注目の女子エリートロードレースは、最終周回に抜け出した與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)と萩原麻由子(Wiggle High 5)の戦いとなり、ラスト800mで抜け出した與那嶺が優勝、個人TTとのダブルタイトルを獲得した。



WE 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)がTTに続いてたブルチャンピオンにWE 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)がTTに続いてたブルチャンピオンに photo:Hideaki TAKAGI

強風が吹きつけるレース

6月25日(土)午後に行われた、全日本選手権ロード女子エリートは9周107.1kmのレース。午前中からの雨は止んだものの風はさらに強くなり波しぶきが霧状にただよう天候に。この女子エリートは全日本選手権であると同時に、リオオリンピック出場選考の大会でもあり、UCIポイントランキング上位3人の萩原、與那嶺そして金子広美(イナーメ信濃山形)から上位1名が候補選手として選出されるもの。

1周目から先頭に立つのは萩原。金子らとともに先頭でペースを作ることが多い。與那嶺はそれらの後方に位置する。集団は伸び縮みを繰り返すが、その動きは萩原のアタックとそれを追う與那嶺の動きによるもの。集団で推移はするものの、小さなアタックがかかる状態だ。中盤以降は與那嶺も先頭に立ちペースを作る。ここで金子にアクシデントが。「脚が攣って草地に倒れ込んだ」という金子は再乗して追走するが向かい風区間だったこともあり結局DNFに。

WE 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)と優勝を誓う武井亨介コーチWE 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)と優勝を誓う武井亨介コーチ photo:Hideaki TAKAGIWE 2周目上り、金子広美(イナーメ信濃山形)が前に出るWE 2周目上り、金子広美(イナーメ信濃山形)が前に出る photo:Hideaki TAKAGI

WE 2周目、先行した萩原麻由子(Wiggle High 5)らを與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が追うWE 2周目、先行した萩原麻由子(Wiggle High 5)らを與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が追う photo:Hideaki TAKAGIWE 2周目、アタックした萩原麻由子(Wiggle High 5)を與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が追うWE 2周目、アタックした萩原麻由子(Wiggle High 5)を與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が追う photo:Hideaki TAKAGI


先頭4名で最終周回へ

周回を追うごとに上りで人数が絞られ、当初20人ほどだった先頭集団も10人ほどに。8周目の登り区間で萩原がペースを上げると反応できたのは與那嶺、牧瀬翼(ASAHI MUUR ZERO)の3人。その後に梶原悠未(筑波大学)が合流して先頭は4人に。

そして最終周回、上りで萩原がペースを上げると與那嶺だけが反応でき、勝負はこの2人に絞られる。2人は交代しながらフィニッシュ地点を目指し、ラスト3kmで與那嶺がアタックするが萩原も反応し離れない。そしてラスト800mから始まる緩い上りで與那嶺がアタックすると萩原は離れ、5秒差をつけて與那嶺が優勝。

WE 8周目、先頭の4人WE 8周目、先頭の4人 photo:Hideaki TAKAGIWE 9周目、上りで萩原麻由子(Wiggle High 5)がアタックWE 9周目、上りで萩原麻由子(Wiggle High 5)がアタック photo:Hideaki TAKAGI

WE 9周目、アタックした萩原麻由子(Wiggle High 5)に與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が反応WE 9周目、アタックした萩原麻由子(Wiggle High 5)に與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)が反応 photo:Hideaki TAKAGIWE ラスト3km、アタックする與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)に萩原麻由子(Wiggle High 5)が反応WE ラスト3km、アタックする與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)に萩原麻由子(Wiggle High 5)が反応 photo:Hideaki TAKAGI


強さを示した與那嶺

與那嶺は萩原が動くのを待ち常に冷静に対処した。ペースを上げたりアタックを幾度も繰り出す萩原に対し、2回のアタックで勝負を決めた。前日の個人TTで優勝した強さそのままに萩原を下した。絶対に勝つという勝利への執念が勝った形だ。個人TTとロードレースの両方を制し2013年に続く2回目のダブルタイトルを獲得。日本一の強さを内外に示すこととなった。

萩原は終始レースをリードし先頭に立つ場面が多かったが、最終周回の上りで與那嶺を離せなかったことで勝負は決した。萩原は先月の落車でろっ骨骨折など負い、前日の個人TTでも強風下のアジア選でのタイムより23秒も遅く体調は万全でなかったが、むしろ與那嶺と互角に戦えるまでに復調できたと言う方が正しいだろう。

なおリオオリンピック出場候補選手の発表は、6月26日午前の時点では行われていない。これまでなされた発表の基準では、優勝した與那嶺が候補となる可能性が高い。

3位梶原悠未(筑波大学)と4位牧瀬翼(ASAHI MUUR ZERO)のスプリント3位梶原悠未(筑波大学)と4位牧瀬翼(ASAHI MUUR ZERO)のスプリント photo:KeiTSUJIWE 4位に入った牧瀬翼(ASAHI MUUR ZERO)と三浦監督WE 4位に入った牧瀬翼(ASAHI MUUR ZERO)と三浦監督 photo:Hideaki TAKAGI

WE 表彰WE 表彰 photo:Hideaki TAKAGI


優勝した與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint)のコメント

「ずっと狙っていたタイトルで、今シーズンから海外チームに入れて海外で走れて、やっぱりナショナルチャンピオンジャージの重みを感じて。特に今年の全日本はオリンピックがかかっていたので、絶対に落とせないと思っていた。(勝って)選考基準通りに行けると思うので、本当に嬉しい。

コースはアジア選で走っていたので、9周回するとどうなるかも自分の中でわかっていたが、梅雨の気候などもあって自分の思うようにはいかなくて。海外で走られている萩原選手もすごく強くて、自分ではもっとと思っていたのだけれど、彼女の強さを感じられて、それでも彼女が強くても私が勝ちたい、勝てると信じて、最後の最後の針の穴に糸を通して勝てたと思う。

(観戦する側にとってもジリジリする展開だったが)最後にやることは決めていた。それ以外に何か―自分だけのレースではないので―何が起きても反応出来るように、作戦通りにいかなくても何か違う手を打てるように、冷静に事が運べた。それはここまで海外で走っていたおかげだと思う。

たとえ振りきれなかったとしても、最後800mは踏み切るとコーチと決めていた。それは自分の状態がどうであれ、勝てると信じて自分で動いた。勝利は最後の柵があるあたりから確信した。

(次の目標は)ジロ・ローザに出場が決まっているので、総合上位を狙って走る。そのレースの走りで、来年の事を見ていてくれるチームもあると思うのでそれを考えて。でも、私にとって楽しくやることが一番強くなれるので。今日もコーチからシリアスにならずに楽しめと言われて楽しめました。

(全日本に向けては)今年の春から海外に行けてUCIレースを回れると言うのは予定外だったので、それも含めて全日本までにレースを組み立ててチームと相談して、全日本2週間前からはレース出ずに調整してきた。

次のジロでナショナルジャージを着て走るのが夢だった。それをチームマネージャーにも約束して帰ってきたのでとても嬉しい。コーチも自分のレースよりも私のトレーニングパートナーとしてコーチとして、私の調整を優先して付き合ってきてくれて感謝している。

レースに対しては、上りでどうかとか細かい作戦と言うのはなくて『お前が感じてやれ』という事で、自分の調子と周りの選手の息遣いなどを見て自分で判断して走った。」

「昨日JCFから誰と言うことではなく『五輪選考対象から除外する』と言う申立を却下する旨の裁定結果が発表されたが、それはモチベーションに影響したか」と言う質問に対しては、

「そういう事も確かにあったのだけれど、頭からは置いておき、あくまでも勝つ事を目標にレースをした。」

全日本選手権ロードレース 女子エリート リザルト
1位 與那嶺恵理(Hagens Berman Supermint) 3h33'01
2位 萩原麻由子(Wiggle High 5)       +00'05
3位 梶原悠未(筑波大学)          +00'55
4位 牧瀬翼(ASAHI MUUR ZERO)       +00'57
5位 坂口聖香(パナソニックレディース)   +05'03
6位 樫木祥子(ニールプライド南信スバル)  +07'14
7位 合田祐美子(BH ASTIFO)        +09'16

photo:Hideaki TAKAGI,Kei TSUJI
text:Hideaki TAKAGI,Yuichiro HOSODA