアタック。ここに「トレーニングキャンプでこの辺りを走っていたので地理は分かっていた」というトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が食いついた。

この動きは一度集団に引き戻されたものの、マルティンはそのままアタックを続行してKOMを通過する。デラクルスやプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)らが続いたが、コーナーを攻めるマルティンが間髪入れず独走に持ち込んだ。



独走でフィニッシュに飛び込むトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)独走でフィニッシュに飛び込むトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:Tim de Waele


トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が豪快にシャンパンを開けるトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が豪快にシャンパンを開ける photo:Tim de Waele総合リーダーに浮上したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)総合リーダーに浮上したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele「ウェットのダウンヒルで飛ばせば集団を振り切れると思っていたが、完全に作戦通りだった」と言うマルティンは見る間にリードを広げ、平坦区間に入ってもそのスピードは衰えない。ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)らの追走グループを11秒引き離して移籍後初勝利を達成した。

「ロードレースでの勝利は滅多に無いし、それが移籍後初勝利だからとてもハッピーだ」と語るマルティン。この日はフランスで開催されていたエトワール・ベッセージュ(UCI2.1)でもアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)が勝利しており、カチューシャは1日で2勝を挙げてみせた。

チーム右京のパブロ・ウルタスン監督は公式Facebookのレポートの中で「今日は予想していたより最初からワールドチームが速いスピードでステージを進めたので大変だった。畑中の落車はアンラッキーで彼には申し訳ないと思っている。選手だけでなくチームも成長して行かなくてはヨーロッパでは走れない。これから改善していくしかない。明日は平坦なステージで最後は集団スプリントで終わる可能性があるため何とか見せ場を作りたい」とレースを振り返っている。



ボルタ・ア・ヴァレンシアナ2017第2ステージ結果
1位 トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)      4h44’35”
2位 ピム・リヒハルト(オランダ、ルームポット・ネダランセロテリ)     +11”
3位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)
4位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
6位 マヌエル・アントネス(ポルトガル、W52FCポルトカネル)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)     +19”
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
10位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)

個人総合成績
1位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)   5h28’11”
2位 マヌエル・センニ(イタリア、 BMCレーシング)
3位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
4位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)            +21”
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)          +37”
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)       +41”
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)          +49”
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)
10位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)              +54”

山岳賞
1位 ヨハン・ファンジル(南アフリカ、ディメンションデータ)

ヤングライダー賞
1位 マヌエル・センニ(イタリア、 BMCレーシング)

チーム総合成績
1位 BMCレーシング

text:So.Isobe
photo:Tim de Waele