おきなわ市民85kmに優勝した阿部紘太さん(法政大学サイクリング同好会)によるレースレポート。自転車競技で有名な法大だが、阿部さんはサイクリング同好会所属。難関の市民クラス優勝の栄冠は意外な選手が獲得?!

ツーリングで鍛えた私ですが...

市民85km覇者 阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)市民85km覇者 阿部紘太(法政大学サイクリング同好会) (c)MakotoAYANOみなさんこんにちは。この度、市民85kmの部で優勝しました阿部と申します。優勝と言えば何かもの凄いものだと思われがちですが、まったくそんなことはなくて、実際はラッキーだっただけだったりします(笑)。私は特にレーシングチームなどにも属しておらず、普段は大学のサイクリングサークルでまったり活動しています。
サークルでは自転車にテントや寝袋、鍋などを積載して、北海道や九州、全国各地をぶらぶら旅行、おいしいものを食べて飲んで寝るというような、レースとは程遠い自転車スタイルを追求しています。

ですから、もちろん「ツール・ド・おきなわ」のような大規模なレースで走るのは初めてで、ましてや優勝なんてできるとは思ってもいませんでしたから、正直とても驚いています。

しかし、今回のレースに向けて、きちんと練習を積んできました。今まで自転車の練習というものをしたことがなく、特段優れた身体能力や精神力があるわけではなく、むしろないので、非常に苦労しましたが、練習の成果は大いに出たと思います。練習は近所の人とするのが主で、今回の市民200kmで4位だった成毛選手や、市民50kmで5位だった大堀選手らのような自分よりも能力の高い選手と一緒に練習できたことも大きかったのではないかと思います。

スタート!周りは強そうな人ばかり

市民レース85kmは沖縄本島最北端の辺戸岬がスタート。 運営の方で色々あったらしく、スタートが50分遅れるトラブルが発生するも、私には大した影響はありませんでした。

ここでちょっと思ったのが、ボトルを1つしか用意していない人が多かったのですが、足りるのでしょうか?。私には無理なので、もちろん2ボトル。中身はスポーツドリンクを水で2倍に薄めたものにしました。

今回は出来る限り上位を狙っていくつもりだったので、先頭が見える位置、前から50番目くらいの位置からスタート。周りには強そうな人ばかりです!

辺戸岬→与那(平地区間)

辺戸岬から与那までの平地区間は、先頭の動きに対応できる位置を維持。この区間はトンネルが多かったり、工事で車線が狭まったりしていて、集団の後方にいていいことは全くありません。ペースのコントロールなどはベテランの方にお任せして、私は適当にアップ(笑)。

普久川ダム(山岳区間)

普久川は序盤にして市民85kmの一番の山場です。距離8km、標高300mくらい上ります。 登りの弱い私にとって、ここはかなり奮起して挑まないといけないところです。実は私の自転車はいわゆるTTフレームを使っていて、車重が9kgとヘビー級なのでちょっぴり不利。

平地から移行して、超ハイペースで上るのかと思いきや、意外とそうでもなくて、むしろまったり?インナーに入れてクルクル上ります。

慣れた方々が程よいペースを作ってくれたので、ちぎれることもなかったし、力のない人は淘汰できたので、一粒で二度うまい感じでした。 後半はだいぶ苦しくなってきましたが、気づいたら先頭に出ていて、そのままトップで頂上に到着。 あれほど多かった集団の人数もかなり減ったようです。

下りは頑張らないようにと肝に銘じていたつもりでしたが、せっかくの気持ちの良い下りなので、少し遊んでしまいました。

安波→平良(アップダウン区間)

上りと下りで頑張ったので大集団から少し抜け出て、8人くらいで逃げ集団を形成。しかし普久川から次の山場の源河までの30kmはやんばるの森の中を走るアップダウンの連続で、けっこう足を使います。
ここは満場一致で平和的に先頭交替をしつつ、後方集団から1分30秒くらいの差で逃げ続けます。私以外の選手はみなさんベテランのようで、ペースづくりをはじめ何もかもお任せして、周囲に迷惑をかけないように走ります。補給もここで摂って、エネルギーゼリーを胃に2つほど流し込んでおきました。

この区間から沿道から応援してくれる人もパラパラ見え出して、励みになりました。

源河(勝負の峠区間)

源河の上りは距離たった2、3キロですが、勾配6%くらいあるので、疲れてきた足にはなかなか堪えます。何人か減った感じはしますが、とりあえず逃げ組はここまで逃げ切ることができました。もう安泰です。速すぎず遅すぎないペースが良かったみたいで、まだ足も残っています。

逃げが決まったところで今度は逃げ集団内でのバトルになるのかと思いきや、みなさん消極的で、揃って登坂。とはいえいいペースで登ってくださるので、登りが苦手な私はちょっと無茶をさせられました。

ラスト10km(平地区間)

ラストが平地とは、私にとってかなり有利な展開。なにしろわざわざTTフレームに乗っかっているわけですから、平地は割と得意なのです。周りも消耗してきている人が多かったので、この時点で上位入賞は確信しました。
ここもしばらくは6人くらいで平和的にローテーション。ただこの集団、平地がいまいち弱い。個人的にはもう少し高い速度でローテしてアヘアへやりたかったのですが、ちょっと残念。

しかし、源河での無茶が効いてきて、左ふくらはぎが猛烈に攣りそうになってきました。引っ張ったり伸ばしたり、ボトルの残りの水をガブ飲みしていたらなんとか回復に成功。ここで高速ローテされていたらかなり危険でした。

途中、市民130kmのクラスの選手たちが集団にタダ乗りしてきて若干迷惑でした。乗るなら先頭引きもやって欲しかった。


ゴール前

ゴール直前まで何も起こらず集団は維持され、ラスト500mくらいからスプリント!

スプリントを開始する市民85km先頭集団スプリントを開始する市民85km先頭集団 (c)MakotoAYANO
中鶴友樹(TEAM KIDS)と阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)が自転車を投げあう中鶴友樹(TEAM KIDS)と阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)が自転車を投げあう (c)MakotoAYANO
中鶴友樹(TEAM KIDS)を僅差で下した阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)中鶴友樹(TEAM KIDS)を僅差で下した阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)

スプリントは3名のバトルで、ゴールがどこだかよくわからなかったのでピークをうまく作れませんでしたが、なんとか勝てました。

私はスプリントが特段強いわけでもなく、まぁ普通レベル。たまにいるスプリントがむちゃんこ強いタイプの選手がたまたまいなかったので、勝つことができました。

おきなわ最高! もっと強くなって帰ってくるぞ

景色もコースも何もかもが最高でした。走っていて気持ちが良かったです。ツール・ド・おきなわがホビーレースの最高峰だと言われる理由がわかりました。 勝てたのは完全にラッキーで、ベテランの多い逃げ集団にうまく乗れたことが勝因なのだと思います。スプリントがクソ強い人も中にはいたかもしれませんが、逃げ集団にはたまたまいなかったので、こんな結果になりました。

そして、きちんとした練習を積んでこれたのも大きいです。なにしろ、今回のレースより練習の方が圧倒的に辛かった。特に以前、二度ほど混ぜて頂いたチームオーベストの練習では、どうでもいい局面でちぎられまくり、まったく相手にならず、練習に参加したとすら言えないレベルでした。

おかげでレースでは「先頭集団からちぎれるかも」と甘えてしまう瞬間が皆無だったので、これが練習の成果というものなのでしょう。

しかしながら、一方で課題も見つかりました。もっと上位のクラスで走れるようになるためには、あらゆる基礎力が全く足りません。チャンピオンジャージを着こなすにはあと100年は掛かります。しっかりと十分な力を付けて、まともに走れるようにするのが当面の目標です。

初めての大舞台で良い結果。何か出来すぎな気もします。一緒にレースを走ったベテランの方々、応援してくれた方、そしていつも練習に誘ってくれたり、付き合ってくれたみなさん、本当にありがとうございました!


1位 阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)、2位 中鶴友樹(TEAM KIDS)、3位 笹木哲雄1位 阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)、2位 中鶴友樹(TEAM KIDS)、3位 笹木哲雄 (c)MakotoAYANO市民レース 85km
1位 阿部紘太(法政大学サイクリング同好会)2時間24分04秒41
2位 中鶴友樹(TEAM KIDS)
3位 笹木哲雄 +2秒
4位 安永裕(TEAM KIDS)+4秒
5位 浅野直也(チームサニーサイド)
6位 松永和幸(Team NIST)+6秒
7位 藤井壮太(東洋水産㈱ロードレース部)+1分16秒
8位 リャオ・ユーエンジョン+1分17秒
9位 中村慎太郎(Khara)+3分07秒
10位 福島雄二(BEST-X)+3分53秒