リードアウトマンを失い、ポジション取りに苦しみながらも、自ら活路を開いて勝利した。絶好調カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)がサントス・ツアー・ダウンアンダー第3ステージで2勝目をマークした。



グレーの海を背に、曇り空のフルリオ半島を南下するグレーの海を背に、曇り空のフルリオ半島を南下する photo:Kei Tsuji
逃げ続けるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)ら4名逃げ続けるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)ら4名 photo:Kei Tsujiアデレード近郊に広がるワインディングロードアデレード近郊に広がるワインディングロード photo:Kei Tsuji


BMCレーシングを先頭にKOMの登りを進むBMCレーシングを先頭にKOMの登りを進む photo:Kei Tsujiアデレードからトラムに乗って30分ほどで到着するビーチリゾート地グレネルグを発ち、プロトンは一路フルリオ半島を南下する。港町として19世紀から栄え、現在はホエールウォッチングの拠点として人気の観光地ヴィクターハーバーでダウンアンダー第3ステージはフィニッシュを迎える。

リーダージャージを着て走るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを着て走るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji緩い登りが登場するものの、獲得標高差1,400mの平坦コースはピュアスプリンター向き。例年平野を吹き抜ける風によって決まって集団が分裂する地域だが、この日は風が大きなファクターになることはなかった。

ボーラ・ハンスグローエやオリカ・スコットも集団コントロールに参加ボーラ・ハンスグローエやオリカ・スコットも集団コントロールに参加 photo:Kei Tsuji市街地を抜けて高速道路に入ってすぐ始まったアタック合戦は、プロトンきっての“逃げ屋”であるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)らが抜け出したところでようやく落ち着く。デヘントはクレメン・シェヴリエ(フランス、アージェードゥーゼール)、ジェレミー・メゾン(フランス、エフデジ)、ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEアブダビ)を伴侶に4分リードを得た。

BMCレーシングを先頭にKOMの登りを進むBMCレーシングを先頭にKOMの登りを進む photo:Kei Tsujiレース中盤のKOMでポイントを稼いだデヘントはレースリーダーのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)と同ポイントの山岳賞トップに。大会関係車両をすべて提供しているスバルがスポンサーにつく水玉山岳賞ジャージ着用の権利を得ている。

集団コントロールの役目はBMCレーシングが担ったが、やがてオリカ・スコットとボーラ・ハンスグローエが先頭に立ってペースを上げる。レース到着前にヴィクターハーバーに立ち込めていた雨雲は去り、太陽の登場とともに気温が上がる。

タイム差が2分を割り込む中、IAMサイクリングの解散に伴ってUAEアブダビに移籍したラエンゲンが逃げグループの中から単独アタック。身長193cmと長身で、個人TTを得意とするノルウェージャンが独走に持ち込んだものの、スプリンターチームによって残り5kmで吸収される。

「まだシーズン序盤の1月だけど調子が良いんだ。逃げメンバーと一緒に走るより単独で走ったほうが速いと判断して飛び出したけど、さすがに大集団は振り切れなかった」と語るラエンゲンは敢闘賞を獲得している。



オーストラリア国旗を横目にプロトンは進むオーストラリア国旗を横目にプロトンは進む photo:Kei Tsuji
ボニファツィオの位置取りに力を尽くす新城幸也(バーレーン・メリダ)ボニファツィオの位置取りに力を尽くす新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsujiスプリントを狙ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)スプリントを狙ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
ヴィクターハーバーのフィニッシュを通過し、周回コースに入るヴィクターハーバーのフィニッシュを通過し、周回コースに入る photo:Kei Tsuji


チームメイトに守られるポイント賞ジャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)チームメイトに守られるポイント賞ジャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiクイックステップフロアーズ、チームスカイ、カチューシャ・アルペシン、バーレーン・メリダ、トレック・セガフレードが入り乱れる集団前方。残り3kmを切ったところで発生したハイスピード落車には総合2位のゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)らが巻き込まれる。落車によってどのチームも隊列を崩し、最終的に主導権を握ったのはチームスカイだった。

BMCレーシングが集団前方をキープBMCレーシングが集団前方をキープ photo:Kei Tsuji残り1kmを切り、チームスカイトレインとは別ラインでサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が加速したところでスプリントが始まった。この日、ボーラ・ハンスグローエはペテル・サガン(スロバキア)で勝負を狙う予定だったが、ベネットの後ろに肝心の世界チャンピオンの姿はない。

最終周回に入るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)最終周回に入るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiベネットの後輪に飛びついたのはレッドジャージを着るユアン。すると、緩く左に曲がる最終ストレートのイン側を突く形でユアンがスプリントを開始した。サガンやニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)が追撃したものの、ユアンのスピードが数段上だった。

ポイント賞ジャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が先頭で現れるポイント賞ジャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が先頭で現れる photo:Kei Tsuji最終的に2m近いギャップを広げたユアンが勝利。ダウンアンダー2勝目。初日のクリテリウムを含めると3勝目で、ヨーロッパ選手たちを寄せ付けない圧倒的な強さを見せる。

ステージ2勝目を飾り、ポイント賞ランキングの首位を快走するユアンは「最終リードアウト役のダリル・インピーが落車で脱落してしまったので、他チームのトレインを利用するしかなかった」と、苦しいポジション取りを振り返る。「フィニッシュ前は混沌としていて、残り1kmの時点ではかなり後ろに位置していたけど、スプリントが始まるまでにポジションを上げることに成功。なんとか間に合った」。

ステージ2位に入ったサガンは「まだまだ本調子には程遠いけど、長いシーズンの初戦に勝負に絡むことができてよかった。ここではカレイブ(ユアン)が最速であることに疑いの余地はない」と、ライバルのスピードを認めている。「勝てなかったものの、今日の結果は前向きに捉えるべきだ」。

総合首位はリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)がキープ。オーストラリアの土の色を象徴するオーカージャージを着て走ったポートは「終盤はとてもナーバスでストレスフルだった。時に平坦ステージは山岳ステージ以上に危険なんだ。とにかく落車に巻き込まれなくてよかった。1日で全てを失う可能性だってあるのだから」とコメント。翌日もスプリンター向きの平坦コースだが、終盤にかけて危険なダウンヒルが設定されている。



サガンらを振り切ったポイント賞ジャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が勝利サガンらを振り切ったポイント賞ジャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が勝利 photo:Kei Tsuji
ステージ2勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ2勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsujiリーダージャージをキープしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージをキープしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji




サントス・ツアー・ダウンアンダー2017第3ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)    3h24’45”
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
4位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
5位 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)
7位 ショーン・ドゥビー(ベルギー、ロット・ソウダル)
8位 ロレンゾ・マンザン(フランス、エフデジ)
9位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)
10位 バティスト・プランカールト(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)

個人総合成績
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)     10h34’59”
2位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)            +20”
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)      +22”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +24”
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)    +27”
6位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)       +29”
7位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
8位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)   
9位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)
10位 ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)

ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)     30pts
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)       26pts
3位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)   24pts

山岳賞
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)      16pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)       16pts
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)     12pts

ヤングライダー賞
1位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)  10h35’28”
2位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
3位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)

チーム総合成績
1位 UniSAオーストラリア                    31h46”48”
2位 モビスター                          +04”
3位 トレック・セガフレード                    +11”

敢闘賞
ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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