リオ五輪女子ロードレースは、ヴィスタチネサの周回コースで生き残った4名での勝負に。単独先頭のマラ・アボット(アメリカ)を残り200mで捉えたアンナ・ファンデルブレゲンがオランダに2大会連続の金メダルをもたらした。與那嶺恵理は日本勢女子歴代最高となる17位でレースを終えた。



五輪を前に記念撮影するイタリア代表チーム五輪を前に記念撮影するイタリア代表チーム photo:Bettiniスタート地点を訪れたUCIのブライアン・クックソン会長スタート地点を訪れたUCIのブライアン・クックソン会長 photo:Bettini

スタートを切る68名のライダーたちスタートを切る68名のライダーたち photo:Bettini
波乱の男子ロードレースから一夜。さんさんと太陽が降り注ぐブラジルらしい天気は影を潜め、厚い雲が空を覆うなか、今度は女子ロードレースが開催された。前回大会覇者のマリアヌ・フォス(オランダ)や、前回大会2位で現世界王者のリジー・アーミステッド(イギリス)、MTBにも出場を予定する2014年ロード世界王者のポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)と、そうそうたるメンバーがエントリー。日本からは與那嶺恵理がオリンピック初出場を果たした。

序盤に一人飛び出したロッテ・コペッキー(ベルギー)序盤に一人飛び出したロッテ・コペッキー(ベルギー) photo:Bettiniトレーニング中のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)がリオオリンピック女子ロードレースを応援トレーニング中のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)がリオオリンピック女子ロードレースを応援 photo:Bettini集団内で走る現世界王者のリジー・アーミステッド(イギリス)集団内で走る現世界王者のリジー・アーミステッド(イギリス) photo:Bettiniコースは前日の男子ロードレースと共通だが、2つ用意される周回コースの周回数が異なる。最大斜度が17%にも達するグリマリと、距離2.1km/平均斜度6.8%のグロータ・ファンダという2つの登りに、2kmに荒れた石畳区間を組み合わせた、グリマリの周回コースを2周。距離9km/平均斜度6.2%の登りが用意されるヴィスタチネサの周回コースを1周する。レース距離は136.9kmだ。

この日最初にレースが動いたのは、スタートから約20kmの地点でのこと。コパカバーナの海岸線で、普段をロット・ソウダルの女子チームで走る弱冠20歳のロッテ・コペッキー(ベルギー)が飛び出す。しばらくすると、エレン・ファンデイク(オランダ)の飛び出しをきっかけに、ジョルジア・ブロンジーニ(イタリア)や、オリンピックでは2大会連続で個人TT金メダルを獲得しているクリスティン・アームストロング(アメリカ)を含む5名の追走集団が形成される。メイン集団は逃げを送り込めなかったイギリスがコントロール役を担った。

前日に男子ロードレースで落車や機材トラブルが多発したこともあり、レースは慎重な雰囲気の中で進む。パリ~ルーベ並みと悪評高い石畳区間も、この日はボトルが脱落する程度。フィニッシュまで68kmを残した2回目のグリマリの急坂で、メイン集団は、5名の追走集団と一人逃げたコペッキーを間髪入れずに捉え、頂上を越えて下りに入ったタイミングで活性化。一旦は2つに分断され、フォスや與那嶺らが後ろに取り残されるも、2回目のグロータ・ファンダの登りを前に再び集団は一つとなる。

次にレース展開が大きく動いたのは、残り40km地点でのこと。ヴィスタチネサの周回コースへと移動する海岸線で、アームストロングら5名の逃げに入っていたトリキシ・ヴォラック(ドイツ)がアタック。この動きにフォス、フェランプレヴォ、エレナ・チェッキーニ(イタリア)らが反応し、7名の強力な逃げ集団が形成される。普段はチームメイトである元世界王者のフォスとフェランプレヴォが中心となってハイペースでローテーションを回し、残り30km地点で1分のタイムギャップを稼ぐことに成功する。

しかし、勝ち逃げになる可能性を充分に持った先頭7名だったが、これを強力に追走したのがアメリカ。ドイツによる追走阻止の動きをものともせず、一旦開いた差を瞬時に挽回。登りを得意とするマラ・アヴォット(アメリカ)が強力な追走を仕掛け、ヴィスタチネサの周回コースの手前に位置するヨアの登りで先頭7名をパス。この間にメイン集団もどんどんと人数を減らし、現世界王者のアーミステッドも遅れを喫す。

リオデジャネイロの海岸線を走るメイン集団リオデジャネイロの海岸線を走るメイン集団 photo:Bettini
ヴィスタチネサの周回コースに入ると、アンネミエク・ファンフレウテン(オランダ)がアタック。この動きによって先頭は更に絞られ、アボット、ファンフレウテン、アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)、エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)の4名に。エマ・ヨハンソン(スウェーデン)が少し遅れながらも一定ペースで追走する展開となる。

ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やマリアヌ・フォス(オランダ)を含む強力な逃げ集団ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)やマリアヌ・フォス(オランダ)を含む強力な逃げ集団 photo:Bettini外れたチェーンをクランクへと掛け直す與那嶺恵理(日本)外れたチェーンをクランクへと掛け直す與那嶺恵理(日本) photo:Bettiniアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)のスプリントが伸びるアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)のスプリントが伸びる photo:Bettiniフィニッシュへの距離が減っていく中で、ファンフレウテンが再びアタックし、反応できたのはアボットのみ。ファンデルブレゲン、ロンゴボルギーニ、ヨハンソンの3人となった後続集団に対し、56秒のタイム差をつけてヴィスタチネサの下りへと突入する。

下りを苦手とするアボットを、ファンフレウテンはスムーズなライン取りで突き放し、独走へと持ち込む。しかし、前日の男子ロードレースでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)を餌食にした海岸線への下りが、ファンフレウテンに牙をむく。残り11kmを切った下りの右コーナーで、後輪を派手に滑らせ落車。頭から地面へと叩きつけられたファンフレウテンは起き上がることも、再び走り出すこともできず。

替わって単独先頭に踊り出たのはアボット。その後ろからはファンデルブレゲン、ロンゴボルギーニ、ヨハンソンの3名が追う。第1追走集団とのタイム差は40秒。そのすぐ後ろにはアーミステッドら4名の第2追走集団も。海岸線に出ると、強く雨が降りつけるようになる。

一人逃げるアボットに対して、牽制することもなく順調にローテーションを回して差を詰めるファンデルブレゲンら3名。残り1kmで、アボットと後続3名とのタイム差は10秒ほど。アーミステッドら4名は結局追いつけず。優勝とメダルの行方は、アボット、ファンデルブレゲン、ロンゴボルギーニ、ヨハンソンに絞られることとなった。

残り500mの左コーナーを曲がり、アボット、少しの間をおいてロンゴボルギー二、ヨハンソン、ファンデルブレゲンの順でスプリントはスタート。タイミングを図ったかのように、残り200mで追走3名がアボットを飲み込み、ファンデルブレゲンが後方から一気に先頭へ躍り出てガッツポーズ。オランダに2大会連続となる女子ロードレース金メダルをもたらした。

フィニッシュ前スプリントを制したアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)が優勝フィニッシュ前スプリントを制したアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)が優勝 photo:Bettini
優勝のファンデルブレゲンは、ラボバンク・リブに所属する26歳。2015年ジロ・ローザでのマリア・ローザ獲得に、フレッシュ・ワロンヌ2連覇、ラ・クルスByツール・ド・フランス優勝など、その輝かしい戦績の中に、オリンピック金メダルが加わった。

2位には、一度登りで遅れながらもうまく立ち回ったヨハンソンが入り、2008年の北京に続く2つ目のオリンピック銀メダルを獲得。3位はロンゴボルギー二。残り200mまで単独で先頭を走りながらも、アボットはメダルを逃した。日本から出場の與那嶺恵理は途中で落車により生じたメカトラに見舞われたものの、日本勢歴代最高の17位でフィニッシュ。NHKのインターネット放送で解説を務めた沖美穂の20位(2004年アテネ五輪)という記録を塗り替えた。


銀メダルのエマ・ヨハンソン(スウェーデン)、金メダルのアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)、銅メダルのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)銀メダルのエマ・ヨハンソン(スウェーデン)、金メダルのアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)、銅メダルのエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア) photo:Bettini


リオデジャネイロオリンピック2016女子ロードレース結果
1位 アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ)
2位 エマ・ヨハンソン(スウェーデン)
3位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)
4位 マラ・アボット(アメリカ)
5位 リジー・アーミステッド(イギリス)
6位 カタルジーナ・ニウイアドマ(ポーランド)
7位 フラビア・オリベイラ(ブラジル)
8位 ヨランダ・ネフ(スイス)
9位 マリアンヌ・フォス(オランダ)
10位 アシュリー・ムルマンパシオ(南アフリカ)
17位 與那嶺恵理(日本)
3h51'27"


+04"
+20"



+1'14"

+4'56"


text:Yuya.Yamamoto
photo:Bettini