2016/07/15(金) - 05:41
120km/hを超える猛烈な風によって超級山岳モンヴァントゥーの中腹にフィニッシュが変更されたツール第12ステージでトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が逃げ切り勝利。残り1kmを切ったところでクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が中継バイクと衝突して落車したが、救済措置によりマイヨジョーヌを守っている。
「プロヴァンスの巨人」または「魔の山」と形容される超級山岳モンヴァントゥー(15.7km/平均8.8%)の山頂フィニッシュが設定された第12ステージ。しかし一帯には強い季節風「ミストラル」が吹き荒れ、モンヴァントゥーの頂上では風速100km/hオーバーの猛烈な風が観測。前日にレース主催者ASOはフィニッシュ地点を残り6km地点のシャレ・レイナールに変更することを決めた。
レース序盤に形成されたのは13名の逃げグループ。フランス革命記念日に金星を飾りたいシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)やブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が逃げに乗る。総合38位:33分49秒遅れのダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)を含む逃げは総合に影響しないとして、チームスカイは最大18分40秒のタイム差を容認した。
逃げを捕まえる素振りを見せないままメイン集団は比較的平穏に進んだが、レース中盤の横風区間でエティックス・クイックステップ、チームスカイ、ティンコフ、BMCレーシングが先頭にメンバーを集めてペースアップすると、2日連続でエシュロン(斜め隊列)が形成されて集団が分裂。ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)やルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、FDJ)が後方に取り残された。
時を同じくしてファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がパンクで後退。チームメイトのヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)からバイクを受け取って再スタートしたアルは何とか勝負どころを前に集団に復帰している。
レース後半に入ると、遠くにプロヴァンスを見下ろす荒涼とした禿山モンヴァントゥーがその姿を見せる。徐々にメイン集団のペースが上がったためタイム差は8分台に。しかし下り区間で集団先頭を走っていたサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)がスリップダウン。すぐ後ろを走っていたイアン・スタナードとルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)が巻き込まれた。
フルームはスタナードとロウの復帰を待つようライバルチームに求め、マイヨジョーヌの要求に応じたメイン集団はペースダウンする。遅れていたバーギルやピノはここでメイン集団に復帰。タイム差は再び広がり、逃げグループは9分リードのままモンヴァントゥーの麓にたどり着いた。なお、落車したゲランスはグルペット内でフィニッシュしたが、レース後のX線検査で鎖骨の骨折が判明。翌日スタートしないことを決めている。
モンヴァントゥーの森林限界(標高1435m)に位置するシャレ・レイナールの山岳カテゴリーは変わらず超級で、登坂距離が9.5kmまで短くなったものの平均勾配は9.3%にアップ。森林の中を抜ける細い山道に大勢の観客が密集したことでカオスな状況となる。
本格的な登りを前に逃げグループからアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がアタックしたものの、勾配が増したところで他の逃げメンバーに吸収。観客に覆われた登りで先頭に立ったのはデヘントとセルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)、ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)の3人だった。
一時はパウエルスとナバーロから遅れながらもデヘントはペースを守って先頭に復帰。そこからパウエルスとデヘントのベルギーコンビが互いにアタックを仕掛け合うとナバーロが脱落する。しかしそれでも決まらず、結局最後はデヘント、パウエルス、ナバーロのままスプリント勝負に。ナバーロを置き去りにした2人によるスプリントでデヘントが勝利した。
逃げのスペシャリストとしてミッションを完遂したデヘントは「ライバルたちに脚を使わせるために、登り始めたところでアンドレ・グライペルがアタック。彼はレース中ずっとボトルを運んでくれ、アドバイスを与えてくれ、そして風よけとなって走り続けてくれた。普段自分がしていることの逆だった。彼がどれだけ素晴らしい人物なのか分かると思う」とアシストに徹したエーススプリンターの献身に感謝する。
ステルヴィオ峠にフィニッシュする2012年ジロ・デ・イタリア第20ステージで勝利し、同大会を総合3位で終えたデヘント。ツールでのステージ優勝は今回が初めて。「ステルヴィオでの勝利は、総合表彰台につながるものだったし、今回よりもエモーショナルだった。でもこれは世界最大のレースであるツール・ド・フランス。キャリアの中で最高の勝利だと言える」。ポイント2倍の超級山頂フィニッシュを制したデヘントは山岳賞でも一躍トップに立っている。
主にモビスターに先導されて9分遅れでモンヴァントゥーに到着したメイン集団では総合争いが勃発。登りに入るとすぐさまチームスカイが鉄壁の走りを見せる。ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)、ミケル・ランダ(スペイン)、ワウト・ポエルス(オランダ)、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)がフルームのために集団先頭を固めた。
アタックの口火を切ったのはヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)で、続いてアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がカウンター。しかしいずれの動きもチームスカイのアシスト体制を崩すには至らない。すると今度はナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が加速した。
キンタナのアタックにはフルーム自ら動くことなく、アシストのポエルスが集団のペースを上げて吸収する。その後のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らのアタックもポエルスによって封じ込められる。すると、ポエルスとエナオモントーヤの後ろから、フィニッシュまでおよそ2kmを残してフルームが猛烈な勢いでアタックした。
ペダルを踏み倒したフルームにはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)とキンタナが食らいついたものの、やがてキンタナはハイペースに対応できずに失速。代わってバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が追いつき、精鋭3名が後続を引き離し始める。
ポート、フルーム、モレマの順で観客をかき分けながら進む先頭3名。しかし、残り1kmアーチを過ぎ、観客の密度が増した地点で前を走る中継バイクが突然ストップする。観客と接触して止まったモーターバイクに3名が勢い良く衝突した。
すぐさま立ち上がってバイクに跨ったモレマとは違い、後続モーターバイクに轢かれてバイクが壊れたフルームとポートは再スタートできず。両者ともにキンタナを始めとするライバル勢に追い抜かれてしまう。ランニングでフィニッシュに向かったフルームは100mほど走ったところでマヴィックカーからニュートラルバイクを受け取ったが、サイズとペダルが合わずに再びストップ。ようやく駆けつけたチームカーからスペアバイクを受け取ってペースを戻したフルームは総合ライバルたちから1分40秒ものタイムを失った。
フィニッシュ後すぐに出されたリザルトにはフルームの遅れがそのまま反映され、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)が総合首位に。しかし審議の末にリザルトに修正が入る。不可抗力による落車で遅れたフルームとポートは、落車時に同じグループを走っていたモレマと同じ5分05秒遅れ、そして落車の混乱で足止めを食らったキンタナやバルベルデはイェーツと同じ5分24秒遅れの扱いとなった。キンタナが総合3位、モレマが総合4位に浮上した。
こうして終わった混乱のモンヴァントゥー決戦。「サプライズの連続だった。目の前を走っていたモーターバイクが故障でストップし、避けきれずに衝突して落車。後ろから突っ込んできたモーターバイクに踏まれてバイクが壊れた。スペアバイクが載っているチームカーが遥か後ろを走っているとわかっていたので、だから仕方なく走ったんだ。コミッセールの判断を歓迎する。正しい判断だと思う。コミッセールとツール主催者に感謝だ」と混乱のステージを走り終えたフルームはコメント。落車で遅れながらもフルームがキンタナらから19秒のタイム差を奪うことに成功し、総合2位イェーツとの総合タイム差を47秒まで広げてマイヨジョーヌを守っている。
Résumé - Étape 12 (Montpellier / Mont Ventoux... par tourdefrance
ツール・ド・フランス2016第12ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 4h32’31”
2位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ) +02”
3位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) +14”
4位 スタフ・クレメント(オランダ、IAMサイクリング) +40”
5位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)
6位 ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ) +2’52”
7位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ) +3’13”
8位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ) +3’26”
9位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)+4’23”
10位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +5’05”
11位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +5’24”
12位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
13位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
14位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
15位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
16位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
17位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
18位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
19位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +5’05”
20位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +6’30”
22位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
25位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +5’05”
183位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +28’24”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 57h11’33”
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +47”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +54”
4位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +56”
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +1’15”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1’32”
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1’54”
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +1’56”
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2’11”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 309pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 219pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 202pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 89pts
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) 80pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ) 77pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) 57h12’20”
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’42”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +3’41”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 171h28’49”
2位 モビスター +3’50”
3位 チームスカイ +7’42”
ステージ敢闘賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
リタイア
アンジェロ・テュリク(フランス、ディレクトエネルジー)
ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、カチューシャ)
text&photo:Kei Tsuji in Mont Ventoux, France
「プロヴァンスの巨人」または「魔の山」と形容される超級山岳モンヴァントゥー(15.7km/平均8.8%)の山頂フィニッシュが設定された第12ステージ。しかし一帯には強い季節風「ミストラル」が吹き荒れ、モンヴァントゥーの頂上では風速100km/hオーバーの猛烈な風が観測。前日にレース主催者ASOはフィニッシュ地点を残り6km地点のシャレ・レイナールに変更することを決めた。
レース序盤に形成されたのは13名の逃げグループ。フランス革命記念日に金星を飾りたいシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)やブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が逃げに乗る。総合38位:33分49秒遅れのダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)を含む逃げは総合に影響しないとして、チームスカイは最大18分40秒のタイム差を容認した。
逃げを捕まえる素振りを見せないままメイン集団は比較的平穏に進んだが、レース中盤の横風区間でエティックス・クイックステップ、チームスカイ、ティンコフ、BMCレーシングが先頭にメンバーを集めてペースアップすると、2日連続でエシュロン(斜め隊列)が形成されて集団が分裂。ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)やルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、FDJ)が後方に取り残された。
時を同じくしてファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がパンクで後退。チームメイトのヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)からバイクを受け取って再スタートしたアルは何とか勝負どころを前に集団に復帰している。
レース後半に入ると、遠くにプロヴァンスを見下ろす荒涼とした禿山モンヴァントゥーがその姿を見せる。徐々にメイン集団のペースが上がったためタイム差は8分台に。しかし下り区間で集団先頭を走っていたサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)がスリップダウン。すぐ後ろを走っていたイアン・スタナードとルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)が巻き込まれた。
フルームはスタナードとロウの復帰を待つようライバルチームに求め、マイヨジョーヌの要求に応じたメイン集団はペースダウンする。遅れていたバーギルやピノはここでメイン集団に復帰。タイム差は再び広がり、逃げグループは9分リードのままモンヴァントゥーの麓にたどり着いた。なお、落車したゲランスはグルペット内でフィニッシュしたが、レース後のX線検査で鎖骨の骨折が判明。翌日スタートしないことを決めている。
モンヴァントゥーの森林限界(標高1435m)に位置するシャレ・レイナールの山岳カテゴリーは変わらず超級で、登坂距離が9.5kmまで短くなったものの平均勾配は9.3%にアップ。森林の中を抜ける細い山道に大勢の観客が密集したことでカオスな状況となる。
本格的な登りを前に逃げグループからアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がアタックしたものの、勾配が増したところで他の逃げメンバーに吸収。観客に覆われた登りで先頭に立ったのはデヘントとセルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ)、ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)の3人だった。
一時はパウエルスとナバーロから遅れながらもデヘントはペースを守って先頭に復帰。そこからパウエルスとデヘントのベルギーコンビが互いにアタックを仕掛け合うとナバーロが脱落する。しかしそれでも決まらず、結局最後はデヘント、パウエルス、ナバーロのままスプリント勝負に。ナバーロを置き去りにした2人によるスプリントでデヘントが勝利した。
逃げのスペシャリストとしてミッションを完遂したデヘントは「ライバルたちに脚を使わせるために、登り始めたところでアンドレ・グライペルがアタック。彼はレース中ずっとボトルを運んでくれ、アドバイスを与えてくれ、そして風よけとなって走り続けてくれた。普段自分がしていることの逆だった。彼がどれだけ素晴らしい人物なのか分かると思う」とアシストに徹したエーススプリンターの献身に感謝する。
ステルヴィオ峠にフィニッシュする2012年ジロ・デ・イタリア第20ステージで勝利し、同大会を総合3位で終えたデヘント。ツールでのステージ優勝は今回が初めて。「ステルヴィオでの勝利は、総合表彰台につながるものだったし、今回よりもエモーショナルだった。でもこれは世界最大のレースであるツール・ド・フランス。キャリアの中で最高の勝利だと言える」。ポイント2倍の超級山頂フィニッシュを制したデヘントは山岳賞でも一躍トップに立っている。
主にモビスターに先導されて9分遅れでモンヴァントゥーに到着したメイン集団では総合争いが勃発。登りに入るとすぐさまチームスカイが鉄壁の走りを見せる。ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)、ミケル・ランダ(スペイン)、ワウト・ポエルス(オランダ)、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)がフルームのために集団先頭を固めた。
アタックの口火を切ったのはヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)で、続いてアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がカウンター。しかしいずれの動きもチームスカイのアシスト体制を崩すには至らない。すると今度はナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が加速した。
キンタナのアタックにはフルーム自ら動くことなく、アシストのポエルスが集団のペースを上げて吸収する。その後のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らのアタックもポエルスによって封じ込められる。すると、ポエルスとエナオモントーヤの後ろから、フィニッシュまでおよそ2kmを残してフルームが猛烈な勢いでアタックした。
ペダルを踏み倒したフルームにはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)とキンタナが食らいついたものの、やがてキンタナはハイペースに対応できずに失速。代わってバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が追いつき、精鋭3名が後続を引き離し始める。
ポート、フルーム、モレマの順で観客をかき分けながら進む先頭3名。しかし、残り1kmアーチを過ぎ、観客の密度が増した地点で前を走る中継バイクが突然ストップする。観客と接触して止まったモーターバイクに3名が勢い良く衝突した。
すぐさま立ち上がってバイクに跨ったモレマとは違い、後続モーターバイクに轢かれてバイクが壊れたフルームとポートは再スタートできず。両者ともにキンタナを始めとするライバル勢に追い抜かれてしまう。ランニングでフィニッシュに向かったフルームは100mほど走ったところでマヴィックカーからニュートラルバイクを受け取ったが、サイズとペダルが合わずに再びストップ。ようやく駆けつけたチームカーからスペアバイクを受け取ってペースを戻したフルームは総合ライバルたちから1分40秒ものタイムを失った。
フィニッシュ後すぐに出されたリザルトにはフルームの遅れがそのまま反映され、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)が総合首位に。しかし審議の末にリザルトに修正が入る。不可抗力による落車で遅れたフルームとポートは、落車時に同じグループを走っていたモレマと同じ5分05秒遅れ、そして落車の混乱で足止めを食らったキンタナやバルベルデはイェーツと同じ5分24秒遅れの扱いとなった。キンタナが総合3位、モレマが総合4位に浮上した。
こうして終わった混乱のモンヴァントゥー決戦。「サプライズの連続だった。目の前を走っていたモーターバイクが故障でストップし、避けきれずに衝突して落車。後ろから突っ込んできたモーターバイクに踏まれてバイクが壊れた。スペアバイクが載っているチームカーが遥か後ろを走っているとわかっていたので、だから仕方なく走ったんだ。コミッセールの判断を歓迎する。正しい判断だと思う。コミッセールとツール主催者に感謝だ」と混乱のステージを走り終えたフルームはコメント。落車で遅れながらもフルームがキンタナらから19秒のタイム差を奪うことに成功し、総合2位イェーツとの総合タイム差を47秒まで広げてマイヨジョーヌを守っている。
Résumé - Étape 12 (Montpellier / Mont Ventoux... par tourdefrance
ツール・ド・フランス2016第12ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 4h32’31”
2位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ) +02”
3位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) +14”
4位 スタフ・クレメント(オランダ、IAMサイクリング) +40”
5位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)
6位 ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ) +2’52”
7位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ) +3’13”
8位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ) +3’26”
9位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)+4’23”
10位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +5’05”
11位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +5’24”
12位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
13位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
14位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
15位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
16位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
17位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
18位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
19位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +5’05”
20位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +6’30”
22位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
25位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +5’05”
183位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +28’24”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 57h11’33”
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +47”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +54”
4位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +56”
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +1’15”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1’32”
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1’54”
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +1’56”
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2’11”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 309pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 219pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 202pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 89pts
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) 80pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ) 77pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) 57h12’20”
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’42”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +3’41”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 171h28’49”
2位 モビスター +3’50”
3位 チームスカイ +7’42”
ステージ敢闘賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
リタイア
アンジェロ・テュリク(フランス、ディレクトエネルジー)
ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、カチューシャ)
text&photo:Kei Tsuji in Mont Ventoux, France
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