2016/11/14(月) - 19:08
誰もがマークしたのは増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、そして場所はラスト15kmからの羽地ダムへの上り。それでも鋭いアタックでまったく反応できない3人を置き去りにした増田は2年ぶり2度目の優勝を達成した。
男子チャンピオンロードレース210km
シーズン最終のロードレースのツール・ド・おきなわ。11月13日(日)に国際レースの3クラスが行われ、男子チャンピオンレース210kmはUCIレース(クラス2.1)として行われた。コースは本部半島をめぐり与那の上りを2回こなし、最後の勝負所である羽地ダム上りからフィニッシュへ向かう210km。厳しい登りとともに長めのアップダウンが繰り返される東海岸、そしてダメ押しともいえる羽地ダムへの上りが待つ、距離も内容もタフなもの。加えて当日の最高気温は27度と、暑さとの戦いが予想された。
70km地点でようやく決まった逃げ
参加チームからおおむねJプロツアーでの戦いの延長上の展開が予想された。朝6時45分にスタートした集団はいきなりオランダのベイビーダンプ勢のアタックで戦いの幕を開ける。その後もシマノレーシング、鹿屋体育大学をはじめ各チームの激しい攻防が続く。例年ならば早々に決まる逃げもできず1時間半にわたってアタック合戦が続き平均時速45kmほどのハイペースに。
1回目の与那の上りへ入る前に秋田拓磨(シマノレーシング)とバルト・ディエリッセン(ベイビーダンプサイクリングチーム)の2人が抜け出し、さらに上り途中でホセ・ビセンテ・トリビオと安原大貴のマトリックスパワータグ2名が抜け出し、集団はこれを容認、ようやく集団は落ち着く。
東海岸で攻防が始まる
先頭の2人にマトリックス2人が追いつき4人となるがやがてマトリックス2人だけとなって2回目の与那の上りへ。KOMを安原先頭で通過し山岳賞を確定させる。一時は6分差のついたメイン集団も追い上げ、上りを終え東海岸に降りる135km地点では30人ほどに数を減らす。
さらに連続する上り区間ではキナンサイクリングチームのマルコス・ガルシアとジャイ・クロフォードを中心にペースが上がり150km地点では20人に絞られる。同時に逃げていたマトリックス2人をパスしハイペースのまま東村を抜ける。ここで増田が先行し内間らが反応すると20人から8人へ先頭が絞られる。
先頭は8人から内間康平のアタックで4人へ
160km地点での先頭メンバー8人は、増田、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)、内間康平、西薗良太(ブリヂストンアンカー)、クロフォード、ベンジャミ・プラデス(チーム右京)、湊諒(シマノレーシング)そして吉田隼人(マトリックスパワータグ)だ。このなかでは雨澤、西薗そして湊が先頭をよく引く。
カヌチャリゾート手前の上り185km地点で内間が「監督と相談して決めていた地点で人数を絞り込むため」アタックすると、増田、クロフォード、プラデスそして内間の4人になる。ラスト25kmで勝負を託されたエース選手4人にいよいよレースは絞られた。
羽地ダム上りでアタックした増田成幸
先頭4人のままいよいよ勝負どころの羽地ダムへの上りへ。ここでクロフォード先頭で走っていた4人の最後尾から増田が鋭くアタックすると、ほか3人は全く動くことができず差はすぐに開いていく。満を持して踏み込む力強い増田の走りに離される一方の3人からはプラデスが下がり、そしてクロフォードと食らいつく内間の状況に。
国道58号に出てからも低いクラウチング姿勢のままペダリングを続ける増田は2位クロフォードに34秒の差をつける圧勝。2年前に続いて2度目の優勝となった。地元の大声援を受けた内間が3位でフィニッシュし表彰台を決めた。優勝した増田のタイムは5時間07分。昨年より30分も速く平均時速40.9kmという過去最速タイムだ。
別格の強さの増田成幸
増田一人が別格の強さを発揮したレースだった。メイン集団の牽引に協力しながら2回の上りをこなした後でも、30人の集団に4人を残したチームの動きも予定通りだった。「タイム差をつけたく2年前よりも」手前でアタックした増田は狙い通りに独走で優勝。ツール・ド・北海道第2ステージの逃げは他チームの油断も一因だったが、このおきなわは他選手を完膚なきまでに打ちのめすほどの完璧な勝利だ。
2位のクロフォードもチームとして序盤から積極的に動いた結果のもので、同じく好調だった今シーズンを象徴する結果だ。そして地元でエースを託された内間は自らの動きで先頭の人数を絞り表彰台を確定させた。その強さにふさわしい上位陣の顔ぶれだ。
優勝した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)のコメント
「内間選手がとてもいいタイミングでアタックしたので、人数を絞り込みたかった自分も反応しました。その4人は利害関係が一致してうまく回せました。羽地ダムのアタックは、追いつかれたくなくて2年前よりも早いタイミングで仕掛けました。追いつかれてもスプリントすればいいかと。キレをよくしたアタックだったので、じつは脚にきてペースが止まっていました。15秒から先がなかなか開かなくて」
「チームも飯野が集団を引いて、その後も4人が居て分担できて脚を残せたと思います。昨晩のミーティングで監督から”ほかのチームの監督はみんな増田マークだから走りにくいはず”と聞いていたので、プレッシャーでしたが(笑)。全日本選手権などでは自分の力を信じることができなくて気持ちで負けてしまい、いいレースができていませんでした。今日は思い切りのいいレースをしようと考えていました」
「今朝の夢が、このレースで勝って相部屋の(鈴木)譲とよっしゃー!と喜んでいるものでした。そして朝食のチケット番号も1番で、今日は運があるのかなと思っていた。本当に勝ててよかったです」。
3位の内間康平(ブリヂストンアンカー)のコメント
「最低限の目標だった表彰台に立てました。やるべきことをすべてやったうえでの結果です。増田選手がただ強かった。チームメイトはすべて僕のために動いてくれて、自分の力が足りなかっただけです。今日はペースが速く集団でなくきついレースで少人数の勝負でそれは自分の望む展開でした。普久川ダム(与那)の上りなどでチャンピオンジャージの初山がハイペースで引いてくれたりと、心強かったです」
「8人になった時、一番は増田選手、そしてシマノの湊選手とクロフォード選手に注意していました。羽地ダムだけの勝負にしたくなかったのでカヌチャ手前で仕掛けましたが、その後に増田選手がアタックしたときは動けなくてただ見ているだけでした」と内間。来シーズンは移籍するため、アンカージャージで達成した最後の表彰台にすがすがしい表情で答えた。
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)5:07:21
2位 ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム)+0:33
3位 内間康平(ブリヂストンアンカー)+0:40
4位 ベンジャミ・プラデス(チーム右京)+3:45
5位 湊諒(シマノレーシング)+3:45
6位 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)+3:45
7位 西薗良太(ブリヂストンアンカー) +3:45
8位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)+3:49
9位 畑中勇介(チーム右京)+5:35
10位 入部正太朗(シマノレーシング)+7:09
U23 1位 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
山岳賞 1位 安原大貴(マトリックスパワータグ)
photo&text:Hideaki TAKAGI
photo:Makoto AYANO
男子チャンピオンロードレース210km
シーズン最終のロードレースのツール・ド・おきなわ。11月13日(日)に国際レースの3クラスが行われ、男子チャンピオンレース210kmはUCIレース(クラス2.1)として行われた。コースは本部半島をめぐり与那の上りを2回こなし、最後の勝負所である羽地ダム上りからフィニッシュへ向かう210km。厳しい登りとともに長めのアップダウンが繰り返される東海岸、そしてダメ押しともいえる羽地ダムへの上りが待つ、距離も内容もタフなもの。加えて当日の最高気温は27度と、暑さとの戦いが予想された。
70km地点でようやく決まった逃げ
参加チームからおおむねJプロツアーでの戦いの延長上の展開が予想された。朝6時45分にスタートした集団はいきなりオランダのベイビーダンプ勢のアタックで戦いの幕を開ける。その後もシマノレーシング、鹿屋体育大学をはじめ各チームの激しい攻防が続く。例年ならば早々に決まる逃げもできず1時間半にわたってアタック合戦が続き平均時速45kmほどのハイペースに。
1回目の与那の上りへ入る前に秋田拓磨(シマノレーシング)とバルト・ディエリッセン(ベイビーダンプサイクリングチーム)の2人が抜け出し、さらに上り途中でホセ・ビセンテ・トリビオと安原大貴のマトリックスパワータグ2名が抜け出し、集団はこれを容認、ようやく集団は落ち着く。
東海岸で攻防が始まる
先頭の2人にマトリックス2人が追いつき4人となるがやがてマトリックス2人だけとなって2回目の与那の上りへ。KOMを安原先頭で通過し山岳賞を確定させる。一時は6分差のついたメイン集団も追い上げ、上りを終え東海岸に降りる135km地点では30人ほどに数を減らす。
さらに連続する上り区間ではキナンサイクリングチームのマルコス・ガルシアとジャイ・クロフォードを中心にペースが上がり150km地点では20人に絞られる。同時に逃げていたマトリックス2人をパスしハイペースのまま東村を抜ける。ここで増田が先行し内間らが反応すると20人から8人へ先頭が絞られる。
先頭は8人から内間康平のアタックで4人へ
160km地点での先頭メンバー8人は、増田、雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)、内間康平、西薗良太(ブリヂストンアンカー)、クロフォード、ベンジャミ・プラデス(チーム右京)、湊諒(シマノレーシング)そして吉田隼人(マトリックスパワータグ)だ。このなかでは雨澤、西薗そして湊が先頭をよく引く。
カヌチャリゾート手前の上り185km地点で内間が「監督と相談して決めていた地点で人数を絞り込むため」アタックすると、増田、クロフォード、プラデスそして内間の4人になる。ラスト25kmで勝負を託されたエース選手4人にいよいよレースは絞られた。
羽地ダム上りでアタックした増田成幸
先頭4人のままいよいよ勝負どころの羽地ダムへの上りへ。ここでクロフォード先頭で走っていた4人の最後尾から増田が鋭くアタックすると、ほか3人は全く動くことができず差はすぐに開いていく。満を持して踏み込む力強い増田の走りに離される一方の3人からはプラデスが下がり、そしてクロフォードと食らいつく内間の状況に。
国道58号に出てからも低いクラウチング姿勢のままペダリングを続ける増田は2位クロフォードに34秒の差をつける圧勝。2年前に続いて2度目の優勝となった。地元の大声援を受けた内間が3位でフィニッシュし表彰台を決めた。優勝した増田のタイムは5時間07分。昨年より30分も速く平均時速40.9kmという過去最速タイムだ。
別格の強さの増田成幸
増田一人が別格の強さを発揮したレースだった。メイン集団の牽引に協力しながら2回の上りをこなした後でも、30人の集団に4人を残したチームの動きも予定通りだった。「タイム差をつけたく2年前よりも」手前でアタックした増田は狙い通りに独走で優勝。ツール・ド・北海道第2ステージの逃げは他チームの油断も一因だったが、このおきなわは他選手を完膚なきまでに打ちのめすほどの完璧な勝利だ。
2位のクロフォードもチームとして序盤から積極的に動いた結果のもので、同じく好調だった今シーズンを象徴する結果だ。そして地元でエースを託された内間は自らの動きで先頭の人数を絞り表彰台を確定させた。その強さにふさわしい上位陣の顔ぶれだ。
優勝した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)のコメント
「内間選手がとてもいいタイミングでアタックしたので、人数を絞り込みたかった自分も反応しました。その4人は利害関係が一致してうまく回せました。羽地ダムのアタックは、追いつかれたくなくて2年前よりも早いタイミングで仕掛けました。追いつかれてもスプリントすればいいかと。キレをよくしたアタックだったので、じつは脚にきてペースが止まっていました。15秒から先がなかなか開かなくて」
「チームも飯野が集団を引いて、その後も4人が居て分担できて脚を残せたと思います。昨晩のミーティングで監督から”ほかのチームの監督はみんな増田マークだから走りにくいはず”と聞いていたので、プレッシャーでしたが(笑)。全日本選手権などでは自分の力を信じることができなくて気持ちで負けてしまい、いいレースができていませんでした。今日は思い切りのいいレースをしようと考えていました」
「今朝の夢が、このレースで勝って相部屋の(鈴木)譲とよっしゃー!と喜んでいるものでした。そして朝食のチケット番号も1番で、今日は運があるのかなと思っていた。本当に勝ててよかったです」。
3位の内間康平(ブリヂストンアンカー)のコメント
「最低限の目標だった表彰台に立てました。やるべきことをすべてやったうえでの結果です。増田選手がただ強かった。チームメイトはすべて僕のために動いてくれて、自分の力が足りなかっただけです。今日はペースが速く集団でなくきついレースで少人数の勝負でそれは自分の望む展開でした。普久川ダム(与那)の上りなどでチャンピオンジャージの初山がハイペースで引いてくれたりと、心強かったです」
「8人になった時、一番は増田選手、そしてシマノの湊選手とクロフォード選手に注意していました。羽地ダムだけの勝負にしたくなかったのでカヌチャ手前で仕掛けましたが、その後に増田選手がアタックしたときは動けなくてただ見ているだけでした」と内間。来シーズンは移籍するため、アンカージャージで達成した最後の表彰台にすがすがしい表情で答えた。
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)5:07:21
2位 ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム)+0:33
3位 内間康平(ブリヂストンアンカー)+0:40
4位 ベンジャミ・プラデス(チーム右京)+3:45
5位 湊諒(シマノレーシング)+3:45
6位 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)+3:45
7位 西薗良太(ブリヂストンアンカー) +3:45
8位 吉田隼人(マトリックスパワータグ)+3:49
9位 畑中勇介(チーム右京)+5:35
10位 入部正太朗(シマノレーシング)+7:09
U23 1位 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
山岳賞 1位 安原大貴(マトリックスパワータグ)
photo&text:Hideaki TAKAGI
photo:Makoto AYANO
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