スイス南部のアルプス山岳地帯を走る超級山岳コースで、逃げの中から唯一生き延びたダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)が独走勝利。獲得標高差が3,386mに達したこの日、総合成績にもシャッフルがかかった。



晴れ間ものぞいたツール・ド・スイス第5ステージ晴れ間ものぞいたツール・ド・スイス第5ステージ photo:Tim de Waele
スタートしていく新城幸也(ランプレ・メリダ)スタートしていく新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:Miwa Iijimaレース中盤にかけて雨や雹が降るレース中盤にかけて雨や雹が降る photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第5ステージツール・ド・スイス2016第5ステージ image:Tour de Suisseツール・ド・スイス第5ステージは126.4kmというショートコースに獲得標高差3,386m分の登りが詰め込まれている。中盤にかけて標高2,436mの超級山岳フルカ峠(16.5km/平均6.2%)と標高2,102mの1級山岳ゴッタルド峠(7.8km/平均6.8%)が登場し、最後は超級山岳カリ(10km/平均8%)の山頂フィニッシュだ。

超級山岳フルカ峠を登るプロトン超級山岳フルカ峠を登るプロトン photo:Tim de Waele山岳賞ジャージのアントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)やダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)を含む24名の大きな逃げ集団がレース序盤に形成。トルホックが超級山岳フルカ峠を、アタプマが1級山岳ゴッタルド峠を先頭でクリアする。

アスタナを先頭に超級山岳フルカ峠を登るアスタナを先頭に超級山岳フルカ峠を登る photo:Tim de Waele連続して登場する難関山岳で逃げ集団は人数を減らし、1級山岳ゴッタルド峠の長い下りを終えた時点で先頭はティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)、ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)、ユベール・デュポン(フランス、AG2Rラモンディアール)、ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)、ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、モビスター)、アタプマの7名に。

チームスカイがコントロールするメイン集団から1分差で最後の超級山岳カリ登坂を開始した逃げグループはアタックの応酬となる。ウェレンスのアタックにアタプマ、アナコナ、ベルハネだけが反応し、加減速を繰り返しながら互いの様子を探る。このペースアップによりメイン集団とのタイム差はむしろ広がって残り7kmで1分20秒に。

すると残り6kmでアタプマがダンシングで加速を続け、追いすがるウェレンス、アナコナ、ベルハネを引き離すことに成功。ステージ優勝に向けて独走で超級山岳カリの頂上を目指した。



超級山岳フルカ峠の下りをこなす超級山岳フルカ峠の下りをこなす photo:Tim de Waele


超級山岳フルカ峠のダイナミックな下りをこなす超級山岳フルカ峠のダイナミックな下りをこなす photo:Tim de Waeleゲラント・トーマス(イギリス)をエースに据えるチームスカイはレオポルド・ケーニッヒ(チェコ)、ダビ・ロペスガルシア(スペイン)、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)、イアン・ボズウェル(アメリカ)が隊列を組んで集団牽引。淡々とハイペースを刻んでメイン集団の人数を絞り込んでいく。

集団内で登りをこなすゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)集団内で登りをこなすゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele各チームのエースが動いたのは残り4kmを切ってから。ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)やミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)がそれぞれアタックを仕掛け、トーマスやウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)がすかさず反応する。中でもヴァンガーデレンが積極的にアタックを連発させたが、勾配の緩さから決定的なギャップは生まれない。

逃げグループを率いるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)逃げグループを率いるティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele残り1kmアーチをくぐったところでメイン集団からバーギルだけが抜け出し、単独で先頭アタプマとの差を詰め始める。バーギルは残り500mで先頭を視界にとらえたが、アタプマも負けじとダンシングでペースをキープ。バーギルの追撃を4秒差で振り切ったアタプマが先頭でフィニッシュラインを切った(平均スピード34.2km/h)。

アタックを仕掛けるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)アタックを仕掛けるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele「ジロ閉幕の4日後にこの登りを試走して、自分向きのステージだと思っていた。ジロの3週間で脚は仕上がっていたし、特に標高2,000mオーバーの峠が連続するコースは絶好のチャンスだった」という28歳のコロンビアンクライマーが2013年ツール・ド・ポローニュ以来となるUCIワールドツアーレース勝利を喜ぶ。「最後の山岳の麓に到着した時点で逃げ切りを確信していた。とは言っても仮にティージェイ(ヴァンガーデレン)が集団から飛び出して追いついてくることがあれば、彼をアシストすることも考えた。登りをよく覚えていたし、ライバルたちが苦しんでいたタイミングでアタックしたんだ。最終的に後続が迫ったので残り1kmは全開だったよ」。

逃げ切り勝利を飾ったダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)逃げ切り勝利を飾ったダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleアタプマはドロミテの峠を繋ぐジロ・デ・イタリアのクイーンステージでも逃げたが、残り2kmで後続に吸収(ステージ4位)。総合9位でジロを終えている。「ジロでステージ優勝を逃したことが今回の勝利へのモチベーションになった。チームにとっても、スイスのBMCにとってもスペシャルな勝利だ」とアタプマは語っている。

3位でフィニッシュに飛び込むピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)3位でフィニッシュに飛び込むピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waeleメイン集団はフィニッシュに向けてのスプリントで分裂。ビッグネームを下してステージ3位に入ったピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)が総合首位に立った。

2015年にプロ入りし、同年ルート・ドゥ・スッド総合3位、ツール・ド・ラン総合3位という成績を残しているラトゥール。今年のクリテリウム・アンテルナシオナルで総合2位、ツール・ド・ロマンディでヤングライダー賞を獲得している22歳が自身も驚くイエロージャージ獲得を果たした。「デュポンが逃げに乗る理想的な展開で、チームメイトのサポートを受けて勝負に挑んだ。イエロージャージ獲得は予想外の出来事。UCIワールドツアーレースで総合リーダーになるなんて全く予想していなかったし、まだ実感していない」とラトゥール。

「厳しい山岳ステージやタイムトライアルが残っているけど、最後まで全力で戦いたい」と新リーダーは語っている。ケルデルマンがタイム差0秒で総合2位、トーマスがタイム差5秒で総合3位につけている。

「前半から前にいたんだけど、寒さで足が動かなくなった。とにかく寒さに苦戦している」と振り返る新城幸也(ランプレ・メリダ)は力をセーブして147位でフィニッシュ。「この天候に慣れていかなければならない。明日も、明後日も厳しい山岳が続くので、無駄に脚を使わないように温存しながら大事なところでルイを助けられるようにしたい」とコメントしている。第5ステージを終えてコスタは35秒差の総合11位につけている。

選手コメントは各チーム公式サイトとTeamユキヤ通信より。



イエロージャージを手にしたピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)イエロージャージを手にしたピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第5ステージ結果
1位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)            3h41’52”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)            +04”
3位 ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)            +07”
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)          +09”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +12”
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)
8位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)                 +16”
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
10位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)
147位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                   +23’51”

個人総合成績
1位 ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)         18h04’54”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +05”
4位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)            +16”
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)          +18”
6位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)            +19”
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)                  +27”
8位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                   +30”
9位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)            +34”
10位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)

ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)

山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)

スイスライダー賞
1位 マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)

チーム総合成績
1位 チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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